グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第17話 いざ、謁見の間へ

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 ミラ王女の話を聞いて、ハッとするノア。

「つまり……王子自身が王権を勝ち取るために仕掛けたことかもしれないと?」

「そうよ、それを相手の陰謀だとなすりつけてね」


「……結構すごいタイミングで僕と父さんは招かれたんですね」


「それに関しては本当に申し訳なく思っているわ」


 やっと事の重大さがわかってきたノア。呑気のんきに木登りして景色を眺めて楽しんでいる場合ではない。


「事が大きくなれば内乱が起こってしまうわ。そうなれば王国の民にまで影響を与えてしまう。 最悪この平和なヒューマニア王国が魔族の陰謀にめられて滅びるかもしれない」

「私もリリアナも、父も母もどうしようもないの」

「……あの、どうして10歳の僕にそんな相談をされるのですか? 父に言うならともかく……」


 リリアナ王女が口を開いて指をさす。

「ヘンドリック爺が同じ話をしている」


 ロイとリックの表情が曇っている。しかし周りから見てもこれはただ木登りしている子供達を見守っている親と執事でしかない。怪しまれることなく依頼しているわけだ。


「あなたのダンジョンでの発言、考え、行動を全て観察していたの。そして心から思えたのよ。ノアは王国に住む民のために動ける人間だって。戦闘や魔土術のレベルの高さにも驚いたけど、ノアとロイは信頼できるって思ったのよ」


「……お力になれるかどうかはわかりませんが、お断りする状況ではなさそうですね。父さんとも相談してどうすべきか考えてみますね」

 ミラ王女の表情が明るくなる。

「ありがとう! ノア」


 ノア達は樹から降りて、ワザとらしい仕草でロイを呼ぶ。いかにも庭園で遊んでいるようなフリをして、ロイの意見を聞くことにした。

「父さんはヘンドリックさんから聞いた?」

「……邪気を含んだ髪飾りの件と国王の件だな? 聞いたぞ」


「解決するまで従者になれってお願いされたんだけど、どうしたらいい?」

「いや、断れねぇよな。俺も王宮に住んでくれって言われてよ。でも俺の場合、地名度抜群なんだよなぁ。片腕の英雄が来たって怪しまれるぞ」

「……だったら、僕が従者として来るってことで家族全員、王宮に呼んじゃう?」


「あぁ! リリカとティアをか? いやいやそれは……ん? まぁ、そんなに不味くは無いのか……」

「しかも母さんめっちゃ強いでしょ。いざっていう時に活躍してくれるよ」

「……ノアの意見も一理あるな。しかし、黄金の大地のメンバーが二人同時に王宮に住み込みで働きに来ましたってなったらよ、犯人は警戒しねぇか?」


「……確かに」


「「う~ん」」


 悩んでも解決することもなく、結局ロイはリリカとティアを含めた四人で王宮に暫く住むことに決めた。女性二人の意見を聞かずに。それをノアが自然な流れでミラ王女に伝える。

「ということなんで、謁見えっけんの間で国王に伝える際にはミラ王女の方で、何か自然な言い訳を準備しておいてください。僕と父さんは口を合わせますから」

「わかったわ! 任せておいて!」

 こうして事前準備は整った。



 * * *

「ノア・グリード! ロイ・グリード! 前へ!」


 ノア達は謁見の間で玉座に座る国王の前まで前進し、片膝をついて俯く。


「……二人とも……顔をあげよ」


 ノアとロイは顔をあげて国王と対面する。ヒューマニア王国国王、ルドルフ14世は病気が進行しているのか、かなり体調が悪そうだった。


「ロイよ……久しいな。またお前に会えて余は嬉しいぞ」


「は! そのような身に余るお言葉を頂き、恐悦至極きょうえつしごくです」


「そして、息子のノアよ。此度こたびのダンジョン調査団のリーダーはお主であったと聞いておる。わずか10歳にして大儀であったぞ」


「ありがとうございます!」


 二人の王子は自身より年下のノアが活躍して機嫌を損ねているようだ。


「ダンジョンでの活躍を聞きたいところなのだが、余は今こういう状況でな……すまないが、早速報酬へと話をさせてもらうぞ……許せ、ロイよ……」


 ロイは変わり果てた王の姿にやり場のない憤りを感じている。

(一体誰だ……首謀者を暴いて必ず俺が斬る)


「今回の未開ダンジョン調査、並びにA級ダンジョン踏破による功績をたたええ、ノア調査団には金貨2000枚を報奨金として贈呈する! そして該当するダンジョンの名を『A級ノア・グリードダンジョン』とする! 」

(ノア・グリードダンジョンは恥ずかしいなぁ……)

「更に、調査団のリーダーであるノア・グリードにはダンジョン内で発見されたロングソードと超級魔土<レアラ>を贈呈する!」


「あ、ありがとうございます!」



「ちょっと待った!」

 横から罵声が飛ぶ。

「こんな下民になぜこのような褒賞をくれてやる必要があるのだ! 国王よ! このようにロイ・グリードという父親の栄光を盾にして、甘い蜜を吸う虫などを相手にしてはなりませぬ! 騙されてはなりませぬぞ!」

 第二王子のジョン・テッド・クライトンだ。ジョン王子はスタスタと歩いてノアの前に仁王立ちする。

「この卑怯者が! 恥を知れ!」

(うわぁ……面倒臭いのが来たな……ん? この人……)


「はぁ……ジョンよ……もう良い、今すぐ下がれ。余は今とても気分が良いのじゃ。それをお前のくだらない戯言で壊したくない。邪魔だ。ここから出て行け」


「な! なんですと! 私はただ王国として正しい判断をすべく—」

「王国騎士よ! 今すぐ第二王子をここから連れ出せ!」


 王の命により、ジョン王子はあっさり連行される。

「離せ! 離さぬか! 貴様ら全員処刑だ!」


 バタン!

 扉が閉まる。


「見苦しいものを見せてしまったな。重ね重ね許してくれ」


「国王陛下!」

 ミラ王女が前に出てくる。そしてノアとロイの間に立つ。

「なんだ? ミラどうした?」

「私、第一王女ミラ・ヴァン・クライトンは冒険者ノア・グリードを私の従者として迎え入れる所存です!」

 謁見の間がザワつく。


「ミラよ。どうしたのじゃ? 急に」

「実は此度のダンジョン踏破の一部始終を私がこの目で確かめてまいりました。この者、ノア・グリードの知性と人間性に興味を持ち、直々に我が従者として育てたく、つきましては王宮敷地内に、この者と家族を住まわせる許可を頂きたく存じます」

「な、なんだって?」

「いやいや、そんなことできるわけないだろ……」

 外野がより大きく騒ついてきた。


「ロイよ。お主はこのミラの提示を知っておるのか? それで良いのか?」

 国王がロイに直接確認を取る。

「は! 陛下より許可をいただけるのであれば、私ロイ・グリードとその家族はミラ王女のたっての希望をできる限り叶えられるよう努力する所存です」


 ノアには痛みで険しい表情をしている国王が少し穏やかになった気がした。


「ミラよ。お主の要望、許可する」


「ありがとうございます」


 ミラ王女がチラッとノアの方を見て笑った。
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