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第80話 見誤っていた事実
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「神宮寺さんの作った香り、アオに効かなかったこと——疑問に思わなかった?」
リョクが口元に笑みを浮かべながら告げる。
「効力を強めても、思うようにいかなかったんじゃない?」
「どうしてそれを……」
神宮寺の目が大きく見開かれる。
「それはね、通常のムルの香りには反応しないよう調整してあったからだよ」
リョクは軽く肩をすくめて答えた。
「は? どういうことだ?」
「アオは昔から、アオ専用の香りを使っているんだ。レイさんと出会ってからは、レイさんの香りも組み込まれてね。アオは狙われやすい存在だから——あらかじめ『耐性』をつけてある」
「……そういうことか」
神宮寺はこれまでの不自然な反応の理由に、ようやく合点がいったように低く呟いた。
「でも、神宮寺さんから香っていた『レイさんの香り』には、少し反応していたでしょ?」
その言葉に、レイの指先がわずかに動いた。
「それから……うちから盗んだデータ、あれも全部ダミーだよ」
アキトが言う。
「は? 何だと……?」
「アオくんは、そっちに行くときに、うちとカナメさんの管理しているデータベースを丸ごと『ダミー』で構築していたんだ」
「まさか……」
「だから、こちらはデータを盗まれても痛くも痒くもない。それどころか、アオくんがそちらのデータベースに侵入しやすいよう、わざわざ道を作っておいてくれたんだ」
神宮寺の呼吸が乱れる。
「じゃあ……ずっと、演技だったというのか?」
「もちろん」
アキトがにっこりと笑う。
「それにトウヤ君がちゃんと報告してくれたおかげで、本当に助かっちゃったよ」
そして、さらりと続けた。
「あ、それから、ラウンジで会うよう仕向けてくれたおかげで、アオくんに黒のバングルと、リョクが作った解毒剤も渡せたんだ」
「……あれも演技」
神宮寺の声はかすれていた。
「それからデータベースに侵入されたことあったでしょ? あれは、アオくんがあなたの信頼を得るために、あえて誰かが侵入したように見せかけたんだ。そうすることで、研究所内のデータベースに堂々と入れるようになった」
アキトの瞳が鋭く細められる。
「そして、ムルのひとりが逃げ出した件、覚えてる? あれはこちら側で『システムオフ』が可能かどうか試すためのテストだったんだ」
「……!」
「まさかアオくんのもとまで辿り着くとは思わなかったけど。結果的に、アオくんは機転を利かせてその子に黒のバングルを渡した。そのおかげで、研究所にいるムルたちの人数や人物を把握することができた」
アキトは静かに説明を続ける。
「そして最後に、アオからの依頼で、研究に使われていた香りの処方を、少しずつ解毒効果のあるものにすり替えていった。すぐに気づかれないよう、時間をかけてね」
リョクが静かに言い放つ。
「解毒効果が完全に行き渡ったタイミングで……すべてのセキュリティシステムを落とした。それが今回ってわけ」
リョクが口元に笑みを浮かべながら告げる。
「効力を強めても、思うようにいかなかったんじゃない?」
「どうしてそれを……」
神宮寺の目が大きく見開かれる。
「それはね、通常のムルの香りには反応しないよう調整してあったからだよ」
リョクは軽く肩をすくめて答えた。
「は? どういうことだ?」
「アオは昔から、アオ専用の香りを使っているんだ。レイさんと出会ってからは、レイさんの香りも組み込まれてね。アオは狙われやすい存在だから——あらかじめ『耐性』をつけてある」
「……そういうことか」
神宮寺はこれまでの不自然な反応の理由に、ようやく合点がいったように低く呟いた。
「でも、神宮寺さんから香っていた『レイさんの香り』には、少し反応していたでしょ?」
その言葉に、レイの指先がわずかに動いた。
「それから……うちから盗んだデータ、あれも全部ダミーだよ」
アキトが言う。
「は? 何だと……?」
「アオくんは、そっちに行くときに、うちとカナメさんの管理しているデータベースを丸ごと『ダミー』で構築していたんだ」
「まさか……」
「だから、こちらはデータを盗まれても痛くも痒くもない。それどころか、アオくんがそちらのデータベースに侵入しやすいよう、わざわざ道を作っておいてくれたんだ」
神宮寺の呼吸が乱れる。
「じゃあ……ずっと、演技だったというのか?」
「もちろん」
アキトがにっこりと笑う。
「それにトウヤ君がちゃんと報告してくれたおかげで、本当に助かっちゃったよ」
そして、さらりと続けた。
「あ、それから、ラウンジで会うよう仕向けてくれたおかげで、アオくんに黒のバングルと、リョクが作った解毒剤も渡せたんだ」
「……あれも演技」
神宮寺の声はかすれていた。
「それからデータベースに侵入されたことあったでしょ? あれは、アオくんがあなたの信頼を得るために、あえて誰かが侵入したように見せかけたんだ。そうすることで、研究所内のデータベースに堂々と入れるようになった」
アキトの瞳が鋭く細められる。
「そして、ムルのひとりが逃げ出した件、覚えてる? あれはこちら側で『システムオフ』が可能かどうか試すためのテストだったんだ」
「……!」
「まさかアオくんのもとまで辿り着くとは思わなかったけど。結果的に、アオくんは機転を利かせてその子に黒のバングルを渡した。そのおかげで、研究所にいるムルたちの人数や人物を把握することができた」
アキトは静かに説明を続ける。
「そして最後に、アオからの依頼で、研究に使われていた香りの処方を、少しずつ解毒効果のあるものにすり替えていった。すぐに気づかれないよう、時間をかけてね」
リョクが静かに言い放つ。
「解毒効果が完全に行き渡ったタイミングで……すべてのセキュリティシステムを落とした。それが今回ってわけ」
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