78 / 86
第78話 見つけた
しおりを挟む
「アオ君への香りの作用、まだ不十分だ」
神宮寺はさらなる依存を深めるため、香りの強度を上げるよう指示を出した。ティーセットや部屋の空調に仕込まれる香りは、日ごとにわずかに濃度を増していく。アオを縛りつけるはずだった。だが、アオはすぐには乱れを見せない。
それでも、アオ自身から接触してくる機会が増えていた。頭を撫でられると安心したように目を閉じ、時には撫でている最中にスヤスヤと寝息を立てることもある。その姿を見て、神宮寺は「心を許している証拠だ」と確信した。
「寝てた……ごめん」最近、アオは敬語を使わなくなってきていた。
「眠いなら寝ていてもいいよ」そう優しく答えると、胸に顔をうずめて甘えてくる。
顎に手を添えて顔を近づけると、アオは唇を避け、その代わりに首筋へとキスを落とした。チュッ、チュッと湿ったリップ音が響く。やがて舌が首筋を這い、熱を残す。
「誘っていますか?」と問いかけても、アオは答えずに首筋を舐め続けた。今日の濃度は効果があった——神宮寺はそう信じ込んだ。
(そろそろ、俺のものにしなければ……)
そう思い、アオの服に手を差し入れた瞬間——
ブーブーブーッ!
けたたましいブザー音が館内に鳴り響いた。
「なっ。なに?」アオが怯え、神宮寺にしがみつく。
神宮寺は素早く電話を取った。「もしもし、何があった!?」
電話口の研究員の声が切迫している。「急に館内のセキュリティシステムがダウンして、すべてのロックが解除されました!」
「どういうことだ!? なぜそんなことに——」
「実験対象者が逃げ出しました!」
その言葉に神宮寺は舌打ちし、アオの手を引いて研究室へ急いだ。
だが、その場所に着いたとき、スタッフ全員が床にうずくまり動けなくなっていた。
「ど……どういうことだ……」戸惑う神宮寺。
そのとき、低く静かな声が響いた。
「やっと見つけた」
レイが姿を現した。瞳に宿るのは静かな怒り。
「どうしてここが!?」神宮寺が叫ぶ。
「アオ! こっちに来て!」リョクがアオの手を引いた。
「リョク!」
「俺の支配の力は広範囲じゃ長く持たない。ムルの子たちはカナメとアキトが外に出した。だから一緒に行こう!」
「アオ! 待て!」神宮寺の声が遠くで響く。
だが、レイのムガルの力は絶大だった。リョクが支配で止めていた研究員たちは意識を失い、次々と倒れ伏す。その波は神宮寺にも及び、彼の視界はゆっくりと暗転していった。
*---------------
建物を抜け出した直後、その場に震えながらもこちらへ歩み寄る人物がいた。
ムル335号と呼ばれていた青年だった。以前、研究所で助けようと香りを嗅がせた相手だ。
「ありがとう。おかげで僕の番と会えた」青年は安堵に満ちた声でそう言い、手にしていた黒のバングルをアオに差し出した。
「これ……返すよ」
「よかった……でも、あの後も辛かったでしょ? すぐに助け出せなくて、ごめん」
「……いいんだ。君が動いてくれたから、俺はまだここに立ててる」そう呟く青年の瞳には、もうかつての虚ろさはなかった。
神宮寺はさらなる依存を深めるため、香りの強度を上げるよう指示を出した。ティーセットや部屋の空調に仕込まれる香りは、日ごとにわずかに濃度を増していく。アオを縛りつけるはずだった。だが、アオはすぐには乱れを見せない。
それでも、アオ自身から接触してくる機会が増えていた。頭を撫でられると安心したように目を閉じ、時には撫でている最中にスヤスヤと寝息を立てることもある。その姿を見て、神宮寺は「心を許している証拠だ」と確信した。
「寝てた……ごめん」最近、アオは敬語を使わなくなってきていた。
「眠いなら寝ていてもいいよ」そう優しく答えると、胸に顔をうずめて甘えてくる。
顎に手を添えて顔を近づけると、アオは唇を避け、その代わりに首筋へとキスを落とした。チュッ、チュッと湿ったリップ音が響く。やがて舌が首筋を這い、熱を残す。
「誘っていますか?」と問いかけても、アオは答えずに首筋を舐め続けた。今日の濃度は効果があった——神宮寺はそう信じ込んだ。
(そろそろ、俺のものにしなければ……)
そう思い、アオの服に手を差し入れた瞬間——
ブーブーブーッ!
けたたましいブザー音が館内に鳴り響いた。
「なっ。なに?」アオが怯え、神宮寺にしがみつく。
神宮寺は素早く電話を取った。「もしもし、何があった!?」
電話口の研究員の声が切迫している。「急に館内のセキュリティシステムがダウンして、すべてのロックが解除されました!」
「どういうことだ!? なぜそんなことに——」
「実験対象者が逃げ出しました!」
その言葉に神宮寺は舌打ちし、アオの手を引いて研究室へ急いだ。
だが、その場所に着いたとき、スタッフ全員が床にうずくまり動けなくなっていた。
「ど……どういうことだ……」戸惑う神宮寺。
そのとき、低く静かな声が響いた。
「やっと見つけた」
レイが姿を現した。瞳に宿るのは静かな怒り。
「どうしてここが!?」神宮寺が叫ぶ。
「アオ! こっちに来て!」リョクがアオの手を引いた。
「リョク!」
「俺の支配の力は広範囲じゃ長く持たない。ムルの子たちはカナメとアキトが外に出した。だから一緒に行こう!」
「アオ! 待て!」神宮寺の声が遠くで響く。
だが、レイのムガルの力は絶大だった。リョクが支配で止めていた研究員たちは意識を失い、次々と倒れ伏す。その波は神宮寺にも及び、彼の視界はゆっくりと暗転していった。
*---------------
建物を抜け出した直後、その場に震えながらもこちらへ歩み寄る人物がいた。
ムル335号と呼ばれていた青年だった。以前、研究所で助けようと香りを嗅がせた相手だ。
「ありがとう。おかげで僕の番と会えた」青年は安堵に満ちた声でそう言い、手にしていた黒のバングルをアオに差し出した。
「これ……返すよ」
「よかった……でも、あの後も辛かったでしょ? すぐに助け出せなくて、ごめん」
「……いいんだ。君が動いてくれたから、俺はまだここに立ててる」そう呟く青年の瞳には、もうかつての虚ろさはなかった。
22
あなたにおすすめの小説
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる