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第三章 関東大一揆、洛外編
第57話 ファシリティ luna【月】
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翌日、太地は何故か権田家のトレーニングルームで月人と特訓していた。抜群の広さと抜群の壁の強度。まさに理想的な環境なのだが……
「フゥ~。ちょっと休憩しようか。ステータスとか諸々確認したいし」
『おういいぜ。炭酸水持って来たのか?』
「いや、あそこに全てが完備されている」
太地が指差す先には休憩ラウンジがあり、様々な飲料水が置かれていた。勿論、太地たちは無料で飲める。
「太地! クルミと一緒に休憩ですわ~」
『そうか。このチンチクリンもいたな』
何故、権田家にいるのか。
カフェ・ポメラでお茶した時、太地の総合運動公園でのトレーニングの話を聞いた葛城らから総合公園では問題になりそうだから止めたほうがいいと突っこまれたことがキッカケだった。そこからは成美の提案で、半ば強引にこの展開になってしまったという経緯だ。
しかし、木を倒して怒られるわけでもないし、周りの視線を気にする必要もない。エネルギー補給もできる。GSDへ向かうとなると遠いので、家から比較的近い距離の権田家はちょうどいい環境だった。
「権田家までトレーニングを兼ねて走っていくからリムジン送迎必要ないって断ることもできたし、結構ありがたい環境かも。音楽聴きながら走るのも気持ちよかったし」
『お嬢も流石に青一高を頻繁に休むわけにはいかないからな。このちんちくりんはずっといるけど』
「ハハハ、まぁ姉妹の勢いにはもう慣れたから、後はこの財閥の雰囲気に慣れることができれば、なお良しって感じなんだけれどね……」
クルミと炭酸水を飲みながら会話し、念話で月人と話す太地。実に器用だ。
休憩中、太地のスマホにGSDからメッセージがくる。
「宝生さんからだ……なんか、時間あるときに来てくれだって。渡すものがあるらしいよ」
『時間はいつでも空いているからな。明日行くか』
「そうだね」
「クルミちゃん、おねーちゃんに明日GSDに行くから車貸してって伝えてくれるかな?」
「問題ないのですわ! お姉様がダメでもワタクシが貸してあげるのですわ!」
「クルミの仁王立ち会話にも大分慣れて来たなぁ」
『ていうか、お前、ちょっとチャリ貸してみたいなノリでリムジン借りるの、なんか色々すげーぞ。もう財閥生活問題ないだろ』
「あはは。確かにそうかも」
* * *
––翌朝10時頃––
太地は探索課が入っているファシリティstella【星】に到着した。
ロビーを抜けてエレベーターで上がる。もう受付で許可証を発行する必要はない。すでに自分はGSDの一員だから。ちょっとした喜びを感じる。これが帰属意識なのかもしれないと考える。
「どの辺りに扉あったかな。えっと……」
「ここよ」
振り返ると、天月千鶴が立っていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう……で、ここよ」
「あ……はい……ありがとうございます」
カードキーをかざして扉を開ける。本当に、天月さん姉妹は雰囲気が似てるなぁ。ちょっと会話しにくいところなんか特に……そういえばサングラスを部屋でもかけているのは何故だろう。
執務室に入って宝生を見つける太地。
「おはようございます」
「あ、六条さん、おはようございます。早速、小松部長がお呼びですよ」
「おう、太地。無事に編入できたか?」
「はい。これからは第一高です」
「早速だけど、ちょうど研究課に呼ばれてたんだわ。一緒に来い。渡すものがあるから。月人もGSDの領域内だったらいつでも出たいときに出ていいぞ。もう宝生のスキルはGSD全体に効いてるから大丈夫だ」
『オッケー。サンキュ~』
「あの、渡すものってなんですか?」
ニヤリと笑う小松部長。
「よし。今からそこへ行くぞ! ついて来い!」
* * *
小松部長は太地と月人を連れて研究課があるファシリティ luna【月】に到着し、早速中へ入る。当然だが、すれ違うローダー全員が月人を見て驚いて立ち止まる。
