転生できずに地縛霊のままなんですけど……

朝羽ふる

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東の大陸

青の魔人<4>

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 わたしとフェトヒは団長だんちょうそば駈寄かけよる。

 すで四人よにん隊長たいちょうたおされてしまった。 
 ジョルジのちからわたし想像そうぞうはるかにえている。
 3000のへい全滅ぜんめつさせたというのもうなずけた。
 魔導まどうでの攻撃こうげきいが、身体能力しんたいのうりょく防御ぼうぎょりょく異常いじょうたかいのだ。

やつよろいには『四冠ケセド』の魔導まどうつうじない! しかも再生能力さいせいのうりょくもある! 武器主体ぶきしゅたい攻撃こうげき切替きりかえ、深入ふかいりせず包囲ほういしろ! ――わたしがやる! それまで時間じかんかせいでくれ!」

 団長だんちょうこえひびわたった。
 それをいたイスメト、セルカン、ベラトの三人さんにん武器ぶきかまえながら前進ぜんしんし、包囲網ほういもうせばめる。

 三人さんにんかこまれたジョルジは、素早すばや四方しほう見回みまわした。
 まるで動物どうぶつ逃道にげみちさがしていかのようなうごきだ。

魔導まどう完全かんぜん無効化むこうかされるのですか?」

「いや、無効化むこうかではない。減殺げんさいされるのだ。本来ほんらいちから三割さんわりがいいところだ。オメルの『瑾摎きんきゅう』なら、一瞬いっしゅんでジョルジをつぶせたはずだ。それが身体からだおおううだけで、かなりの時間じかんようしていただろう」

「あのよろい効果こうか阻害そがいしていたということですか?」

「そういうことだ。――イドリスのものもおなじなんだ」

 われてみればたしかに、以前見いぜんみた『瑾摎きんきゅう』は、一息ひといきてき埋潰うめつぶしていたがする。
 『四冠ケセド』の魔導まどうつうじないなら、団長以外だんちょういがいもの魔導まどう使物つかいものにならない。
 しかも物理攻撃ぶつりこうげき損傷そんしょうあたえても、再生さいせいされれば意味いみがない。

 つまりたのみは団長だんちょう魔導まどうと、そして、わたし武器ぶきだけということだ。
 団長だんちょう帝国ていこくでも数少かずすくない『三冠ビナル』の魔導師まどうしであり、照応しょうおうする元素げんそかみなりである。

副長ふくちょう、しばらく指揮しきたのむ」

 団長だんちょうは、こしげていた愛用あいよう武器ぶきにとり、じられた。
 すると全身ぜんしんが、ほんのりとあおかがやはじめる。
 充典ドルヨルはいられたのだ。

 団長だんちょう武器ぶき、それは『把剣はけん』とばれる非常ひじょう特殊とくしゅなものである。

 通常つうじょうけんのようなつかはなく、弓形ゆみがたやいばだけで形成けいせいされたけんで、やいばひと前腕ぜんわんほどのながさがある。
 やいば中央ちゅうおうには持手もちてとなるあながあり、そこにゆびれてにぎる。
 つまり、にぎったこぶしうえ弓形ゆみがたやいばっているかたちとなる。

 おも攻撃態様こうげきたいようは、てきなぐるようにることであり、また両端りょうたんにあるするど刃先はさきすこともできる。
 戦術せんじゅつ独特どくとくで、騎士きし一般いっぱんもちいる剣術けんじゅつとはまったことなり、格闘戦かくとうせんにおける拳術けんじゅつ応用おうようしたものだそうだ。

 すきいてげようとするジョルジに、二本にほん短剣たんけんかまえたイスメトが、おそいかかった。
 かれはしりながら、短剣たんけんこおり元素げんそを『沾漸せんぜん』させた。

 こおり元素げんそまとい、しろひか短剣たんけんは、きたえられたはがねさえ容易ようい切裂きりさくことができる。
 また、やいばれた箇所かしょには氷魔導ひょうまどうの『凍砕とうさい』のわざはたらき、部分的ぶぶんてきに、対象たいしょうこおらせ、同時どうじ粉砕ふんさいする。

