転生できずに地縛霊のままなんですけど……

朝羽ふる

文字の大きさ
8 / 39
東の大陸

異世界居酒屋ツクモ、営業中<2>

しおりを挟む
わたしちち、63だい皇帝こうていファリク・ウル・エスクリムジは不治ふじやまいにかかり、余命よめいながくないことをさとった。そこで昨年さくねん後継者こうけいしゃめるために『選帝せんてい闘儀とうぎ』を開催かいさいしたのだ。参加さんかした皇子皇女おうじおうじょわたしふくめて八人はちにんだ」

 ヒュリアによると『選帝せんてい闘儀とうぎ』では、まず皇帝こうていになりたい皇子おうじ皇女おうじょたたかいます。
 優勝者ゆうしょうには、シードけん皇后こうごう息子むすこ、つまり太子たいしへの挑戦権ちょうせんけんあたえられます。
 そして優勝者ゆうしょうしゃ太子たいしたたかい、ったほうつぎ皇帝こうていになるのだそうです。

太子たいしである義弟ぎていメシフは、出自しゅつじめぐまれただけの愚鈍ぐどんであり、わたしてきではなかった。当然とうぜんわたしはメシフにち、皇帝権こうていけん獲得かくとくした。しかし皇后こうごうケメットは自分じぶん息子むすこ皇帝こうていとするために姦計かんけいをめぐらせ、貴族きぞく宰相さいしょうをてなづけ、さらにわたし排斥はいせきするためのおく用意よういしていた……」

 三年前さんねんまえに、ヒュリアのおかあさんでまえ皇后こうごうだったジュムレさんが流行はややまいくなり、つぎ皇后こうごうえらばれたのが、メシフのははであるケメットだそうです。
 もしジュムレさんがくなっていなければ、太子たいし資格しかくはヒュリアがっていたわけです。

 ヒュリアはワインを一気飲いっきのみして、いた酒盃ゴブレットをテーブルにたたきつけました。
 この時点じてんで、もうワインのびん二本にほんからになっているのです。

「ほら、ツクモ、はやくげ!」

 目元めもとあかくしたヒュリアが、きらめく赤銅色しゃくどういろひとみぼくをにらみます。
 つめられるのはうれしいんですけど、酒癖さけぐせがちょっと……。

「いや、おきゃくさん、もうこのへんでやめといたほうが……」

わたしませるさけいというのか! おまえわたし味方みかたをするとっただろう! さけさないなら、もうなにはなさんからなっ!」

「しょうがないなぁ……」

 渋々しぶしぶ、『倉庫そうこ』からワインをもう一本いっぽん取出とりだし、酒盃ゴブレットそそぎます。
 どうも、からざけっぽいんですよねぇ。

「よし、いいこころがけだ」

 ヒュリアはそそがれるワインを、ニヤニヤしながらつめています。
 そして一口ひとくちむと、おおきくいききました。

「やはりさけいな。こころかるくなる」

「えーと、それではなしつづきだけど、皇后こうごうおくってのは、なんなんだい?」

「ああ、それこそが、このひとみというわけだ……」

 ヒュリアはまれたときから、赤銅色しゃくどういろひとみかくすために、『瞳膜どうまく』を使つかっていました。
 いわゆる、カラーコンタクトみたいなもののようです。
 そのおかげで17さいまでバレることなく、普通ふつう皇女こうじょとして成長せいちょうできたのだとか。

皇后こうごうは、わたし新皇帝しんこうていとしてみとめられる戴冠たいかん数日前すうじつまえ秘密ひみつ暴露ばくろした。やつは、ひとみかくしていたことが、国家こっかへの重大じゅうだい背信行為はいしんこういであるとし、反逆罪はんぎゃくざいによりわたし投獄とうごくしたのだ」

 ケメットは、ヒュリアの瞳膜どうまくつくっていた錬金術師れんきんじゅつしつかまえて拷問ごうもんし、すべてをきだしたらしいです。

 そこで、ふとづきます。

「――ヒュリアっていまいくつなの?」

今年ことしで18になる」

「18……」

 年下とししたかいっ!

 まあ、バシャルの一年いちねん地球ちきゅう一年いちねんおなじかどうかはわからないので、なんともえませんけど。
 かお綺麗きれいって、年上としうええることがよくありますよねぇ。
 あるあるだわ。

 あれ、だったら、お酒飲さけのましてかったのかな。
 おさけ20歳はたちになってから、って日本にほん法律ほうりつってますし。

「バシャルだと、おさけって何歳なんさいからめるの?」

 一応いちおういときましょう。

なにってる。何歳なんさいだろうがめるにまっているだろう」

「そ、そうですか……」

 心配しんぱいしなくてかったのねぇ。
 さすが異世界いせかいですな。

「――でいま帝国ていこくはどうなってるの?」

ちち半年前はんとしまえくなり、メシフが64だい皇帝こうてい即位そくいして新体制しんたいせいによる統治とうちはじまっている。無能むのう皇帝こうていによる政治せいじ貴族達きぞくたちがなんとかささえているという状況じょうきょうだ」

 ヒュリアはまた一気いっきにワインを飲干のみほし、まるでてきであるかのように酒盃ゴブレットをにらみつけます。
 そのかおこわくて、すぐにさけいでしまう、小心者しょうしんもの地縛霊じばくれい……。