ガハハと笑う小松部長と、目立つのが嫌な太地。月人は特に気にしていない様だ。
しばらく歩いて部長室で立ち止まり、ノックして入る。
「羽生いるか~入るぞ~」
シンプルなよくある社長室の様な内装だ。そこに中年男性が一人椅子に座って笑顔でこちらを見ている。
「おぉ、小松! もしかして、そちらの青年が例の?」
「そうだ。太地、このおっちゃんは研究課の部長、羽生優一だ。ざっくり紹介すると、とてもいい人だ」
ニカッと笑う小松部長。
「おいおい、なんだよその紹介の仕方は……たくしょうがない奴だなぁ」
笑いながら席を立って太地の方へ歩み寄る。
「初めまして。太地君と月人君かな? 羽生です。よろしくね」
「あ、あの、六条太地です。こちらこそよろしくお願いします」
『月人だ。よろしくな!』
「もしかして、羽生部長の娘さんは黄山区第一高の……」
「そうそう! そうなんだよ~。さやかちゃんと瑞穂ちゃんは大切な私の娘でもう可愛くて可愛くてね~君のことばっかり話すからちょっと嫉妬しちゃってさぁ~」
「「え?」」
『こういうキャラなのか……』
「そうだ、羽生は大の娘好きだから太地も気をつけろよ」
「いやいや、何もしませんから」
「おほん……ちょっと、いきなりお見苦しい姿を見せてしまったが、まぁそういうことなんだ。というわけで今後ともよろしく」
『どいういうわけだよ』
「では早速ラボへ向かおうか」
* * *
移動の間、羽生部長は太地にファシリティ lunaの説明をしてくれた。
GSDの根幹とも言える技術を支える施設であり、研究課のみが使用しているが、規模はGSDの中で最も大きい。ここでは探索課や調査課より集められた資料を活用して研究に活かしたり、各部署より提出されたローダーの武器や防具などの装備に関する要望やクレームに対応したり、GSD本部の防衛及び革新的素材の開発なども。ざっくり言うと技術面のサポート、まさにGSDの屋台骨と呼べる存在だ。
「それにしても月人君を生み出した六条勝規はまさに天才科学者だ。こんな才能と技術、今のGSDでは到底実現できないだろう」
「父さんのことをご存知なんですか?」
「もちろんだ。彼はこの研究課で働いていたのだから」
「よろしければ父がここでどう働いていたのかをお聞きしても?」
「そうだね……まず、GSDの技術がここまで飛躍できたのは彼のおかげだ。エンドサーフェイスを開発したのも六条さんだよ。君が持っているそれも今のGSDローダーがもつものとはスペックがかなり違う様だ。我々研究課にはこういった人型や人口知能を持ったアイドルを作り出すことがまだできないんだからね」
「そうだったんですね。じゃぁ、セカンドブレインはご存知ですか?」
「いや、知らないなぁ。なんだねそれは?」
『平たくいうと俺の知能だな』
羽生部長が肩をすくめる。
「全くわからない。お手上げだ。今のうちの技術では理解することさえ不可能だ……そうだ、一点大事なことなんだが、太地君と月人君、改めてだが安心してくれたまえ。我々研究課は君や太地君のエンドサーフェイスを調べようなんて一切考えていないから。」
『何の話だ?……あぁ、GSDが俺のアイドルとしての技術を解明してGSDのローダー技術に応用しようってことだな』
「そうだ。つまりこのおっちゃんは司令部から何を言われようと、お前らを変に利用したりしねぇから自由に遊びに来いってよ」
小松部長が笑っている。羽生部長は信用できる人なのだろうと太地も感じている。
「まぁ、そんな格好いいものではないさ。なんせ、いじってもわからんものを何かしろと言われてもなぁ。ハッハッハ!」
「ありがとうございます」
「……あの時、突然彼は姿を消したよ。ここで君のエンドサーフェイスとあれを開発していたんだろう。周りの人間には一切相談していなかったみたいだ。仲間に危険が及ぶことを恐れたのか、もしくは……GSDの中に危険があったのかもしれない。とにかく我々も何も知らないというのが今君たちに伝えられる事で……あぁ、そうそう、太地君が来るまでは家族に連絡しないでほしいと手紙が添えてあったな」
「そうだったんですね……父さんが研究課にいたという事実がわかっただけでもかなりの進歩ですから。あとで、父さんの仕事場を見せていただけないでしょうか?」
