グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第19話 ノアのすごい発明品

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 9日目の朝を迎えた頃、ノアは家に帰ってきた。

「ただいま! お腹減ったよ~」

「ノア! おかえり!」

「お兄ちゃん!」

 ティアが抱きついてくる。

「うぇっ!!! お兄ちゃん、すごく……クサイ」

 ティアが後ろへよろめいて倒れるほどにむさ苦しい鍛治師のオヤジ臭と数日お風呂に入っていなかった異臭がミックスされ、とんでもない悪臭を放っていた。


「ノア! ご飯の前にお風呂よ!」


「あ……はい」


 そして、ゆっくりと朝食を摂り、休憩したあと、ノアは家族を呼んでアイテム袋から発明品を取り出した。

  
「明日からしばらく王宮で調査や護衛をみんなでするでしょ? だから僕なりにその助けとなるようなアイテムを作ったんだ」

「おう! どんなものだ?」

 ノアは小さなイヤリングを5つ取り出す。

「これは……イヤリング?」

 リリカの問いに頷くノア。

「マナフォンっていうんだ。これを身に付けておけば王都リトルガイアくらいの範囲だったら僕たちとミラ王女は連絡を取れると思う」


「「何だって!」」

「あ、いや、名前はまだ仮だから後でまた考え直すよ」


「「いや! そこじゃないって!」」


 早速ティアとロイが家を出て300mほど離れたところに立つ。そしてイヤリングをつけたティアがマナを流して念じる。

《お母さん、お兄ちゃん! 聞こえる? ティアだよ》


 家の中で待機していたリリカは驚いて暫く言葉が出ない。ティアの声が聞こえたのだ。


「すごい……すご過ぎるわ……」


《ティア! ロイ! 聞こえる? リリカよ》

《おぉ! 聞こえるぞ! これはすごいな》

《このマナフォンでみんなと意識を共有できれば、いきなり首謀者に襲われても何とかできると思う》

《ティアこれすごく気に入った!》

《父さん、ティア。戻って来て。まだ見せたいものがあるんだ》



 ロイたちは再び集まって、ノアの次の発明品発表に胸躍らせて待っている。しかし、ティアはともかく、ロイとリリカはノアの生み出すアイテムのクオリティーがあまりに凄すぎてひいていた。

(こんなものがもし王国内に普及したら人々の生活は一気に変わるだろう)

「準備できた! 父さん、ちょっと来て」

「ん? どうした?」

「ちょっと上着を脱いでもらっていい?」

 わけがわからず、上着を脱ぐロイ。そして薄いシャツからでもわかる鍛え抜かれた肉体と生々しい切断された左腕の傷跡が露見する。


「左腕にこのリングを装着してみて」

「左に? あ、あぁ。わかった」

 ロイが左腕にスポッとリングをめ込む。少し大きいようだ。

「ちょっとブカブカだぞ? どうしたらいい?」

「父さんのマナをそのリングに流してみて」

「……あぁ、わかった」

 ロイは目を閉じで全身のマナをリングに流れるように意識する。するとリングが輝き出し、サイズが徐々にロイの腕にピッタリと合うように伸縮し始めた。

「よし、うまくいった。それじゃ……父さん。昔、左腕があったときの感覚を思い出してマナを左腕に流してみて!」

 目を閉じながらロイはノアのいう通りにイメージする。過去の自分の左腕の感覚を呼び起こしながら、そこにあるかのように。自分の腕が……


「……嘘でしょ」

 リリカが口に手を当てて涙を流しながら見つめているその先には、リングの光によって形成された左腕を操るロイの姿があった。


「お、おい……これって……」


「新しい、父さんの左手だよ! 上手くいってよかった!」

 ニコッと笑うノアと大喜びするティア。泣きながらロイに抱きつくリリカ。そしてまだ現実を受け止められないでいるロイ。


 淡い光を放ちながらも、しかし自分の意思で動かせる左腕と左手。


「なんてことだ……全く違和感もない。いやむしろ、より優れているようにも感じる」

「父さんのマナを流しているんだ。意識した通りに動くよ。 勿論マナを止めると腕は消える。そこは父さん次第で」

 ノアの顔を見つめるロイ。

(この子は、本当に神の子だ……)

