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11.夢じゃなかった
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アリサさんはリュックからお財布を取り出して、修理代金を支払った。
もしかして、おこづかいから払ったのかな。
それから修理をしたじいじに何度もお礼を伝えた。
こんなに気持ちがたくさん込められたお礼を言われて、じいじが喜ばないはずがない。にこやかに微笑んで、帰っていく早瀬さん母娘を見送った。
残りの朝食を食べ終わって、ばあばにお皿を渡すと、僕は読書感想文用の本を広げた。
自宅学習をしている僕は、お母さんから宿題を渡されている。学校で勉強をしない代わりに、家で勉強をするようにと。
僕も勉強は必要だとわかっているから毎日、宿題に向かっている。
今は国語。
僕は読書が好きだし、感想文を書くのも嫌いじゃない。だからクラスのほとんどの子が嫌がる読書感想文も苦じゃない。
でも、今日は内容が頭に入ってこなかった。さっきからずっと同じところばかり読んでいた。
あの不思議な体験のことを思い出して、心臓がどきどきと音を立てて、落ち着かないからだ。
アリサさんと話をして、僕は確信した。
あれはただの夢じゃなかったんだ。
おばあさんの話、虹色のトンネルで見た、アリサさんの映像。
さっきアリサさんが話してくれたことと、一致する。
僕は、祖母と孫の愛情の物語を見に行ったんだ。3匹の幽霊犬たちに連れられて。
どうしてなのかはわからないけれど。
お話の中でしか体験できないことを、僕はしたんだよ。って誰かに話したい。
だけど、僕と犬たちとのヒミツにすることにした。
信じてもらえないよ、って僕の中にいる冷静な僕がドンと出てきたから。
(ヒナタ、どうしたの?)
足元からヒメの声がして見下ろすと、心配そうに僕を見上げていた。
「なんでもないよ」
小声で返して、にこりと笑ってみせると、ヒメはふわりとジャンプして、僕の膝の上に乗った。
ヒメの体はやっぱり透明で、体温も体重も感じない。
これも非日常なんだよな、とヒメの真っ白い後頭部を見ながら考える。
生きているときは、こんな風にしてもらえたことがなかった。
僕たちが帰省すると、キャンキャン吠えて威嚇してきた。
撫でたくても、噛まれるかもと思うと怖くて、触れられなかった。
ヒメはじいじとばあばにしか懐かなかった。
あ、でも、と僕は思い出した。
たった一度だけ、ヒメが僕に寄り添ってくれたことがあった。
打ち上げ花火の音がボーンボボーンと響いて、驚いたヒナが、僕の膝に乗ってきたんだ。
近くにじいじもばあばもいなかったから、慌ててたんだろうな。
僕に甘えてくれたことが嬉しくて、ヒナがとても愛おしかった。
すぐにじいじが戻ってきて、ヒナは僕の膝から降りてしまったんだけど。
不思議な世界で感じたヒナの体温を思い出して、懐かしく思っていると、
(負けないぞ)
(ボクだって)
騒がしい声が聞こえてきた。
声の方に顔を向けると、モモタとコタローが床でワンプロをしていた。
お腹を見せたコタローの上から、モモタがビシビシと叩いたり、噛もうとしたり。
コタローも負けるもんかと手足をバタつかせて抵抗していた。
コタローが負けそうに見えたけど、攻守入れ替わって、モモタが下になり、抵抗している。
無邪気で、かわいい、犬たち。
思わず、ふふっと笑いが漏れてしまった。
「陽向くん、どうしたの? おもしろいことでもあった?」
ばあばに言われて、僕はあっ、しまった、と心の中で思う。
「なんでもないよ。思い出し笑い」
「そう。笑えるのは楽しい証拠」
ごまかしを信じてくれたばあばが、歌を歌うみたいに節をつけて言った。
