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第三章 関東大一揆、洛外編
第60話 11月29日は「いい肉の日」
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「「「……え? 犬⁈」」」
『……へ? なんだこれ?』
「子犬……だね……」
『ワン!』
「これだけ異常なまでに期待値を上げておいて……犬……ですか?」
宝生がメガネをクイッと持ち上げて、ボソッと呟く。
隣で笑い過ぎてしゃがみこんでいる小松部長と高杉。天月と片瀬は目を輝かせている。
「「可愛すぎる……」」
全身が黒毛で覆われていて、口周り、胸、腹、脚先が白毛。そしてチリ毛だ。クリクリの眼にまんまるとした小柄な体型。
「間違いない。犬種はポメラニアンだな」
『いや、そこどうでもいいだろ……なんでただの犬なんだ……』
太地が子犬を抱き上げる。
「こいつ……なんか可愛くていいんじゃない? 僕は気に入ったよ!」
『いや、まぁそれはいいんだが……』
部長たちが近づいてくる。
「太地お疲れ~。無事に可愛い愛犬が見つかってよかったな。ププッ」
「やっぱりあれ首輪でよかったんだね、プププッ」
「バカ、それ言うんじゃねーよ。腹いて~んだからこれ以上笑わせるな!」
「部長ひどいっスよ。こんな可愛いワンちゃん、最高っスよ」
《名前を決めてください》
太地と月人にアナウスが聞こえる。
「あぁ、名前かぁ~」
『そうか。これはまだチュートリアル版だったな』
「チュートリアル版? 名前? どういうことですか?」
太地たちの会話に興味を持つ宝生。どうやら、ほかのローダーにはそういったアナウンスが流れなかったようだ。太地だけが指示されているようだ。
『セカンドブレインが存在するかどうか、かもな。このワン公もさっき俺とリンクしたってアナウンスがあったしな』
「なるほど。確かにね」
愛犬を抱えながら、一分ほど考え込む。そして太地がいい表情を見せる。どうやら決まったようだ。
「お前の名前は『六太』だ。六条太地の姓と名それぞれから一文字取って付けた」
『まじ? もっと格好いいのが俺は好きなんだが……まぁいいか』
ジャンプして着地し、元気に走り回っている。
《六太で登録してよろしいですか?》
「うん。六太で!」
そして再度光が子犬を包み込んで解き放つ。
どうやら全ての処理が終わったようだ。
「六太! 僕は太地、こっちは相棒の月人だ。これからよろしくね!」
『よろしくな! 六太』
「今日、11月29日が六太の誕生日だ。『いい肉』の日だな!」
『なんだそれ!』
笑っている太地と月人の顔を六太がじっと見つめる。そして立ち上がって腕を……いや前脚を組んで笑顔を見せる。そもそも立ち上がっている? 犬が?
『おう! 太地に月人! よろしくな!』
トレーニングルーム全体の時が止まったかのように静寂が訪れる。
『なんだ? みんなオイラの声聞こえてないのか?』
「「「 ……い、い、犬が喋ったー! 」」」
* * *
そして執務室に戻ってきた。
「まぁ、でもそりゃ太一君のアイドルだからね。何でもアリか。喋れるくらい想定の範囲とも言えるね」
高杉が口を開く。
「喋れて、二足歩行もできて……可愛い黒ポメのイメージが破壊されたわ」
片瀬がボヤく。天月も激しく頷いて同意している。
「六太さん、可愛いっスよ! 俺は気に入ったっス!」
『オイラもトンボのことが気に入った! 今度一緒にペットOKのカフェでお茶しようぜ!』
太地の肩にお座りしながら左前脚で器用にサムズアップする六太。
「行くっス! ん? 俺、名前言いましたっけ?」
トンボの疑問に月人が答える。
『あぁ~、それはあれだ。この犬っコロと俺のセカンドブレインとがリンクされているから、情報は全て並列化されてるみたいだぜ。トンボだけでなく、これまで太地や俺が皆とやりとりしたあらゆる情報全て、コイツにも共有されているってわけだ。』
「それはすごいね。これが六条さんが開発したセカンドブレインか……
しかし何でまたこういった元気で勢いあるキャラクターになるのかな? なんと言うか……太地君とはかなり真逆な性格だと思うんだけど」
高杉が月人に質問しながら六太を見ている。六太は太地の肩の上で立ち上がってシャドーボクシングをしている。どうやら暇みたいだ。
『シュッ、シュシュッ、シャシャシャシャー! どうだ、そうちゃん! オイラのパンチ、なかなかいけてるだろ! 今度トレーニンング一緒に行こうぜ』
「ハハハ……、あだ名までつけられた。とんでもない知能だね」
「あれはあれで、可愛いわ……」
「確かに。現代のデジタル天然記念物って感じよね」
天月千鶴と片瀬片奈が興味津々だ。
『おそらくだが、さっきの高杉の質問への答えとして、太地が必要とする環境をセカンドブレインが算出して、最適解を出したのが、俺だったりアレだ』
月人がアクビして馬鹿面の六太を指差す。そして続ける。
『太地はさ、見てわかる通り物静かで主張もしない、大した欲求もなくて見た目もそこまでイケメンじゃねーし、つまらない人間だろ? だからその代わりに俺が出てきたってわけだ。コイツも多分その影響でこんなひねくれたんじやねーか? チリ毛ってのも太地がサラサラの直毛だからかもな。 ケッケッケッ』
「おい、月人。お前ちょいちょい僕をディスってただろ! 性格は兎も角、イケメンかどうかはどうでもいいだろ!」
『そうだぜ! オイラのこの毛並みを簡単にチリ毛の一言で語るんじゃねーよ! 頭半分無いくせにえらそーにしやがって! 六太様と呼べ! このポンコツアイドルが!』
『何だとこのチビラニアンが! ぶっ飛ばすぞ!』
「やめとけお前ら。皆さんに迷惑だろ! 落ち着け」
『ふっ。どうやらこのポンコツ君は、オイラの黄金肉球パンチを喰らいたいみたいだな。喰らったら最後、あの世まで肉球の跡が残ると言われている恐怖の––』
バコーン!