 おまえかおほうこわいだろう、っていうご指摘してきかえ言葉ことばもございません。

「――だが、メシフの問題もんだいはその無能むのうさではなく、傲慢ごうまんさにある。やつ軍事力ぐんじりょくによる領土拡大りょうどかくだいをかかげて、周囲しゅういくにへの侵攻しんこう強力きょうりょくにおしすすめている。自分じぶんこそがひがし大陸たいりくにおける唯一ゆいつ支配者しはいしゃとなるべきだとかんがえているのだ。すくいがたいおろものよ」

 現在げんざい帝国ていこくはそのきたにあるアザット連邦国れんぽうこく戦争せんそうしているそうです。

わたし皇帝こうていならば、協調的きょうちょうてき政策せいさくをとり、周囲しゅういくにとの交易こうえきさかんにして、ひがし大陸たいりくすべてのたみ生活せいかつ向上こうじょうしていくようにするだろう。一国いっこくだけがさかえ、くに隷従れいじゅうさせるようなやりかたでは、とおからず破綻はたんするのは必定ひつじょうだ」

たしかに、ヒュリアが皇帝こうていになれば、世界せかい平和へいわになりそうだね」

「そうだろ、そうだろ」

 機嫌きげんくなったヒュリアは、ぼくかたをパンパンたたきます。

「じゃ、率直そっちょくくけど、くに取戻とりもどすための作戦さくせんとかあるのかな?」

い」

 即答そくとうかいっ!

たしかに今日きょうまで、その方策ほうさくかんがえない一日いちにちたりともなかった。しかしなん妙案みょうあんおもいつけていない。われながらなさけないことさ……」

 ヒュリアはかなしげに微笑ほほえみます。

「――ただおおまかな方針ほうしんとして、ケメットとメシフを排除はいじょすることは当然とうぜんなのだが、わたしひとみたいする民衆みんしゅう嫌悪感けんおかん解消かいしょうすることもわすれるわけにはいかないだろうな」

「なるほどねぇ……」

 皇帝こうていになっても、世界せかいほろぼすものじゃあ、くに統治とうちなんてできやしません。
 そこらじゅうで反乱はんらんきそうですもんね。
 こんなとき、諸葛孔明しょかつこうめいやハンニバルだったら、素晴すばらしい作戦さくせんてたんでしょう。

 でも、地縛霊じばくれいで、ログハウスの管理人かんりにんじゃねぇ……。
 しかも使つかえるちから家事全般かじぜんぱんて……。
 一国いっこくをくつがえすなんて、マボロシーってさけびたくなります。
 エクスプロージョンだとか、くろ仔山羊こやぎ召喚しょうかんだとか、すごいスキルがしかった……。

 これからどうしようかかんがえてたら、いつのまにかヒュリアがテーブルに突伏つっぷして寝息ねいきをたてはじめてました。

「おきゃくさん、こんなとこでたら風邪かぜひきますよ。ちゃんと寝床ねどこないと」

「う、うん……」

 返事へんじはしますが、そのままうごこうとしません。
 うでまくらにしてねむるヒュリアの寝顔ねがお可愛かわいらしさに、おもわずホッコリします。
 いまさらながら彼女かのじょ耶卿やきょうになってくれて、ホントかったと実感じっかんします。

 むさくるしいオヤジとか、くちうるさいオバさんだったら、きる気力きりょくせていたでしょう。
 はいはい、もちろん、きてませんけどねっ。 

 となりすわって、寝顔ねがお観察かんさつです。
 ところどころどろよごれてはいますが、プルンとした桃色ももいろくちびる、きめのこまかいおはだながいまつげなど、すべてがととのっております。

 キモい自分じぶんに、ちょっときましたが、欲望よくぼうにはさからえないのです。
 おもいがけずはだかてしまったせいか、興奮気味こうふんぎみなのでありまして。
 ほっぺにキスしたろかという、不適切ふてきせつかんがえもかんでくるわけです。

 しかぁし!
 ぜんエロエネルギーを理性りせいへと相転移そうてんいさせて、おもとどまるのでありますっ!
 敬礼けいれいっ!

 はなしかぎり、いままで相当そうとうキツい日々ひびおくってたんでしょう。
 なのでこれからは、ゆっくりとやすんでもらえるようにしたいものです。

 ちなみに耶代やしろ機能きのうひとつ『休養きゅうよう』には、こんな説明せつめいがされていました。

耶代やしろないねむもの体力たいりょくを、睡眠時間すいみんじかん比例ひれいして回復かいふくするもの。1時間じかんにつき最大値さいだいちの1わり回復かいふくする。ただし外傷がいしょう疾病しっぺい治癒ちゆすることはできない』

 つまり10時間眠じかんねむれば、体力たいりょく完全回復かんぜんかいふくするってわけです。
 明日あしたになれば、身体からだつかれのは、すっかりれてるでしょう。
 でもきず病気びょうきなおらないんですね。

 倉庫そうこから毛布もうふ取出とりだして、ヒュリアの背中せなかにかけます。
 ついさっきころされそうになったとはおもえないやすらかな寝顔ねがおしてます。

 彼女かのじょまもれてるってことなんでしょうかね。
 ちょっとおとことしての自信じしんがついちゃうな。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...