 さらにイスメトは『亢躰術こうたいじゅつ』の『捷塁しょうるい』のわざ身体速度しんたいそくど上昇じょうしょうさせていた。
 一般いっぱん騎士きしならば身体からだこわしかねないはやさでジョルジに肉迫にくはくし、肉眼にくがんではとらえきれない斬撃ざんげきりつけていく。

 ジョルジはイスメトをつかまえようとするがくぐられ、四方八方しほうはっぽうから斬撃ざんげきびせられた。
 ただそんな激烈げきれつ攻撃こうげきでさえ、ジョルジのあおよろいきずをつけることはできていなかった。

 イスメトが攻撃こうげきから一旦外いったんはずれると、間髪入かんはついれずれず左右さゆうからセルカンとベラトが連携れんけいして攻撃こうげきくわえる。
 風魔導ふうまどう沾漸せんぜんされみどりひかるセルカンのけんには、『剥擂はくらい』のわざはたらいている。
 『剥擂はくらい』をうけた箇所かしょは、かぜ元素げんそえぐりとられ、ふか傷痕きずあとのこるのだが、もちろんあおよろいには効果こうかがない。

 一方いっぽう、ベラトはけんるいながら、時折ときおり至近距離しきんきょりで『炎弾えんだん』を打込うちこんでいるが、やはりこれもうで振払ふりはらわれてしまっていた。
 かれ三人さんにんだけでは、包囲網ほういもうやぶられるのも時間じかん問題もんだいだろう。
 だが四人よにんなら、当然とうぜん三人さんにんよりはなが時間じかんかせげるはずだ。

援護えんごするわ!」

 こしげていた愛用あいよう武器ぶきき、わたし包囲網ほういもうくわわった。
 
 わたしが『誉武式よぶしき』に合格ごうかくし、騎士きしになれた理由りゆう、それは剣術けんじゅつ魔導まどうみとめられたからではない。
 ユルダクルつたわる武器ぶきあつかいに習熟しゅうじゅくしていたからだ。

 その武器ぶきは、『じゅう』とばれている。

 元々もともと魔族まぞく使つかっていた武器ぶきだったが、『災厄さいやくとき以降いこう私達わたしたち人間にんげんつたわった。
 『炸薬さくやく』によってちいさな金属きんぞくたまち、てきたおすもので、弓矢ゆみやよりもはるかかに殺傷力さっしょうりょくたかい。
 
 本来ほんらいならもっとひろまっていていはずなのだが、人間社会にんげんしゃかいには『災厄さいやくとき』のとき出回でまわったったぶんしかのこっていない。
 なぜなら、分解ぶんかい構造こうぞう解析かいせきしてはみたが、成造せいぞうには高度こうど技術ぎじゅつ必要ひつようであり、人間にんげん錬金術師れんきんじゅつしでは再現さいげん不可能ふかのうだということが判明はんめいしたからだ。

 現状げんじょう帝国全体ていこくぜんたい確認かくにんされているじゅうかずは100ちょう未満みまんとされている。
 そのうえ、1000ねんという歳月さいげつ経年劣化けいねんれっかし、武器ぶきとして使物つかいものになるのは、さらにそのいち二割にわり程度ていどなのだ。

 そんな貴重きちょうじゅうひとつが、がユルダクル代々伝だいだいつたわっていた。
 しかも先祖せんぞ手入ていれれが行届いきとどいており、現役げんえき使つかうことができる。

 わたしおさなころ武器愛好家ぶきあいこうかだったちちより、じゅうあつかいの手解てほどきをけ、その仕組しくみみや使用法しようほう精通せいつうしていた。
 またたまについては、資金しきん伝手つてさえあれば西にし大陸たいりくにある黒妖精くろようせいくにザナートから輸入ゆにゅうできたので、射撃しゃげき修練くんれん事欠ことかくことはなかった。