僕は読んでいた本を手に取った。
でもワンプロが見たくて、読んでるフリで、こっそり床に目を向けた。
もしかして、おこづかいから払ったのかな。
それから修理をしたじいじに何度もお礼を伝えた。
こんなに気持ちがたくさん込められたお礼を言われて、じいじが喜ばないはずがない。にこやかに微笑んで、帰っていく早瀬さん母娘を見送った。
残りの朝食を食べ終わって、ばあばにお皿を渡すと、僕は読書感想文用の本を広げた。
自宅学習をしている僕は、お母さんから宿題を渡されている。学校で勉強をしない代わりに、家で勉強をするようにと。
僕も勉強は必要だとわかっているから毎日、宿題に向かっている。
今は国語。
僕は読書が好きだし、感想文を書くのも嫌いじゃない。だからクラスのほとんどの子が嫌がる読書感想文も苦じゃない。
でも、今日は内容が頭に入ってこなかった。さっきからずっと同じところばかり読んでいた。
あの不思議な体験のことを思い出して、心臓がどきどきと音を立てて、落ち着かないからだ。
アリサさんと話をして、僕は確信した。
あれはただの夢じゃなかったんだ。
おばあさんの話、虹色のトンネルで見た、アリサさんの映像。
さっきアリサさんが話してくれたことと、一致する。
僕は、祖母と孫の愛情の物語を見に行ったんだ。3匹の幽霊犬たちに連れられて。
どうしてなのかはわからないけれど。
お話の中でしか体験できないことを、僕はしたんだよ。って誰かに話したい。
だけど、僕と犬たちとのヒミツにすることにした。
信じてもらえないよ、って僕の中にいる冷静な僕がドンと出てきたから。
(ヒナタ、どうしたの?)
足元からヒメの声がして見下ろすと、心配そうに僕を見上げていた。
「なんでもないよ」
小声で返して、にこりと笑ってみせると、ヒメはふわりとジャンプして、僕の膝の上に乗った。
ヒメの体はやっぱり透明で、体温も体重も感じない。
これも非日常なんだよな、とヒメの真っ白い後頭部を見ながら考える。
生きているときは、こんな風にしてもらえたことがなかった。
僕たちが帰省すると、キャンキャン吠えて威嚇してきた。
撫でたくても、噛まれるかもと思うと怖くて、触れられなかった。
ヒメはじいじとばあばにしか懐かなかった。
あ、でも、と僕は思い出した。
たった一度だけ、ヒメが僕に寄り添ってくれたことがあった。
打ち上げ花火の音がボーンボボーンと響いて、驚いたヒナが、僕の膝に乗ってきたんだ。
近くにじいじもばあばもいなかったから、慌ててたんだろうな。
僕に甘えてくれたことが嬉しくて、ヒナがとても愛おしかった。
すぐにじいじが戻ってきて、ヒナは僕の膝から降りてしまったんだけど。
不思議な世界で感じたヒナの体温を思い出して、懐かしく思っていると、
(負けないぞ)
(ボクだって)
騒がしい声が聞こえてきた。
声の方に顔を向けると、モモタとコタローが床でワンプロをしていた。
お腹を見せたコタローの上から、モモタがビシビシと叩いたり、噛もうとしたり。
コタローも負けるもんかと手足をバタつかせて抵抗していた。
コタローが負けそうに見えたけど、攻守入れ替わって、モモタが下になり、抵抗している。
無邪気で、かわいい、犬たち。
思わず、ふふっと笑いが漏れてしまった。
「陽向くん、どうしたの? おもしろいことでもあった?」
ばあばに言われて、僕はあっ、しまった、と心の中で思う。
「なんでもないよ。思い出し笑い」
「そう。笑えるのは楽しい証拠」
ごまかしを信じてくれたばあばが、歌を歌うみたいに節をつけて言った。
僕は読んでいた本を手に取った。
でもワンプロが見たくて、読んでるフリで、こっそり床に目を向けた。
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