【完結】二度目のお別れまであと・・・

衿乃 光希

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第三部 仲良し姉妹

46 卒業制作展示会

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 展示の時間は11時から。
 4時間ちょっとですべての料理を作り終え、後はお弁当に詰めるだけとなった。

 お弁当は仕切りが取り外せる容器を3つ購入した。
 和の段は9種類と吸い物。中華の段は8種類と卵スープ。洋の膳は9種類とコンソメスープ。
 和は旬の食材にこだわり、中華は王道、洋は世界の料理を入れる。

 お品書きも事前に作っておいた。
『笑花堂弁当で世界旅行   海野麻帆』
 和の段
 手前左から、赤飯・太巻き寿司・水菜と白菜の漬物
 中段、ゆりねの茶巾・野菜の炊き合わせ・胡麻豆腐
 上段、さわらの西京焼き・旬野菜の煮しめ  
 はまぐりのおすまし

 和は華やかにしたくて、飾り切りをふんだんに使った。
 がんもと小松菜と一緒に炊き合わせた大根は菊。
 ゆりねの茶巾には、上に桃色の梅肉をのせている。
 旬野菜の煮しめのレンコンは花、ニンジンはねじり梅、里芋は六方、こんにゃくは手綱、ごぼうは竹、しいたけは紅葉みたいな柄、絹サヤは端を切って矢羽根に切った。

「きれいね、麻帆」
 詰め終わった和の段を眺めて、「よし」と頷く。
 ゆっくりしている時間はない。次のお弁当に取り掛かる。

 中華の段
 手前左から、チャーハン・ザーサイの漬物・胡麻団子
 中段、シュウマイ・春巻き・エビチリ
 上段、甘酢団子入り酢豚・八宝菜
 卵スープ

 洋の段
 手前左から、インドのビーフビリヤニ・イギリスのローストビーフ・ロシアのペリメニ
 中段、スペインのたこのガリシア風・フランスのテリーヌ・イタリアのアランチーニ
 上段、アメリカのミニハンバーガー・メキシコのチキンファヒータ・韓国のチャプチェ
 コンソメスープ

 すべてを詰め終えた時、開始時間の10分になっていた。
 蓋をして、あたしに与えられたテーブルのスペースに、空をイメージしたスカイブルーのテーブルクロスを敷き、お弁当を運ぶ。
 お品書きも忘れずに設置して、ミニチュアの飛行機を置いた。

「終わった」
 高校生活の集大成ともいえる、卒業制作が仕上がった。
 胸の中にあるのは、達成感ただ一つ。
 二ケ月近く取り組んできて、やっと終わったのに、解放感がないのは、きっと苦じゃなかったから。
 満足感も少しはある。だけど、これは評価されてこそ、花開く感情のような気がした。

「それではオープンします」
 生徒全員の展示が出来上がり、11時を少し回って、食堂のドアが開かれた。

 生徒や保護者たちに混ざって、あたしもクラスメイトの展示を見て回る。

 予想通りフレンチ、イタリアン、会席のコース料理がたくさん。それぞれの国の伝統をリスペクトしながら、個性の光る工夫を凝らしている。
 他にはアフタヌーンティーのセットや、おせち料理、お花見弁当、前菜の盛り合わせ、洋菓子、パン、和菓子など。

 魂と真心を込めた料理の数々に、目が潤んだ。

「負けてないよ、麻帆の料理」
 すべての料理を見て回って、自分の作った物を見返すと、お姉ちゃんが優しく言ってくれた。
 素晴らしい料理を作った生徒たち。その中に、自分がいる。
 一年遅れで加わり、お姉ちゃんと二人で遅れを取り戻そうと頑張った。

「負けてないよね」
 勝っているかは、わからない。でも、ここまで来られた事を考えると、賞はもう必要ないように思えた。

「うん。負けてない!」
 お姉ちゃんの言葉だけで、十分満足だった。

「麻帆、すごいぞ」
「私たちには、麻帆の料理が一番よ」

 いつのまにか、あたしの側にパパとママがいた。

 ♢

 1時間の展示が終了し、各賞が決まるまでの間、あたしたちはそれぞれが作った物を食べた。
 もちろん人数分は足りないから、予備の分も出して、気になる料理を少しずつ。
 どれもきれいな上にすごく美味しくて、お腹も心も満たされた。

 そしていよいよ、発表の時になった。

「3位から発表します。呼ばれた者は前に来てください」
 安堂先生の声が、静かな食堂に響き渡る。
 ドラムロームはない。みんな固唾を呑んで、先生の次の言葉を待つ。

「第3位アフタヌーンティー、七瀬百々ななせももさん」
「は、はい!」
 ネッカチーフの前で、指をぎゅっと組んでいた七瀬さんが、弾かれたように顎を上げた。

 周囲にいたクラスメイトに背中を押されて、安堂先生の所へ向かう。
 校長先生から賞状を受け取って、胸の前で誇らしげに広げた。
 拍手が沸き上がる。

 七瀬さんの作品は彩りがとてもきれいで、見るだけでわくわくするアフタヌーンティーだった。
 ケーキスタンドの下段にはフルーツサンドやツナなどの、一口サイズサンドイッチ。
 中段にはスコーン、ドーナツ・コルネなどのパン。
 最上段にはフルーツケーキ・ロールケーキ・マフィン・プリンなどのケーキがのっていた。
 周囲にはパフェやマカロンなど、ケーキスタンドにのせきれなかったスイーツやパンやフルーツが並ぶ。
 ピンクやオレンジ、白などカラフルで、かわいい出来栄えだった。

「次、第2位優秀賞。ウエディング、大浦愛花さん」

「大浦さん! すごい」
 かつて、店舗実習を一緒に行った大浦さんは、ウエディングケーキを中心に、結婚式の一コマを切り抜いた作品だった。
 ひと際大きくて真っ白なウエディングケーキに、淡いピンクやイエローで作った薔薇で豪華なデコレーションをしていた。
 人が持てるサイズのブーケは飴細工。
 新郎新婦と神父はマジパン。
 参列者は動物のクッキー。
 教会はクッキーなどの焼き菓子で組み立てられていた。
 すべてを食べられる物で作っていたけど、食べてしまうのは惜しい、素晴らしい作品だった。

 2位の賞状をもらった大浦さんの顔は、晴れやかじゃなかった。
 唇を噛み締めて、少し顔を強張らせている。
 負けず嫌いと聞いていたから、1位を獲れなかった今、とても悔しい思いをしているんだろう。

「それでは第1位、最優秀賞は」
 技術も世界観も素晴らしかった大浦さんの作品の上をいく作品は誰なのか。
 食堂は緊張感に包まれて、発表を待った。


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