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第一部
6 いなくなったイレーネ
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目覚めたとき、とても気分が良かった。
胸がどきどきして、自然と笑みが零れた。ぺらぺらの布団が厚手の毛布になったかのように、頬に当たる感触が気持ちいい。いつもはイラつく隣で眠る男の寝言にすら、笑う余裕があった。
きっと素敵な夢を見たからだ。
夢の中の生活が現実だったら、毎日こんなに幸福な気持ちで朝を迎えられるのだろうか。
レーヴェはうーんと伸びをして、勢いよく起き上がった。今日は仕事が楽しく出来そうだ。
鶏小屋に向かうため台所の裏口を開けて外に出ようとして、レーヴェは立ち止まった。
仲間たちがのろのろと起き始めている。どんなに目をこらしても、その中にやはりイレーネはいなかった。
楽しかった気分が一転した。
なぜだかわからないけれど、胸騒ぎがする。
鶏小屋に向かうはずだった足を反対側へ向け、屋敷内に入り込んだ。
裸足の生活のせいで固くなった足の裏に、絨毯はあり得ないほどの心地良さを伝えてくる。芝生のふわふわした感触に似た、けれどちくちくと刺してくるような感じは全くなくて、動物のようなぬくもりはあるけれどもっと柔らかくて。
元は何かの動物の毛だったのだろうが、廊下一面に敷き詰められ真っ赤に染められた絨毯には、元の面影は微塵もない。
滅多に歩けないこの絨毯の感触が、レーヴェはとても好きだった。
しかし今日はそれを味わっている場合ではなかった。
使用人の男が前方の扉から出てくるのを見つけ、
「ねえ! イレーネは?」
呼び止めた。
振り返った男がレーヴェの姿を見つけると、表情を一変させた。もともと愛想の良い男ではないが、鬼のような形相で近寄ってきてレーヴェの頭を拳骨で殴った。
「おまえは裸足で何をやってる! ここに来るときは靴を使えと何回も言ってるだろうが! さっさと掃除しろ!」
怒鳴りつけられ、頭も痛かったが、どうでもよかった。
「イレーネが帰ってきてないんだ。何かあったの?」
「イレーネ? ああ、デチーナのことか。それなら地下室だ」
「地下室!? どうしたの?」
「ああん、知らねえよ。それより早く掃除しろ。また殴られたいのか。あ、こら! どこに行きやがる!」
男の話の途中でレーヴェは身を翻した。
胸がどきどきして、自然と笑みが零れた。ぺらぺらの布団が厚手の毛布になったかのように、頬に当たる感触が気持ちいい。いつもはイラつく隣で眠る男の寝言にすら、笑う余裕があった。
きっと素敵な夢を見たからだ。
夢の中の生活が現実だったら、毎日こんなに幸福な気持ちで朝を迎えられるのだろうか。
レーヴェはうーんと伸びをして、勢いよく起き上がった。今日は仕事が楽しく出来そうだ。
鶏小屋に向かうため台所の裏口を開けて外に出ようとして、レーヴェは立ち止まった。
仲間たちがのろのろと起き始めている。どんなに目をこらしても、その中にやはりイレーネはいなかった。
楽しかった気分が一転した。
なぜだかわからないけれど、胸騒ぎがする。
鶏小屋に向かうはずだった足を反対側へ向け、屋敷内に入り込んだ。
裸足の生活のせいで固くなった足の裏に、絨毯はあり得ないほどの心地良さを伝えてくる。芝生のふわふわした感触に似た、けれどちくちくと刺してくるような感じは全くなくて、動物のようなぬくもりはあるけれどもっと柔らかくて。
元は何かの動物の毛だったのだろうが、廊下一面に敷き詰められ真っ赤に染められた絨毯には、元の面影は微塵もない。
滅多に歩けないこの絨毯の感触が、レーヴェはとても好きだった。
しかし今日はそれを味わっている場合ではなかった。
使用人の男が前方の扉から出てくるのを見つけ、
「ねえ! イレーネは?」
呼び止めた。
振り返った男がレーヴェの姿を見つけると、表情を一変させた。もともと愛想の良い男ではないが、鬼のような形相で近寄ってきてレーヴェの頭を拳骨で殴った。
「おまえは裸足で何をやってる! ここに来るときは靴を使えと何回も言ってるだろうが! さっさと掃除しろ!」
怒鳴りつけられ、頭も痛かったが、どうでもよかった。
「イレーネが帰ってきてないんだ。何かあったの?」
「イレーネ? ああ、デチーナのことか。それなら地下室だ」
「地下室!? どうしたの?」
「ああん、知らねえよ。それより早く掃除しろ。また殴られたいのか。あ、こら! どこに行きやがる!」
男の話の途中でレーヴェは身を翻した。
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