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第一章 ヒューマニア王国
第42話 学院生活の始まり
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王宮へ戻ってきたミラ王女たちは王族とロイ家との夕食の場で今日の出来事を話す事に。
まず、無事に試験に合格し、三人とも入学が決まったことを伝える。
国王と王妃が大喜びしてリリアナ王女を抱きかかえた。そしてリリカに礼を言って、次席だったティアを褒め讃えた。最早ノアが首席という事に関してリアクションする人間はここにはいない。
「そして、ノアなんですが入学する前からミネルヴァ校長にスカウトされて学院の教員になることが決まりました」
カチャン……美味しく飲んでいたスープのスプーンを落として固まってしまうロイとリリカ。
「……ノア、お前……なんで普通に過ごせないんだ? 学院に受験しに行って教員になって帰ってくる10歳がいるか?」
「…………はい。ここに……」
大笑いする国王とティア。
「父さん……ミネルヴァ校長から打診されたとき、正直僕も驚いたよ。でもね、この大好きなヒューマニア王国のために、この僕に何かできる事があるのならって、その時思ったんだ。そして気づいたら教員の件、サインしていて…………驚かせてしまってごめん」
(こいつ……一体どの口がそう言わせるんだ……めちゃくちゃ嫌がってただろ!)
呆れ過ぎて驚かなくなったミラ王女。感動する国王。息子の言葉を信じられないでいるロイとリリカ。しかし、この一件も些細な事とミラ王女は思っていた。
「実は本日、試験前にリリアナが大暴走しました」
ミラ王女とヘンドリックから詳細を聞いて今度は国王がスプーンを落としてしまった。リリカも思うところがあるせいか、難しい表情をしている。
「すみません。リリアナはその記憶があまり無くて……」
「ノアとティア。よくやってくれた。お主らがいなければ王族によって民を傷つけるという大きな事態になっておっただろう。心から礼を言うぞ」
「いえいえ、お礼なんて。運よく処理できたというのが正直なところでして……。あの竜巻は多分、母さんでも苦労すると思う。すごい威力だったよ」
ノアの話を聞いて、いろいろと思うことがあるリリカが一つ一つ確認していく。
「まず、なんでノアが古代魔土術を使えたの?」
「図書の間の書籍に記述があってそれを試してみたんだ。僕は光属性も使えるからね。うまくいっただけだよ」
「……まぁ、その辺のツッコミは後でいいか。それでリリアナ王女の《怒りモード》になるトリガーが、今回でいうと友達のティアが馬鹿にされたこと。体内のマナを一気に暴発させて強大な怒りのマナを載せた魔土術を放ったということね?」
「ええ。その通り。ただ、一つ不思議だったのは、その時リリアナはその魔土術を『リリートルネード』と名前を付けていたの。ただ無意識に放っただけと言うよりかは、何者かがティアに乗り移って魔土術を放ったような印象だったわ……」
「……なるほど。だとすると………………精霊」
「え?」
リリカは慌てて誤魔化す。一先ずリリアナ王女を怒らせないで生活するという何の対策も立てない危険な状態で様子をみる事になった。
「そうそう、先ほどミネルヴァから連絡があったぞ。ミラが説明してくれたように学院の制度を一新するとな。余は全て状況を理解しつつ、これまで貴族の愚行に対し、見て見ぬ振りをしておった。あの馬鹿息子の事もあったからな」
(レスタ王子のことか……学院の試験結果を操作したって言ってたな)
「ミネルヴァには迷惑をかけたと謝罪しておいた。余は学院の事は全てミネルヴァに託しておる。あやつの決断を尊重するつもりだ。ミラよ。おそらく数日後に貴族の馬鹿どもが押し寄せてくるが、蹴散らしておくとミネルヴァに伝えておいてくれ。お前が信じるその道を進めていくようにとな」
「承知しました」
王族以外のもの(ロイ家)がいる前で一国の王が謝罪したなどと話していいのかと思ったが、それもある意味国王の器の大きさだと感じたノアだった。
* * *
数日後、魔土術学院から大量の希望退学者が去って行った。コネで強引に入学した無能貴族が卒業を諦めた苦渋の決断と言えるだろう。表向きは学院への新制度批判を態度で表したのだという体裁で、貴族としての面子を守る事はできた。これも校長の思惑通りとは知らずに。
残った上級生は全体の2割もいない150人程度だが、それでいいとミネルヴァ校長は考えていた。この2割は真面目に取り組んでいる生徒。つまり、現在の学院生は少なくとも無能で邪魔な貴族は存在しない。少数の未来ある生徒に教員がしっかり教育できる環境をこれから目指していく。最初からこれが狙いだったのだ。
「おはよう、ノア! ティア!」
ヘンリーが走ってきた。
「お、おはようございます。ミラ王女、リリアナ王女」
「おはよう、ヘンリー!」
「これから掲示板を見にいくところ。一緒に行こうか」
ノアたちの魔土術学院生活が始まった。しかし何をしたらいいのか全くわからない。おそらく全生徒が同じ気持ちなのだろう。掲示板に人集りができている。
掲示板にはランク制度の仕組みが説明されていた。ランクの種類とその試験内容や実施場所、予約方法などが記載されている。
「自分の適正ランクを知りたい場合は講義会場Aにて測定可能だって」
「私たちは先に測定してみようか。ブロンズかシルバーかわからないしね」
「僕も一緒に行っていいかな?」
ヘンリーの問いに笑顔で頷くティアとリリアナ王女。ミラ王女もついていく事に。
「じゃあ、僕も測定――」
「ノアはプラチナクラスよ。早く予約してきなさい」
「あ…………はい」
ミラ王女の一言でノアだけ別行動となった。
まず、無事に試験に合格し、三人とも入学が決まったことを伝える。
国王と王妃が大喜びしてリリアナ王女を抱きかかえた。そしてリリカに礼を言って、次席だったティアを褒め讃えた。最早ノアが首席という事に関してリアクションする人間はここにはいない。
「そして、ノアなんですが入学する前からミネルヴァ校長にスカウトされて学院の教員になることが決まりました」
カチャン……美味しく飲んでいたスープのスプーンを落として固まってしまうロイとリリカ。
「……ノア、お前……なんで普通に過ごせないんだ? 学院に受験しに行って教員になって帰ってくる10歳がいるか?」
「…………はい。ここに……」
大笑いする国王とティア。
「父さん……ミネルヴァ校長から打診されたとき、正直僕も驚いたよ。でもね、この大好きなヒューマニア王国のために、この僕に何かできる事があるのならって、その時思ったんだ。そして気づいたら教員の件、サインしていて…………驚かせてしまってごめん」
(こいつ……一体どの口がそう言わせるんだ……めちゃくちゃ嫌がってただろ!)
