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第79話 最初から?
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ゆっくりとまぶたを開ける。
視界に映ったのは、無表情の一条社長と、アオの弟・神川リョクの姿だった。
「一条社長……これはどういうことでしょうか?」
神宮寺は理解できず問いかける。
体が鉛のように重い。
神川リョクの「支配の力」と一条の「威圧の力」が絡み合い、拘束されていないはずなのに身動きひとつ取れなかった。
「レイ? どうして僕まで……」
涙目になりながら、トウヤが困惑して叫ぶ。
カチャリ、と音を立ててドアが開き、アキトが姿を現した。
「トウヤくん……まだ気づいていないの?」
優しい口調とは裏腹に、その瞳は冷ややかだった。
「アオくんはカナメさんが見ているよ。リョクくんが調整した香りがよく効いていて、被害は出ていないみたいだ」
そう報告する一条アキトの言葉に神宮寺の顔がみるみるうちに困惑へと染まっていく。
「なっ……どうして……」
「番を剥がしている組織の存在は前から掴んでいた。ただ、尻尾を掴めなかった」
レイが静かに言葉を紡ぐ。
「あなたが管理しているのはわかっていたが、どこに研究所があるのか、どんな実験をしているのか——その確証が必要だったんだ。だから泳がせていた」
レイの声は淡々としていたが、胸の奥に潜む怒りを隠しきれていなかった。
「だが……アオに手を出した。それが、あなたの敗因だ」
神宮寺の瞳が揺れる。
「トウヤが近づいてきたのも、あなたの計画のひとつだろう?」
レイは視線を落とした。
「だが、それも利用させてもらった。トウヤが使った香りの成分はすでに解析済み。リョクが解毒処方を作った」
「え……嘘でしょ? じゃあ……ずっと、あの香りの効果はなかったってこと?」
トウヤが震える声で問い返す。
「そう、ダミーだったんだ」
アキトがふっと笑みを零す。
ただ、レイは目を伏せた。
「……アオが俺から離れることは、予想していなかった」
その言葉に、一瞬だけ彼の感情がにじむ。
リョクが静かに続けた。
「でも、アオは気づいていたんだ。あなたたちが何かを企んでいることを。だから、自分からそっちへ行った」
「……い、いつから……気づいて……?」
神宮寺の声が震える。
「さっき話を聞いたよ。農園にあなたが迎えに来たとき、すでに違和感を覚えていたみたいだ」
リョクの答えは淡々としていた。
「そ、そんな前から……どうして……」
「ヒントは、あなたが送った動画だ」
アキトが言葉を挟む。
「レイとトウヤくんが映っていた、あの動画だよ」
「……あの動画の、どこに?」
トウヤが困惑を深める。
「アオくんは気づいたんだ。トウヤくんが『黒のバングル』をつけていなかったことに。そして、それをレイがしていたことに」
「ど……どういうこと?」
「つまり——レイにとって、トウヤくんは『番』じゃないってこと。アオくんはそこから推測したんだ。レイは何らかの理由で自分を遠ざけるために演技をしている、と」
「そ、そんな……そんな前から気づいていたなんて……」
トウヤは言葉を失い、唖然とするばかりだった。
視界に映ったのは、無表情の一条社長と、アオの弟・神川リョクの姿だった。
「一条社長……これはどういうことでしょうか?」
神宮寺は理解できず問いかける。
体が鉛のように重い。
神川リョクの「支配の力」と一条の「威圧の力」が絡み合い、拘束されていないはずなのに身動きひとつ取れなかった。
「レイ? どうして僕まで……」
涙目になりながら、トウヤが困惑して叫ぶ。
カチャリ、と音を立ててドアが開き、アキトが姿を現した。
「トウヤくん……まだ気づいていないの?」
優しい口調とは裏腹に、その瞳は冷ややかだった。
「アオくんはカナメさんが見ているよ。リョクくんが調整した香りがよく効いていて、被害は出ていないみたいだ」
そう報告する一条アキトの言葉に神宮寺の顔がみるみるうちに困惑へと染まっていく。
「なっ……どうして……」
「番を剥がしている組織の存在は前から掴んでいた。ただ、尻尾を掴めなかった」
レイが静かに言葉を紡ぐ。
「あなたが管理しているのはわかっていたが、どこに研究所があるのか、どんな実験をしているのか——その確証が必要だったんだ。だから泳がせていた」
レイの声は淡々としていたが、胸の奥に潜む怒りを隠しきれていなかった。
「だが……アオに手を出した。それが、あなたの敗因だ」
神宮寺の瞳が揺れる。
「トウヤが近づいてきたのも、あなたの計画のひとつだろう?」
レイは視線を落とした。
「だが、それも利用させてもらった。トウヤが使った香りの成分はすでに解析済み。リョクが解毒処方を作った」
「え……嘘でしょ? じゃあ……ずっと、あの香りの効果はなかったってこと?」
トウヤが震える声で問い返す。
「そう、ダミーだったんだ」
アキトがふっと笑みを零す。
ただ、レイは目を伏せた。
「……アオが俺から離れることは、予想していなかった」
その言葉に、一瞬だけ彼の感情がにじむ。
リョクが静かに続けた。
「でも、アオは気づいていたんだ。あなたたちが何かを企んでいることを。だから、自分からそっちへ行った」
「……い、いつから……気づいて……?」
神宮寺の声が震える。
「さっき話を聞いたよ。農園にあなたが迎えに来たとき、すでに違和感を覚えていたみたいだ」
リョクの答えは淡々としていた。
「そ、そんな前から……どうして……」
「ヒントは、あなたが送った動画だ」
アキトが言葉を挟む。
「レイとトウヤくんが映っていた、あの動画だよ」
「……あの動画の、どこに?」
トウヤが困惑を深める。
「アオくんは気づいたんだ。トウヤくんが『黒のバングル』をつけていなかったことに。そして、それをレイがしていたことに」
「ど……どういうこと?」
「つまり——レイにとって、トウヤくんは『番』じゃないってこと。アオくんはそこから推測したんだ。レイは何らかの理由で自分を遠ざけるために演技をしている、と」
「そ、そんな……そんな前から気づいていたなんて……」
トウヤは言葉を失い、唖然とするばかりだった。
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