グランサンクチュア 〜地底天空都市の伝説〜

大森六

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第一章 ヒューマニア王国

第46話 扉が開く条件

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 ノアとウサ爺がからの間で試験を終えた後、審判の扉が無事に開いた。

「ノアよ。試験に合格したお主はもうのあれじゃから帰っていいぞい」

「う、うん。ウサ爺、だね。もう、修正する気はなさそう」


 ノアは少し何か考える。


「ウサ爺、もう少しここで修行していい?」

「ん? なんじゃ、試験を受けに来たんじゃろ?」

「うん。勿論そうなんだけど、もう少しウサ爺のところで力をつけたいんだ。ダメかな?」


「ヒョッヒョッヒョ。好きにすればよいぞい」


 そこからノアは3日間修行した。ウサ爺から人参を中心とした生野菜しか提供されないという点以外はとても楽しく過ごしていた。ウサ爺の話がノアにとってタメになる内容ばかりだったのもあり、時間はあっという間に過ぎていった。


「ノアよ。からの概念を知る大切さ、少しはわかってきたかのぉ?」

 ノアが低級魔土ローソイラブロックを一つ持ち上げて見つめながら自身が思う事、感じる事を話してみる。

「まず、ガイアの大地に存在する魔土ソイラから魔素を吸収して魔土術まとじゅつを唱えるときに、各々の魔土ソイラが持つ個性(からの形状)を知ることでより良い効果を発揮できるって僕は思っている。つまり本当は一つの共通した詠唱ではなく、各ソイラに合った唱え方が存在するのかもって事。それを今の魔土術士ソレイジは全てのソイラに対し強引に一つの共通した詠唱で術を放っている。これって、実は強引で非効率な手法だったんだ」

魔土ソイラの個性とはうまくいったもんじゃぞい。その考察、なかなか良いぞい」

「あと空の概念って、つまりは中身と外身を知ること、内部と外部、もしくは物事の本質をみるという事に繋がるなって……まだうまく言えないけど」

 ウサ爺が目を大きく開けて驚いた。大きく開いた窓の外の青空を眺めながら微笑んでいる。

「ノアよ。そろそろ、地上へ戻るのじゃ。ここで色々と学んだ事を自分なりに昇華させてみるのじゃ。そうすればお主はもっと成長できるぞい。お主にはいつでも入れる様に扉を解放しておくぞい」


「……そうだね。もうちょっとウサ爺と話したかったけど、ちょっと人参以外の食事も摂りたいから、落っこちて戻ろうかな。ここへ登って来たらまたウサ爺と会えるって事でいいのかな?」


 すると、ウサ爺が背中に手をまわして、何やら白い小さなモフモフをノアに渡した。


「これ、何かな? フワフワしているけど。貴重なアイテムなの?」


「わしの背中の毛玉じゃぞい」


「いらないって!」


「まぁ、待て。これがこのからの間にいつでも入れる鍵のようなモノじゃぞい。大切に持っておれ。毎日風呂には入っておる。汚くないから大丈夫じゃぞい」


 嫌そうな顔をしているノアを見て笑うウサ爺。

「ノアよ。古代魔土術テレポートでここへ来るつもりじゃろうが、その場合は扉の手前まで来るのじゃぞい。直接空の間にはこれぬからな」

「了解! そうするね! ウサ爺に会えてよかった。本当にありがとうね! また来るよ!」


 そう言って、開いた審判の扉から飛び降りてノアは去っていった。


「ノア・ルメス・アジールか。なかなかワクワクする奴じゃぞい。あやつならきっと辿り着くはずじゃ。楽しみじゃぞい」


 * * *



 魔土術学院塔の低層に降りて来たノアを見て周囲の学院生が騒いでいる。何かあったのだろうかと不思議に思うノア。

「見て! ノア・グリードよ! 塔の上から降りて来たわ」

「プラチナクラス合格って本当かよ! スゲー」


 どうやら、試験の結果は既に魔土術学院中に広がっているみたいだ。


「ノア・グリードがいたぞ! 早く校長へ連絡しろ!」


 教員が慌ててノアを捕まえる。

「え? ちょっと、どうしたんですか?」


「ノア、すまない。ちょっと一緒に来てくれ」



 その後、校長室に連行されたノアは教員たちから質問責めにあう。何故扉が開いたのか、ウサジさまはどんな方か、どのような試験内容だったのかなど。


「皆さん、少し落ち着きましょう」


 ミネルヴァ校長が周囲を落ち着かせる。


「まずは、入学してでプラチナクラスの試験合格、本当におめでとう。ノア」

「あ、ありがとうございます……何かトゲがある言い方のような気が……」


「……これが学院の伝説となり、学院生にとってより誇れる存在となるのか、逆に学院への印象が軽いものへと変わって地に落ちてしまうのか。全てあなた次第ですよ。ノア」


(一体、何の話をしているんだ? 何で試験を受けに行って、帰って来ただけでここまで状況が変わっているだ……)

「ノア・グリード。あなたは学院が合格不可と設定していたプラチナクラスを初日で合格してしまったのです。しかも、一般の学院生なら試験を受けることすらできません。からの間の扉が開くこと自体が奇跡なのです」


「いや、ちょっと待ってくださいエミール先生。扉が開くってそんなの試験の予約ができたから会場に向かった僕には何の責任もありませんよね? そもそも試験会場の扉が開かないことが普通だなんて、もっと不可解だと思うんですが……」


「……その予約ができた事自体が正に問題でして。まぁ、それもウサジさんの判断だろうから何れにしてもノアには何の責任もありませんが……」


 まだ、状況を理解しきれていないノアにミネルヴァ校長が溜息混じりに話し出す。


「ノア、あなたは何も悪く無いわ。私たちが言っているのは今後あなたにこの学院をより高みへと導いてもらう必要があると話しているのよ」

「…………」

「プラチナクラスのウサジさんは私ですら簡単に会えない存在なの。仙獣せんじゅうと言ってね、獣族の中で特に優れた魔土術使いに対して与えられる存在のようで、これまでの獣族の歴史の中で現れたのは三人だけ。それくらい奇跡の存在なのよ」

「えぇ! あのウサ爺が? すごい獣族だとは思っていましたが、そんな神のような存在だったとは……」

「そう、正に神なのよ。そんな神のような存在がここ魔土術学院塔の最上部に次元を繋いでくれているの。彼の住処すみかはここには存在していないのよ。そしてそれぞれの空間を繋いでいるものが『審判の扉』なの。私でも開けられないよの」

「…………そんなすごい扉だったんですか? 突っ込んでぶっ壊して中へ入ろうとしちゃいました」

 タングス先生が大笑いし、周りの先生は青ざめている。そしてミネルヴァ校長が続ける。


「そんなんじゃ扉はびくともしないし、開かないわ。扉は勝手に開くのよ。ウサジさんが決めた条件を満たすものだけにね」


「ウサ爺が決めた条件?」

 頷いて校長が真剣な眼差しでノアに伝える。


「扉が開く条件は【未来を変える者】よ」



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