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第一章 出逢い
第3話 私はあなたのアイドルです
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––シュ~。 ジジッ……ジジジジ……
若干の煙と放電現象の光を放ちながらフワフワと人のシルエットが浮かび上がる。
映画でよくある某研究所の博士が化学実験でなんらかの反応を起こして何かを生み出す壮大なシーン。まさにそれだ……
腰を抜かして動けない太地。なんとか壁に寄りかかって平静を装うがうまくいかない。
複数の敵に追い詰められて壁を背にするモブキャラの様にピタリと壁に張り付いている。
「え、え~と……」
未知なる存在を前にうまく話すことができない。
相変わらず逆光と煙の影響ではっきりとは見えないがそのシルエットは人型のようだ。
––ピピピピッ
猛烈なスピードで処理する機械音が聞こえてくる。
そして左手首のリングに何かが表示されているのを太地は見つける。
《……シンクロ率 10%》
(目の前で浮かんでいる?)
淡く光るリングと目の前に広がる光景はどうやら繋がりがあるようだ。
徐々に冷静さを取り戻しつつ、状況を理解しようとする太地。
信じられないことだが、目の前にいる『何か』は金属でできたロボットのそれとは明らかに違う。幽霊や未確認の生命体でもない。
シルエットでわかる。それらとは違う何かだ。
《ウィンドウオープン》
再びどこからともなく聞こえてくるアナウンス。
《ローダープロフィールをアップデート》
氏名: 六条太地
国籍: 日本
年齢: 17歳
血液型: AB型Rh+ (al type)
身長: 168cm
体重: 58kg
髪質: 太くて直毛(ハード)
毛色: 黒
好きな食べ物: 唐揚げ 甘いもの全般 特にチョコレート
好きな音楽: JAZZ
好きな人: 現在該当者なし 未経験
彼女いない歴: 17年
特殊な趣味: どちらかというとM
……
基本情報から恥ずかしい情報まで詳細な内容が何故か正確にアップデートされていく。
「おいおい、なんだこれ⁉︎ アップデートって。 いや、なんというか……
正解だけど後半結構失礼だぞ!」
(というか、どうしてわかるんだ? 特に彼女いないとか)
何処からかともなく聞こえるアナウンスは更にテンポよく続く。
《ステータスをアップデート》
持久力: 2
腕力: 測定中––
治癒力: 測定中––
瞬発力: 5
脚力: 測定中––
……
様々な能力値情報がアップデートされている様だ。
(この極めてショボそうな数値が今の僕の能力値なのか? 治癒力って何?)
「合ってそうで悔しい!」
(勝手に身体測定された気分だ。もうやめてくれ~)
いきなり聞こえた謎のアナウンスに全てを的確に分析されて恥ずかしくなる太地。
《ステータスアップデート完了》
《アバターディテール調整開始》
シルエットが変化しているのがわかる。細やかにたくさんの箇所を同時に調整している。
まるで太地の情報をインプットし、ベースの母体を必要な最適解へ変換しているかのようだ。
《調整完了》
《初期設定完了》
(やっと終わったのか……)
目の前の煙が薄くなって消えていく……
シルエットしか見えなかったアバウトな存在は、ついに太地の目の前に全貌を現した。
彼(もしくは彼女?)の風貌は一言ではなんとも形容し難い。
いわゆる「宇宙人」と言えばこれだ、とでもいえる抽象的で白くて頭と目がちょっとでかいあの存在に近い。しかしながら無駄な要素をできるだけ省いて整えられたシンプルな美と抽象性を感じさせる。
いや、衝撃を受けるポイントは、そこではない。
彼の左眼にはゴールドのレトロな懐中時計のようなモノが眼帯として施されている。今にも『パカッ』と開きそうである。
その眼帯を中心に時計の文字盤「4」から「10」をつなげたライン取りでゴールドのチェーンが頭部やや右側から左ほほへと大胆にまわされて、眼帯を固定する役割を担っているように見える。
黄金の懐中時計眼帯もなかなか特異なセンスの持ち主ではあると思うのだが、そこでもないのだ。
その左側だ……
眼帯より左側(正面から見て右側)の頭部がごそっと欠けているのだ。
太地はおそるおそる欠けた頭部の断面箇所を少し離れた距離で覗き見ると、そこにはおとめ座銀河団の楕円銀河M87のブラックホールかと思うくらいに漆黒と高密度な星の集合体が神秘的に描かれていた。
(あのリングを光にかざした時と同じだ)
「ねぇ……君……頭大丈夫?」
ちょっと聞き方が雑になる太地。いや、これでも太地にとっては目一杯丁寧に聞いているのだろう。
返事は返ってこない。
彼の右目は閉ざされている。何かを待っているのだろうか。
頭部のブラックホールには心臓が飛び出すくらいの衝撃を受けて動揺したが、なんとか落ち着こうと視点をやや広げて全体にフォーカスしようとした。
(……ん?)
