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第一章 ヒューマニア王国
第31話 リリアナ王女の試験 01
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王宮でミラ王女から報告を受けた国王は驚きはしたが怒ることはなかった。それ以上に、民のために食料を提供するという考えに強く心を打たれていた。
ヒューマニア王国の格差問題は主にコンクーリとブロッカ、そしてブロッカの中の一般エリアと貧民エリアで起こっている。民が平和で快適に暮らせる国を築き上げたいというミラ王女や国王の理想を実現する上で、国から食料を貧民街に支援するという施策は臨時措置としては有効である。
その間にしっかりと国の基盤を整えていく。それが王女の考えだった。
その後も何度かダンジョンを踏破し、希望の剣というパーティーの知名度は王国内で徐々に高まっていった。
一方、リリカの魔土術訓練は着実にティアとリリアナ王女の能力を高めていた。バランスよく多種類の属性を操れるティアはノアが普通に行なっている無詠唱魔土術にチャレンジしている。ノアいわく頭の中に詠唱後の効果をイメージして放てばいいとの事だが、これが非常に難しい。リリカですらできる魔土術とそうでないものがあるくらいだ。
そしてリリアナ王女は風と聖属性以外はからっきしダメ、しかし風属性が圧倒的にすごい。訓練を重ねる中で徐々にコントロールできるようになってきた。しかし、リリカは一つリリアナ王女に対して懸念していることがあった。それは戦闘時の闘争心と勇気である。ティアは全く問題ない。それは見ていて良くわかる。しかし、リリアナ王女はあまりに優しすぎる。
果たして魔物や魔族、あるいは人族の敵に対して魔土術を放つことができるかどうか。できなければそもそも魔土術士《ソレイジ》にはなれない。その適性がどれくらいかを判断する方法はある。
ダンジョンに入ればいい。モグらずに魔物と戦ってみればすぐにわかる。それがリリアナ王女への最終試験だとリリカは決めていた。
(そろそろね……もう実力的にはE級魔土術士並みの力はあるわ。後は……)
その日の夜、王家と一緒に夕食をとるロイたちに国王から進捗状況を聞かれる。
「ロイよ。騎士たちの訓練は順調か?」
「はい。今は午前中に基礎体力づくりを中心に怠けた体を鍛え直し、午後は剣技の指導を行なっています。皆やる気を持って集中し、熱心に励んでいるように感じています」
うんうんと頷いてロイの話を聞く国王。そして話題がリリカに振られる。
「リリカよ。魔土術士の訓練はどういった状況だ? リリアナはやれそうか?」
「国王、リリアナ王女は技術的な部分に関して言うと、既にE級の魔土術士レベルと言えます」
「なんと! それほどのものだったのか?」
目を丸くする国王と王妃。リリカは冷静に話を続ける。
「しかし、真に魔土術士の適性があるかどうかは試験を行なってみる必要があるかと思います。試験内容とはダンジョンに入って魔物を何体か撃退するというものです」
ティアとリリアナも聞かされていなかった内容だ。国王も王妃もリリカの意図を察したようだ。
「つまり戦闘においてその才能を発揮できるかどうかが重要だということじゃな?」
「おっしゃる通りでございます。リリアナ王女は内向きで優しい性格であるが故に、この点は大きな懸念事項と私は考えております。仲間を助ける回復魔土術ですら戦闘の中で唱えるわけですから、どのような魔土術士にも戦う勇気が必要です」
リリアナ王女が不安そうに話を聞いている。
「魔土術学院に行きたいから訓練を頑張るというのは本末転倒です。学院を卒業した後、王女ご自身が何をしたいのかが重要です。もし強い気持ちがあればダンジョンでも魔物と戦えると思います。もし、思うように戦えていないと私が判断した場合、学院に入学するのはお勧めしません。勿論決めるのはリリアナ王女ご自身と王家の皆様ですが」
「ママ! そこまで厳しくしなくてもいいでしょ! リリアナはすごく頑張っているんだから……」
