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第73話 新たな関係
「指示されたデータを抜き取りました」
僕は神宮寺さんにスマホで報告を送った。彼のことだ——僕がイルジオンのシステムに侵入した痕跡や経路は、リアルタイムで監視されているだろう。
僕を通じて自分たちが出入りできるようにする。それが狙いなのか……。
『データ確認しました。痕跡を残さずこれを取り出すとは、さすがですね、神川君。次の指示を出したいので、一緒に食事をしましょう』
短くそう告げられ、通話は切れた。
しばらくすると、従者を伴った神宮寺さんが現れた。彼が指示を出すと、従者は慣れた手つきで食事の準備を整えていく。
僕はソファに腰を下ろしたまま、その光景を静かに眺めていた。
「頭痛はおさまりましたか?」神宮寺さんがこちらを見ながら、穏やかに声をかけてくる。
「ここに来てからずっと頭痛が止まらなくて。でも、神宮寺さんが来てから少し軽くなった気がします」
そう答えると、彼はためらいなく僕の隣に腰を下ろした。
香りが一層強まり、さっきまで重く淀んでいた頭の奥がふっと楽になる。「そうですか。寄りかかっても大丈夫ですよ」促されるまま、僕は神宮寺さんの肩に頭を預けた。
その瞬間、不思議なくらい頭の痛みが和らぎ、呼吸まで深くなる。
その日を境に、仕事の合間に頭痛がひどい時は神宮寺さんに連絡を入れ、彼の肩を借りるようになった。
ある日、どうして神宮寺さんの香りだけが頭痛を鎮めるのか尋ねてみた。
彼は一瞬だけ目を細め、「理由はわからないけれど、神川君との関係性にあるのかもしれませんね」とだけ答えた。
*---------------
「……まただ。情報が抜かれている」アキトさんが険しい顔でレイに報告していた。
「セキュリティは強化したはずだろう?」レイが低く問う。
「うん。でもトラップにも引っかからない。痕跡そのものが消し去られているんだ」
「特定は?」
「まだ、できてない」
レイの横顔が静かに歪んだ。怒りを押し殺している。その気配を和らげるように、僕は後ろからレイを抱きしめた。
「レイ? 大丈夫?」レイは僕の腕をそっと解き、正面から優しい笑みを向けてきた。
「大丈夫。心配してくれてありがとう、トウヤ」
僕に微笑みかけているレイを見ながら、優越感に浸る。だってレイを困らせているのは、大好きだった神川アオだから。けれど、そんなことを教える気はない。
もうレイは僕のものだから。
「ねぇ、レイ。今日……しない?」
「今回の件もあるし、対応に集中したいんだ」
「そばにいようか?」
「無理はさせたくない。トウヤには、好きなことをしてほしい」
「……じゃあ今日は、友達とごはんに行こうかな」
「わかった。前に行きたいって言ってたレストラン、予約しておく」
「えっ!? あの予約が取れないところ? いいの?」
「あぁ。トウヤのためだから」
「……嬉しい!」
思わずレイに抱きつく。
——神川アオ、もうレイは僕のものだよ。僕のために、ここまで尽くしてくれる。今のレイの姿を知ったら、君はどんな顔をするのだろう。
僕は神宮寺さんにスマホで報告を送った。彼のことだ——僕がイルジオンのシステムに侵入した痕跡や経路は、リアルタイムで監視されているだろう。
僕を通じて自分たちが出入りできるようにする。それが狙いなのか……。
『データ確認しました。痕跡を残さずこれを取り出すとは、さすがですね、神川君。次の指示を出したいので、一緒に食事をしましょう』
短くそう告げられ、通話は切れた。
しばらくすると、従者を伴った神宮寺さんが現れた。彼が指示を出すと、従者は慣れた手つきで食事の準備を整えていく。
僕はソファに腰を下ろしたまま、その光景を静かに眺めていた。
「頭痛はおさまりましたか?」神宮寺さんがこちらを見ながら、穏やかに声をかけてくる。
「ここに来てからずっと頭痛が止まらなくて。でも、神宮寺さんが来てから少し軽くなった気がします」
そう答えると、彼はためらいなく僕の隣に腰を下ろした。
香りが一層強まり、さっきまで重く淀んでいた頭の奥がふっと楽になる。「そうですか。寄りかかっても大丈夫ですよ」促されるまま、僕は神宮寺さんの肩に頭を預けた。
その瞬間、不思議なくらい頭の痛みが和らぎ、呼吸まで深くなる。
その日を境に、仕事の合間に頭痛がひどい時は神宮寺さんに連絡を入れ、彼の肩を借りるようになった。
ある日、どうして神宮寺さんの香りだけが頭痛を鎮めるのか尋ねてみた。
彼は一瞬だけ目を細め、「理由はわからないけれど、神川君との関係性にあるのかもしれませんね」とだけ答えた。
*---------------
「……まただ。情報が抜かれている」アキトさんが険しい顔でレイに報告していた。
「セキュリティは強化したはずだろう?」レイが低く問う。
「うん。でもトラップにも引っかからない。痕跡そのものが消し去られているんだ」
「特定は?」
「まだ、できてない」
レイの横顔が静かに歪んだ。怒りを押し殺している。その気配を和らげるように、僕は後ろからレイを抱きしめた。
「レイ? 大丈夫?」レイは僕の腕をそっと解き、正面から優しい笑みを向けてきた。
「大丈夫。心配してくれてありがとう、トウヤ」
僕に微笑みかけているレイを見ながら、優越感に浸る。だってレイを困らせているのは、大好きだった神川アオだから。けれど、そんなことを教える気はない。
もうレイは僕のものだから。
「ねぇ、レイ。今日……しない?」
「今回の件もあるし、対応に集中したいんだ」
「そばにいようか?」
「無理はさせたくない。トウヤには、好きなことをしてほしい」
「……じゃあ今日は、友達とごはんに行こうかな」
「わかった。前に行きたいって言ってたレストラン、予約しておく」
「えっ!? あの予約が取れないところ? いいの?」
「あぁ。トウヤのためだから」
「……嬉しい!」
思わずレイに抱きつく。
——神川アオ、もうレイは僕のものだよ。僕のために、ここまで尽くしてくれる。今のレイの姿を知ったら、君はどんな顔をするのだろう。
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