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第70話 僕のもの
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目を覚ますと、僕は社長室の前室のソファに横になっていた。はだけたシャツを慌てて整えながら、昨夜のことを思い返そうとするが、記憶が途切れている。
やっぱり、あの香りは相当強力だったんだ。僕自身の記憶もないんだから、レイも正気でいられるはずがない。
そのとき、アキトさんの席の奥のドアが静かに開いた。
「あっ、トウヤ君、起きたんだ」
柔らかい声。アキトさんがこちらに目をやり、いたずらっぽく笑っている。
「あっ、その……レイは?」
慌ててシャツのボタンを留め直しながら問いかける。頬が熱くなる。
「ん? 僕は見てないけど、トウヤ君の方が詳しいんじゃない?」
冗談めかした調子に、僕は少し照れながらも胸の奥がくすぐられる。レイと過ごした夜を他人から暗に指摘されるのは、悪い気分じゃなかった。
「それよりもシャワー浴びてきたら? もうすぐ仕事の時間だよ」
「あっ、はい。そうします」
僕はシャワールームへと足を運ぶ。神川アオが使っていた形跡はほとんどなく、今は僕専用に整えられている。
レイが僕のために用意してくれたものだ。欲しいと口にしたものは、翌日には必ず揃えられている。クローゼットの中の一つひとつが、僕を大切に思ってくれている証拠だ。
シャワーを浴びながら、「僕の身長も、体つきも、見た目も。そしてこの香りも。全部が一条社長の好みに合ってる」と話していた神宮寺さんを思い出す。本当に、言葉どおりに進んでいる。僕は選ばれたのだ。
濡れた髪を整え、ウォークインクローゼットで新しいスーツを選ぶ。袖を通すと、不思議と自分が一条家の人間に近づいた気がした。
着替えを終えて社長室に戻ると、すでにデスクにはレイが座っていた。書類に視線を落としていたが、僕に気づくとふと顔を上げ、優しい笑みを浮かべる。
「レイ!」
思わず駆け寄ってしまう。
「朝、どこに行ってたの? 僕、すごく寂しかったんだよ?」
「うん、ごめん。仕事が立て込んでて」
「もう、一人にしないでね」
「わかった」
短く、それでも確かに頷いてくれる。その瞬間、胸が高鳴った。
「じゃあ、お詫びに今日は一緒に買い物に付き合って。レイと歩きたいんだ」
「今日は夜まで打ち合わせだろ? カードは好きに使っていいから」
「え~……でも、仕事なら仕方ないよね」
少し唇を尖らせてみせる。けれど心の中ではすでに満足していた。
レイは僕のもの。一条家の後ろ盾も、レイ自身も、もう手に入れたも同然だ。
あとで神宮寺さんに、お礼を言わなくちゃ。
やっぱり、あの香りは相当強力だったんだ。僕自身の記憶もないんだから、レイも正気でいられるはずがない。
そのとき、アキトさんの席の奥のドアが静かに開いた。
「あっ、トウヤ君、起きたんだ」
柔らかい声。アキトさんがこちらに目をやり、いたずらっぽく笑っている。
「あっ、その……レイは?」
慌ててシャツのボタンを留め直しながら問いかける。頬が熱くなる。
「ん? 僕は見てないけど、トウヤ君の方が詳しいんじゃない?」
冗談めかした調子に、僕は少し照れながらも胸の奥がくすぐられる。レイと過ごした夜を他人から暗に指摘されるのは、悪い気分じゃなかった。
「それよりもシャワー浴びてきたら? もうすぐ仕事の時間だよ」
「あっ、はい。そうします」
僕はシャワールームへと足を運ぶ。神川アオが使っていた形跡はほとんどなく、今は僕専用に整えられている。
レイが僕のために用意してくれたものだ。欲しいと口にしたものは、翌日には必ず揃えられている。クローゼットの中の一つひとつが、僕を大切に思ってくれている証拠だ。
シャワーを浴びながら、「僕の身長も、体つきも、見た目も。そしてこの香りも。全部が一条社長の好みに合ってる」と話していた神宮寺さんを思い出す。本当に、言葉どおりに進んでいる。僕は選ばれたのだ。
濡れた髪を整え、ウォークインクローゼットで新しいスーツを選ぶ。袖を通すと、不思議と自分が一条家の人間に近づいた気がした。
着替えを終えて社長室に戻ると、すでにデスクにはレイが座っていた。書類に視線を落としていたが、僕に気づくとふと顔を上げ、優しい笑みを浮かべる。
「レイ!」
思わず駆け寄ってしまう。
「朝、どこに行ってたの? 僕、すごく寂しかったんだよ?」
「うん、ごめん。仕事が立て込んでて」
「もう、一人にしないでね」
「わかった」
短く、それでも確かに頷いてくれる。その瞬間、胸が高鳴った。
「じゃあ、お詫びに今日は一緒に買い物に付き合って。レイと歩きたいんだ」
「今日は夜まで打ち合わせだろ? カードは好きに使っていいから」
「え~……でも、仕事なら仕方ないよね」
少し唇を尖らせてみせる。けれど心の中ではすでに満足していた。
レイは僕のもの。一条家の後ろ盾も、レイ自身も、もう手に入れたも同然だ。
あとで神宮寺さんに、お礼を言わなくちゃ。
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