前略、お祖母ちゃん ~ええ?! 文通相手はもふもふたち? 私を癒す25通の絵ハガキ~

衿乃 光希

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3章 絵ハガキの交流

2. 十月 芋掘り体験

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 サツマイモのつるをつかんだ本郷剛志くんが、力を込めて、うんしょうんしょと引っ張っている。

「がんばれー、がんばれー」
 私は周囲の園児たちと一緒に、掛け声をかけて剛志くんを応援した。
 お父さんは、剛志くんの後ろで手を出したそうにしながら見守っている。

 やがて根っこが連なったサツマイモが、すこーんと抜けた。

「わー抜けた。すごいね」
「やったー、抜けたー」
 剛志くんは、誇らしそうな笑みを浮かべて、たくさんぶら下がっているサツマイモを持ち上げた。

 十月、天候に恵まれたこの日、ひよこ組のみんなは親子で遠足にやってきた。
 旅行用のバスを借りた親子遠足は、二回目。春にも行われた。
 春のときは大きな公園に行って遊具で遊び、お弁当を食べて、お花を見て回った。

 今回の遠足は収穫体験。
 提携農家さんが植えてくれたサツマイモ掘りを体験させてもらう。
 土に触れ、野菜本来の姿を見ることは貴重な体験となるし、苦手を克服した園児もいることから、食育にもなる。

「まい先生、見て見て」
 大きなサツマイモを抱えてやってきたのは、並木遥香ちゃん。

「わあ! 大きいのが採れたね」
 見せに来てくれたサツマイモは、遥香ちゃんの顔ぐらい大きい。

「何作ってもらおうか」
「うーんとね、甘くて、黒いつぶつぶしてるのがついてるの作ってもらうの」

 やや舌足らずなしゃべり方がかわいい。
 甘くて、黒いつぶつぶ……黒ゴマだろうか。スイートポテトか、大学芋かな。

「この大きさだったら、たくさん作ってもらえるね」
「うん!」
 遥香ちゃんは太陽のような笑顔で頷き、サツマイモを抱えてお母さんの元に走っていった。

 サツマイモの収穫のあとは、お弁当の時間。レジャーシートを広げ、家族単位だったり仲の良い園児と親御さんが集まったりと、思い思いの場所で楽しく過ごしていた。

 食事を終えると、農家さんが飼っているニワトリとウサギを見に行った。
 柵の外からたくさんの園児たちに覗かれたニワトリが、ココココと鳴きながら落ち着きなさそうに動き回っている。

「あ! たまご?」
「どれ? 見えない」

 平飼い養鶏という、地面でニワトリを飼っているため、ニワトリの足元に卵が落ちている。それを見つけた園児が指を差し、興味を持った子が覗き込もうとしていた。

「まい先生。ウサギの赤ちゃんいる!」
 ウサギ小屋では赤ちゃんウサギが園児たちの心をつかみ、大人気だった。

「ほんとだ。かわいいね」
 ほわほわした毛の仔ウサギ同士で遊んでいたり、ぽーっとしていたり。
 とてもかわいくて、私も園児たちと一緒になって覗き込んだ。

「農家さんに、お礼を言いましょう」
「ありがとう、ございました」

 帰りのバスに乗り込む前に、みんなで農家さんにお礼を伝え、焼きあがったサツマイモをお土産にもらった。
 バスの中は香ばしいサツマイモの香りが満ちていた。

 収穫したサツマイモは、三日ほど経ってから調理した方が美味しくなりますよ、と事前に保護者さんに伝えておいたけれど、幼稚園から帰る時にも繰り返した。
 園児たちが頑張って収穫したものだから、美味しい状態で食べてもらいたい。

 今日の収穫には、宿題として作ったものを写真に撮り、連絡用の端末に送信をお願いした。
 数日後、続々と届いたサツマイモ料理の写真を印刷し、授業に使った。

 自分の手で掘ったサツマイモが、スイートポテトや大学芋、甘露煮などのスイーツ系や、サツマイモご飯、天ぷらやサラダなどのおかず系と、さまざまな料理に変身することを知り、また同じ名前の料理でも作る人によって形が違い、味や触感も違うんだよ、という勉強をしてもらった。

 例えばスイートポテト。
 細長い形が多い中、四角だったり、絞ってあったり、カップケーキのようだったり。

 子供たちは、
「これ、お祖母ちゃんが作ってくれたの、美味しかった」
 と自分の家族が作った料理を自慢したり、
「美味しそう」
 とよその家庭の料理に興味を持ったり。

 再来週、クッキング体験をすることになっている。
 ふかすのは私と麻香先生がして、つぶすのを園児たちにしてもらう。ビニール袋に入れて、もみもみしてもらい、つぶれたサツマイモをボウルに集める。
 私たちが牛乳と砂糖を混ぜ合わせ、成型するのは園児たちにおまかせ。

 きっとみんな楽しんでくれるだろう。
 どんな形のスイートポテトが出来上がるのか、私も楽しみにしている。

「来月、このスイートポテトを作るからね。みんな覚えててね」
「はーい」
 元気いっぱいに手が上がる。園児たちの笑顔がきらきらと輝いていた。


 次回⇒幕間:焼き芋
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