前略、お祖母ちゃん ~ええ?! 文通相手はもふもふたち? 私を癒す25通の絵ハガキ~

衿乃 光希

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3章 絵ハガキの交流

幕間:お正月の遊び

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「う~、寒い寒い~」
 ポストを覗いてから家の中に戻ってきたタヌキは、ぶるりと体を震わせた。

 雪は積もっていないけれど、大晦日からぐっと冷え込み、底冷えのするお正月を迎えた。
 戻ってきたタヌキは、こたつの中に入る。
 三匹は集まって、こたつの中に潜り込んでいた。
 電気は通っていないけど、こたつ布団が掛かったままなので、三匹が集まると暖まる。

「おばあちゃんのおせち、食べたいわねえ」
 ウサギが思い出すようにしみじみと言った。

「栗きんとん、旨かったなあ」
 キツネがじゅるりと涎を垂らす。

「ボクは伊達巻が好きだな~」
 うっとりするタヌキ。

「あたしはお餅が好きだわ」
「おせちに入ってねえじゃねえか」
 ウサギからおせちの話題を振っておきながら、お餅が好きと言ったウサギに、キツネの軽い突っ込みが入る。

「そうだったわね。だったら黒豆と数の子が好きだわ」
「それも旨いなあ」
 三匹はだらだらと寝正月をしていたが、ウサギがはっ、と瞼を開けた。

「タヌキ、年賀状は?」
「来てなかったよ~」
「残念だわ。来ないのかしら」
 頭を起こしていたウサギは再び横になった。

「真衣からの手紙がないと、寂しいわね」
 こたつの中に、ぽつりと言葉が落ちた。

 真衣からの年賀状は一月三日に無事に到着し、ポストを見に行ったウサギは歓喜で飛び跳ねながら、戻ってきた。

「届いた。届いたわよー」
「本当か!」
「ほんと~? やった~」
 キツネもタヌキも、こたつから飛び出した。

「早く開けろよ」
「待ってなさいよ」
 ウサギが前歯を使って封を開けるのを、急かす。

「開いたわ。読むわね」
 ウサギは真衣からの年賀状を読み上げた。

「真衣、クリスマスカード喜んでくれたんだな」
 キツネが嬉しそうに、はしゃいだ声を上げる。

「リスの人形、まだ大切に持っていたのね」
 ウサギはぐずっと鼻を鳴らした。感極まっているのだろうか。

「でも、ボクたちのことは、覚えてないね~」
「そうなのよ。私たちの自画像描いてあるのに、思い出してもらえてないわね」
 タヌキの指摘に、ウサギの涙がぴたっと止まる。

「二十年ぐらい前のことなんて、記憶の奥に奥にしまい込まれているんだろうさ」
 キツネは意外にもカラッとしている。
「オレもよく忘れるから、気持ちわかるよ」と続けた。

 ウサギはしょぼんとうなだれる。
「真衣は小学校の高学年頃には、あたしたちのこと見えなくなっていたもんね。おばあちゃんは見えていたのに」
 キツネはウサギの頭にぽんと手を乗せた。

「大人になったら忘れちまうんだよ。みんなそうだった」
 遊びに来ていた近所の子供たちも、それまで遊んでいた三匹のことが見えなくなったり、忘れてしまったり。次第にこの家からも、足が遠のいていった。

 ウサギの鼻が再びぐずぐずと鳴る。
「絵ハガキ描こうぜ。いつか思い出してもらえるようにさ」
 頭をぽんぽんと叩かれたウサギは、頭を振ってキツネの手を振り払った。

「重いのよ。キツネの手は」
「元気になったな。それでこそ、オレたちのリーダーだ」
 にししとキツネが笑った。

「いつから、あたしはあなたたちのリーダーになったのよ」
 ウサギはキツネの言葉を否定しながらも、声の調子は嬉しそうだった。

「まあいいわ。今回は何を描く」
「そりゃ、決まってんだろ」
「お正月遊びだね~」

 ハガキを床に置き、色鉛筆を手に取った。
「あたしは福笑い好きだったの。とんでもない顔に仕上がって楽しかった」
 ウサギは自分が福笑いを楽しんでいる絵を描いた。

「オレはコマ回しだな。じいちゃんが技繰り出してて、かっこよかったんだ」
 キツネはコマと自分を描く。

「ボクはね~凧揚げが好きだった~」
 タヌキは凧を揚げる自分を描いた。
 いつの日か、真衣に自分たちを思い出してもらえることを願って。



 次回⇒6.お正月の遊び
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