 そしてロイはこの時本気で思った。ノアをいつかグランサンクチュアに連れていく必要があると。

「ダンジョンで父さんの動きを見ていたときに思ったんだ。やはり片腕では右手の攻撃も力が分散されて威力が落ちているって。だから、今回の大事な王宮の任務では父さんの力が絶対必要だからなんとかならないかなって思ったんだ! 
 超級魔土<レアラ>のおかげでうまく行ったんだ! ソイラやハイソイラではダメだったんだ。だからずっと、手に入ったら作りたくて」


「ノア……お前まさか俺のためにずっと……」

 溢れる涙を我慢することなくロイはノアを強く抱きしめた。 

 そう。初めて我が子を二本の腕で。


 * * *


 十日目を迎えて、城下町コンクーリの冒険者ギルドでリックと合流したロイ一家は馬車に乗って出発した。そして王都リトルガイアの正門に到着し、検閲を受けていざ王都へ入る。前回と同じように今度はティアがその街並みを見て興奮している。

「すごい! 綺麗なドレス! お母さん、あっちの人の帽子!」

「はいはい。 綺麗ね」

 完全に流しているリリカ。そういえばロイもリリカも、そしてノアも服装にはさほど興味がない。ロイはガイアと冒険に興味が、リリカは魔土術に興味が、ノアはガイアとモグラーと発明に興味があるようだ。ティアは一番まともで、普通の人間らしい一面を兼ね備えているのかもしれない。

「ティアは大きくなったら何になりたいの?」

 リリカが母親らしい質問をする。


「ティアはね、お兄ちゃんのパーティーに入って一緒に冒険したい!」


「「やっぱりティアもこっち側の人間だったか!」」

 大笑いするロイとリリカに不満そうな顔で文句をいうティア。

「私だって魔土術使えるもん! 活躍できるもん!」

「いや、違うんだティア。お父さんたちはそれが嬉しいんだよ」

「そうそう、ティアもきっといい冒険者になれるわ。お母さんが保証する!」

 なだめるようにロイとリリカがフォローする。


「そろそろ王宮に着くぞ。みんな準備はいいかな?」

 リックの声に全員が笑顔で応える。


 そしていよいよ家族全員で王宮の中へ。



「みなさん、ようこそ王宮へ」


 ミラ第一王女が直々に迎えに来てくれた。そして、その後ろにちょこっと顔を出すリリアナ第二王女。


 ロイ、リリカ、ノアが片膝をついて挨拶をする。それを真似るようにティアも挨拶をする。


「第一王女のミラ・ヴァン・クライトンです。皆様、どうか普段通りでお願いします。今日からしばらくの間、ここ王宮でのお力添え、どうかよろしくお願いします」

 思いの外、ミラ王女が低姿勢なことに戸惑うリリカ。

「ロイ・グリードの妻で黄金の大地のメンバー、魔土術士のリリカです」

「わ、私はティア・グリードです……9歳です」


「あなたがノアの妹のティアね……ほら、リリアナ。挨拶して」


 リリアナ王女が恐る恐る前に出て小さな声で挨拶をする。


「第二王女……リリアナ・ヴァン・クライトン……です」


 リリアナ王女がチラッとティアを見る。そして目が合ってティアがニコッと笑顔を見せる。その笑顔を見てリリアナが少し笑顔になる。

(どうやら二人は仲良く慣れそうだわ。頑張ってねリリアナ。お友達は必要よ)

 ミラ王女はホッと一安心する。


「さあ、みなさん。中へどうぞ。王宮をご案内いたします!」






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