グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第43話 空の間

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「えっと、じゃあ最初は魔土術士ソレイジのプラチナクラスを受けて……あれ? プラチナクラスは三つの職業全て同じ教員が担当だな」

 予約を確認するとまだ空いているようだったので、早速予約して指定された場所へ行ってみる事に。

「学院塔の……最上層? <そらの間>か……ん? 何だこれ? <自力で辿り着くこと>って……そんなの当たり前でしょ」

 ノアはとりあえず魔土術まとじゅつ学院塔の中へ入って上部を見上げた。よくみると第5層までは階段がついていて誰でも登れるが、それ以上の上層へは誰も上がっていない。

 5層までたどり着き、中央の巨大ホールを見上げる。どうやら最上層まで吹き抜けが続いているようだ。その周りに空間がポツポツとくっついている。よくみると魔土術で移動している先生がチラホラ見える。

「なるほど。<自力で>というのはそういうことか」

「身体強化魔土術、クアトロ。両足に」

 しゃがんで力を溜め込んでから4倍となった脚力で思い切りジャンプする。
 すると一気に4層ほど飛び越えて上層へ。そのまま塔の壁を足場にして深くため込んで再びジャンプ。これを繰り返して最上層へ向かって進んでいく。

「なかなか見えてこないなぁ。どれだけ高いの? ていうか……20層あたりから上の層はずっとが無いんですけど……」

 塔の壁をつたって上ってはいるものの、段々と不安な気持ちになる。時折塔の壁の窓(穴)から外を眺めると、かなり上空まできているように感じる。

「もしかして、通り過ぎたのかな? いやでも最上層って書いてあったし……」

 すると、はるか先、塔のてっぺんに天井が見えてきた。

「え? 天井ってことはこの先に部屋が無いってこと? あれ? やっぱり通り過ぎたのか…………ん? あの天井のど真ん中に…………扉がある」


 扉を見つけたノアだったが、天井に設置されていることに疑問を感じる。見た目普通の扉だ。


(……どうやって開けるんだろう?)

「とりあえず、突撃してドアを壊して入ってみるか!」

 そう言って、扉に突っ込みやすい角度の壁を足場にして、目一杯両足に力を溜め込む。

「いけぇ!!」

 勢いに任せて扉に突っ込んでいくノア。するとぶつかる直前で扉がパカッと内側に開いて闘牛士のようにノアの突進をヒラリとかわす。その後すぐにパタンと閉じてしまった。

「えぇ~!! なんで勝手に開いたの!! 止まらない!」

 そのまま部屋の天井に突き刺さってなんとか止まった。


「イテテ……ちょっと無茶しすぎたな……」


 服に付いた埃をパンパンと払いながら、首を振って辺りを見回すノア。
 意外に部屋は広い。しかし、何も無い。大きな窓が一つあるだけで、あとは何も無い。


「しかも……床も壁も全部低級魔土ローソイラでできている……」

 少し期待が外れた。魔土術学院塔の最上層であるなら、とんでもない造りなのかと思ったが、ブロッカ地域の家と何ら変わりがないただ広いというだけの部屋だ。
 


「おや? 久々のお客さんかのぉ……まさかあのが開くとは……ヒョッヒョッヒョ」


 かなり年配、というか歳をとり過ぎた獣族というべきか? 杖を持ってはいるがペタペタとしっかり二本脚で歩いてノアの方へやってきた。

「えっと……初めまして。新入生のノア・グリードです」

「ワシはウサジじゃ。皆、ウサ爺と呼んでおるからお前もそれで良い」

「あ……はい。ではウサ爺。よろしくお願いします」


「うむ…………で、何しに来たんじゃ?」


 この爺さん、マイペース過ぎる……


「あの試験を受けに来たのですが。魔土術士ソレイジ魔土戦士ソレイヤー探掘調査士モグラーの……」


「お~、ミネルヴァの小娘が言うておったわ。そうかそうか。ではちょっと覗いてみるか」


 そう言って、ウサ爺は独自の光魔土術を用いてノアのステータスを覗きみた。

「なるほど……あの小娘が嬉しそうに話す理由がお主じゃったか。ふむ」


「えっと、僕は何をすればよろしいでしょうか?」

「ふむ……」

 ウサ爺が少し考える素振りを見せる。考えているか寝ているのかわからない。

 そのまま十分が経過した。


「あの……ウサ爺……」


「よし! 決めたぞい。ノアよ。お主への試験は3科目共通試験として実施するぞい」


「え? と言いますと?」


「これができたら三つの職業全て満点合格にしてやると言うておるんじゃ。なんじゃったか……プラプラプラスの試験じゃよ」


「……………………プラチナクラスのことですかね? ウサ爺」



 ノアのツッコミを無視してウサ爺が杖をひょいと動かす。
 それに反応したのか周囲の低級魔土ローソイラのブロックがノアの前に運ばれて積まれていく。


 まだ状況がわからないノアに対してウサ爺が笑いながら、ブロックを一つ持ち上げる。


「ノアよ。このローソイラブロックが壊れないようにブロックに限界量までマナを注ぎ込むのじゃ。ブロックが少しでも欠けたらやり直しじゃぞい」

「え? マナを注ぐだけですか?」

「そうじゃ。ただし、お主のサーチライト魔土術は禁止じゃ。あと、一回注入し始めたら、限界量になるまで止めてはならんぞい」


 想像しなかった試験内容だ。ウサ爺の意図もよくわからない。


「何度失敗しても構わんし、何日かかっても構わんぞい」


「あ、はい……ではやってみます」


 一つ低級魔土ローソイラブロックを持ち上げて、マナを注いでみるノア。すると……

 バリン!

「あっ!! 壊れちゃった……」


「ヒョッヒョッヒョ。先は長そうじゃのう……どれ。これはサービスじゃぞい」


 ウサ爺がブロックを持って、ほんの一瞬マナを注いだ。ローソイラの空いているマナポーラスに見事なまでピッタリとマナが注ぎ込まれている。驚いたノアがじっくりそのブロックを見てみるが特に変わった箇所はなく、これ以上は入らないという限界量が注がれている。ただ、何故かとても美しく見える。


「しかも、あんな一瞬で……信じられない……」


 ウサ爺の実力がわかった気がした。ただの死にかけジジイではない。ものすごい獣族だ。


「こんなワクワクする感覚……久しぶりだ! これは何かあるぞ。新しい発見が!」

 ノアは呆然とするどころか楽しんでいるようだ。意外な反応だったのか、ノアを見てウサ爺が少し笑った。


「てっきり空を飛ぶとか、空で戦うとか想像していたけど、こっちの方が僕には合ってそうだ……」


 ん? ウサ爺が不思議に思って尋ねる。


「なんで空飛ぶことが試験なんじゃ?」

「いや、ここの部屋の名前がそらの間って書いてあったので。てっきりそらがテーマなのかなと」


 するとウサ爺が腹を抱えて大笑いした。ノアには全く意味がわからない。どこが面白かったのだろうか……


「ノアよ……ここはそらの間ではないぞい」

「えぇ! 間違えて入っちゃったのかな?」


 首を振ってここの部屋で合っていると言うウサ爺。


「空<そら>ではなくて、空<から>じゃ。『からの間』じゃぞい」
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