【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

文字の大きさ
77 / 86

第77話 進展?

しおりを挟む
アオは作業を終えると、神宮寺へ連絡を入れた。

先ほどの一件もあったためか、神宮寺は従事者を伴い、アオが安らげるようアフタヌーンティーを用意していた。テーブルの上に並ぶ紅茶とお菓子。その中には、いつもとはわずかに異なる香りが混ざっている。

ソファで待っていたアオの隣に、神宮寺が自然に腰を下ろす。それも、もうアオにとっては不思議ではなくなっていた。気がつけば彼は、神宮寺の肩にもたれかかっていた。

「今日は、すみませんでした」
「さっきの人はどうなったんですか?」

「安心してください。あの時は興奮状態でしたが、今は落ち着いて休んでいます」
「そっか。よかった」

そう言いながら、アオは自ら神宮寺を抱きしめるように両腕を回した。

「アオ君? いつもと違いますね。どうかしましたか?」
「わからないけど……ギュッとしてほしい」

香りが作用している——神宮寺は直感した。彼はもう、自ら求めるようになっている。ふっと微笑み、神宮寺はその要望に応え、強く抱きしめた。

上目遣いで見上げてくるアオは、無防備で愛らしい。その唇を指先でなぞり、顔を近づけた瞬間スマホの着信音が鳴った。

舌打ちをしてから電話に出る。

「……誰かがデータに侵入? どこまで追跡できる?……わかった。すぐ行く」
「大丈夫?」

神宮寺を抱きしめたまま、アオが心配そうに尋ねる。

「アオ君。力を貸してくれますか?」
「僕の?」
「ええ。少々厄介なことが起きました」
「わかった」

二人はそのまま監視室へ向かった。モニターが並ぶ部屋にアオが姿を現すと、スタッフがざわめき、視線が一斉に集まった。

数人の研究員が対応に追われていたが、アオは席に歩み寄り、静かに言った。
「代わります」

画面に並ぶプログラムを素早く確認し、データの穴を見つけ出す。それを即座に修復し、侵入者の痕跡を追い始めた。

「抜かれたデータは最小限で止められたと思う。それから、この方法ではもう侵入できないよう穴を塞いでおいたけど。気になる所がいくつか残ってるけど、僕が直した方がいい? それとも指示を出して、みんなに任せる?」

隣で見守っていた神宮寺に確認を取る。

「誰が侵入したかの特定は?」
「僕が入った時には、もう痕跡が消されてて。あと少し早ければ追いつけたかもしれないけど」

神宮寺は頷いた。
「なるほど。では、その穴の修復はアオ君に任せましょう。あなたの部屋からでも作業ができるようにします」
「はい」

トウヤからも連絡が入っていた。
アキトやレイは打ち合わせの最中で、トウヤ自身も同席していたと確認が取れた。つまり、イルジオンの仕業ではない。

数日後。アオは新たに与えられたアクセス権限で、データベースの奥深くを確認し、次々と脆弱な箇所を見つけては修復していった。その驚異的なスピードと正確さに、スタッフたちは舌を巻いた。やがてその報告は神宮寺の耳にも届いた。

「アオ君の能力に、皆が驚いていましたよ」
「僕は、神宮寺さんに頼まれたことしかしていないから」

アオはソファに身を預け、神宮寺の胸へと顔をうずめている。神宮寺はその頭を優しく撫でながら、囁いた。

「……何かご褒美はいりませんか?」
「ご褒美?」
「ええ。何か望むものがあれば」

アオはしばし考え、そして小さく首を横に振った。
「これだけでいい」

そう言って、神宮寺の腰に回した腕に力を込めた。その体温と香りに包まれながら、彼は静かに目を閉じた。

神宮寺はその重みを受け止めながら、満足げに微笑む。
——もう、彼は逃げられない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...