58 / 91
第三章 関東大一揆、洛外編
第58話 ディープアマゾナイト
しおりを挟む
『俺たちの新しい相棒だと? 何だそれ?』
月人にも知らされていない情報の様だ。
「ハハハ。確かにそうなるが、その前に説明がいるかな」
羽生部長が笑ってはぐらかす。
「着いたよ。この部屋だ。入ってくれたまえ」
羽生部長の指示で第三技術開発室と書かれた部屋へ入る。真っ白の1m角のパネルで床壁天井が構成されている、何とも近未来的な空間だ。
開発室の中央には直径30センチ程度のガラス球の様な玉があり、その中に雫型の漆黒の石が保管されている。覗き込む太地と月人。
「この漆黒……エンドサーフェイスと同じ素材だ」
「練馬君、おはよう。早速だが例の探索課のリンク設定を一つ増やしてくれるか?」
壁際のコントロールパネル付近に立っていた男性研究スタッフが反応する。
「はい! 承知しましました」
男性が操作して、透明ガラスの球体が開く。
「六条さん、初めまして。探索課のローダーアイテムメンテナンスを担当しています、練馬志の輔と申します! 志の輔って呼んでください。太地さんのお父さんには本当にお世話になりました! 全力でサポートしますので、今後ともよろしくお願いします!」
「六条太地と、こちらが相棒でアイドルの月人です」
「ウィッス!」
ぺこりと笑顔でお辞儀をして作業を続ける練馬志の輔。
「それでは小松部長。いつもの様に人差し指をこちらへ」
「おう!」
漆黒の石に小松部長の人差し指が触れる。石が眩しい光を放ち、光が徐々に消えていく。 コントロールパネルで志の輔が操作して、また中央へ。次に太地にも同じ様に石に触れる様に指示する。小松部長とは違う輝きを放つ何色もの光が部屋中に広がる。
「うわっ! なんだこの反応は⁈ 光の系統が……一体、何色あるんだろう? 虹色の様な感じですね!」
練馬志の輔が興奮している。
「おぉ~。見たことね~なこりゃ~」
「これってどういうことですか? 何ですかこの光は!」
志の輔がなぜか戸惑っている。そして輝きはまだ続いている。
「これは……さすがオールタイプの奇跡だ」
羽生部長がつぶやく。明らかに感動している。
「まっ眩しすぎる」
『ヤベェ、直視できねぇ』
やがて徐々に光が弱まる。
「もう、指を離してもいいですか?」
唖然として口が開いたままの志の輔に太地が確認する。
「え? あ、はい! 大丈夫です!」
漆黒石の状態を確認して、慌ただしく作業する志の輔。
「それでは初期リンク設定は完了しましたので、とりあえず、今はこちらのチェーンを使ってください。後ほど太地さんご自身でお好きなものに変えていただいて構いませんので。」
そういって、手渡される太地。手元にはあの石が無愛想なステンレスのチェーンにくっ付けられている。
『これって、まさかチョーカーとして使えってことか?』
「チョーカーってネックレスのこと? これを僕が?」
「あはは。 まぁ、別の素材だともっと似合いそうですね。自分にはそういうセンスが全くありませんので……お任せします!」
まだ状況をうまく飲み込めていない太地たちだが、小松部長は気にせずに進める。
「志の輔、これってあとどれくらいで起動できる?」
「あと、2時間はそのままでお待ちいただけますか?」
「わかった。 じゃぁ、あとは適当にやっとくわ!」
「太地君、ちょっといいかな?」
羽生部長が太地を呼び止める。
「この石はね、君のお父さんが探索課のために開発したアイテムなんだ」
「これも、父さんの……」
「どう使うかは後で小松から聞くといい。私はこの石のことをお父さんがどう話していたを君に伝えたくてね」
(父さんが作ったもの……)
「太地君はパワーストーンに興味あるかな?」
「パワーストーンってターコイズとかアメジストとかの運気を呼ぶとされる石のことですよね?」
「そうだね。実際に効果があるかは別だが、一般的に幸運を呼ぶターコイズやアクアマリン、恋愛運が上がるローズクォーツとかアメジスト、金運にはシトリンやタイガーアイなどが良いとされているね」
