グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第23話 魔人軍長と人族の英雄

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「魔人軍長のグルテナス……四大魔軍……聞いたことがないぞ」

『ふふふ……ノエビラ魔王国の魔王が変わりましてね。あの方は素晴らしいですよ……
 さて、ヒューマニア王国の英雄、ロイ・グリード。こちらはあなたのことを知り尽くしております。勿論、黄金の大地のことも』

 ニコッと笑うグルテナス。

《父さん、どうする? 今、総攻撃仕掛けるべき?》

《いや、待て。こいつの力がまだわからないからノアはリリカと国王を守ってくれ。俺は王妃側をフォローしつつ、この魔族から情報を引き出す》

 マナフォンで会話をしつつ、ロイはグルテナスに話しかける。


「俺たちのことは筒抜けってことか。こんな片腕のおっさんを調べても何もいいことないぞ」


『ヒューマニア王国を魔族のものとするため、私が率いる魔人軍はこの王国で密かに国王の身体を乗っ取って国を滅ぼすことを計画しました。しかし、この国王ルドルフ14世、流石は優れた国王と噂されるだけあって、なかなかしぶとくて。結局身体を乗っ取ることができず、しかもこうして復活までさせてしまいました』


「計画が失敗したというのに、楽しそうだな」


 ロイの挑発に笑顔で返すグルテナス。

『はい。その通りです。国王が粘る間、王国内の軍事力を調査しておりまして。結論から申し上げて、魔族国家ノエビラにとって、取るに足らない小さな存在ということがわかりました』


「なんだと……言いたい放題言ってくれるじゃねぇか」


《ノア、こいつにサーチライトかけたか?》

《うん。こいつのいう通り、魔族の4大勢力、魔人、魔獣、魔妖まよう、魔物の一つの長であることは間違いないみたい。 魔族特有の術、邪念術じゃねんじゅつの使い手だ。認めたくないけど……こいつは強いよ》

《ここじゃぁ、全力で戦うことができねぇ。こいつの動き次第で外へはじき出して俺が戦う。リリカとミラ王女は聖属性の結界を強めて国王を含め自分たち3人の防御に徹してくれ。攻撃一つでこの部屋が吹っ飛ぶ可能性もある》

《わかったわ》

《ノア、タイミングを見て、ティアの方に回って王妃たちを防御だ》

《了解!》

 警戒体制が強まったことに気づいたグルテナス。

『では、まずは国の英雄から殺してしまいましょうか』


 ロイの剣をかいくぐり、邪剣で鋭く一振り。 ロイは剣で防御するが力に圧倒され、壁に吹っ飛ばされる。

「くっ……やはり魔族だけあって力が半端ねぇな……」


 ゆっくりロイの方へ歩き出すグルテナス。

『もともと、魔族は人族より3倍の力があります。魔人に至っては知能も人族と等しい。あなたたちが扱う魔土術と我々魔族の邪念術の優劣で戦うしかないのです。それは歴史が語っていますよ』


 立ち上がるロイに垂直に剣を振り下ろし、片膝をつかせる。ロイも剣で受けるのがやっとだ。

「ほらね……この通り。あなたは王国一の強さを誇る英雄だ。その英雄がこれではもはや裏から国を操るなどという計略を立てなくても良さそうです」

「くっ……」

 押し込まれていくロイ。そしてノアがティアと防御体制を整える。


《父さん! こっちは大丈夫だよ!》

《ロイ! 国王もバッチリよ。いつも通り戦って!》

 ニヤッと笑ってグルテナスの剣を振り払って蹴り飛ばす。窓ごと吹っ飛び、ロイも外へ飛び出す。


『なんだと! 人族になぜこれほどの力が……』


「だから英雄って呼ばれてんだよ。クソ魔人が」

 空中でロイが放つ一撃をまともに喰らってグルテナスは王宮の広場に叩きつけられる。

『グハァ!』

「……デファイア」

 剣に魔土術をかけて全力で斬撃を放つロイ。

『なめるな! 人族の魔剣ごときで私が倒せると思うなよ!』

 起き上がって邪念術を放つグルテナス。ぶつかり合って力くらべとなったが、人族であるロイのマナのパワーがグルテナスの邪気を圧倒する。


『く、くそ……こんなことが! グアァ!!!』


 大きな爆発音と共に一体が粉々になって砂煙がまっている。そこへリリカたちが駆けつける。


「ロイ!」

「父さん!」

「おう、みんな。無事だったか」


 グルテナスの姿はそこにはなかった。消失したのか、それとも上手く逃げたのか。ロイは手応えを感じていなかった。

「とりあえず、撃退はしたな。一旦国王とミラ王女の元へ戻ろう」


 ノアたちは再び国王の寝室へ。当然まだ戦いのあとが色濃く残されている。破壊された外壁、魔族の死骸。そしてジョン第二王子の遺体も。王妃とリリアナ王女は国王の側で泣き崩れている。レスタ第一王子はあまりの恐怖で震えて座り込んでいた。

 一方、ミラ第一王女は毅然きぜんとした振る舞いで周囲の者に指示を出し、情報が漏れぬように迅速に動いていた。万が一王国が、いや国王が魔族に暗殺されそうになったという事実が広がれば、市民の不安を助長させることになる。


「ヘンドリック、いいですね。この件は徹底的に箝口令かんこうれいを敷きなさい。口外したものは容赦無く処罰します」

「承知しました」

 本来ならばノアたちは国王のそばへ行って完治したことを喜ぶべきであろう。しかし、第二王子が死んだとあって、複雑な状況となっていた。

「ミラ王女、我々は王宮内に魔族がまだ潜んでいるかどうか、確認しようと思います。箝口令を敷かれるのであれば、一度広間に人を集めてもらえませんか? それで一気に調べてみます」

「わかりました。そのように手配します……ロイ、ありがとう」

 ニコッと笑ってロイたちは広間に向かった。



 * * *


 広間に集まったのは王宮を護る騎士と王宮に使える者全てである。ミラ王女は全ての事実を明かさず、今日見たことは口外するなとだけ指示を出した。深く理解する者、なんのことか分からない者といたが、とにかくいつになく厳しい口調でのミラ王女の命令とあって緊張感が広間に漂っていた。

《父さん、ミラ王女。サーチライトでここにいる方々全てを調べました。全員魔族ではありません》

《了解しました。ありがとう、ノア。そして後ほど食事の手配をいたしますのでみなさん、お部屋に戻って休憩なさってください。》


 こうして王宮初日の任務が終わった。いきなりの展開にどっと疲れがこみ上げてきたロイ一家は部屋に着くなり全員すぐ眠りについたのだった。



 そして、ロイとの戦いに敗れたグルテナスは下半身と片腕を失うほどの状態ながら、ヒューマニア王国から脱出していた。四大魔軍の一つ、魔獣軍長、ポリフェスの助けがあったからだ。怪鳥ポリフェスはギリギリのところでグルテナスを救い出し、煙に紛れてその場から退却していた。

『お前がこんなことになるなんてな。危なかったぞ。魔王国に戻って治療しろ。しばらくは安静だぞ』

『すまない。ポリフェス。まさか私が負けるなんて……』

『人族を舐めすぎだ。特にあの英雄ロイ・グリードには注意が必要だな』



『あぁ、しっかりと戦略を立て直す……ロイ・グリード……キサマだけは許さんぞ。必ずこの私、魔人軍団長グルテナスが命をいただく!』



 しかし、この時グルテナスはまだ気づいていなかった。魔族にとって本当の脅威がロイではなく、ノアだということに。



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