「もちろんいいよ。今から君に大切なものを渡すからそのあとでなら」
「大切なもの、ですか?」
小松部長がニヤリと笑いながら答える。
「太地と月人の新しい相棒だ」
「フゥ~。ちょっと休憩しようか。ステータスとか諸々確認したいし」
『おういいぜ。炭酸水持って来たのか?』
「いや、あそこに全てが完備されている」
太地が指差す先には休憩ラウンジがあり、様々な飲料水が置かれていた。勿論、太地たちは無料で飲める。
「太地! クルミと一緒に休憩ですわ~」
『そうか。このチンチクリンもいたな』
何故、権田家にいるのか。
カフェ・ポメラでお茶した時、太地の総合運動公園でのトレーニングの話を聞いた葛城らから総合公園では問題になりそうだから止めたほうがいいと突っこまれたことがキッカケだった。そこからは成美の提案で、半ば強引にこの展開になってしまったという経緯だ。
しかし、木を倒して怒られるわけでもないし、周りの視線を気にする必要もない。エネルギー補給もできる。GSDへ向かうとなると遠いので、家から比較的近い距離の権田家はちょうどいい環境だった。
「権田家までトレーニングを兼ねて走っていくからリムジン送迎必要ないって断ることもできたし、結構ありがたい環境かも。音楽聴きながら走るのも気持ちよかったし」
『お嬢も流石に青一高を頻繁に休むわけにはいかないからな。このちんちくりんはずっといるけど』
「ハハハ、まぁ姉妹の勢いにはもう慣れたから、後はこの財閥の雰囲気に慣れることができれば、なお良しって感じなんだけれどね……」
クルミと炭酸水を飲みながら会話し、念話で月人と話す太地。実に器用だ。
休憩中、太地のスマホにGSDからメッセージがくる。
「宝生さんからだ……なんか、時間あるときに来てくれだって。渡すものがあるらしいよ」
『時間はいつでも空いているからな。明日行くか』
「そうだね」
「クルミちゃん、おねーちゃんに明日GSDに行くから車貸してって伝えてくれるかな?」
「問題ないのですわ! お姉様がダメでもワタクシが貸してあげるのですわ!」
「クルミの仁王立ち会話にも大分慣れて来たなぁ」
『ていうか、お前、ちょっとチャリ貸してみたいなノリでリムジン借りるの、なんか色々すげーぞ。もう財閥生活問題ないだろ』
「あはは。確かにそうかも」
* * *
––翌朝10時頃––
太地は探索課が入っているファシリティstella【星】に到着した。
ロビーを抜けてエレベーターで上がる。もう受付で許可証を発行する必要はない。すでに自分はGSDの一員だから。ちょっとした喜びを感じる。これが帰属意識なのかもしれないと考える。
「どの辺りに扉あったかな。えっと……」
「ここよ」
振り返ると、天月千鶴が立っていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう……で、ここよ」
「あ……はい……ありがとうございます」
カードキーをかざして扉を開ける。本当に、天月さん姉妹は雰囲気が似てるなぁ。ちょっと会話しにくいところなんか特に……そういえばサングラスを部屋でもかけているのは何故だろう。
執務室に入って宝生を見つける太地。
「おはようございます」
「あ、六条さん、おはようございます。早速、小松部長がお呼びですよ」
「おう、太地。無事に編入できたか?」
「はい。これからは第一高です」
「早速だけど、ちょうど研究課に呼ばれてたんだわ。一緒に来い。渡すものがあるから。月人もGSDの領域内だったらいつでも出たいときに出ていいぞ。もう宝生のスキルはGSD全体に効いてるから大丈夫だ」
『オッケー。サンキュ~』
「あの、渡すものってなんですか?」
ニヤリと笑う小松部長。
「よし。今からそこへ行くぞ! ついて来い!」
* * *
小松部長は太地と月人を連れて研究課があるファシリティ luna【月】に到着し、早速中へ入る。当然だが、すれ違うローダー全員が月人を見て驚いて立ち止まる。
ガハハと笑う小松部長と、目立つのが嫌な太地。月人は特に気にしていない様だ。
しばらく歩いて部長室で立ち止まり、ノックして入る。
「羽生いるか~入るぞ~」
シンプルなよくある社長室の様な内装だ。そこに中年男性が一人椅子に座って笑顔でこちらを見ている。