『太地、いますぐローズクォーツ買えよ。でっかいの』
「うるさい、三日月人!」
「アハハハ。二人とも本当に仲が良いね。お父さんはね、この黒い石のことをDeep Amazo-night<ディープアマゾナイト>と命名したんだ」
「ディープアマゾナイト……」
漆黒の石を見つめながら太地は羽生部長の言葉を反芻する。そしてゆっくりとつぶやく。
「Amazoniteは別名【希望の石】とも呼ばれていてね。ポジティブな効果が幾つもあるらしいよ。私は詳しくは知らないがね。
そしてこの深い漆黒の中には美しい星空が広がっていることを君は知っていたかい? 光にかざして見てみると、その様子がわかるんだが」
「あ! はい! それはこのエンドサーフェイスで見たことあります」
「そうだね。それも同じ素材だ。これらは天然石ではない。六条勝規が長い時間をかけて生み出した人口石なんだ。察するに、彼はこれから起こる惨劇を予想して、この石にそんな名前をつけたのかもしれないな」
羽生部長が目を細めて太地の手のひらの石を見つめている。太地にはそれが過去に起こったことに対して何かを後悔している様に感じられた。
『Deep Amazo-nightか……なるほど。niteではなく、nightか。洒落が効いてるよな。太地の父親は。深い希望の夜……いや夜空とか? う~ん良い訳が思い浮かばね~な~』
「何となくだけど、【希望に満ちた夜空】ってのはどう?」
『なんか、響は悪くないが、かなりポエティックで太地が言うとキモいな』
「いや、お前ほんとうるさいよ! キモいって言うな!」
その場にいる全員が笑う。
「羽生部長、ありがとうございます! ディープアマゾナイトのエピソード、聞けて本当によかったです!」
お礼を言う太地に笑顔で頷く羽生部長。
「困ったことがあったら、いつでもここへ来なさい。研究課は君を全力でバックアップするから」
「はい! これからもよろしくお願いします!」
小松部長と太地たちはファシリティ lunaを後にして探索課へ向かった。
月人にも知らされていない情報の様だ。
「ハハハ。確かにそうなるが、その前に説明がいるかな」
羽生部長が笑ってはぐらかす。
「着いたよ。この部屋だ。入ってくれたまえ」
羽生部長の指示で第三技術開発室と書かれた部屋へ入る。真っ白の1m角のパネルで床壁天井が構成されている、何とも近未来的な空間だ。
開発室の中央には直径30センチ程度のガラス球の様な玉があり、その中に雫型の漆黒の石が保管されている。覗き込む太地と月人。
「この漆黒……エンドサーフェイスと同じ素材だ」
「練馬君、おはよう。早速だが例の探索課のリンク設定を一つ増やしてくれるか?」
壁際のコントロールパネル付近に立っていた男性研究スタッフが反応する。
「はい! 承知しましました」
男性が操作して、透明ガラスの球体が開く。
「六条さん、初めまして。探索課のローダーアイテムメンテナンスを担当しています、練馬志の輔と申します! 志の輔って呼んでください。太地さんのお父さんには本当にお世話になりました! 全力でサポートしますので、今後ともよろしくお願いします!」
「六条太地と、こちらが相棒でアイドルの月人です」
「ウィッス!」
ぺこりと笑顔でお辞儀をして作業を続ける練馬志の輔。
「それでは小松部長。いつもの様に人差し指をこちらへ」
「おう!」
漆黒の石に小松部長の人差し指が触れる。石が眩しい光を放ち、光が徐々に消えていく。 コントロールパネルで志の輔が操作して、また中央へ。次に太地にも同じ様に石に触れる様に指示する。小松部長とは違う輝きを放つ何色もの光が部屋中に広がる。
「うわっ! なんだこの反応は⁈ 光の系統が……一体、何色あるんだろう? 虹色の様な感じですね!」
練馬志の輔が興奮している。
「おぉ~。見たことね~なこりゃ~」
「これってどういうことですか? 何ですかこの光は!」
志の輔がなぜか戸惑っている。そして輝きはまだ続いている。
「これは……さすがオールタイプの奇跡だ」
羽生部長がつぶやく。明らかに感動している。
