庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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「これが書類で、こっちがBLTサンドとカフェオレ。オーナーが俺の分も用意してくれてて、一緒に食べられるかと思ったけど、忙しいなら帰るよ?」

「大丈夫。ここに座って」
社長室にあるソファに案内された。

「仕事大変?ご飯食べてないって聞いた」
「ん?ちょっと色々考えてただけ」
「解決しそう?」
「…まだわからない」

「そっか。一緒に帰れるかなと思ったけど…邪魔したくないから、これ食べたら先に帰るね」

「え?待って。一緒に帰る。」
そう言って、一織はイケメンに向き直った。

「そういうことなので、調整お願いします」
俺に向ける態度とは、別人みたいな声。

「この後の打ち合わせは…」
「調整してください」
「…はい」
有無を言わさない一織の態度に俺は驚いてしまって

「待って!」

思わず、間に入ってしまった。

「仕事だろ?急に予定を変更したら、みんなに迷惑がかかるだろ?待っててもいいなら待ってるけど?それに俺、一織の仕事してるとこ、見たい」

「見たい?」
「うん。だから、予定変更しないで」
ほれ?俺のこのかわいいアピール。一織弱いだろ?

「…わかった。」
ちょろい。ちょろいよ、一織。

「じゃあ、そういうことだから」
一織はイケメンにそう伝えた。

「四宮さま!ありがとうございます!」
なぜかイケメンに盛大に感謝された、そして、そのまま社長室を出ていった。

静かになる社長室。

二人だけの空間に少し緊張してしまって、慌てて、俺は紙袋を開けて、BLTサンドを手渡した。

「しっかり食べろよ。」
「わかってる」

一織は隣に座って、カフェオレに口をつけた。

「…あのさ、一織」
「ん?」

「朝の話…付き合うのはできないって言っただろ」
「…うん」

「あれ、付き合いたくないって意味じゃないからな」
一織は、黙って俺を見る。

「なんか、付き合ったら一織、色々歯止めきかなくなりそうじゃん。だから」
「…それだけ?」

「え?」

「俺が我慢できるって言ったら?」

一織は俺の手を強く握って、そのまま自分の唇のほうへ引き寄せた。
触れるか触れないか、その距離で止まった。

「我慢できるって言ったら…付き合ってくれるの?」

心臓が、どくん、と鳴る。

俺の指先が、微かに一織の吐息に触れる。
あったかくて、くすぐったい。

「俺さ…」
自分の声が、少し震えているのがわかる。

「我慢してほしいって言ってるわけじゃないんだ」
「じゃあ、何?」

「ちゃんと、恋人になる準備をしたいだけ」
「準備?」

「好きって気持ち、まだ慣れてない。でも、慣れたら…たぶん、俺のほうが止まらなくなる」

一織の目が、わずかに見開かれた。
「…それは、困るな」

「なんでだよ」
「理性、失いたくない」
そう言いながらも、一織は俺の手を離さない。

「でも、付き合ってから恋人になる準備するのでもいいんじゃない?」
低く、落ち着いた声で続ける。

「ちゃんと待っててくれる?」

「触れない、キスしない、そういう制限付き?」

「そ…そこは…そのままでもいい」
言葉にしてから、顔が熱くなる。

「じゃあ、どこまでいい?」

…どこまでって…質問が具体的すぎるだろ。

「一織、仕事中だから」
話を変えてみるものの…

「千尋がここにいる時点で、もう集中できてない」
俺はため息をついて、一織の胸を軽く押した。


「付き合ってから恋人になる準備するで、一織ちゃんと我慢してくれる?」
一織を見上げる。

「うん。」

「好きって気持ちはお互い認めてる。でも、正式な『恋人』って言葉は、俺がちゃんと覚悟できた時」

一織はしばらく黙って、俺を見ていた。

「…それで、今は、俺の立場は?」
「俺の好きな人で…俺だけの人。」

「…なにそれ、反則」
一織が嬉しそうに話してくる。

「なにが?」
わかってる。恋人じゃないけどそばにいたいとか勝手すぎるのもわかってる。

「千尋だけの俺。」
そう言いながら、一織は俺の頬に、軽く唇を当てた。

「ちょっ…ここ、会社」

一織はクスリと笑った。そして、安心したみたいに息を吐いた。
それから、俺の手を胸元に引き寄せる。

「今日は朝から不安だったんだ。千尋の朝の言葉が、頭から離れなくて」

「ごめん…。みんなにもちょっと怒られた。…ねぇトマト、ちゃんと食べてよ」
「はいはい」
「残したら、ずっとこのままだよ」
「それは困るな。」
そう言いながらトマトを口にする一織を見ていた。

‥‥。
‥‥。

さっき一織がちょろいって思ったけど、結局、一織の言葉にすぐ同意する俺がいて…

つまり…

俺も、めっちゃ、ちょろいってことか…。
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