【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第62話 不穏な動き

アオは再び社交の場に同席していた。
華やかな照明、笑い声、グラスの触れ合う音——その中心に立つレイは完璧な微笑みを浮かべ、政財界の重鎮たちと軽やかに言葉を交わしている。

表向き、キョウカは一条レイの婚約者だと噂されている。
そんな中一条レイの傍にいる、アオの存在は否応なく注目を浴びる。

一条社長の番かもしれない、という興味本位の視線。
レイの隣に並びたいと願うムルたちからの、冷たい嫉妬の眼差し。
その美貌と未完成な力を狙い、手に入れようとするルガルの欲望。
そしてただ美しさに心を奪われ、目を離せない一般人——。

そのどれもが、矢のようにアオへ突き刺さってくる。

(また見られている)
アオは胸の奥にざわめきを覚えていた。
レイが会場の片隅で別の重役たちに囲まれている隙を狙ったかのように、神宮寺が姿を現した。
「また会えましたね、神川君」

穏やかな笑みを浮かべ、差し伸べられる手。
アオは反射的に拒んだ。

「……僕、用事があるので」

しかし神宮寺は一歩も退かず、さらに近づいて肩へと手を伸ばす。
ぞわり——背筋を駆け上がる嫌悪感。

「どうして一条社長は、君を番だと公表しないんでしょうね」

「え……」

「知られたくない秘密でもあるのかな」

言葉には柔らかさがあったが、声音には明らかな毒が含まれていた。
アオは戸惑い、心を揺さぶられる。

神宮寺はわずかに口元を吊り上げ、アオの顔へとさらに身を寄せた。
「君の価値は、番なんかに縛られるものじゃない」
アオの首筋に息がかかる。

「っ……!」
アオは思わず一歩退いた。

「神宮寺様、こちらでしたか!」
キョウカが間に入った。
涼やかな笑顔で神宮寺の腕を取ると、まるで自然な流れのように彼を別のテーブルへ導き、アオとの距離を取ってくれた。

「平気?」
「はい。すみません」

小さく頷いたが、胸の奥では言い知れぬ不安が広がっていた。

気づくと、レイの姿が見えなくなっていた。

アオは廊下に出て、偶然その場面を見てしまった。
レイと神宮寺が、二人きりで会話をしている。

「ご婚約の件、正式に発表される日は近いのですか?」
「さあ。どうだろうな」
レイの声は冷ややかだが、完全に拒絶しているようには見えなかった。

アオは影に身を潜め、胸の鼓動を必死に押さえ込む。
それでも耳に届いてしまう。

「神川君は、あなたにとって本当に番なのですか?」
「……」

レイは答えなかった。
喉の奥がきゅっと締め付けられる。
息が苦しくて、足がすくんで——その場を離れるしかなかった。

*---------------

数時間後。
神宮寺は深々とソファに腰を下ろし、グラスを揺らしながら研究施設のモニターを眺めていた。

モニターの中では青年たちが絡み合い、熱に浮かされたように喘いでいる。
「んっ。もう。無理。お願い。挿れて」
「僕も……お願い。お願いします。あぁ。んっ。んふっ」

「神宮寺様、実験の成果です」

神宮寺は口元に笑みを浮かべながら、小さな封筒を研究員に渡した。
中から取り出したのは一本の、淡い色の髪の毛。

「神川様の髪ですね。お預かりいたします」
研究員の一人が受け取る。

「次の段階に進めてくれ」

「承知しました」

「神川君……次に会う時が、とても楽しみだよ」

彼の眼差しは、獲物を狙う捕食者のそれだった。
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