まるで刀でスパッと垂直に切られたかのように、左肩からその先が見当たらなかった。
うまく状況を把握できない。
「君……左腕も無いの?」
返事は……やはり返ってこない。
状況を理解することを一旦諦めた太地。心臓の鼓動が徐々にいつもの正常なリズムで刻み始める。
改めて全体を観察する太地。
(服は着ている……)
一見ボロ布を巻いているだけに見えるその服装はゴールドチェーンが描く弧を意識するかのように大きな弧を意識したアシンメトリーなデザインは太地の気持ちを高ぶらせた。
「よく見ると結構格好いいな~」
(さっきのアップデート後の微調整で服装のコーデがこれに決まったのか?)
この場では割とどうでもいいことを考え始める太地。もはや現実逃避の2歩手前だ。
(なんというか……原子の神であるかのような格好に見えてくる)
「いや、最初の人間であるアダムとイヴを足した感じか。葉っぱが大きくなって隠す箇所が増えて--」
くだらない太地の独り言が長引くことを恐れたのか、彼の右目がゆっくりと開きだす。
「あ……」
開ききった瞬間、ブワッと音がなったかのように彼から突発的に風が吹き出し、太地が壁まで吹っ飛ぶ。
ドドン!
「いててて……何が起こった?」
動揺と恐怖心を隠せない。
(今、僕は攻撃された?)
壁にもたれてながらゆっくり姿勢を起こす。
再び顔を上げて彼を見たとき、恐怖と驚きは幾重にも重なる。
「何……あれ」
目を覚ましたことで発動したのだろうか。頭部左側(向かって右側)を弱く繊細なグリーンの光が太地の目に飛びこんでくる。
よく見ると、無数の英数字やラテン文字が頭部のブラックホールを包み隠そうとするかのようにエメラルドグリーンに輝きながらチェーンの弧をなぞるように規則的に一定の速度で動いているようだ。
昔、某映画やアニメであった表現、『デジタルレイン(雨)』の立体版というべきだろうか。
(文字列によって生み出されたヘアスタイルだ。)
感性がずれているのか、太地の驚きは再び感動へと変わる。
(すごい! 本当に綺麗だ。)
もはや恐怖心は吹き飛んだ。そこには好奇心しかない。
「あ、左手が……」
そう、頭部の変化と同様に左肩にもデジタルレインが肩周りをなぞるように円を描いている。そして手袋のようなものをはめた左手が完全に独立して浮いている。
(左腕は無い)
「その左手は動かせるの?」
太地は再び彼に話しかけてみる。
彼は視線を左手に向けた。同時に左手は握って開いてを繰り返しながら移動し、顔に近い位置で止まる。
『……はい』
返事が返って来る。
(喋った。僕に返事をしてくれたぞ!)
