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第77話 進展?
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アオは作業を終えると、神宮寺へ連絡を入れた。
先ほどの一件もあったためか、神宮寺は従事者を伴い、アオが安らげるようアフタヌーンティーを用意していた。テーブルの上に並ぶ紅茶とお菓子。その中には、いつもとはわずかに異なる香りが混ざっている。
ソファで待っていたアオの隣に、神宮寺が自然に腰を下ろす。それも、もうアオにとっては不思議ではなくなっていた。気がつけば彼は、神宮寺の肩にもたれかかっていた。
「今日は、すみませんでした」
「さっきの人はどうなったんですか?」
「安心してください。あの時は興奮状態でしたが、今は落ち着いて休んでいます」
「そっか。よかった」
そう言いながら、アオは自ら神宮寺を抱きしめるように両腕を回した。
「アオ君? いつもと違いますね。どうかしましたか?」
「わからないけど……ギュッとしてほしい」
香りが作用している——神宮寺は直感した。彼はもう、自ら求めるようになっている。ふっと微笑み、神宮寺はその要望に応え、強く抱きしめた。
上目遣いで見上げてくるアオは、無防備で愛らしい。その唇を指先でなぞり、顔を近づけた瞬間スマホの着信音が鳴った。
舌打ちをしてから電話に出る。
「……誰かがデータに侵入? どこまで追跡できる?……わかった。すぐ行く」
「大丈夫?」
神宮寺を抱きしめたまま、アオが心配そうに尋ねる。
「アオ君。力を貸してくれますか?」
「僕の?」
「ええ。少々厄介なことが起きました」
「わかった」
二人はそのまま監視室へ向かった。モニターが並ぶ部屋にアオが姿を現すと、スタッフがざわめき、視線が一斉に集まった。
数人の研究員が対応に追われていたが、アオは席に歩み寄り、静かに言った。
「代わります」
画面に並ぶプログラムを素早く確認し、データの穴を見つけ出す。それを即座に修復し、侵入者の痕跡を追い始めた。
「抜かれたデータは最小限で止められたと思う。それから、この方法ではもう侵入できないよう穴を塞いでおいたけど。気になる所がいくつか残ってるけど、僕が直した方がいい? それとも指示を出して、みんなに任せる?」
隣で見守っていた神宮寺に確認を取る。
「誰が侵入したかの特定は?」
「僕が入った時には、もう痕跡が消されてて。あと少し早ければ追いつけたかもしれないけど」
神宮寺は頷いた。
「なるほど。では、その穴の修復はアオ君に任せましょう。あなたの部屋からでも作業ができるようにします」
「はい」
トウヤからも連絡が入っていた。
アキトやレイは打ち合わせの最中で、トウヤ自身も同席していたと確認が取れた。つまり、イルジオンの仕業ではない。
数日後。アオは新たに与えられたアクセス権限で、データベースの奥深くを確認し、次々と脆弱な箇所を見つけては修復していった。その驚異的なスピードと正確さに、スタッフたちは舌を巻いた。やがてその報告は神宮寺の耳にも届いた。
「アオ君の能力に、皆が驚いていましたよ」
「僕は、神宮寺さんに頼まれたことしかしていないから」
アオはソファに身を預け、神宮寺の胸へと顔をうずめている。神宮寺はその頭を優しく撫でながら、囁いた。
「……何かご褒美はいりませんか?」
「ご褒美?」
「ええ。何か望むものがあれば」
アオはしばし考え、そして小さく首を横に振った。
「これだけでいい」
そう言って、神宮寺の腰に回した腕に力を込めた。その体温と香りに包まれながら、彼は静かに目を閉じた。
神宮寺はその重みを受け止めながら、満足げに微笑む。
——もう、彼は逃げられない。
先ほどの一件もあったためか、神宮寺は従事者を伴い、アオが安らげるようアフタヌーンティーを用意していた。テーブルの上に並ぶ紅茶とお菓子。その中には、いつもとはわずかに異なる香りが混ざっている。
ソファで待っていたアオの隣に、神宮寺が自然に腰を下ろす。それも、もうアオにとっては不思議ではなくなっていた。気がつけば彼は、神宮寺の肩にもたれかかっていた。
「今日は、すみませんでした」
「さっきの人はどうなったんですか?」
「安心してください。あの時は興奮状態でしたが、今は落ち着いて休んでいます」
「そっか。よかった」
そう言いながら、アオは自ら神宮寺を抱きしめるように両腕を回した。
「アオ君? いつもと違いますね。どうかしましたか?」
「わからないけど……ギュッとしてほしい」
香りが作用している——神宮寺は直感した。彼はもう、自ら求めるようになっている。ふっと微笑み、神宮寺はその要望に応え、強く抱きしめた。
上目遣いで見上げてくるアオは、無防備で愛らしい。その唇を指先でなぞり、顔を近づけた瞬間スマホの着信音が鳴った。
舌打ちをしてから電話に出る。
「……誰かがデータに侵入? どこまで追跡できる?……わかった。すぐ行く」
「大丈夫?」
神宮寺を抱きしめたまま、アオが心配そうに尋ねる。
「アオ君。力を貸してくれますか?」
「僕の?」
「ええ。少々厄介なことが起きました」
「わかった」
二人はそのまま監視室へ向かった。モニターが並ぶ部屋にアオが姿を現すと、スタッフがざわめき、視線が一斉に集まった。
数人の研究員が対応に追われていたが、アオは席に歩み寄り、静かに言った。
「代わります」
画面に並ぶプログラムを素早く確認し、データの穴を見つけ出す。それを即座に修復し、侵入者の痕跡を追い始めた。
「抜かれたデータは最小限で止められたと思う。それから、この方法ではもう侵入できないよう穴を塞いでおいたけど。気になる所がいくつか残ってるけど、僕が直した方がいい? それとも指示を出して、みんなに任せる?」
隣で見守っていた神宮寺に確認を取る。
「誰が侵入したかの特定は?」
「僕が入った時には、もう痕跡が消されてて。あと少し早ければ追いつけたかもしれないけど」
神宮寺は頷いた。
「なるほど。では、その穴の修復はアオ君に任せましょう。あなたの部屋からでも作業ができるようにします」
「はい」
トウヤからも連絡が入っていた。
アキトやレイは打ち合わせの最中で、トウヤ自身も同席していたと確認が取れた。つまり、イルジオンの仕業ではない。
数日後。アオは新たに与えられたアクセス権限で、データベースの奥深くを確認し、次々と脆弱な箇所を見つけては修復していった。その驚異的なスピードと正確さに、スタッフたちは舌を巻いた。やがてその報告は神宮寺の耳にも届いた。
「アオ君の能力に、皆が驚いていましたよ」
「僕は、神宮寺さんに頼まれたことしかしていないから」
アオはソファに身を預け、神宮寺の胸へと顔をうずめている。神宮寺はその頭を優しく撫でながら、囁いた。
「……何かご褒美はいりませんか?」
「ご褒美?」
「ええ。何か望むものがあれば」
アオはしばし考え、そして小さく首を横に振った。
「これだけでいい」
そう言って、神宮寺の腰に回した腕に力を込めた。その体温と香りに包まれながら、彼は静かに目を閉じた。
神宮寺はその重みを受け止めながら、満足げに微笑む。
——もう、彼は逃げられない。
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