グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

文字の大きさ
22 / 55
第一章 ヒューマニア王国

第22話 国王の病の正体

しおりを挟む
 ミラ王女とロイたちは急いで国王の寝室に向かった。ミラ王女を先頭に続々と寝室へと入る。10名の医療系魔土術団がベッドの窓側に。邪魔にならないように王の側近が4名部屋の隅に。そして王妃と第一皇子がベッドの通路側で王を心配する眼差しで見守っている。第二王子は寝室にいない。
 パッと見ただけでもわかる。国王の容体ようだいは極めて悪そうだ。


 ノアは冷静に部屋の人間にサーチライトをかけて確認した。

(……やはりいた)


《ミラ王女、父さん。左から3番目の一番偉そうなメガネをかけた男性は魔族だよ。あと、その右隣の助手のような女性も》

《何ですって! サルド主治医が?》

 困惑するミラ王女。サルドは医療系魔土術団の副団長である。どうやら王国の闇は深そうだと誰もが思う。


《魔族の対処は俺に任せろ。ノアとリリカは予定通り国王のほうを頼む。ティアはリリアナ王女を頼んだぞ》

《了解!》


「皆さん、今から治療を行いますので、ベッドから少し離れてください」


 ミラ王女が呼びかける。しかしレスタ第一皇子がミラ王女に反論する。

「おい、ミラ! いい加減にしろ! そんな下民に何ができるというのだ! 
 父上はこんな状態なんだぞ! 早くそいつらを部屋から追い出せ!」

「そうですぞ、ミラ王女。こんな小さな下民の子供に一体何ができるとおっしゃるのですか?」

 不快な言葉をぶつけるサルドをにらみつけるミラ王女。

「サルド……黙りなさい。 医師団の皆もベッドから離れなさい」

 戸惑いながらも下がる医師団。レスタ皇子がミラ王女に詰め寄るがミラ王女は落ち着いている。

「レスタお兄様、冷静になってください。彼らを呼んだのは他でもない国王自身です。急ぎで呼ぶよう申し使っております。さぁ、時間がありません」


「……くっ!」

「レスタ。下がりなさい」


 珍しく王妃が口を出す。仕方なく後ろへ下がってノアに譲るレスタ皇子。


「ノア。どうか国王をよろしくお願いします」

「王妃。全力を尽くし、必ず国王の病を治してみせます」


 ノアがチラッと魔族の様子を見る。一見戸惑っているようだが、その奥にニヤリと笑みがこぼれたのを見逃さなかった。


(お前たちの好きにはさせない)


 国王のもとへ近づくノア。そしてバックからノア製作、ゴーグル式【マナスカウター】を取り出して身につける。

「マナスカウター、オン」

 ピピピピッ……スカウターが反応している。
 ノアは国王の胸から繋がっている黒いモヤモヤした糸のようなものを見つける。

「これだ……呪縛念鎖じゅばくねんさ。髪飾りから繋がっているのがわかるぞ……」

 そして、あらかじめ幾重にも聖属性魔土術をエンチャントしておいた探掘刀でサクッとカットする。


「なっ! なんだと! そんなバカな!」


 サルドが大声を出す。


「ミラ王女、母さん! お願いします」

 ノアの掛け声で、二人は詠唱して国王の体が覆われるように結界を張った。

「くそ!」

 サルドとその一味が呪縛魔土術を国王へかけようとして腕を伸ばしたところをロイが一瞬で腕を切り落とす。 

「グッッ! グァ!!!」

 そしてロイは邪気を隠すためのアクセサリーを切り落とした腕から見つける。

「このブレスレットだな」

 踏み潰して破壊した瞬間、医師であったはずの二人が凶悪な魔族へと姿を変える。

「「「ギャァー! 魔族よ! 」」」


 周囲が突然の出来事にパニックになる。何がどうなったのか。全く状況がわからず、レスタ皇子はただ悲鳴をあげて逃げ回る。


『人族のゴミどもが……我らの計画を……許さんぞ!』


 襲いかかってくる二匹の魔族を真っ二つに斬ったロイ。直ぐに外の異変に気付く。


「リリカ! 王女! 外から波状攻撃だ! 王の結界を強めろ! 王妃や皆は窓から離れて部屋の奥でかがんでいろ!」 


 庭師やメイドが翼の生えた魔族へと姿を変えて窓の外から現れる。

『国王を殺せ! 同時に術者も狙うのだ!』



 外から窓を破壊して幾重にも連なった呪縛念鎖が国王に向かって伸びてくる。
 しかし結界が全て跳ね返す。全てのマナを流して結界に向けて魔土術を唱えている無防備なリリカとミラ王女に、魔族の呪念術が襲いかかる。

