夜くらいゆっくり眠らせろ

空夜 喜雨

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2人目 追いかけても届かない

現実をみるときである

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ギターを買ってもらった。

いつも頑張っている御褒美だよと、母親が高校1年生の春の誕生日に買ってくれた。

何度も練習して、小さな高校の小さな部活に入った。楽しくてしょうがなかった。

「楽しそうなあなたをみているのが、お母さんの楽しみなの。」

お母さんは笑ってくれていた。
何度も、何度も。
失敗して、成功して。
友人と笑いあって。

部活を引退しても、弾き続けた。


あの日の夏。進学へと皆がさらに本腰をいれる頃。
三者面談があった。

「お母さん、大学は…」

その前に音楽に関係するところに行きたい、と言おうと提出用のプリントを持ってお母さんと向かい合った。

お母さんは、いつもの優しくて柔らかい笑顔だった。

「好きなところに行きなさい。」

あぁ本当に。
私のことをわかってくれているお母さんだ。

「趣味のギターはしばらく止めないとね。受験に本腰をいれないといけないものね。息抜きがてら、たまにはいいかもね。」

「おか…」

「だって、昔からの夢でしょう?教師になるんでしょ?」

偽りなき笑顔だった。

「私、音楽をやりたい。」

その日から、お母さんは私に笑顔を向けてくれはしなかった。
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