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24話 篤志叔父さん
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「どういうこと?」
僕に向けられる目に、少し怒りの感情が見える。いつも笑っている円花さんでも、腹を立てることがあるんだ。
「叔父さんから聞いたんだけど、僕も詳しくは知らないんだ。霊感があるのと関係があるらしい」
円花さんが戸惑った表情で、首を傾ける。
「霊感体質があれば、過去に戻ってやり直すことができる力があるらしいんだ。自分のために使ってもいいし、他人のために使ってもいい。叔父さんはその力で叔母さんのピンチを救ったらしい」
「本当の話なの?」
「わからない。でも、嘘を吐く人じゃないから」
「とても信じられない話だけど。でももし、可能なら、私は生き返りたい」
力強い言い方。目から怒りの感情は消えて、期待の光が宿る。
僕も、円花さんに生き返って欲しい。
僕は、円花さんが好きだ。
円花さんのためなら、何でもしてあげたい。
そして叶うなら、円花さんに触れたい。
「叔父さんに、詳しい話を訊きに行こう」
僕はスマホを取り出し、叔父さんに電話をする。
すぐに繋がった叔父さんに事情を説明し、すぐにでも話がしたいとお願いした。
明日、眞紗美叔母さんが不在だからと、叔父さん宅にお邪魔することになった。
「いらっしゃい。上がって」
朝、叔父さんの自宅マンションにやってきた。
「お邪魔します」
円花さんと二人。
ダイニングテーブルに叔父さんと向かい合って座る。円花さんは僕の隣に座った。
「彼女に話したということだったね」
「うん。可能なら生き返らせたいんだ」
「私は小清水円花といいます。お話は可能ですか」
叔父さんの視線は円花さんに向いている。けれど、首を横に振った。
「すまない。姿は見えていて、何か言おうとしているのはわかるんだが、声は聞こえない。祐嗣くん、彼女は何を言っているのかな」
叔父さんは円花さんから僕に視線を移した。
「自己紹介だよ。彼女は小清水円花さん。15歳だよ」
「15歳でその姿に。一中の制服だから、もしかしてと思ったんだけど。それは、その‥‥‥お悔やみを申し上げます」
「真面目かよ」
僕が突っ込むと、円花さんは笑った。叔父さんも、釣られたのか笑う。
「あなたは、記憶を失っているということだったね。すべて思い出せたのかな」
「すべてはないです。死因はわかりません」
円花さんが話すのを、僕が叔父さんに伝える。
「それ以外は、思い出せているということだね。未練はあるのかな」
「未練‥‥‥わかりません。でも、未練しかないです」
「未練しかない、か」
叔父さんが黙った。何かを考えている。
アイスコーヒーで口を湿らせてから、口を開いた。
「まずは叔父さんの経験から話しをするよ。それが一番わかってもらえるだろうから」
僕はこくんと唾を飲み込んだ。円花さんの希望に繋がる話を。
それは叔父さんが中学3年の1月のことだった。
プラモ屋に行こうとしていた叔父さんが、クラスメイトだった眞紗美叔母さんと会った。
叔母さんは泣いていた。
気になった叔父さんは声をかけた。
叔母さんはその日、高校の推薦入試を受けるはずだったのに、電車が人身事故で遅延した。受験時間を大幅に越えて到着し、叔母さんは試験を受けることができなかった。
叔母さんはバレリーナになるために、バレエを専門的に学べる高校を希望していた。
授業を受けたい先生がいる、とても行きたい学校だったのに。もっと早く家を出ればよかったと、悔しがっていた。事故への恨み言ではなく、ひたすら自分を責めていた。
眞紗美叔母さんは、当時の叔父さんにとって憧れの人だった。
付き合いと思えないほど高嶺の花だったけど、ひそかに憧れていた。
夢を叶えて欲しいと願った叔父さんは、力を使って過去に戻った。
次回⇒24話 一族の力
僕に向けられる目に、少し怒りの感情が見える。いつも笑っている円花さんでも、腹を立てることがあるんだ。
「叔父さんから聞いたんだけど、僕も詳しくは知らないんだ。霊感があるのと関係があるらしい」
円花さんが戸惑った表情で、首を傾ける。
「霊感体質があれば、過去に戻ってやり直すことができる力があるらしいんだ。自分のために使ってもいいし、他人のために使ってもいい。叔父さんはその力で叔母さんのピンチを救ったらしい」
「本当の話なの?」
「わからない。でも、嘘を吐く人じゃないから」
「とても信じられない話だけど。でももし、可能なら、私は生き返りたい」
力強い言い方。目から怒りの感情は消えて、期待の光が宿る。
僕も、円花さんに生き返って欲しい。
僕は、円花さんが好きだ。
円花さんのためなら、何でもしてあげたい。
そして叶うなら、円花さんに触れたい。
「叔父さんに、詳しい話を訊きに行こう」
僕はスマホを取り出し、叔父さんに電話をする。
すぐに繋がった叔父さんに事情を説明し、すぐにでも話がしたいとお願いした。
明日、眞紗美叔母さんが不在だからと、叔父さん宅にお邪魔することになった。
「いらっしゃい。上がって」
朝、叔父さんの自宅マンションにやってきた。
「お邪魔します」
円花さんと二人。
ダイニングテーブルに叔父さんと向かい合って座る。円花さんは僕の隣に座った。
「彼女に話したということだったね」
「うん。可能なら生き返らせたいんだ」
「私は小清水円花といいます。お話は可能ですか」
叔父さんの視線は円花さんに向いている。けれど、首を横に振った。
「すまない。姿は見えていて、何か言おうとしているのはわかるんだが、声は聞こえない。祐嗣くん、彼女は何を言っているのかな」
叔父さんは円花さんから僕に視線を移した。
「自己紹介だよ。彼女は小清水円花さん。15歳だよ」
「15歳でその姿に。一中の制服だから、もしかしてと思ったんだけど。それは、その‥‥‥お悔やみを申し上げます」
「真面目かよ」
僕が突っ込むと、円花さんは笑った。叔父さんも、釣られたのか笑う。
「あなたは、記憶を失っているということだったね。すべて思い出せたのかな」
「すべてはないです。死因はわかりません」
円花さんが話すのを、僕が叔父さんに伝える。
「それ以外は、思い出せているということだね。未練はあるのかな」
「未練‥‥‥わかりません。でも、未練しかないです」
「未練しかない、か」
叔父さんが黙った。何かを考えている。
アイスコーヒーで口を湿らせてから、口を開いた。
「まずは叔父さんの経験から話しをするよ。それが一番わかってもらえるだろうから」
僕はこくんと唾を飲み込んだ。円花さんの希望に繋がる話を。
それは叔父さんが中学3年の1月のことだった。
プラモ屋に行こうとしていた叔父さんが、クラスメイトだった眞紗美叔母さんと会った。
叔母さんは泣いていた。
気になった叔父さんは声をかけた。
叔母さんはその日、高校の推薦入試を受けるはずだったのに、電車が人身事故で遅延した。受験時間を大幅に越えて到着し、叔母さんは試験を受けることができなかった。
叔母さんはバレリーナになるために、バレエを専門的に学べる高校を希望していた。
授業を受けたい先生がいる、とても行きたい学校だったのに。もっと早く家を出ればよかったと、悔しがっていた。事故への恨み言ではなく、ひたすら自分を責めていた。
眞紗美叔母さんは、当時の叔父さんにとって憧れの人だった。
付き合いと思えないほど高嶺の花だったけど、ひそかに憧れていた。
夢を叶えて欲しいと願った叔父さんは、力を使って過去に戻った。
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