心臓が高鳴る。
(声の質としては女性的だが、なんとも言えない。アニメで男性キャラクターの声を担当する女性声優だって世の中たくさんいるし。)
「え~と……」
壁にもたれてなんとか立ち上がった太地のもとへ、彼が近づいて来る。
穏やかな天気の日に、空へ上がっていく風船のようにす~っと静かに。
一切の力をかけずに。
部屋の高さいっぱいに浮かんでいる彼となんとか立った姿勢を維持している太地。
見上げる太地と見下ろす彼の構図のまま、太地は話しかける。
「君は一体何者なの?」
……
彼が答える。
……
『わたしは あなたの アイドルです』
若干の煙と放電現象の光を放ちながらフワフワと人のシルエットが浮かび上がる。
映画でよくある某研究所の博士が化学実験でなんらかの反応を起こして何かを生み出す壮大なシーン。まさにそれだ……
腰を抜かして動けない太地。なんとか壁に寄りかかって平静を装うがうまくいかない。
複数の敵に追い詰められて壁を背にするモブキャラの様にピタリと壁に張り付いている。
「え、え~と……」
未知なる存在を前にうまく話すことができない。
相変わらず逆光と煙の影響ではっきりとは見えないがそのシルエットは人型のようだ。
––ピピピピッ
猛烈なスピードで処理する機械音が聞こえてくる。
そして左手首のリングに何かが表示されているのを太地は見つける。
《……シンクロ率 10%》
(目の前で浮かんでいる?)
淡く光るリングと目の前に広がる光景はどうやら繋がりがあるようだ。
徐々に冷静さを取り戻しつつ、状況を理解しようとする太地。
信じられないことだが、目の前にいる『何か』は金属でできたロボットのそれとは明らかに違う。幽霊や未確認の生命体でもない。
シルエットでわかる。それらとは違う何かだ。
《ウィンドウオープン》
再びどこからともなく聞こえてくるアナウンス。
《ローダープロフィールをアップデート》
氏名: 六条太地
国籍: 日本
年齢: 17歳
血液型: AB型Rh+ (al type)
身長: 168cm
体重: 58kg
髪質: 太くて直毛(ハード)
毛色: 黒
好きな食べ物: 唐揚げ 甘いもの全般 特にチョコレート
好きな音楽: JAZZ
好きな人: 現在該当者なし 未経験
彼女いない歴: 17年
特殊な趣味: どちらかというとM
……
基本情報から恥ずかしい情報まで詳細な内容が何故か正確にアップデートされていく。
「おいおい、なんだこれ⁉︎ アップデートって。 いや、なんというか……
正解だけど後半結構失礼だぞ!」
(というか、どうしてわかるんだ? 特に彼女いないとか)
何処からかともなく聞こえるアナウンスは更にテンポよく続く。
《ステータスをアップデート》
持久力: 2
腕力: 測定中––
治癒力: 測定中––
瞬発力: 5
脚力: 測定中––
……
様々な能力値情報がアップデートされている様だ。
(この極めてショボそうな数値が今の僕の能力値なのか? 治癒力って何?)
「合ってそうで悔しい!」
(勝手に身体測定された気分だ。もうやめてくれ~)
いきなり聞こえた謎のアナウンスに全てを的確に分析されて恥ずかしくなる太地。
《ステータスアップデート完了》
《アバターディテール調整開始》
シルエットが変化しているのがわかる。細やかにたくさんの箇所を同時に調整している。
まるで太地の情報をインプットし、ベースの母体を必要な最適解へ変換しているかのようだ。
《調整完了》
《初期設定完了》
(やっと終わったのか……)
目の前の煙が薄くなって消えていく……
シルエットしか見えなかったアバウトな存在は、ついに太地の目の前に全貌を現した。
彼(もしくは彼女?)の風貌は一言ではなんとも形容し難い。
いわゆる「宇宙人」と言えばこれだ、とでもいえる抽象的で白くて頭と目がちょっとでかいあの存在に近い。しかしながら無駄な要素をできるだけ省いて整えられたシンプルな美と抽象性を感じさせる。
いや、衝撃を受けるポイントは、そこではない。
彼の左眼にはゴールドのレトロな懐中時計のようなモノが眼帯として施されている。今にも『パカッ』と開きそうである。
その眼帯を中心に時計の文字盤「4」から「10」をつなげたライン取りでゴールドのチェーンが頭部やや右側から左ほほへと大胆にまわされて、眼帯を固定する役割を担っているように見える。
黄金の懐中時計眼帯もなかなか特異なセンスの持ち主ではあると思うのだが、そこでもないのだ。
その左側だ……
眼帯より左側(正面から見て右側)の頭部がごそっと欠けているのだ。
太地はおそるおそる欠けた頭部の断面箇所を少し離れた距離で覗き見ると、そこにはおとめ座銀河団の楕円銀河M87のブラックホールかと思うくらいに漆黒と高密度な星の集合体が神秘的に描かれていた。
(あのリングを光にかざした時と同じだ)
「ねぇ……君……頭大丈夫?」
ちょっと聞き方が雑になる太地。いや、これでも太地にとっては目一杯丁寧に聞いているのだろう。
返事は返ってこない。
彼の右目は閉ざされている。何かを待っているのだろうか。
頭部のブラックホールには心臓が飛び出すくらいの衝撃を受けて動揺したが、なんとか落ち着こうと視点をやや広げて全体にフォーカスしようとした。
(……ん?)
