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第一部 海野麻帆
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「麻帆、似合うよ」
「ええー、そうかなあ。なんか恥ずかしいよ」
お姉ちゃんの部屋。姿見に写った自分の姿が自分じゃないようで、あたしはちょっと恥ずかしかった。
「ショッピングに行こう」
お姉ちゃんに誘われて、ショッピングセンターに行くことにした。
あたしは普段動きやすいような服を着る。
TシャツやロンTに、ジーンズを合わせることがほとんど。
でもお姉ちゃんはときどきで服装を変える。あたしのようにラフな時と、ワンピースみたいな女の子の時と。気分や、行く場所によってオシャレに気合を入れるらしい。
今日のお出かけは、「私の服着てみない?」と言われた。
それでお姉ちゃんに選んでもらったベージュのワンピースを着ている。小花柄でウエストに紐がついていて、軽く結ぶ。
ふんわりした袖はとてもかわいいけど、
「ごめん、無理」
あたしに似合っている感じがしない。
「それじゃ、こっちは」
お姉ちゃんが出してきた、別の服に袖を通す。
お姉ちゃんとあたしの体型は同じくらい。瘦せ型で、華奢な骨格をしている。
身長は、あたしの方が少しだけ高い。
違うのは肉付き。あたしは凹凸に乏しく、貧弱。
お姉ちゃんは大きくはないけど胸はきれいに膨らんでいるし、ウエストも締まっていて、大人の体をしている。
髪は高校に入学するまでは長かった。今は肩で切り揃えている。見た目はお姉ちゃんの方が大人っぽい。
あたしはショートで、まだまだお子ちゃま感が抜けない。
年の差なのか、お姉ちゃんの年齢になってもあたしはこのままなのか。
どっちにしても、あたしにきれいでかわいい服は似合わないと思っている。
結局、姉が高校に上がる前に買って、でも子供っぽいからとほとんど着なかったという、スポーティなワンピースにレギンスを合わせた。
衿付きで、ハーフジップの薄いグレーのワンピース。スカート丈が膝上だったから、自分のレギンスを合わせると、抵抗がなくなった。
黒のキャップを合わせると、よりスポーティになった。
「マラソンに行けそうな恰好だね」
お姉ちゃんは少し不満そう。
「いいの。こっちの方が落ち着く」
ママがくれたおこずかいを財布に入れて、バスに乗った。
姉が帰って来て、二週間が経った。
勉強を教わったり、相談に乗ってもらったり、愚痴を聞いてもらったり。
以前よりもっと仲が良くなった。
存命だった時は、姉には姉の時間があって、忙しくしていた。話を聞いて欲しくても、家にいない。家にいても勉強中で声をかけづらい状況もあった。
不謹慎だし、今の状況を望んでいたわけではないけれど、姉がいてくれる今が、一番距離が近かった。
今週、中間考査が終わった。
結果は来週にでる。自己採点の結果は、優秀な姉をもってしても、一週間であたしの理解力が急に上がるわけがない。
でも、息抜きも必要、ということで遊びに来た。
服や靴を試着したり、雑貨屋さんでコスメや文房具を見たり、本屋さんで立ち読みをしたり。お昼にたこ焼きを食べて、また服を見に行って。
今の服に合うからと、アイボリーのショルダーバッグを買った。
黄色が鮮やかなレモネード専門店がオープンしたばかりだったので、レギュラーサイズを買って、バスを待つ。
あたしの他に待っている人はいない。
五時を過ぎたけれど、外はまだまだ明るい。
高校生になってから門限はなくなった。時間管理も自分でしなさいと言われたから。
身に着いた習慣のせいなのか、夕食の時間までには帰宅したかった。
「おいしい?」
「うん、甘酸っぱくて爽やかで、美味しいよ」
「いいなあ、お姉ちゃんも飲みたいなあ。ビタミンカラーっていいよね」
「飲んでいいよ。でもどうやったらあげられるのかな」
試しにカップを向けてみる。
お姉ちゃんはストローに口を近づけたけれど、首を横に振った。
「お供えってどうなんだろう。月命日にはお水とご飯と、お菓子をお供えしてるんだよ」
「もしかしたら味わえたりするかも」
お姉ちゃんの目がキランと光る。これはすぐにでも試したいってことだな、と察して、レモネードは残しておくことにした。
「氷溶けて薄くなっちゃうかもだけど、いい?」
「いいよ」
やってきたバスに乗って、帰ってきた自宅にて。
「お姉ちゃん、ただいま。あ、おはぎ」
骨壺の前に、小豆色の丸い和菓子がお供えされていた。
「これはぼたもちだね。すごい、ちゃんとあんこが味わえる」
お姉ちゃんは瞼を閉じて、うっとりしている。
感動しているみたい。
「そっか。お姉ちゃんは、こしあんの方が好きだもんね」
あたしは粒あん派。
お姉ちゃんがぼたもちを味わい終わるのを待ってから、レモネードのカップを置いた。
「どう?」
ママに聴こえないように、小声で訊ねる。
「うん。レモネード。薄くはなってるけど、爽やかな風味だね」
「良かったね」
堪能したお姉ちゃんが「もう片付けていいよ」と言うので、残りを飲んで捨ててから、着替えるために部屋に戻った。後からお姉ちゃんが入ってくる。
「麻帆、ありがとう。楽しませてもらったよ」
「他に食べたい物ある?」
「そうだねえ‥‥‥」
