【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
80 / 86

第80話 見誤っていた事実

しおりを挟む
「神宮寺さんの作った香り、アオに効かなかったこと——疑問に思わなかった?」

リョクが口元に笑みを浮かべながら告げる。
「効力を強めても、思うようにいかなかったんじゃない?」

「どうしてそれを……」
神宮寺の目が大きく見開かれる。

「それはね、通常のムルの香りには反応しないよう調整してあったからだよ」
リョクは軽く肩をすくめて答えた。

「は? どういうことだ?」

「アオは昔から、アオ専用の香りを使っているんだ。レイさんと出会ってからは、レイさんの香りも組み込まれてね。アオは狙われやすい存在だから——あらかじめ『耐性』をつけてある」

「……そういうことか」
神宮寺はこれまでの不自然な反応の理由に、ようやく合点がいったように低く呟いた。

「でも、神宮寺さんから香っていた『レイさんの香り』には、少し反応していたでしょ?」
その言葉に、レイの指先がわずかに動いた。

「それから……うちから盗んだデータ、あれも全部ダミーだよ」
アキトが言う。

「は? 何だと……?」

「アオくんは、そっちに行くときに、うちとカナメさんの管理しているデータベースを丸ごと『ダミー』で構築していたんだ」

「まさか……」

「だから、こちらはデータを盗まれても痛くも痒くもない。それどころか、アオくんがそちらのデータベースに侵入しやすいよう、わざわざ道を作っておいてくれたんだ」

神宮寺の呼吸が乱れる。
「じゃあ……ずっと、演技だったというのか?」

「もちろん」
アキトがにっこりと笑う。

「それにトウヤ君がちゃんと報告してくれたおかげで、本当に助かっちゃったよ」

そして、さらりと続けた。

「あ、それから、ラウンジで会うよう仕向けてくれたおかげで、アオくんに黒のバングルと、リョクが作った解毒剤も渡せたんだ」

「……あれも演技」
神宮寺の声はかすれていた。

「それからデータベースに侵入されたことあったでしょ? あれは、アオくんがあなたの信頼を得るために、あえて誰かが侵入したように見せかけたんだ。そうすることで、研究所内のデータベースに堂々と入れるようになった」

アキトの瞳が鋭く細められる。

「そして、ムルのひとりが逃げ出した件、覚えてる? あれはこちら側で『システムオフ』が可能かどうか試すためのテストだったんだ」

「……!」

「まさかアオくんのもとまで辿り着くとは思わなかったけど。結果的に、アオくんは機転を利かせてその子に黒のバングルを渡した。そのおかげで、研究所にいるムルたちの人数や人物を把握することができた」
アキトは静かに説明を続ける。

「そして最後に、アオからの依頼で、研究に使われていた香りの処方を、少しずつ解毒効果のあるものにすり替えていった。すぐに気づかれないよう、時間をかけてね」
リョクが静かに言い放つ。

「解毒効果が完全に行き渡ったタイミングで……すべてのセキュリティシステムを落とした。それが今回ってわけ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...