グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第10話 モグラーギルドの鍛冶場で

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 カンカン! ガン! ドドン!

 さすが王国一と言われているモグラーギルドの鍛冶場だ。職人の罵声、工具で叩く音、燃え盛る炎の熱気で場が活気付いている。

 ノアはモグラーギルドマスター、ボイドに連れられて鍛冶場に来ていた。

「ノアよ。鍛冶場は好きか?」

「大好きです! ワクワクするし、なんか格好いいから。モノづくりが大好きなんです! 魔土術を学ぶのと同じくらいに」

「ガッハッハ! そうかそうか。それは良かった。これからしばらくお前さんはここで修行じゃ」

「はい!」

「おい! ゴーボ! ゴーボはいるか⁈」

「はい、おやっさん。今行きます!」

 ボイドは鍛治職人でこの鍛冶場の責任者ゴーボを呼び出す。

「ゴーボよ。今日からしばらくの間、このノアの面倒を見てやってくれるか?」

「は? どういうことですか、おやっさん」

「じゃから、ノアを鍛えてショベルカーの資格を取らせるって言っとるんじゃ」


「いやいや、おやっさん⁈  こんな小さな子供ですよ。こんな危ない場所に連れて来るだけでもやばいのに、鍛治を教えるなんて。意味がわから—」


「よいしょっと」

 ガチャンと音がしてゴーボが振り返ると台の上にノアが自分用にカスタマイズしたハンマーとその他諸々の鍛治道具を取り出した。

「ノア・グリードと申します。ゴーボ、よろしくお願いします!」

「よろしくって……ん?」

 ゴーボがノアの道具を手に持って確かめる。

「おい、ノアって言ったな。これはお前が自分で打って造ったのか?」

「はい! 7歳の時につくりました。ずっとそれを使っています」

「それでこれがそのノアが独学で造った探掘刀じゃ」

 ボイドから渡されたものを見てゴーボが驚く。

「これ……すでに探掘士<シャベラー>を超えるレベルですよ。そんなバカな……って、ノアはこれまでダンジョンには?」

「D級とE級を何回もモグっちょる。先日発見された成長したダンジョン、あの調査団のリーダーがこのノアじゃ。モグラーのリーダーもノアでサポートが親父のロイじゃ」


「えぇ! あのロイさん? え? ロイさんの息子がノアで……リーダー?」

 理解が追いつかないゴーボを見て笑うボイド。

「そりゃそうなるわな。しかしそういうことじゃ。要はその調査までにもっと優れた探掘刀を造って持って行かせたいんじゃよ」

 少しずつだが状況がわかってきたゴーボ。

「あ、そうそう。ノアの探掘の技術も一流じゃ。こやつが仕留めたジャイアントソイラアントの殻の切口を見ればお前もわかる。総合的に考えて、試験をせずともこいつはドリラー以上の探掘士の腕をすでに持っとるぞ」


「……そ、そうっすか。わかりました」


「よろしくお願いします!」


 その頃、ロイは家で調査団のことについてリリカと話し合っていた。

「ロイ。あなたはノアの実力をどう思ってる? 本当に調査団のリーダーなんてできるのかしら?」

「……昨日、あのダンジョンの中にリックと入ったんだ。ノアの戦いの後がまだ残っていたよ。 ノアとティアの言う通り、一発でモンスターを倒していたよ。信じられないけど、リリカの炎系魔土術と同等もしくはそれ以上と感じたよ。それについては君の方が思い当たる節があるんじゃないかな」

 ロイに言われて、確かにそうだと納得してしまうリリカ。

「正直に言うと、ダンジョン調査でノアの身に危険が起こるとは考えていない。怖いのは帯同する王国騎士がいるってことだ。リックの話だと、国王はすでに許可を出し、調査団メンバーは俺とノア、そしてリックが特別にサポートに入る。サポートといっても王国騎士が変な騒ぎを起こさないように見張ってくれるっていうのが本当の理由だけどな」


「ダンジョンで王国騎士が何か問題を起こすっていうの?」

「いや、そうじゃなくてノアの存在に興味を持っているみたいだ。つまり王国へ連れて行こうとする可能性がある。もちろんそんな事はさせないが、ノアの存在を王国に知られてしまったことは正直よろしくない状況だと思っていてね」


「ノアが王国へ行くなんて絶対に阻止しなきゃ。あの子はもっと自由に生きるべきよ。私もティアと一緒にダンジョン入口で待ってるわ。もしも何かあったら全力で王国騎士を焼き尽くしてでもノアを守るわ」


「そ、そうだね。まぁ、国王が僕らのことをわかっているからそんな強引な事はしないと思うけどね。その時は俺たちでノアを守ろう」



 そして一週間が経過した。モグラーギルドの鍛冶場がざわついている。


「ゴーボ親方! 完成しました!」

「おう! ノアの鍛冶場での最初の作品だな。ちょっと見せてみろ」

 ゴーボが最新の探掘刀の出来を確認する。

(ヤベェなぁ。 ここの連中よりもはるかに優れたものを造っちまいやがった。示しがつかねぇよ)

 少し焦っているゴーボを見てノアが不安そうに確認する。

「出来はイマイチですか? 今の僕の全力です」


「い、いやそうじゃねぇんだ。最高の出来だと思うぜ! 装着してみろよ」


 そう。装着という言葉が正しいのだ。探掘刀ではあるが、ノアにとって今回は調査団として前線で戦いもある。武器を持ち替える隙を作りたくなかった。
 そこでグローブ型を採用し、手の甲に探掘刀を仕込み、手のひらの小指付け根あたりのボタンを押すと刀が飛び出す仕組みとした。 肝心の探掘刀はジャイアントソイラアントの殻とツノを鉄と混ぜて圧着したものを叩いて産み出すという新しい方法で強度を10倍にまで高めることに成功した。

 更に特筆すべき点として、このグローブタイプの探掘刀はモグラー初の二刀流であった。ゆえにこのアイデア満載の一品をの当たりにしたことは親方として嬉しい反面、すでにゴーボ以外の鍛冶場職人たちよりも技術とアイデアが上だと証明されることとなり、なんとも複雑な気持ちになるゴーボだった。


 カチャ、シャキーン! カチャ、シャキーン!

 何度か動作確認をしてみる。


「うん。これでよし! 明日の調査になんとか間に合った! ゴーボ親方、本当にありがとうございました!」


「おう! ダンジョン調査頑張れよ!」


「はい!」


 家に帰ってきたノアはロイにグローブを見せる。すげぇと本気でボヤいてしまったロイの顔を見てリリカとティアが笑う。調査本番を前に割と穏やかな時間を過ごす。




 そしてついに未開ダンジョン調査当日の朝を迎えた。
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