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第5章 ぼくの運命の先輩は。

大変まずい状況です1

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「小峰ー、ダメじゃん。俺の友達になんてことしてくれてんだよ」

 カクライ先輩は、ぼくに散々ペコペコと頭を下げていたその人の肩を抱き寄せた。その人は先輩の胸の中で、ゲスな笑みを浮かべている。
 あまりの豹変ぶりに驚きを突き抜けて声も出ない。
 ぼくはワナワナと手を震わせた。

「ちょ、なっ、だっ……その人が……っ、勝手にっ……」

 あぁ、混乱のあまりに唇が動かないよ!
 カクライ先輩は、スマホを見ながらため息を吐いた。

「これ、小峰が無理やり脱がせて触ってるようにしか見えねぇなぁ。これがグループメールに送信されたら、あっという間に学園中のみんなに知れ渡って、この学園にいられなくなるよなぁ」

 先輩はぼくにスマホを突きつけてくる。
 画面を見てぼくは目を見開いた。
 自ら服を脱いだ先輩の顔は、眉根を寄せて困っている。
 股間を触ってくるぼくの手を、必死で引きはがそうと嫌がっている一人の男。
 真実を知らない人の目には、そんな風に映るだろう。
 スマホを取ろうと手を伸ばしたが、カクライ先輩はぼくの届かないところまで手を上げてしまう。

「だっ、騙したんですかっ⁈ ぼくをはめようと、この人と打ち合わせしてっ」
「怪我がひどくなくて良かったな。調子づいてるから、ちょっとからかってやるつもりだったんだよ。そしたらお前、気失って、聖先輩にめちゃくちゃ名前呼ばれてるしよぉ」
「は、はい? じゃあやっぱり、ぼくを怪我させたのって意図的に?」

 すっかり衣服の乱れもなくなったその人は、カクライ先輩にピトッと顔を付けながら言った。

「うん。ごめんね。俺、こいつの友達だからさ」

 許せん‼︎ ぼくは色々と振り回されたってことか‼︎
 しかし、カクライ先輩たちがじりじりとぼくの方に近づいてくるのを見て、そんなことに気を取られている場合ではないと気付く。
 一歩下がれば、あっちは一歩近づいてくる。
 背中にダンボール箱の出っ張りを感じて、ぼくはとうとう追い詰められてしまったことを悟った。
 カクライ先輩は、スマホを隣にいた男に渡した。
 その男は、ぼくの方にスマホを向けてくる。どうやら動画を撮っているみたいだ。
 嫌な予感しかしない。

「あの! こんなことしても何の解決にもなりませんよ! 一度冷静に話し合いましょう!」
「解決? するんだよねこれが。こうすることで、俺の気分がちょっと上向くし」
「あっ」

 左手首を乱暴に掴まれると、じわっと痛みが走る。
 その怯んだ隙に、床に仰向けに倒されてしまった。
 カクライ先輩はぼくの両足の上に座り、体重をかけてくる。
 逃げようにもめちゃくちゃ重いし、全然動かせない。
 ついでに両手も、頭の上で誰かの手で固定されてしまった。
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