 そしていつしかわたしは、十代前半じゅうだいぜんはんで、直線距離ちょくせんきょりで30クルシュちかはなれたまとにも命中めいちゅうさせることができる技量ぎりょう獲得かくとくしていたのだ。

 しかし、ジョルジのあおよろいたいしては、どんなにじゅう物理的攻撃力ぶつりてきこうげきりょくすぐれているとしても、損傷そんしょうあたえるのはむずかしいだろう。

 ただ、それは通常つうじょう物理攻撃ぶつりこうげきという前提ぜんていでのはなしではある。

 通常つうじょうでない攻撃こうげきなら?
 よろい破壊はかいできるかもしれない。

 近年きんねん、ザナートでは特殊とくしゅ兵器へいき開発かいはつされていた。
 それは『魔導弾まどうだん』とばれるものである。

 武器ぶきなどに沾漸せんぜんされた元素げんそちからは、術者じゅつしゃ恃気エスラルきたり、意志いし中断ちゅうだんされれば、効果こうかくなる。
 しかし魔導弾まどうだん一度いちど沾漸せんぜんさせると、術者じゅつしゃ意志いしから独立どくりつし、数年間すうねんかんそれを保持ほじすることができるのだ。

 これは画期的かっきてきなことである。
 なぜなら、自分じぶんの『冠位ジルヴェ』や元素照応性げんそしょうおうせい制限せいげんされることなく、他人たにん沾漸せんぜんさせた、あらゆる元素げんそたまじゅうつことができるからだ。
 なのでわたしはアザットとのいくさそなえて、魔導弾まどうだん大量たいりょう輸入ゆにゅうしたのだった。

 魔導弾まどうだん具体的ぐたいてき取扱とりあつかかたつぎとおりだ。
 まずあらかじめ『三冠ビナル』でほのお照応性しょうおうせい魔導師まどうしたのんで、魔導弾まどうだんに『三冠ビナル』のほのおちから沾漸せんぜんしてもらっておく。
 そうすれば、わたしのように『四冠ケセド』で照応性しょうおうせいかみなり魔導師まどうしでも、そのたま使つかうことで、自分じぶんより『冠位ジルヴェ』がうえで、照応性しょうおうせいことなる炎魔導えんまどう攻撃こうげきてきくわえることができる、というわけだ。

 六席ろくせきから首席しゅせきまでの勇者ゆうしゃ全員ぜんいん、『三冠ビナル』の魔導師まどうしである。
 ほかにも『三冠ビナル』の魔導師まどうしはいるが、わたししたしくしているのは勇者ゆうしゃうち二人ふたりだけだ。
 一人ひとりはもちろん団長だんちょう、もう一人ひとり二席にせき勇者ゆうしゃである氷魔導ひょうまどう使手つかいて“バクシュ・ルズガルグル”だ。

 バクシュはさくな人物じんぶつで、わたし魔導弾まどうだんの『沾漸せんぜん』をたのむとこころよ引受ひきうけてくれた。
 もちろん団長だんちょうからも雷魔導弾らいまどうだん十分じゅうぶん頂戴ちょうだいしている。  
 なのでいまじゅう回転式弾倉かいてんしきだんそうなかには四発よんぱつ雷魔導弾らいまどうだん一発いっぱつ氷魔導ひょうまどうだんはいっていた。

 きっと、この特殊とくしゅ魔導弾まどうだんという兵器へいきなら、ジョルジに通用つうようするのではないだろうか。

 ベラトがけん突出つきだしながら、身体からだごとジョルジに突進とっしんする。
 剣先けんさきはジョルジのはら直撃ちょくげきするが、よろい硬度こうど表面ひょうめんなめらかさによって上滑うわすべりし、ベラト自身じしんがジョルジにあたまから体当たいあたたりする格好かっこうになった。

 ベラトを身体からだ受止うけとめたジョルジは、んだ両手りょうて背中せなかたたきつける。
 はげしく地面じめんちつけられてくベラト。
 そのあたま踏潰ふみつぶそうとジョルジは右脚みぎあしげた。

