【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第26話 お願いごと

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「今日の夜は絶対にパーティーに出席してほしいって言ったでしょ!?」

キョウカさんが、いつになく声を荒げていた。

「行かない」

どんなにイライラされても、まったく動じる気配のないレイ。淡々としたその態度に、逆にキョウカさんの怒りがヒートアップしているようだった。

──あの二人って、喧嘩するんだ。「番」になれば喧嘩なんてしないものかと思ってたけど、違うんだな。

痴話喧嘩……夫婦みたい。

胸が、ズキリと痛んだ。そんな自分をなだめながら、ふたりのやり取りを黙って見ていた。

……ぼんやりしていると、ふいにキョウカさんと目が合った。

──しまった、見てるのバレた。

慌てて目を逸らした瞬間、キョウカさんが駆け寄ってきた。

「アオくん! 今夜のパーティー、絶対に行かなきゃいけないの。お願い、レイを説得して!」

「え……僕がですか?」

「今から自分の会社に戻るから、結果はアキトに連絡して。お願いね? 絶対よ!」

そう言い残して、バタン! と社長室のドアを勢いよく閉めて出ていった。アキトさんがキョウカさんをなだめる声が遠くから聞こえる。どうやらそのまま送っていくようだった。

僕はそっとレイに声をかけた。

「社長?」

反応がない。

「……レイ? 今日の予定って、すごく大事だってアキトさんからも聞いてるよ?」

それでもレイは顔を上げない。いつになく、頑なな態度だ。

……うーん。

少し考えてから、そっとレイのそばに行き、耳元で小さく囁いた。

「レイ?」

ようやく顔を上げたレイの唇に、スタンプキスをした。ふふふ。驚いてる。

「僕がスーツ選ぶよ? だから、今日のパーティー出席して?」レイは僕がキスをすると、たいていお願いを聞いてくれる。

「……もう一回」

「え?」

不意を突かれた瞬間、頭を抱き寄せられて、そのまま深く口づけられた。舌が絡み合い、社長室に音だけが響く。

「あ…っ。ん。やっ。待って。ここだと…」
「じゃあ、向こう行く?」
「だ、だめ。今仕事中……!」

「……これも仕事」
「ま、待って。パーティーには行く?」
「…………」
「行くって約束してくれたら──」
「約束したら?」

「……今じゃなくて、今日の夜……たくさん、しよ?」
「……たくさん……?」
「今するんだったら仕事中だし、1回だけだよ。それに夜はなし」

「…………」

「どうする?」
「……パーティーに行く」
「ほんと?」

「アオ、言うこと聞くから、アオからキスして」そう言われて、レイの口にそっと自分の唇を近づけた途端、待ち構えていたように舌が絡んでくる。

「やっ…んっ。んんっ。ま‥っ」
待ってなんて言っても待ってはくれない。レイが満足するまで長い長いキスが落とされた。

*---------------

「仕事中は手加減して!」「手加減って?」いたずらっ子のように笑うレイが少し可愛く見えた。これ以上、何かを言っても無駄だと思った僕はアキトさんに連絡を入れた。

ちょうどパーティーへの出席準備が終わったところで、キョウカさんが飛び跳ねるように社長室へ戻ってきた。

まっすぐレイに抱きつくのかと思ったら──まさかの、僕に盛大なハグ。さらに頬に何度もキスまで。

「ん~っ、さすがアオくん、大好き!」
チュッ。チュッ。と音だけが響く。
あまりの勢いに、固まる僕。

その様子を見ていたレイの眉が、ほんの少しだけピクリと動いた。静かに、怒ってる。

アキトさんが慌ててキョウカさんを引き剥がして、ようやく解放された。

みんながパーティーへ出発しようとしていたそのとき、リョクが顔を出した。

「あれ? リョク、どうしたの?」
「ん? アオ、今日残業でしょ? レイさんから『アオと一緒にいて』って連絡あったんだ」
「もう、僕、ひとりでも大丈夫なのに」
「ん~。まだ完全じゃないし、不安定だからだよ」
「不安定? 何が?」

「え? あっ、仕事。仕事だよ。トラブルが来るか来ないかっていう話」
「あっ、そっか」
「じゃあ僕、前の部屋のソファでゲームしてるから。何かあったら呼んでね」

そう言って、リョクは軽く手を振って部屋を出ていった。少しだけ静かになった空間。僕はもう一度、トラップログの動きを確認する。

この静けさの裏で、何かが動き出している気がしていた。
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