姫様を幸せにするために恋愛フラグを回避しまくります!

夕闇蒼馬

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番外編 乙女ゲームの世界なのでクリスマスイブもあるんです

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 突然だが、この世界は乙女ゲームだ。
 そして今日はクリスマス。
 ――そう、乙女ゲームであるこの世界にも、クリスマスイベントが存在するのだ。
 これは私がアステアに行く前のクリスマスイブ、そしてクリスマスのお話――。

 ◆◆◆

「アイリス」
「はい?」

 姫様のお茶の準備をしていると、姫様に声をかけられた。

「明日はクリスマスね」
「そうですね」
「プレゼントの準備はした?」
「いいえ」
「そうよね……なら、わたしが仕事を終わらせたら一緒に街でプレゼントを探しに行きましょ?」
「えぇ、是非行きましょう!」

 ――ということで私は姫様と一緒に街へ行くことになったのだが……。

「何故お前までいるんだ、ディラス!」

 思わず声を荒らげると、ソイツ――ディラスは特に悪びれる様子もなく、「だってオレ、姫様の護衛だし」と言いやがった。

「護衛はわたくしひとりで十分です。それくらいあなたは承知していると思っていましたが?」
「ち、違うのよアイリス。ディラスはわたしが誘ったの。……その、一緒に出かけることって滅多にないから、たまにはと思って…………」

 少し顔を赤くしながら私に弁明する姫様。……うむ、今日も可愛い。

「……そういうことでしたら。姫様の可愛さに免じて許しますけど、今度はわたくしと姫様のふたりっきりでデートするので貴様はついてくるな……失礼、ついてこないでいただけませんか」
「こっわ……姫様のことになるとアイリスちゃんってかなり怖いよね……」

 そりゃそうだろう、私は姫様を幸せにするために、そして姫様が大好きすぎてこの世界に転生してきたのだ。そうなるのも自然だろう。

「……さ、着きましたわ。さぁアイリス、一緒にプレゼントを探しましょう!」
「はいっ!」

 ――私が姫様の「一緒に」という言葉に目を輝かせていると、後ろの方でボソッと「……猫っ被り」と聞こえたので後ろ蹴りしておいた。

 ◆◆◆

 最初に入ったのは雑貨屋だった。女物も男物も充実した店だった。
 適当に色々手に取っていると、ひとつ目を引くものがあった。

「アイリスちゃん、それ誰に買うの?」
「……あなたには関係の無いことです」

 私が手にしたのは、剣のさやにつける紐だった。金と碧のグラデーションが誰かを彷彿とさせるものだったので思わず手にしたものなのだが……まぁ、日頃姫様を守ってくれているお礼として渡しておこう。

 剣紐をカゴに入れ、店内を見て回る。
「……あ、これもいい」
 私が手にしたのは白色の髪紐だった。彼は黒髪黒目なので白が映えるだろうし、薬の研究をしている時に髪が邪魔そうだったのでどうかと思ったのだ。これもカゴに入れる。

 ハーブの種(ハーブに妙なくらい入れ込んでいるドドリーに)、計量器(壊れかけていると話を聞いたのでカルラに)、バニラエッセンスなどのお菓子の材料(美味しいお菓子への投資のため料理人たちに)、ピンクと白のチェック柄のシュシュ(友達になったツインテールのルーナに)は決まったのだが、他――姫様とヴェロールが決まらない。

「……姫様は必須として、ヴェロールの分いるかな……」

 そう呟いたら、それを耳ざとく聞いたディラスがギョッとしたようにこちらを向いた。

「えっ、まさかヴェロールにはあげないつもり?なのに他のメンツは貰える……って、あとが怖いからヴェロールの分も買ってあげて。これは本当、切実に」

 と懇願されてしまった。ヴェロールは顔がいいんだから私以外からも貰えるだろうに。それに神官長だから教会の人からも貰えるだろうし。わざわざ私があげる理由なんて……

「そもそもあなたにあげる気なんてさらさら……あ、」

 それは十字架をモチーフにしたネックレスだった。いや別に、誰かにあげようとかそういうものではないのだけれど……カゴに入れた。

「……へぇー、そんなこと言いつつちゃんと買ってあげるんだね」
「別にこれは誰か特定の人にあげようとか、そんなつもりではありませんので」
「ふぅん」

 そんな応酬をし、私は本腰を入れて姫様のプレゼントを探すことにしたのだが――

「姫様が尊すぎて姫様に贈るものが思いつかない!」

 ……そう、高貴な姫様がつける、あるいは使うものを私ごときが選んでいいのか。これが問題だった。

「そう固くならなくても、アイリスちゃんが姫様に何をあげたいか考えればいいんだよ。姫様はアイリスちゃんのこと信頼してるわけだし、何選んでも文句は言わずに使ってくれると思うよ」

 なるほど、ディラスはそう思うわけか。

「…………なんで貴様がわたくしについてきてるんですか、姫様の護衛なのでしょう!?」

 つい自然に応酬していたが、なぜこいつが私と一緒に行動しているんだ。

「え、だって姫様はプレゼント決まったからって店内歩き回ってるだけだし」
「んなっ!」

 姫様はもう決めたのか!これは急がねば……!

「急がなくてもいいわよ。わたしも見たいものがたくさんあるから、ゆっくり決めてちょうだい」
「あ、ありがとうございます!」

 姫様が尊い。

 ……何はともあれ、姫様の分だ。
 あ、コレいいかも。このイヤリング。姫様はたくさんアクセサリーを持っているから要らないかもしれないけど、これは姫様に付けてもらいたい……なんて不敬か。まぁカゴに入れるんだけど。

 全員分決まったところで、私はレジへ向かう。
「お会計お願いします。全部クリスマス包装で」
 ……ちなみに合計金額は、私の月給の半分くらいだった。これから倹約生活だ。

 ◆◆◆

「今日はついてきてくれてありがとう、アイリス」
「いえいえ、滅相もない。わたくしこそ誘っていただきありがとうございました」

 姫様を部屋まで送り、私は自室に帰った。

 明日はクリスマス。私も貰えるかな、プレゼント。
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