 わたしはそれを阻止そしするため、ジョルジのひだりかたった。

 するど銃声じゅうせいもりとどろく。
 銃声じゅうせいかさなるようにジョルジがひくうなった。

 雷魔導弾らいまどうだんよろい破壊はかいし、内側うちがわにあるジョルジの肉体にくたいにまで損傷そんしょうあたえたのだ。
 破壊はかいできたのは、赤子あかご指先ゆびさきほどの範囲はんいではあるが、そこからかすかに飛散とびちるのを確認かくにんした。
 雷魔導らいまどう沾漸せんぜんわざは、『震捶しんすい』とばれ、攻撃部分こうげきぶぶん感電かんでんさせ、破砕はさいするのだ。

 おもったとお魔導弾まどうだん通用つうようした。
 すぐさまわたしは、のこりの雷魔導弾らいまどうだん全弾ぜんだん、できるかぎまとしぼって、ジョルジの左肩ひだりかたんだ。

 連続れんぞくして魔導弾まどうだんたった部分ぶぶん破砕はさいされると、わずかだが先程さきほどよりもあなおおきくひろがる。
 もちろん飛散とびちりょうと、ジョルジの唸声うなりごえおおきくなった。

「イスメト! ひだりかたよろい破壊はかいしたわ、そこをねらって!」

承知しょうち

 イスメトは『捷塁しょうるい』のわざ何度なんど上進じょうしんさせ、さらに速度そくどげ、ジョルジの左側ひだりがわから攻撃こうげきをしかけた。
 『捷塁しょうるい』を一回いっかい上進じょうしんさせるたびに、普段ふだん状態じょうたいから10ぶんの1ずつ速度そくどがっていく。

 れないとむずかしいが、亢躰術こうたいじゅつ使つかたびに、術者じゅつしゃ下腹部かふくぶが、ほのかな薄紫うすむらさきひかりはなつのをることができる。
 なので、下腹部かふくぶ注視ちゅうししていれば、わざ発動はつどうかるのだ。
 
 イスメトはジョルジに急迫きゅうはく左肩ひだりかたあなねらったが、あおよろい一呼吸ひとこきゅうのうちにあな修復しゅうふくしてしまっていた。
 せっかく攻略こうりゃく糸口いとぐちつけたとおもったが、修復しゅうふくはやすぎる。
 これではほどこしようがない。

 絶望的ぜつぼうてき気持きもちになったとき、天佑てんゆうのように団長だんちょうこえこえてきた。

「すまん、たせたな。みなすこやすんでくれ」

 団長だんちょうは、ゆっくりとジョルジのまえすすた。
 ジョルジは、まるでひさしぶりにった知合しりあいのようにちかづいてくる団長だんちょう戸惑とまどい、うごきをめている。
 私達わたしたち啞然あぜんとして、様子ようす見守みまもった。

「ジョルジ・エシャルメン、わたしは、おまえのようなものっていた。――イドリスと皇女おうじょがいないむなしさを、おまえならばたしてくれそうだ……」

 団長だんちょうは、まるであい告白こくはくのように、かたられる。
 わたしこころにジョルジにたいする嫉妬心しっとしんきあがった。

「イドリスのよろいつぶすためにんだわざ、『雷蛇穿らいじゃせん』。おまえためさせてもらう」

 宣告せんこくするやいなや、ゆるやかにひかっていた団長だんちょう全身ぜんしんはげしくかがやいた。
 すると、そのかがやきから紺色こんいろかみなり元素げんそが、こまかいつぶかたち無数むすうし、まわりにかんだ。

 『雷弾らいだん』のわざているがおおきさとかずちがう。
 通常つうじょう元素弾げんそだんは、ひとこぶしほどになるが、そのつぶ指先ゆびさきほどのおおきさしかない。
 もしそれぞれのつぶ通常つうじょう雷弾らいだん匹敵ひってきする威力いりょくっているとするなら、団長だんちょうは『発動はつどう態様たいよう』を相当修練そうとうしゅうれんされたにちがいない。