月人のワンパンで後ろの壁まで吹っ飛ぶ六太。壁にめり込んで動けない。ちなみにアイドルだから死ぬことはない。
「なるほど。月人みたいな特別な攻撃力は六太には無いんだな。宝生、メモっておいてくれ。それから六太の基本能力もこれから把握してくれ」
「はい。了解しました」
『なになに? 宝生ちゃんオイラのこと気になってるわけ?』
いつの間にか、宝生の肩の上に乗っかっている六太。顔面が大きく腫れているが一向に気にしていないようだ。
『だったらさ、むしろオイラの方から毛とり脚とり教えてやるからさ、今度一緒に茶山区の高級ドックランに二人で遊びに––』
––ゴン!!
頭に大きなコブを作った六太を肩に乗せて太地が周りに謝る。しかし、この流れがあったからこそ、お似合いの三人だということが周りの人間には伝わったようだ。流石はセカンドブレイン。
「太地、これからその首輪、ずっとつけとけよ。鎖は変えていいからよ。長さはそれくらいにしておけ」
「あ、はい。了解しました」
「それは小松部長のスキルの恩恵を受けるために必要なアイテムだと思ってください。そのエンドサーフェイスを介して、六条さんのステータスを一時的に大幅に上昇させることができるんです」
『おぉ! その戦闘補助スキルはやべえな! おっちゃん、今度適応範囲とか持続時間とか具体的に俺に教えてくれよ! 何だそういうことかぁ。俺はてっきりあのバカ犬を呼び出すためだけの無駄な石かと思ってよ。そういうことか!』
「おう。もちろんだ。今後NFNFに対抗できる力をつけねえとだからな!」
そして小松部長がもう一言加える。
「ほれっ。受け取れ」
放り投げられた小さな金色の丸い物。掴んでよく見てみる。どうやらバッジのようだ。
「これは……Seeker <探索者>って書いてありますね。格好いいですね!」
「そのバッジはお前が正式なシーカー(探索者)だっていう証拠だ。失くすなよ!
今後、一般の公共交通機関をはじめ、GSDや政府が使用する施設及び飛行機などの移動手段は全て無料で使用できる。事件の現場もこのバッジを見せたら無条件で中に入れる。政府公認だ」
「これで俺たちと同じシーカー! やったッスね!」
「おめでとう。徐々に仕事も慣れるから何も気にせず頑張って!」
「最近はやめていく新人しか見ていませんけれど」
「ハハハ……まぁ、一生懸命頑張ります」
いい流れのところで、宝生町子が話に割って入る。
「六条さんに連絡です。GSDより、区別対抗学戦祭の団体課題Bのゲームで製作した立体戦棋のことで、司令室から話があると言われていますが、どうされますか?」
「え? GSD司令室から?」
『……へ? なんだこれ?』
「子犬……だね……」
『ワン!』
「これだけ異常なまでに期待値を上げておいて……犬……ですか?」
宝生がメガネをクイッと持ち上げて、ボソッと呟く。
隣で笑い過ぎてしゃがみこんでいる小松部長と高杉。天月と片瀬は目を輝かせている。
「「可愛すぎる……」」
全身が黒毛で覆われていて、口周り、胸、腹、脚先が白毛。そしてチリ毛だ。クリクリの眼にまんまるとした小柄な体型。
「間違いない。犬種はポメラニアンだな」
『いや、そこどうでもいいだろ……なんでただの犬なんだ……』
太地が子犬を抱き上げる。
「こいつ……なんか可愛くていいんじゃない? 僕は気に入ったよ!」
『いや、まぁそれはいいんだが……』
部長たちが近づいてくる。
「太地お疲れ~。無事に可愛い愛犬が見つかってよかったな。ププッ」
「やっぱりあれ首輪でよかったんだね、プププッ」
「バカ、それ言うんじゃねーよ。腹いて~んだからこれ以上笑わせるな!」
「部長ひどいっスよ。こんな可愛いワンちゃん、最高っスよ」
《名前を決めてください》
太地と月人にアナウスが聞こえる。
「あぁ、名前かぁ~」
『そうか。これはまだチュートリアル版だったな』
「チュートリアル版? 名前? どういうことですか?」
太地たちの会話に興味を持つ宝生。どうやら、ほかのローダーにはそういったアナウンスが流れなかったようだ。太地だけが指示されているようだ。
『セカンドブレインが存在するかどうか、かもな。このワン公もさっき俺とリンクしたってアナウンスがあったしな』
「なるほど。確かにね」
愛犬を抱えながら、一分ほど考え込む。そして太地がいい表情を見せる。どうやら決まったようだ。
「お前の名前は『六太』だ。六条太地の姓と名それぞれから一文字取って付けた」
『まじ? もっと格好いいのが俺は好きなんだが……まぁいいか』
ジャンプして着地し、元気に走り回っている。
《六太で登録してよろしいですか?》
「うん。六太で!」
そして再度光が子犬を包み込んで解き放つ。
どうやら全ての処理が終わったようだ。
「六太! 僕は太地、こっちは相棒の月人だ。これからよろしくね!」
『よろしくな! 六太』
「今日、11月29日が六太の誕生日だ。『いい肉』の日だな!」
『なんだそれ!』
笑っている太地と月人の顔を六太がじっと見つめる。そして立ち上がって腕を……いや前脚を組んで笑顔を見せる。そもそも立ち上がっている? 犬が?