考えていたお姉ちゃんは、少ししてから「麻帆が作ってくれた物を食べたい」と言った。
「ええー、そうかなあ。なんか恥ずかしいよ」
お姉ちゃんの部屋。姿見に写った自分の姿が自分じゃないようで、あたしはちょっと恥ずかしかった。
「ショッピングに行こう」
お姉ちゃんに誘われて、ショッピングセンターに行くことにした。
あたしは普段動きやすいような服を着る。
TシャツやロンTに、ジーンズを合わせることがほとんど。
でもお姉ちゃんはときどきで服装を変える。あたしのようにラフな時と、ワンピースみたいな女の子の時と。気分や、行く場所によってオシャレに気合を入れるらしい。
今日のお出かけは、「私の服着てみない?」と言われた。
それでお姉ちゃんに選んでもらったベージュのワンピースを着ている。小花柄でウエストに紐がついていて、軽く結ぶ。
ふんわりした袖はとてもかわいいけど、
「ごめん、無理」
あたしに似合っている感じがしない。
「それじゃ、こっちは」
お姉ちゃんが出してきた、別の服に袖を通す。
お姉ちゃんとあたしの体型は同じくらい。瘦せ型で、華奢な骨格をしている。
身長は、あたしの方が少しだけ高い。
違うのは肉付き。あたしは凹凸に乏しく、貧弱。
お姉ちゃんは大きくはないけど胸はきれいに膨らんでいるし、ウエストも締まっていて、大人の体をしている。
髪は高校に入学するまでは長かった。今は肩で切り揃えている。見た目はお姉ちゃんの方が大人っぽい。
あたしはショートで、まだまだお子ちゃま感が抜けない。
年の差なのか、お姉ちゃんの年齢になってもあたしはこのままなのか。
どっちにしても、あたしにきれいでかわいい服は似合わないと思っている。
結局、姉が高校に上がる前に買って、でも子供っぽいからとほとんど着なかったという、スポーティなワンピースにレギンスを合わせた。
衿付きで、ハーフジップの薄いグレーのワンピース。スカート丈が膝上だったから、自分のレギンスを合わせると、抵抗がなくなった。
黒のキャップを合わせると、よりスポーティになった。
「マラソンに行けそうな恰好だね」
お姉ちゃんは少し不満そう。
「いいの。こっちの方が落ち着く」
ママがくれたおこずかいを財布に入れて、バスに乗った。
姉が帰って来て、二週間が経った。
勉強を教わったり、相談に乗ってもらったり、愚痴を聞いてもらったり。
以前よりもっと仲が良くなった。
存命だった時は、姉には姉の時間があって、忙しくしていた。話を聞いて欲しくても、家にいない。家にいても勉強中で声をかけづらい状況もあった。
不謹慎だし、今の状況を望んでいたわけではないけれど、姉がいてくれる今が、一番距離が近かった。
今週、中間考査が終わった。
結果は来週にでる。自己採点の結果は、優秀な姉をもってしても、一週間であたしの理解力が急に上がるわけがない。
でも、息抜きも必要、ということで遊びに来た。
服や靴を試着したり、雑貨屋さんでコスメや文房具を見たり、本屋さんで立ち読みをしたり。お昼にたこ焼きを食べて、また服を見に行って。
今の服に合うからと、アイボリーのショルダーバッグを買った。
黄色が鮮やかなレモネード専門店がオープンしたばかりだったので、レギュラーサイズを買って、バスを待つ。
あたしの他に待っている人はいない。
五時を過ぎたけれど、外はまだまだ明るい。
高校生になってから門限はなくなった。時間管理も自分でしなさいと言われたから。
身に着いた習慣のせいなのか、夕食の時間までには帰宅したかった。
「おいしい?」
「うん、甘酸っぱくて爽やかで、美味しいよ」
「いいなあ、お姉ちゃんも飲みたいなあ。ビタミンカラーっていいよね」
「飲んでいいよ。でもどうやったらあげられるのかな」
試しにカップを向けてみる。
お姉ちゃんはストローに口を近づけたけれど、首を横に振った。
「お供えってどうなんだろう。月命日にはお水とご飯と、お菓子をお供えしてるんだよ」
「もしかしたら味わえたりするかも」
お姉ちゃんの目がキランと光る。これはすぐにでも試したいってことだな、と察して、レモネードは残しておくことにした。
「氷溶けて薄くなっちゃうかもだけど、いい?」
「いいよ」
やってきたバスに乗って、帰ってきた自宅にて。
「お姉ちゃん、ただいま。あ、おはぎ」
骨壺の前に、小豆色の丸い和菓子がお供えされていた。
「これはぼたもちだね。すごい、ちゃんとあんこが味わえる」
お姉ちゃんは瞼を閉じて、うっとりしている。
感動しているみたい。
「そっか。お姉ちゃんは、こしあんの方が好きだもんね」
あたしは粒あん派。
お姉ちゃんがぼたもちを味わい終わるのを待ってから、レモネードのカップを置いた。
「どう?」
ママに聴こえないように、小声で訊ねる。
「うん。レモネード。薄くはなってるけど、爽やかな風味だね」
「良かったね」
堪能したお姉ちゃんが「もう片付けていいよ」と言うので、残りを飲んで捨ててから、着替えるために部屋に戻った。後からお姉ちゃんが入ってくる。
「麻帆、ありがとう。楽しませてもらったよ」
「他に食べたい物ある?」
「そうだねえ‥‥‥」
考えていたお姉ちゃんは、少ししてから「麻帆が作ってくれた物を食べたい」と言った。
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