 だが、それ以上いじょう問題もんだいなのは、あのかずだ。
 きっと数百すうひゃくはあるだろう。
 元素弾げんそだん率導テシュヴィクあやつるには、自分じぶん意志いしをそれぞれのたま配分はいぶんする必要ひつようがある。

 一般いっぱん魔導師まどうしあやつれるのは2、3であり、おおくても5、6限度げんどだろう。
 数百すうひゃく元素弾げんそだん率導テシュヴィクしようとすれば、発狂死はっきょうししても、おかしくないのだ。

 団長だんちょう一体いったいどういう修練しゅうれんをされたのだろうか、想像そうぞうするとおそろしくなる。

 把剣はけんにぎった右腕みきうでたかかかげられる。
 するとらばるようにいていたかみなりつぶは、把剣はけんのすぐうえ宙空ちゅうくうあつまって一列いちれつならび、まるでへびのようにくねりはじめたのだ。
 まさに『雷蛇らいじゃ』である。

 そして、さながら開始かいしげるかねつかのように、団長だんちょうはジョルジにかって右腕みぎうで振下ふりおろした。  
 するとはなたれた紺色こんいろへびは、猛然もうぜん獲物えもの突進とっしんしていったのだ。

 雷蛇らいじゃたたとそうとするジョルジのうでかわしながら素早すばやびまわる。
 しばらくすると、へび翻弄ほんろうされるジョルジに、あせりのいろはじめる。

 それを見計みはからったように、いままでじろぎせずジョルジをつめていた団長だんちょうが、突如とつじょとして攻撃こうげきくわわった。
 団長だんちょう参戦さんせんにより、集中力しゅうちゅうりょくみだされるジョルジ。

 雷蛇らいじゃは、そのこころすき見逃みのがさず、ついにジョルジ右胸みぎむねらいついた。

 わたしはそこで、団長だんちょうがこのわざんだ意図いとおもいたった。

 ジョルジのよろいは『三冠ビナル』の魔導まどうきずつきはするが、すぐに再生さいせいしてしまう。
 といういことは、連続れんぞくおな箇所かしょ元素弾げんそだんつづけて再生さいせい阻止そしすれば、内側うちがわ肉体にくたい確実かくじつ攻撃こうげきすることができる。
 この事実じじつ先程さきほどじゅうでの攻撃こうげき証明しょうめいされている。
 
 さすがは団長だんちょう
 イドリスとのたたかいでよろい弱点じゃくていん見抜みぬいていたのだ。
 おそらくこの状況じょうきょう団長だんちょうおもえがいたとおりの展開てんかいちがいない。

 だが、そうはっても、この魔導まどう常人じょうじんには真似まねできない。
 実行じっこうするには、おそろしいほど強靭きょうじん精神せいしん大量たいりょう恃気エスラル必要ひつようになるからだ。

 かみなりつぶ連続れんぞくして右胸みぎむねおな部分ぶぶんたりつづける。 
 当然とうぜんよろい再生さいせいいつかず、あなひろがりはじめた。
 もちろんへびつぶあたまからじゅんたることでかずらし、ながさがみじかくなっていく。

 ジョルジはくるしげな唸声うなりごえげながらへびつかもうとするが、そのたび団長だんちょう攻撃こうげきをしかけてくるので成功せいこうしていない。

 時間じかんつほど、よろいなかにある肉体にくたいへの影響えいきょうおおきくなっていく。
 皮膚ひふやぶれ、にくをえぐり、あなからがあふれ、地面じめんしたたった。
 
 ジョルジがまた、森全体もりぜんたいるがすほどのたけびをげる。
 しかしそれは、従前じゅうぜんいかりと苛立いらだちからはっせられた威嚇いかくこえではなく、苦痛くつう恐怖きょうふからくる悲鳴ひめいのようにこえた。

