グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

文字の大きさ
42 / 55
第一章 ヒューマニア王国

第42話 学院生活の始まり

しおりを挟む
 王宮へ戻ってきたミラ王女たちは王族とロイ家との夕食の場で今日の出来事を話す事に。

 まず、無事に試験に合格し、三人とも入学が決まったことを伝える。
 国王と王妃が大喜びしてリリアナ王女を抱きかかえた。そしてリリカに礼を言って、次席だったティアを褒め讃えた。最早ノアが首席という事に関してリアクションする人間はここにはいない。

「そして、ノアなんですが入学する前からミネルヴァ校長にスカウトされて学院の教員になることが決まりました」


 カチャン……美味しく飲んでいたスープのスプーンを落として固まってしまうロイとリリカ。

「……ノア、お前……なんで普通に過ごせないんだ? 学院に受験しに行って教員になって帰ってくる10歳がいるか?」

「…………はい。ここに……」


 大笑いする国王とティア。


「父さん……ミネルヴァ校長から打診されたとき、正直僕も驚いたよ。でもね、この大好きなヒューマニア王国のために、この僕に何かできる事があるのならって、その時思ったんだ。そして気づいたら教員の件、サインしていて…………驚かせてしまってごめん」


(こいつ……一体どの口がそう言わせるんだ……めちゃくちゃ嫌がってただろ!)


 呆れ過ぎて驚かなくなったミラ王女。感動する国王。息子の言葉を信じられないでいるロイとリリカ。しかし、この一件も些細な事とミラ王女は思っていた。



「実は本日、試験前にリリアナが大暴走しました」

 ミラ王女とヘンドリックから詳細を聞いて今度は国王がスプーンを落としてしまった。リリカも思うところがあるせいか、難しい表情をしている。


「すみません。リリアナはその記憶があまり無くて……」


「ノアとティア。よくやってくれた。お主らがいなければ王族によって民を傷つけるという大きな事態になっておっただろう。心から礼を言うぞ」

「いえいえ、お礼なんて。運よく処理できたというのが正直なところでして……。あの竜巻は多分、母さんでも苦労すると思う。すごい威力だったよ」


 ノアの話を聞いて、いろいろと思うことがあるリリカが一つ一つ確認していく。

「まず、なんでノアが古代魔土術まとじゅつを使えたの?」

「図書の間の書籍に記述があってそれを試してみたんだ。僕は光属性も使えるからね。うまくいっただけだよ」


「……まぁ、その辺のツッコミは後でいいか。それでリリアナ王女の《怒りモード》になるトリガーが、今回でいうと友達のティアが馬鹿にされたこと。体内のマナを一気に暴発させて強大な怒りのマナを載せた魔土術を放ったということね?」


「ええ。その通り。ただ、一つ不思議だったのは、その時リリアナはその魔土術を『リリートルネード』と名前を付けていたの。ただ無意識に放っただけと言うよりかは、何者かがティアに乗り移って魔土術を放ったような印象だったわ……」


「……なるほど。だとすると………………精霊」

「え?」

 リリカは慌てて誤魔化す。一先ずリリアナ王女を怒らせないで生活するという何の対策も立てない危険な状態で様子をみる事になった。


「そうそう、先ほどミネルヴァから連絡があったぞ。ミラが説明してくれたように学院の制度を一新するとな。余は全て状況を理解しつつ、これまで貴族の愚行に対し、見て見ぬ振りをしておった。あの馬鹿息子の事もあったからな」

(レスタ王子のことか……学院の試験結果を操作したって言ってたな)

「ミネルヴァには迷惑をかけたと謝罪しておいた。余は学院の事は全てミネルヴァに託しておる。あやつの決断を尊重するつもりだ。ミラよ。おそらく数日後に貴族の馬鹿どもが押し寄せてくるが、蹴散らしておくとミネルヴァに伝えておいてくれ。お前が信じるその道を進めていくようにとな」

「承知しました」


 王族以外のもの(ロイ家)がいる前で一国の王が謝罪したなどと話していいのかと思ったが、それもある意味国王の器の大きさだと感じたノアだった。


 * * *


 数日後、魔土術学院から大量の希望退学者が去って行った。コネで強引に入学した無能貴族が卒業を諦めた苦渋の決断と言えるだろう。表向きは学院への新制度批判を態度で表したのだという体裁で、貴族としての面子を守る事はできた。これも校長の思惑通りとは知らずに。

 残った上級生は全体の2割もいない150人程度だが、それでいいとミネルヴァ校長は考えていた。この2割は真面目に取り組んでいる生徒。つまり、現在の学院生は少なくとも無能で邪魔な貴族は存在しない。少数の未来ある生徒に教員がしっかり教育できる環境をこれから目指していく。最初からこれが狙いだったのだ。


「おはよう、ノア! ティア!」

 ヘンリーが走ってきた。

「お、おはようございます。ミラ王女、リリアナ王女」

「おはよう、ヘンリー!」

「これから掲示板を見にいくところ。一緒に行こうか」

 ノアたちの魔土術学院生活が始まった。しかし何をしたらいいのか全くわからない。おそらく全生徒が同じ気持ちなのだろう。掲示板に人集ひとだかりができている。

 掲示板にはランク制度の仕組みが説明されていた。ランクの種類とその試験内容や実施場所、予約方法などが記載されている。

「自分の適正ランクを知りたい場合は講義会場Aにて測定可能だって」

「私たちは先に測定してみようか。ブロンズかシルバーかわからないしね」

「僕も一緒に行っていいかな?」

 ヘンリーの問いに笑顔で頷くティアとリリアナ王女。ミラ王女もついていく事に。

「じゃあ、僕も測定――」

「ノアはプラチナクラスよ。早く予約してきなさい」

「あ…………はい」

 ミラ王女の一言でノアだけ別行動となった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

巨乳巫女を信じて送りダスか、一緒にイクか~和の村の事件 総合〜【和風RPG】

シンセカイ
ファンタジー
~参考~ https://ci-en.net/creator/11836 敗戦後に放棄されていた日本の農地が、魔物の瘴気によって再び脅かされていた。 その魔物は土地を「魔族の地」へと変質させる危険な存在で、放置すれば農地だけでなく村や民までもが穢れ、飢餓が広がる可能性がある。 巫女は主への忠誠心と民を守る覚悟を胸に、命をかけて妖魔退治に赴く決意を示す。 だが、戦力は各地に分散しており、彼女一人に任せるのは危険と判断される。 それでも彼女は「自分は神に捧げた存在。消耗品として使ってほしい」と冷静に言い放ち、命令を待つ。 物語は、主が彼女をどう扱うかという重要な選択肢へと分岐していく――。 【信じて送り出すか】 【一緒にいくか】 ※複数ルートありますが、ここの掲載媒体の仕様上、複数ルート、複数形式を一つの作品にまとめています見づらいと思いますがご了承ください

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...