庶民の俺が金持ちグループに入ったら、完璧な御曹司になぜか異常に懐かれた【目線の先には。一織×千尋編】

綾波絢斗

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60 機嫌

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「深山さん、どうかしたんですか?」
「社長が…」
一織が、どうかした?

何もわかっていない俺を見て、言葉を止めたまま呆れ気味な深山さん。
もう、どうしたんだよ。

「とりあえず、千尋くんは社長室に向かってください。打ち合わせは一時間後ですので、社長を出席させることが今日の仕事です」

打ち合わせ?

一織、体調でも悪いのか?

「わかりました…」
俺は社長室のドアを、そっと開けた。

ソファに仰向けで寝ている一織がいる。お昼も、食べてない。

「一織!」
俺は駆け寄った。

「どうした?体調悪い?食欲ない?大丈夫?」
俺の声に一織は一瞬こちらを見るけど、何も答えず、また目を閉じる。

「一織?」
俺は一織の手を握った。
一織は何も言葉を発しない。

「どうしたの?大丈夫?」
一織の胸に、ぽすっと頭を置く。

「…心配?」
一織が口を開いて、俺の頭を撫でる。

「うん。当たり前だろ?」
少し間を置いて、俺は続けた。
「そうだ、さっきのミーティングの時さ。杉咲さんっていただろ?」

「…うん」
「俺の幼馴染のお兄ちゃんでさ。すっごく久々に会ったんだ」

「そう」
「でね、今後、休みに実家に帰りたいんだけど…」

「え?どうして?」
「琉にいのお母さんの唐揚げ、食べに行きたくて…」

「は?いや…」
「一織も一緒に行かない?」
俺が誘うのと、ほぼ同時に一織の声が「いや…」が返ってきた。

「あ…嫌だ?」
そうだよな。一織、唐揚げ食べられないし…ダメかな、と思ったら。

「大丈夫。行く」
「ほんと?大丈夫?」
「うん…」

それから、少し躊躇って言う。
「でね…その時、琉にいには一織との関係、伝えてもいい?」
「関係?」
「…俺の大切な人、って」
「…えっ」
「仕事関係の人になるから、ダメかなって思ったんだけど。でも、琉にいには伝えたくて。さっき、伝えようかなと思ったんだけど、一織に聞いてからにしようかなって。」

照れながら言う俺の言葉に、一織がゆっくり起き上がった。
ソファに、二人で並ぶ。

「どうした?もう大丈夫そ?」
「うん」
「ゴハン、食べられる?」
「うん」

一織は、静かに食べ始めた。さっきより、明らかに体調が良さそう?ん?機嫌がいい?


食べ終わるころ、深山さんがドアを開けた。

「もうすぐ打ち合わせですので、準備をお願いします」
「わかりました」

そう言って一織は立ち上がった。
そして一織が出ていくタイミングで海斗が中に入ってきた。

「千尋~。今日もやってくれたな~。」
ニヤニヤしながら海斗が言う。

「なんだよ?俺なにかしたか?」

「怖い怖い。その無自覚が怖いわ。」

「なんだよそれ!」
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