 ジョルジは、よろいへびあいだ強引ごういん左手ひだりて差入さしいれる。
 むねたっていたつぶを、左手ひだりて籠手こてふせぐためだ。

 みじかくなった雷蛇らいじゃは、最後さいごちからでジョルジの籠手こてあなけ、消失しょうしつしていった。
 しかし雷蛇らいじゃけたあな掌大てのひらだいにまでひろがり、そこからのぞむね皮膚ひふは、雷魔導らいまどう効果こうかで、け、かれ、ひど有様ありさまになっていた。

わたしかんがえはっ! 間違まちがって! いなかったなっ!」

 『捷塁しょうるい』を一瞬いっしゅん何段階なんだんかい上進じょうしんさせ、攻撃こうげき速度そくど急上昇きゅうじょうしょうさせた団長だんちょうは、両手りょうて把剣はけん正面しょうめんからジョルジに連続れんぞくりつけていく。
 ジョルジは、あまりのはやさについていけず、咄嗟とっさ両前腕りょうぜんわんかおまえ交差こうささせて身体からだまるめ、防御ぼうぎょかためた。

 団長だんちょうは、それをると、唐突とうとつ攻撃こうげき方向ほうこうえて右手みぎて把剣はけん振上ふりあげ、ジョルジのあたまねらった。
 意表いひょうかれたジョルジは、あたままもろうと両腕りょううでをかざす。
 そこにすきまれた。

 右手みぎて攻撃こうげきは、おとりだっのだ。

 つくえこぶしたたくように、左手ひだり把剣はけんはしにある刃先はさきが、まだ再生さいせいしきれていないジョルジの右胸みぎむねあな突刺つきさささる。

 ついに本当ほんとう悲鳴ひめいがジョルジのくちからほとばしった。

 ジョルジは突刺つきささった刃先はさきくために素早すばやく、しゃがみこむ。
 傷口きずぐちから大量たいりょう噴上ふきあがった。

 しゃがんだ状態じょうたいから急速きゅうそく後方回転こうほうかいてん繰返くりかえし、団長だんちょうから距離きょりをとったジョルジは、きびすかえ逃出にげだした。

がすな!」

 団長だんちょう号令ごうれいひびく。
 イスメト、団長だんちょう、セルカン、わたし、フェトヒのじゅんあとった。

 たとえよろい再生さいせいしても、肉体にくたいについたきずなおらない。
 あれだけの噴出ふきだしたのならば、治癒ちゆじゅつをかけないかぎり、よろいなかでも出血しゅっけつつづく。
 ジョルジのちからよわめ、いのちさえあやうくするだろう。
 討伐とうばつ好機こうきである。

 あんじょう、ジョルジのうごきはにぶっていき、はし速度そくど急速きゅうそくちてきていた。
 一方いっぽういかける私達わたしたち攻撃こうげきはげしくなっていった。
 おおきな痛手いたであたえられていないが、消耗しょうもうさせるには充分じゅうぶんだ。

 かなりながあいだ、ジョルジはつづけた。
 だがもりは、どちらにげてもわりはしない。
 どこまでもくらく、どこまでもつめたい。
 げても、げても、ひかりることはない。

 うん見放みはなされた人生じんせいおなじだ。
 最後さいごきつく場所ばしょ墓場はかばである。

 だが、そんなわたし予想よそうはんし、突然とつぜんもりれ、視界しかいひらける。
 ふゆなのにみどりくさしげ野原のはらあらわれたのだ。

 あたたかなひかりそそぐ、その野原のはらおくに、瀟洒しょうしゃ丸太小屋まるたごやっていた。

 丸太小屋まるたごやまえで、一人ひとり女性じょせいけんっている。

 女性じょせいはジョルジと私達わたしたちづくと、けんかまえた。
 わすれるはずのないかがやきがわたし脳裏のうりつらぬく。
 彼女かのじょひとみ赤銅色しゃくどういろひかりはなっていたのだ。

「ヒュリア皇女おうじょ!」

 わたしおもわずさけんだ。
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