「ティア。あなたは一人でダンジョンへ入って魔物を倒していたわね。あなたにとっては普通にできてしまうことでも、リリアナ王女にとっては多分すごく勇気のいることだわ。万が一のことを考えると、ちゃんと見極める必要があるのよ」
「でも……」
ロイとノアはリリカの意見に賛成だ。戦闘適性は必ず存在するし、まずはやってみないとわからない。
重苦しい空気が漂いかけたが、それを解いたのは意外にもリリアナ王女だった。
「リリアナはダンジョンに行って試験を受けます。そこで魔物をしっかり倒してリリカ先生より合格をいただけるように頑張ります」
国王と王妃が再び目を丸くした。初めて見るリリアナ王女の強い決意。
これは流石にリリカも嬉しさを隠せない。
「リリアナよ。そこまで言うなら余は止めぬ。お前が思うようにやってみるのだ。期待しておるぞ」
「はい!」
リリアナの強い決意表明もあり、ダンジョン試験は翌日行われることになった。
* * *
E級ダンジョン001の入口前。大勢の人集りができている。すべて王家に使える人間だ。リリアナ王女の学院に入学できるかが決まる重要な試験だ。
判定を行うリリカも、まさかここまで大事になるとは思わず、驚いていた。
「リリアナ王女。今回はティアと私、そしてミラ王女が一緒にダンジョンへ入ります。但し、私は審査官であり、戦闘には加わりません」
「はい。わかりました」
「更に、ティアはリリアナ王女に危険が迫った時にのみ、魔土術でフォローします。それ以外は基本的に王女の側にいるだけです。そして、ミラ王女は私と同じく審査する側にまわっていただきます。王家の方からの評価も必要と判断しました」
頷くミラ王女とリリアナ王女。
「E級ダンジョンを踏破する必要はありません。王女が行けるところまで行って、そして無事にこのダンジョン入口まで帰ってくる。それで試験終了です。その後、ミラ王女と共に結論を出します。よろしいですね?」
「はい。わかりました」
「それから、ティアは魔物を見つけた時はリリアナ王女に知らせること、どのようにダンジョンを進むかを相談することやその他戦闘以外の相談を受けることは認めるわ。でも、戦闘の指示を出すのはダメよ。減点になるから気をつけて」
「わかったわ」
ティアとリリアナの表情が引き締まってきた。いい緊張感だとミラ王女は思った。そしていよいよ試験が始まる。
「それではダンジョン戦闘試験、開始!」
ヒューマニア王国の格差問題は主にコンクーリとブロッカ、そしてブロッカの中の一般エリアと貧民エリアで起こっている。民が平和で快適に暮らせる国を築き上げたいというミラ王女や国王の理想を実現する上で、国から食料を貧民街に支援するという施策は臨時措置としては有効である。
その間にしっかりと国の基盤を整えていく。それが王女の考えだった。
その後も何度かダンジョンを踏破し、希望の剣というパーティーの知名度は王国内で徐々に高まっていった。
一方、リリカの魔土術訓練は着実にティアとリリアナ王女の能力を高めていた。バランスよく多種類の属性を操れるティアはノアが普通に行なっている無詠唱魔土術にチャレンジしている。ノアいわく頭の中に詠唱後の効果をイメージして放てばいいとの事だが、これが非常に難しい。リリカですらできる魔土術とそうでないものがあるくらいだ。
そしてリリアナ王女は風と聖属性以外はからっきしダメ、しかし風属性が圧倒的にすごい。訓練を重ねる中で徐々にコントロールできるようになってきた。しかし、リリカは一つリリアナ王女に対して懸念していることがあった。それは戦闘時の闘争心と勇気である。ティアは全く問題ない。それは見ていて良くわかる。しかし、リリアナ王女はあまりに優しすぎる。
果たして魔物や魔族、あるいは人族の敵に対して魔土術を放つことができるかどうか。できなければそもそも魔土術士《ソレイジ》にはなれない。その適性がどれくらいかを判断する方法はある。
ダンジョンに入ればいい。モグらずに魔物と戦ってみればすぐにわかる。それがリリアナ王女への最終試験だとリリカは決めていた。
(そろそろね……もう実力的にはE級魔土術士並みの力はあるわ。後は……)
その日の夜、王家と一緒に夕食をとるロイたちに国王から進捗状況を聞かれる。
「ロイよ。騎士たちの訓練は順調か?」
