【完結 R18版】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗

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第76話 行われていたこと

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それからというもの、アオは依頼されたデータを迅速かつ正確に集めていった。そのおかげで神宮寺の手元には膨大な情報が集まりつつあった。

トウヤの報告によれば、アキトはいまだその痕跡を掴めていないらしい。

やはりアオは優秀だ。イルジオンで働いていた経験と能力の高さが、この精度を可能にしている。

最近は香りの効果に慣れてきたのか、アオを悩ませていた頭痛の頻度も減り、神宮寺を呼び寄せる回数も徐々に少なくなっていた。

「……ムル用の香りの強度を、もう少し上げるか」
もっと依存してもらわないと困る。そう思っていると——

研究所の緊急ブザーが甲高く鳴り響いた。
「ムル335号が脱走した!」
研究員たちが一斉に騒然とし、白衣の影が慌ただしく駆け抜ける。

「早く見つけ出せ!」
神宮寺は苛立ちを隠さず、鋭い声で指示を飛ばした。

*---------------

ドサッ——。
データ抽出の作業をしていたアオは、入口の方から響いた大きな音に驚き、仕事部屋から出た。

そこには、白い服をまとい、床に崩れ落ちるようにうずくまり、荒い呼吸で身を震わせる人物がいた。

「だ……大丈夫ですか!?」

「んっ。うぅ」
耐えきれない欲望を我慢しているようだった。

アオは慌ててポケットの中にある香りの小瓶を取り出し、彼に嗅がせた。苦しげだった表情がわずかに和らぎ、理性の光が戻っていく。

「お水、持ってきますね」
「……あ、ありがとうございます」

差し出したグラスの水を一気に飲み干した後、男は途切れ途切れに語り始めた。

「僕の番から引き離されて……無理やりここへ連れて来られたんだ。そしてここで実験台にされて」

その声は震えていた。

「ここでの香りを嗅がされると、理性が吹き飛んで、淫らな精神状態になって、番に似た匂いを持つ人間の相手をさせられるんだ。その相手と疑似的に『番』の状態になって自分の力を、その人に使わせるように仕組まれているんだ」

耐えきれずに吐き出される言葉。

「毎日、香りを嗅がされて、番の匂いをまとった他人を求めて懇願して快楽に溺れるよう仕向けられる。もうイヤだ……ここから抜け出したい」

男が叫んだその瞬間、アオの部屋のドアが開き、神宮寺と数人の部下が駆け込んできた。

「捕まえろ!」

「イヤだ! もうイヤだッ!」
必死に抵抗する彼は、力ずくで押さえ込まれ、再び連れ去られていった。

「アオ! 大丈夫ですか?」

神宮寺が駆け寄る。
「急に知らない人が入ってきて。倒れたから、水をあげただけ」

「彼は、何か話していましたか?」

「辛いって。もうイヤだって。ここでは、何が行われているんですか?」

アオの問いに、神宮寺は深く息を吐いた。

「今度、ちゃんと話します。だから、今は気にしないで依頼した仕事に戻ってくれますか?」
そう言いながらアオを抱きしめた。神宮寺がまとっているこの濃く漂う香りに包まれると、アオは抵抗せずに言うことを聞く。

「わかりました。でも、今度はちゃんと話してほしい」
そう小さく答え、アオは再び仕事部屋へと戻っていった。

神宮寺はその背中を見送りながら、ゆるやかに目を細めた。アオの洗脳も進んできている——そう感じた。
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