「おぉ、小松! もしかして、そちらの青年が例の?」
「そうだ。太地、このおっちゃんは研究課の部長、羽生優一だ。ざっくり紹介すると、とてもいい人だ」
ニカッと笑う小松部長。
「おいおい、なんだよその紹介の仕方は……たくしょうがない奴だなぁ」
笑いながら席を立って太地の方へ歩み寄る。
「初めまして。太地君と月人君かな? 羽生です。よろしくね」
「あ、あの、六条太地です。こちらこそよろしくお願いします」
『月人だ。よろしくな!』
「もしかして、羽生部長の娘さんは黄山区第一高の……」
「そうそう! そうなんだよ~。さやかちゃんと瑞穂ちゃんは大切な私の娘でもう可愛くて可愛くてね~君のことばっかり話すからちょっと嫉妬しちゃってさぁ~」
「「え?」」
『こういうキャラなのか……』
「そうだ、羽生は大の娘好きだから太地も気をつけろよ」
「いやいや、何もしませんから」
「おほん……ちょっと、いきなりお見苦しい姿を見せてしまったが、まぁそういうことなんだ。というわけで今後ともよろしく」
『どいういうわけだよ』
「では早速ラボへ向かおうか」
* * *
移動の間、羽生部長は太地にファシリティ lunaの説明をしてくれた。
GSDの根幹とも言える技術を支える施設であり、研究課のみが使用しているが、規模はGSDの中で最も大きい。ここでは探索課や調査課より集められた資料を活用して研究に活かしたり、各部署より提出されたローダーの武器や防具などの装備に関する要望やクレームに対応したり、GSD本部の防衛及び革新的素材の開発なども。ざっくり言うと技術面のサポート、まさにGSDの屋台骨と呼べる存在だ。
「それにしても月人君を生み出した六条勝規はまさに天才科学者だ。こんな才能と技術、今のGSDでは到底実現できないだろう」
「父さんのことをご存知なんですか?」
「もちろんだ。彼はこの研究課で働いていたのだから」
「よろしければ父がここでどう働いていたのかをお聞きしても?」
「そうだね……まず、GSDの技術がここまで飛躍できたのは彼のおかげだ。エンドサーフェイスを開発したのも六条さんだよ。君が持っているそれも今のGSDローダーがもつものとはスペックがかなり違う様だ。我々研究課にはこういった人型や人口知能を持ったアイドルを作り出すことがまだできないんだからね」
「そうだったんですね。じゃぁ、セカンドブレインはご存知ですか?」
「いや、知らないなぁ。なんだねそれは?」
『平たくいうと俺の知能だな』
羽生部長が肩をすくめる。
「全くわからない。お手上げだ。今のうちの技術では理解することさえ不可能だ……そうだ、一点大事なことなんだが、太地君と月人君、改めてだが安心してくれたまえ。我々研究課は君や太地君のエンドサーフェイスを調べようなんて一切考えていないから。」
『何の話だ?……あぁ、GSDが俺のアイドルとしての技術を解明してGSDのローダー技術に応用しようってことだな』
「そうだ。つまりこのおっちゃんは司令部から何を言われようと、お前らを変に利用したりしねぇから自由に遊びに来いってよ」
小松部長が笑っている。羽生部長は信用できる人なのだろうと太地も感じている。
「まぁ、そんな格好いいものではないさ。なんせ、いじってもわからんものを何かしろと言われてもなぁ。ハッハッハ!」
「ありがとうございます」
「……あの時、突然彼は姿を消したよ。ここで君のエンドサーフェイスとあれを開発していたんだろう。周りの人間には一切相談していなかったみたいだ。仲間に危険が及ぶことを恐れたのか、もしくは……GSDの中に危険があったのかもしれない。とにかく我々も何も知らないというのが今君たちに伝えられる事で……あぁ、そうそう、太地君が来るまでは家族に連絡しないでほしいと手紙が添えてあったな」
「そうだったんですね……父さんが研究課にいたという事実がわかっただけでもかなりの進歩ですから。あとで、父さんの仕事場を見せていただけないでしょうか?」
「もちろんいいよ。今から君に大切なものを渡すからそのあとでなら」
「大切なもの、ですか?」
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