「まっ眩しすぎる」
『ヤベェ、直視できねぇ』
やがて徐々に光が弱まる。
「もう、指を離してもいいですか?」
唖然として口が開いたままの志の輔に太地が確認する。
「え? あ、はい! 大丈夫です!」
漆黒石の状態を確認して、慌ただしく作業する志の輔。
「それでは初期リンク設定は完了しましたので、とりあえず、今はこちらのチェーンを使ってください。後ほど太地さんご自身でお好きなものに変えていただいて構いませんので。」
そういって、手渡される太地。手元にはあの石が無愛想なステンレスのチェーンにくっ付けられている。
『これって、まさかチョーカーとして使えってことか?』
「チョーカーってネックレスのこと? これを僕が?」
「あはは。 まぁ、別の素材だともっと似合いそうですね。自分にはそういうセンスが全くありませんので……お任せします!」
まだ状況をうまく飲み込めていない太地たちだが、小松部長は気にせずに進める。
「志の輔、これってあとどれくらいで起動できる?」
「あと、2時間はそのままでお待ちいただけますか?」
「わかった。 じゃぁ、あとは適当にやっとくわ!」
「太地君、ちょっといいかな?」
羽生部長が太地を呼び止める。
「この石はね、君のお父さんが探索課のために開発したアイテムなんだ」
「これも、父さんの……」
「どう使うかは後で小松から聞くといい。私はこの石のことをお父さんがどう話していたを君に伝えたくてね」
(父さんが作ったもの……)
「太地君はパワーストーンに興味あるかな?」
「パワーストーンってターコイズとかアメジストとかの運気を呼ぶとされる石のことですよね?」
「そうだね。実際に効果があるかは別だが、一般的に幸運を呼ぶターコイズやアクアマリン、恋愛運が上がるローズクォーツとかアメジスト、金運にはシトリンやタイガーアイなどが良いとされているね」
『太地、いますぐローズクォーツ買えよ。でっかいの』
「うるさい、三日月人!」
「アハハハ。二人とも本当に仲が良いね。お父さんはね、この黒い石のことをDeep Amazo-night<ディープアマゾナイト>と命名したんだ」
「ディープアマゾナイト……」
漆黒の石を見つめながら太地は羽生部長の言葉を反芻する。そしてゆっくりとつぶやく。
「Amazoniteは別名【希望の石】とも呼ばれていてね。ポジティブな効果が幾つもあるらしいよ。私は詳しくは知らないがね。
そしてこの深い漆黒の中には美しい星空が広がっていることを君は知っていたかい? 光にかざして見てみると、その様子がわかるんだが」
「あ! はい! それはこのエンドサーフェイスで見たことあります」
「そうだね。それも同じ素材だ。これらは天然石ではない。六条勝規が長い時間をかけて生み出した人口石なんだ。察するに、彼はこれから起こる惨劇を予想して、この石にそんな名前をつけたのかもしれないな」
羽生部長が目を細めて太地の手のひらの石を見つめている。太地にはそれが過去に起こったことに対して何かを後悔している様に感じられた。
『Deep Amazo-nightか……なるほど。niteではなく、nightか。洒落が効いてるよな。太地の父親は。深い希望の夜……いや夜空とか? う~ん良い訳が思い浮かばね~な~』
「何となくだけど、【希望に満ちた夜空】ってのはどう?」
『なんか、響は悪くないが、かなりポエティックで太地が言うとキモいな』
「いや、お前ほんとうるさいよ! キモいって言うな!」
その場にいる全員が笑う。
「羽生部長、ありがとうございます! ディープアマゾナイトのエピソード、聞けて本当によかったです!」
お礼を言う太地に笑顔で頷く羽生部長。
「困ったことがあったら、いつでもここへ来なさい。研究課は君を全力でバックアップするから」
「はい! これからもよろしくお願いします!」
小松部長と太地たちはファシリティ lunaを後にして探索課へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる