前略、お祖母ちゃん ~ええ?! 文通相手はもふもふたち? 私を癒す25通の絵ハガキ~

衿乃 光希

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3章 絵ハガキの交流

幕間:クリスマスカード

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「♪ジングルベージングルベー メリークリスマッス♪」
 居間にて、キツネが上機嫌でクリスマスツリーを描いている。
 ハガキのど真ん中に、どーんともみの木。緑色のクレヨンを使って、もうじき塗り終わるところ。

「♪きょうはたのしい クリスマス 出来た!」
 塗っている最中、キツネは上機嫌でずっと歌っていた。

「やっと終わったのね。永遠に聴かされるのかと思ったわ」
 うんざりした顔つきのウサギが、やれやれと尻を上げた。

「んなわけないだろ。永遠って、オレがずっと浮かれてるみたいじゃねえか」
 ウサギに突っ込みを入れたキツネが、心外そうな顔をした。

「違うの?」
「違うわ。ばあちゃんが歌ってたの思い出したから、歌ってみただけだ」

 キツネが描いたあとに絵を描こうと近寄ってきたウサギが、まじまじとキツネを見つめる。
「それね。あたし何か変だなって思ってたんだけど――」

「な、なんだよ。何が、変なんだよ」
 じっと見られてキツネは慌てた様子で、しどろもどろになった。

「そんな歌詞だった?」
「え?」
「あんたが歌ってる間、もやもやしてたのよ。そんな歌詞じゃなかったわよね」

 歌詞が違うと指摘されて、キツネは何度か瞬きをする。
 それから、さっきまでリピートで歌っていたジングルベルをもう一回歌う。

「♪ジングルベージングルベー メリークリスマッス♪」
「そこよ!」
「どこだよ!」
 ウサギが近くで大声を出したから、キツネも反射で大きな声を上げた。

「メリークリスマスのところよ。そこは何だったっけ? 思い出せないのよ」
 ウサギは思案顔。

「クリスマスはクリスマスだろうが! 小っちゃいツが入ったぐらいで、違うとか細けえなあ、ウサギはよ」
 メリークリスマッスと節をつけて歌っていただけのキツネは、メリークリスマスだと指摘されたと思って文句を言う。

「そんな小さいところ突っつかないわよ。そんな歌詞じゃなかったはず」
 ところがウサギは気にかけなかった。ポイントはそこではなかったようだ。

 するとタヌキが、
「ボク覚えてるよ~」
 とおばあちゃんが使っていた脚付きの座椅子からぽてりと降りて歩いてくる。

「タヌキ、覚えてるの?」
「そこはね、♪すずがなる♪だよ」

「そうよ!」
 思い出したウサギは、歌いだした。
「♪ジングルベージングルベー すずがなる♪ よ。あーすっきりした」
 思案顔が、爽快な顔になっていた。

「あなた、のんびりしてるわりに、記憶力が良いのね」
 隣にやって来たタヌキの顔を、ちょっとだけ尊敬の混ざった目で見つめる。

「オレ、ずっとメリークリスマスって歌ってたぜ。早く言ってくれよ」
 キツネは恥ずかしかったのか、すねるような口調でタヌキに言った。

「キツネが楽しそうだから、いいかなあ~って。歌が止まったら、手も止まるかな~って思ったんだ」
 ぽへっとした笑みをタヌキに向けられ、
「んなわけねえだろ」
 キツネは小さく突っ込みを入れるも、機嫌は直っていた。

「キツネが描き終わったし、歌詞もわかったことだし、タヌキ、あたしたちも描こうよ」
 ウサギは赤い色鉛筆を取って、サンタクロースを描き始める。赤い帽子に赤いローブ。鉛筆を白に替えて、おひげをぐるぐる。
 タヌキは隣で、ラッピングされたプレゼントの箱を描いた。

「サンタってやつは、どうしてプレゼントを配り回ってるんだろうな」
 絵を見ていたキツネが言った。

「知らない。趣味なんじゃないの?」
 サンタを描くことに一生懸命なウサギの返しは、雑かった。

「趣味って。でも楽しそうだよな。プレゼントもらって喜ばねえやつはいねえしよ」

 丸々太った大きな体に黒いベルトを描き終えたウサギが手を止めた。
「そうね。真衣もとっても喜んでいたものね」
 遠い目をして、昔を思い出す。

「真衣は、何もらってたっけな?」
「小さいときに泊まりにきて、サンタさんからのプレゼントが枕元に置いてあったって喜んでたわよね。なんだっけ」
 キツネもウサギも、喜ぶ真衣の姿しか覚えていなかった。

「動物の人形だよ~」
 やはりタヌキが答えた。
「真衣はね~リスがお気に入りだったから~じいちゃんとばあちゃんは、リスの一家をプレゼントしたんだよ~」

「タヌキ、ほんとによく覚えてるわね」
 尊敬のまなざしはどこにいったのか、ウサギの目は変人を見るような視線になっていた。

「えへへへ~」
 褒められたと思ったのか、タヌキは目を細め、口を開けて笑った。

 クリスマスを散りばめた絵ハガキが完成した。

「今月は、真衣からの手紙来ねーのかな」
 青年に化けたキツネが、出しにいくハガキを見ながらぽつりと寂しそうに呟く。

 月に一枚届いていた封筒が、十二月はまだだった。
 ウサギはため息のような息を吐いた。

「忙しいのかもしれないし、ここに手紙が届くことがおかしいって郵便局で止まっているのかもしれないし。あたしたちには知りようがないわね」

「……だな。行ってくる」
「よろしくね」
 ウサギとタヌキは、出ていくキツネを見送った。


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