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7 明日夏 4
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目を覚ましたとき、僕の全身は寝汗をぐっしょりとかいていた。
上半身を起き上がらせ、額にかいた汗を拭った。
「おはよー」
ビクッと肩をすくませ見下ろすと、真央がパンツ一丁の姿でソファーの上に座っていた。肩にかけたタオルで、濡れた頭を拭いている。
「また風呂借りちゃった。タオルも勝手に使っちゃったんだけど、大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ」
ドクンドクンと心臓が鳴る。
真央はいつもと変わらぬ人懐っこい笑顔を僕に向けている。
夢だということにして現実逃避したかったけど、できなかった。
僕の足元には、くしゃくしゃに丸まったティッシュが何個か転がっている。
真央じゃない……のか?
あまりにもいつも通りすぎる。
しかし確信は持てぬまま、僕は足を踏み外さないよう、とくに上から三段目に足を置く時は慎重になりながら梯子を下りた。
べランダでタバコを吸う櫂が見える。背中を向けているから、どんな表情かは分からない。
僕は真央に訊いた。
「……拓海は?」
「あぁ、朝飯買いに行ってる。ジャンケンでさ、あいつが負けて」
「そう」
時計を見ると、朝の九時三十分だ。
真央はテレビのバラエティ番組の再放送を観ながら屈託なく笑っている。
僕は窓を開けてベランダに出た。
万が一を見越して、真央には聞こえないように窓をしっかり閉める。
頬杖をつきながら紫煙を吐き出した櫂が、こちらを向いた。
「おそようー」
櫂も口の端を上げ、にこーっと笑った。
……櫂でもない。
じゃあ、拓海?
でも、演技してるってこともある。
僕は櫂の横に並んで遠くの方に視線をやった。
「櫂は、何時くらいに起きた?」
「何時だっけなぁ……二度寝したんだよね。はじめは六時くらいに起きて、も一回寝て八時くらいに起きたかな」
「ごめん、部屋、暑かった?」
「ちょっとな。でも真央が悪いんだぜ? あんなに言っといたのに、ソファーから出した足を俺の体の上に乗っけてくんだもん」
「へぇ」
やっぱり櫂も、普通だ。
残すは拓海だけ。
押し黙っている僕の顔を、櫂は不思議そうに覗き込んでくる。
「何、そんな怖い顔してんの」
「ううん、そんなことないよ」
「えぇ、そう? なんかむすーっとしてない?」
「……櫂さ、昨日、僕たちのこの関係はずっと続いていけばいいって言ってたよね」
櫂は携帯灰皿にタバコを押し込み、僕をじっと見つめた。
「うん、言ったよ」
「それ、本心だよね?」
「あん? どしたの、明日夏」
「ごめん、なんでもない」
試すようなことを言ってしまい、ちょっと申し訳なくなった僕は先に部屋に入った。
しばらくすると、拓海が買い物から帰ってきたので、僕は真っ先に玄関に向かった。
「おかえり」
「ただいま。あ、明日夏起きたんだ。ごめん、明日夏ってブラック飲めたっけ? アイスコーヒー買ったんだけど、無糖ブラック選んじゃって」
拓海はコンビニ袋からプラスチック容器のコーヒーを取り出し、僕に見せてきた。
──分からない。僕に触れたのが、この中の誰だったのか。
でも分かった事は一つだけ。
あのことは、まるでなかったことにされている。
この中の誰かがしたことには違いないのに。
「おー、サンキュ。俺、焼きそばパンね」と真央。
「え、俺もそれが良かったなぁ……明日夏はどれがいい?」と拓海。
「俺はあんま腹減ってないから、とりあえずコーヒーもらう」と櫂。
僕は親友三人に向かって、柔らかく笑んでみせた。
上半身を起き上がらせ、額にかいた汗を拭った。
「おはよー」
ビクッと肩をすくませ見下ろすと、真央がパンツ一丁の姿でソファーの上に座っていた。肩にかけたタオルで、濡れた頭を拭いている。
「また風呂借りちゃった。タオルも勝手に使っちゃったんだけど、大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ」
ドクンドクンと心臓が鳴る。
真央はいつもと変わらぬ人懐っこい笑顔を僕に向けている。
夢だということにして現実逃避したかったけど、できなかった。
僕の足元には、くしゃくしゃに丸まったティッシュが何個か転がっている。
真央じゃない……のか?
あまりにもいつも通りすぎる。
しかし確信は持てぬまま、僕は足を踏み外さないよう、とくに上から三段目に足を置く時は慎重になりながら梯子を下りた。
べランダでタバコを吸う櫂が見える。背中を向けているから、どんな表情かは分からない。
僕は真央に訊いた。
「……拓海は?」
「あぁ、朝飯買いに行ってる。ジャンケンでさ、あいつが負けて」
「そう」
時計を見ると、朝の九時三十分だ。
真央はテレビのバラエティ番組の再放送を観ながら屈託なく笑っている。
僕は窓を開けてベランダに出た。
万が一を見越して、真央には聞こえないように窓をしっかり閉める。
頬杖をつきながら紫煙を吐き出した櫂が、こちらを向いた。
「おそようー」
櫂も口の端を上げ、にこーっと笑った。
……櫂でもない。
じゃあ、拓海?
でも、演技してるってこともある。
僕は櫂の横に並んで遠くの方に視線をやった。
「櫂は、何時くらいに起きた?」
「何時だっけなぁ……二度寝したんだよね。はじめは六時くらいに起きて、も一回寝て八時くらいに起きたかな」
「ごめん、部屋、暑かった?」
「ちょっとな。でも真央が悪いんだぜ? あんなに言っといたのに、ソファーから出した足を俺の体の上に乗っけてくんだもん」
「へぇ」
やっぱり櫂も、普通だ。
残すは拓海だけ。
押し黙っている僕の顔を、櫂は不思議そうに覗き込んでくる。
「何、そんな怖い顔してんの」
「ううん、そんなことないよ」
「えぇ、そう? なんかむすーっとしてない?」
「……櫂さ、昨日、僕たちのこの関係はずっと続いていけばいいって言ってたよね」
櫂は携帯灰皿にタバコを押し込み、僕をじっと見つめた。
「うん、言ったよ」
「それ、本心だよね?」
「あん? どしたの、明日夏」
「ごめん、なんでもない」
試すようなことを言ってしまい、ちょっと申し訳なくなった僕は先に部屋に入った。
しばらくすると、拓海が買い物から帰ってきたので、僕は真っ先に玄関に向かった。
「おかえり」
「ただいま。あ、明日夏起きたんだ。ごめん、明日夏ってブラック飲めたっけ? アイスコーヒー買ったんだけど、無糖ブラック選んじゃって」
拓海はコンビニ袋からプラスチック容器のコーヒーを取り出し、僕に見せてきた。
──分からない。僕に触れたのが、この中の誰だったのか。
でも分かった事は一つだけ。
あのことは、まるでなかったことにされている。
この中の誰かがしたことには違いないのに。
「おー、サンキュ。俺、焼きそばパンね」と真央。
「え、俺もそれが良かったなぁ……明日夏はどれがいい?」と拓海。
「俺はあんま腹減ってないから、とりあえずコーヒーもらう」と櫂。
僕は親友三人に向かって、柔らかく笑んでみせた。
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