前略、お祖母ちゃん ~ええ?! 文通相手はもふもふたち? 私を癒す25通の絵ハガキ~

衿乃 光希

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2章 届くはずのない手紙

1.園児たちとの時間

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 体育館に集合したひよこ組の園児たち。今日も二十五人全員出席。

 園児のざわついた声と、外の雨音が混ざって聞こえてくる。
 雨音はもうじき園児が立てる声にかき消されるだろう。

「よーいどんの合図が出たら、尻尾取りゲームスタートだよ。とられたら、箱の中の尻尾を取って、何回でも参加できるからね。箱の中の尻尾が全部なくなったら、終わり。とった尻尾は、持っててね」

 ルール説明をしている私を見つめる子、自分のお尻についている尻尾が気になる子、目の前の子の尻尾をもう取って、麻香先生にまだだよと注意を受けている子。
 今日も園児たちは個性豊か。

「準備はいい? よーい……スタート!」
 私の掛け声で、園児たちがキャッキャと動き回る。

 尻尾はポンポンで使用する細長いビニールテープを洗濯ばさみで止めた私たちの手作り。
 体操服の腰の部分に止めて、ビニールテープを引っ張ると、尻尾をゲット。
 何度でもチャレンジできるように、尻尾はたくさん作って、中央の箱に置いてある。

 友だちの尻尾を追いながら、自分の尻尾にも注意する。決められたルールの中で、体を使って遊ぶのが目的。
 私と麻香先生も、尻尾をつけて一緒に遊ぶ。

 キャーと追いかけて走り回る園児たちは、元気いっぱい。
 一緒に遊んでいると、エネルギーをもらえて、私も元気になれる。
 子供のパワーってすごい、と気づかされることがたくさんある。

「取った!」
 背後から声が聞こえてお尻に手をやると、私の尻尾がなくなっていた。
 振り返ると、佑斗くんが取った尻尾を掲げていた。

 佑斗くんと律くんのケガは、腫れることなくかさぶたになっていて、数日後には治りそうだった。

「佑斗くん、すごいね」
 へへん、と佑斗くんは得意げに胸を張る。

 でもそんなことしていると、
「取った!」
 忍び足でやってきていた深見翔人くんが取っていく。

「あ! チクショー」
 佑斗くんは悔しがりながら、箱の中の尻尾を取りに行った。
 私も箱から新しい尻尾を取り出して装着。
 また園児たちと遊ぶ。

 アラームが鳴った。
「はーい。休憩」
 はしゃいでいる園児たちに休憩を取ってもらう。
 水分補給をさせたり、呼吸を落ち着かせたり。

 長時間遊んでも飽きてしまうので、五分遊んだら休憩して、再びスタート。それを三回繰り返した。

「終わりでーす。みんなどうだった?」
「たくさん取れたー」と、握りしめた尻尾を見せてくれる子に、「すごいね」と褒めた。

 取れなくて悲しんでいる子には、先生も「取れなかったの」と一緒に残念がった。
 教室に戻って、汗をかいた園児たちの着替えを手伝い、全員が着替えを終えると、昼食の時間になった。

「手を合わせて、いただきます」
 全員で手を合わせて、食事の挨拶。教えていない家庭もあるけれど、ここではきちんと教えている。
 食べるということは、命をいただくということ。
 命に、作ってくれた人に、ありがとう。と、意味も含めて。

 今日の給食は園児の口に合わせた小さくてかわいいミニサイズのハンバーグ・おにぎり・ほうれん草とコーンのソテー・かぼちゃの煮物・豆腐わかめとお味噌汁。
 園児たちには栄養バランスと安全面を考慮しながら、一汁三菜のメニューが考えられている。

 先に麻香先生に食事をとってもらい、私は園児たちを見て回った。

「しっかり噛んで食べようね。もぐもぐもぐもぐ」
 口いっぱいに頬張ってしまう子や、ちゃんと噛まずに飲み込んでしまう子がいる。事故につながらないように、見守り、声をかける。

「せんせー、これ美味しい」
「かぼちゃ美味しかったの。おかわり食べる?」
「食べる」

 配膳したおかずが残っていれば、希望する子にはおかわりをあげる。
「僕も欲しい」
「はーい。ちょっと待っててね」
 かぼちゃは甘いからか、けっこう人気があった。

 食べ終えた麻香先生と交代して、私も昼食をとる。
 私たちは給食じゃなくて、持参。

 働き出した頃はお弁当を作ってきていたけど、食べられない日があったり、疲れもあったりで自炊が辛くなり、すぐにやめてしまった。
 お弁当を作るのは遠足のときぐらい。

 今日はコンビニで買ってきた、梅おにぎり・サラダ・だし巻き卵。
 一緒の給食を食べられたら楽でいいなと思うんだけど、園長の考えで、教諭は持参。

 理由はリスク回避のためだった。
 職員全員が同じものを食べて、万が一食中毒が出てしまった場合、全員がダウンする可能性があるから。
 理由に納得しているので、職員から不満の声を聞いたことはない。私も納得している。

 食事の途中だけれど、お味噌汁をこぼした子が見えて、私の体が反射で動いた。


 次回⇒2.峯山さん、再び
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