【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

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第三部 最終話

16 リーゼの恋

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 リーゼは演奏を終えると一度裏へ引っ込んだが、すぐに客席に現れた。テーブルを回って挨拶をし、一言二言会話を交わすと、ディーノたちの席にやってきた。

「お越しくださってありがとうございます」

 師匠たちに頭を下げたあと、ディーノに向けてにこっと微笑んだ。

「リーゼ君といったね。きれいな演奏をするね」

「ありがとうございます。一流のリュート奏者さんにお褒め頂けるとは、身に余る光栄です」

「ここに座りたまえよ」

「はい。失礼いたします」

「ディーノと顔見知りだったようだが、どこの演奏会でお会いしたのかね」

「二年前フランでの、シャルレ・カリエール公爵様の音楽会に師匠が招待されていました。そこでディーノ君とお話をする機会がありました」

 リーゼとディーノはその時のことをかいつまんで説明をした。

「世間は以外と狭いものだな」

 聞き終えた師匠がふむふむ頷いた。

 しばらくリーゼを加えて歓談し、そろそろ帰るかと席を立とうとした頃、店の扉が開き、若い女性が入店してきた。

 まだ二十代前半、もしかすると十代後半かもしれない。長い髪を左側にまとめて結わえている。彼女はディーノの後ろ、リーゼに目を留めると、「リーゼさん。こんばんは」とにこやかに笑った。

「こ、こんばんは」

「今晩の演奏は終わってしまいましたか?」

「あ、はい」

「それは残念。また聴かせてくださいませね」

「はい。ぜひ」

「お疲れ様でした」

 そして彼女はカウンターの中に入っていった。店主に何かを手渡し、話をしている。二人は親子だろうか。

 ディーノが目を向けると、リーゼは彼女を見つめてぼんやりしていた。

 ああ、これは。

 すぐにわかった。リーゼは彼女を気に入っている。

「リーゼ」

 声をかけても、彼は反応をしなかった。

 人が恋をしている顔を見たのは初めてだった。彼の目には周囲が入っていなくて、彼女しか映っていないみたいだ。

 興味を惹かれたが、ピエールが支払いをすませ、師匠たちは店を出ようとしていたので、追いかけようとした。

「くれぐれも気をつけるんだよ」

「すぐそこじゃないの。大丈夫よ」

 店主と話終えた彼女がカウンターから出てきた。扉に向かってくる。

「暗いですから、送って行きますよ」

 なんと、リーゼが彼女に声をかけていた。

 驚いた。以外と積極的なんだ。

 二人の邪魔をしないようにと、声をかけずに分かれた。師匠たちに続いて坂を上り、リーゼと彼女は下って行った。
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