「こっちは任せろ! オラァ!」

 ロイがなんとかカバーして二人の身を守る。

 しかし、まだ終わらない。窓から部屋に飛び込んでくる魔族。


「ノア! 結構こっちはヤベェぞ! まだ時間はかかりそうか⁈」


「父さん、もう少し! もう少しだけなんとか耐えて!」


 複数でロイに襲いかかる魔族。そして一部が王妃やリリアナ第二王女の方へ! 

「うわぁ! く、来るな!」

 怖がって王妃の後ろで震えているレスタ皇子。


「し、しまった!」

 焦るロイだったが、ティアが前に立ち、魔族に向かって魔土術を打ち込んで撃退する姿を目にする。


「ファイア! リリアナと王妃はティアが守るわ!」

「す、すげぇさすが俺たちの娘だけあるわ……」


 そしてノアが呪縛念鎖のかけらを全て取り除くことに成功する。

「これでどうだ! サーチライト<スキャン>」

 王の体のマナが正常に流れ始めている。

 そしてノアが ハイソイラをかけて全てが完了した。国王の病が無事に完治した。

「なんと……、余は生きているのか……」

「よし! 無事に病は完治しました! 王女はそのまま結界を張っていてください。まだ魔族の攻撃がくるかもしれません。母さんは結界を解いて王とミラ王女の護衛に!」

「「わかったわ!」」

 残った魔族をロイが仕留めて、無事に全てが終わったかと思われたその時、ゆっくりと寝室の扉が開く。

 現れたのはジョン第二王子と執事の男だ。ジョン王子の様子が明らかに変だ。目があらぬ方向をみて、手足がアンデッドのような動きでゆっくりと王妃たちに近づいて来る。


「母上……、た……たす……けて……」


「ジョ、ジョン! あなた……一体どうしたの?」


「は……母……ゔぇ……ブヘァ」

 ジョンが魔族ではなく魔物に変わってしまった。

 王妃と王子、そして側近たちが悲鳴をあげてたじろぐ。


「ロイよ! ジョンを斬ってくれ!」


「……国王……仰せのままに」


 そういって、ロイは迷うことなく魔物を斬った。寝室全体に静けさが戻る。

 そしてゆっくりと拍手をしながら執事の男が部屋へ入ってきた。


「なんと! お見事です! まさか本当にあの状況から国王の命を救ってしまうなんて……」
 

 ロイが右腕を伸ばし、剣をまっすぐ執事に突きつける。


「キサマ……何者だ」


 男は不敵な笑みを浮かべる。

「これは失礼致しました。私は魔族国家のノエビラ<No-evila>魔王国、四大魔軍の一つである魔人軍長を務めるグルテナスと申します」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

巨乳巫女を信じて送りダスか、一緒にイクか~和の村の事件 総合〜【和風RPG】

シンセカイ
ファンタジー
~参考~ https://ci-en.net/creator/11836 敗戦後に放棄されていた日本の農地が、魔物の瘴気によって再び脅かされていた。 その魔物は土地を「魔族の地」へと変質させる危険な存在で、放置すれば農地だけでなく村や民までもが穢れ、飢餓が広がる可能性がある。 巫女は主への忠誠心と民を守る覚悟を胸に、命をかけて妖魔退治に赴く決意を示す。 だが、戦力は各地に分散しており、彼女一人に任せるのは危険と判断される。 それでも彼女は「自分は神に捧げた存在。消耗品として使ってほしい」と冷静に言い放ち、命令を待つ。 物語は、主が彼女をどう扱うかという重要な選択肢へと分岐していく――。 【信じて送り出すか】 【一緒にいくか】 ※複数ルートありますが、ここの掲載媒体の仕様上、複数ルート、複数形式を一つの作品にまとめています見づらいと思いますがご了承ください

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...