呆れ過ぎて驚かなくなったミラ王女。感動する国王。息子の言葉を信じられないでいるロイとリリカ。しかし、この一件も些細な事とミラ王女は思っていた。
「実は本日、試験前にリリアナが大暴走しました」
ミラ王女とヘンドリックから詳細を聞いて今度は国王がスプーンを落としてしまった。リリカも思うところがあるせいか、難しい表情をしている。
「すみません。リリアナはその記憶があまり無くて……」
「ノアとティア。よくやってくれた。お主らがいなければ王族によって民を傷つけるという大きな事態になっておっただろう。心から礼を言うぞ」
「いえいえ、お礼なんて。運よく処理できたというのが正直なところでして……。あの竜巻は多分、母さんでも苦労すると思う。すごい威力だったよ」
ノアの話を聞いて、いろいろと思うことがあるリリカが一つ一つ確認していく。
「まず、なんでノアが古代魔土術を使えたの?」
「図書の間の書籍に記述があってそれを試してみたんだ。僕は光属性も使えるからね。うまくいっただけだよ」
「……まぁ、その辺のツッコミは後でいいか。それでリリアナ王女の《怒りモード》になるトリガーが、今回でいうと友達のティアが馬鹿にされたこと。体内のマナを一気に暴発させて強大な怒りのマナを載せた魔土術を放ったということね?」
「ええ。その通り。ただ、一つ不思議だったのは、その時リリアナはその魔土術を『リリートルネード』と名前を付けていたの。ただ無意識に放っただけと言うよりかは、何者かがティアに乗り移って魔土術を放ったような印象だったわ……」
「……なるほど。だとすると………………精霊」
「え?」
リリカは慌てて誤魔化す。一先ずリリアナ王女を怒らせないで生活するという何の対策も立てない危険な状態で様子をみる事になった。
「そうそう、先ほどミネルヴァから連絡があったぞ。ミラが説明してくれたように学院の制度を一新するとな。余は全て状況を理解しつつ、これまで貴族の愚行に対し、見て見ぬ振りをしておった。あの馬鹿息子の事もあったからな」
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「ミネルヴァには迷惑をかけたと謝罪しておいた。余は学院の事は全てミネルヴァに託しておる。あやつの決断を尊重するつもりだ。ミラよ。おそらく数日後に貴族の馬鹿どもが押し寄せてくるが、蹴散らしておくとミネルヴァに伝えておいてくれ。お前が信じるその道を進めていくようにとな」
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王族以外のもの(ロイ家)がいる前で一国の王が謝罪したなどと話していいのかと思ったが、それもある意味国王の器の大きさだと感じたノアだった。
* * *
数日後、魔土術学院から大量の希望退学者が去って行った。コネで強引に入学した無能貴族が卒業を諦めた苦渋の決断と言えるだろう。表向きは学院への新制度批判を態度で表したのだという体裁で、貴族としての面子を守る事はできた。これも校長の思惑通りとは知らずに。
残った上級生は全体の2割もいない150人程度だが、それでいいとミネルヴァ校長は考えていた。この2割は真面目に取り組んでいる生徒。つまり、現在の学院生は少なくとも無能で邪魔な貴族は存在しない。少数の未来ある生徒に教員がしっかり教育できる環境をこれから目指していく。最初からこれが狙いだったのだ。
「おはよう、ノア! ティア!」
ヘンリーが走ってきた。
「お、おはようございます。ミラ王女、リリアナ王女」
「おはよう、ヘンリー!」
「これから掲示板を見にいくところ。一緒に行こうか」
ノアたちの魔土術学院生活が始まった。しかし何をしたらいいのか全くわからない。おそらく全生徒が同じ気持ちなのだろう。掲示板に人集りができている。
掲示板にはランク制度の仕組みが説明されていた。ランクの種類とその試験内容や実施場所、予約方法などが記載されている。
「自分の適正ランクを知りたい場合は講義会場Aにて測定可能だって」
「私たちは先に測定してみようか。ブロンズかシルバーかわからないしね」
「僕も一緒に行っていいかな?」
ヘンリーの問いに笑顔で頷くティアとリリアナ王女。ミラ王女もついていく事に。
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