「はい。今は午前中に基礎体力づくりを中心に怠けた体を鍛え直し、午後は剣技の指導を行なっています。皆やる気を持って集中し、熱心に励んでいるように感じています」
うんうんと頷いてロイの話を聞く国王。そして話題がリリカに振られる。
「リリカよ。魔土術士の訓練はどういった状況だ? リリアナはやれそうか?」
「国王、リリアナ王女は技術的な部分に関して言うと、既にE級の魔土術士レベルと言えます」
「なんと! それほどのものだったのか?」
目を丸くする国王と王妃。リリカは冷静に話を続ける。
「しかし、真に魔土術士の適性があるかどうかは試験を行なってみる必要があるかと思います。試験内容とはダンジョンに入って魔物を何体か撃退するというものです」
ティアとリリアナも聞かされていなかった内容だ。国王も王妃もリリカの意図を察したようだ。
「つまり戦闘においてその才能を発揮できるかどうかが重要だということじゃな?」
「おっしゃる通りでございます。リリアナ王女は内向きで優しい性格であるが故に、この点は大きな懸念事項と私は考えております。仲間を助ける回復魔土術ですら戦闘の中で唱えるわけですから、どのような魔土術士にも戦う勇気が必要です」
リリアナ王女が不安そうに話を聞いている。
「魔土術学院に行きたいから訓練を頑張るというのは本末転倒です。学院を卒業した後、王女ご自身が何をしたいのかが重要です。もし強い気持ちがあればダンジョンでも魔物と戦えると思います。もし、思うように戦えていないと私が判断した場合、学院に入学するのはお勧めしません。勿論決めるのはリリアナ王女ご自身と王家の皆様ですが」
「ママ! そこまで厳しくしなくてもいいでしょ! リリアナはすごく頑張っているんだから……」
「ティア。あなたは一人でダンジョンへ入って魔物を倒していたわね。あなたにとっては普通にできてしまうことでも、リリアナ王女にとっては多分すごく勇気のいることだわ。万が一のことを考えると、ちゃんと見極める必要があるのよ」
「でも……」
ロイとノアはリリカの意見に賛成だ。戦闘適性は必ず存在するし、まずはやってみないとわからない。
重苦しい空気が漂いかけたが、それを解いたのは意外にもリリアナ王女だった。
「リリアナはダンジョンに行って試験を受けます。そこで魔物をしっかり倒してリリカ先生より合格をいただけるように頑張ります」
国王と王妃が再び目を丸くした。初めて見るリリアナ王女の強い決意。
これは流石にリリカも嬉しさを隠せない。
「リリアナよ。そこまで言うなら余は止めぬ。お前が思うようにやってみるのだ。期待しておるぞ」
「はい!」
リリアナの強い決意表明もあり、ダンジョン試験は翌日行われることになった。
* * *
E級ダンジョン001の入口前。大勢の人集りができている。すべて王家に使える人間だ。リリアナ王女の学院に入学できるかが決まる重要な試験だ。
判定を行うリリカも、まさかここまで大事になるとは思わず、驚いていた。
「リリアナ王女。今回はティアと私、そしてミラ王女が一緒にダンジョンへ入ります。但し、私は審査官であり、戦闘には加わりません」
「はい。わかりました」
「更に、ティアはリリアナ王女に危険が迫った時にのみ、魔土術でフォローします。それ以外は基本的に王女の側にいるだけです。そして、ミラ王女は私と同じく審査する側にまわっていただきます。王家の方からの評価も必要と判断しました」
頷くミラ王女とリリアナ王女。
「E級ダンジョンを踏破する必要はありません。王女が行けるところまで行って、そして無事にこのダンジョン入口まで帰ってくる。それで試験終了です。その後、ミラ王女と共に結論を出します。よろしいですね?」
「はい。わかりました」
「それから、ティアは魔物を見つけた時はリリアナ王女に知らせること、どのようにダンジョンを進むかを相談することやその他戦闘以外の相談を受けることは認めるわ。でも、戦闘の指示を出すのはダメよ。減点になるから気をつけて」
「わかったわ」
ティアとリリアナの表情が引き締まってきた。いい緊張感だとミラ王女は思った。そしていよいよ試験が始まる。
「それではダンジョン戦闘試験、開始!」
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