まるで刀でスパッと垂直に切られたかのように、左肩からその先が見当たらなかった。
うまく状況を把握できない。
「君……左腕も無いの?」
返事は……やはり返ってこない。
状況を理解することを一旦諦めた太地。心臓の鼓動が徐々にいつもの正常なリズムで刻み始める。
改めて全体を観察する太地。
(服は着ている……)
一見ボロ布を巻いているだけに見えるその服装はゴールドチェーンが描く弧を意識するかのように大きな弧を意識したアシンメトリーなデザインは太地の気持ちを高ぶらせた。
「よく見ると結構格好いいな~」
(さっきのアップデート後の微調整で服装のコーデがこれに決まったのか?)
この場では割とどうでもいいことを考え始める太地。もはや現実逃避の2歩手前だ。
(なんというか……原子の神であるかのような格好に見えてくる)
「いや、最初の人間であるアダムとイヴを足した感じか。葉っぱが大きくなって隠す箇所が増えて--」
くだらない太地の独り言が長引くことを恐れたのか、彼の右目がゆっくりと開きだす。
「あ……」
開ききった瞬間、ブワッと音がなったかのように彼から突発的に風が吹き出し、太地が壁まで吹っ飛ぶ。
ドドン!
「いててて……何が起こった?」
動揺と恐怖心を隠せない。
(今、僕は攻撃された?)
壁にもたれてながらゆっくり姿勢を起こす。
再び顔を上げて彼を見たとき、恐怖と驚きは幾重にも重なる。
「何……あれ」
目を覚ましたことで発動したのだろうか。頭部左側(向かって右側)を弱く繊細なグリーンの光が太地の目に飛びこんでくる。
よく見ると、無数の英数字やラテン文字が頭部のブラックホールを包み隠そうとするかのようにエメラルドグリーンに輝きながらチェーンの弧をなぞるように規則的に一定の速度で動いているようだ。
昔、某映画やアニメであった表現、『デジタルレイン(雨)』の立体版というべきだろうか。
(文字列によって生み出されたヘアスタイルだ。)
感性がずれているのか、太地の驚きは再び感動へと変わる。
(すごい! 本当に綺麗だ。)
もはや恐怖心は吹き飛んだ。そこには好奇心しかない。
「あ、左手が……」
そう、頭部の変化と同様に左肩にもデジタルレインが肩周りをなぞるように円を描いている。そして手袋のようなものをはめた左手が完全に独立して浮いている。
(左腕は無い)
「その左手は動かせるの?」
太地は再び彼に話しかけてみる。
彼は視線を左手に向けた。同時に左手は握って開いてを繰り返しながら移動し、顔に近い位置で止まる。
『……はい』
返事が返って来る。
(喋った。僕に返事をしてくれたぞ!)
心臓が高鳴る。
(声の質としては女性的だが、なんとも言えない。アニメで男性キャラクターの声を担当する女性声優だって世の中たくさんいるし。)
「え~と……」
壁にもたれてなんとか立ち上がった太地のもとへ、彼が近づいて来る。
穏やかな天気の日に、空へ上がっていく風船のようにす~っと静かに。
一切の力をかけずに。
部屋の高さいっぱいに浮かんでいる彼となんとか立った姿勢を維持している太地。
見上げる太地と見下ろす彼の構図のまま、太地は話しかける。
「君は一体何者なの?」
……
彼が答える。
……
『わたしは あなたの アイドルです』
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