『おう! 太地に月人! よろしくな!』
トレーニングルーム全体の時が止まったかのように静寂が訪れる。
『なんだ? みんなオイラの声聞こえてないのか?』
「「「 ……い、い、犬が喋ったー! 」」」
* * *
そして執務室に戻ってきた。
「まぁ、でもそりゃ太一君のアイドルだからね。何でもアリか。喋れるくらい想定の範囲とも言えるね」
高杉が口を開く。
「喋れて、二足歩行もできて……可愛い黒ポメのイメージが破壊されたわ」
片瀬がボヤく。天月も激しく頷いて同意している。
「六太さん、可愛いっスよ! 俺は気に入ったっス!」
『オイラもトンボのことが気に入った! 今度一緒にペットOKのカフェでお茶しようぜ!』
太地の肩にお座りしながら左前脚で器用にサムズアップする六太。
「行くっス! ん? 俺、名前言いましたっけ?」
トンボの疑問に月人が答える。
『あぁ~、それはあれだ。この犬っコロと俺のセカンドブレインとがリンクされているから、情報は全て並列化されてるみたいだぜ。トンボだけでなく、これまで太地や俺が皆とやりとりしたあらゆる情報全て、コイツにも共有されているってわけだ。』
「それはすごいね。これが六条さんが開発したセカンドブレインか……
しかし何でまたこういった元気で勢いあるキャラクターになるのかな? なんと言うか……太地君とはかなり真逆な性格だと思うんだけど」
高杉が月人に質問しながら六太を見ている。六太は太地の肩の上で立ち上がってシャドーボクシングをしている。どうやら暇みたいだ。
『シュッ、シュシュッ、シャシャシャシャー! どうだ、そうちゃん! オイラのパンチ、なかなかいけてるだろ! 今度トレーニンング一緒に行こうぜ』
「ハハハ……、あだ名までつけられた。とんでもない知能だね」
「あれはあれで、可愛いわ……」
「確かに。現代のデジタル天然記念物って感じよね」
天月千鶴と片瀬片奈が興味津々だ。
『おそらくだが、さっきの高杉の質問への答えとして、太地が必要とする環境をセカンドブレインが算出して、最適解を出したのが、俺だったりアレだ』
月人がアクビして馬鹿面の六太を指差す。そして続ける。
『太地はさ、見てわかる通り物静かで主張もしない、大した欲求もなくて見た目もそこまでイケメンじゃねーし、つまらない人間だろ? だからその代わりに俺が出てきたってわけだ。コイツも多分その影響でこんなひねくれたんじやねーか? チリ毛ってのも太地がサラサラの直毛だからかもな。 ケッケッケッ』
「おい、月人。お前ちょいちょい僕をディスってただろ! 性格は兎も角、イケメンかどうかはどうでもいいだろ!」
『そうだぜ! オイラのこの毛並みを簡単にチリ毛の一言で語るんじゃねーよ! 頭半分無いくせにえらそーにしやがって! 六太様と呼べ! このポンコツアイドルが!』
『何だとこのチビラニアンが! ぶっ飛ばすぞ!』
「やめとけお前ら。皆さんに迷惑だろ! 落ち着け」
『ふっ。どうやらこのポンコツ君は、オイラの黄金肉球パンチを喰らいたいみたいだな。喰らったら最後、あの世まで肉球の跡が残ると言われている恐怖の––』
バコーン!
月人のワンパンで後ろの壁まで吹っ飛ぶ六太。壁にめり込んで動けない。ちなみにアイドルだから死ぬことはない。
「なるほど。月人みたいな特別な攻撃力は六太には無いんだな。宝生、メモっておいてくれ。それから六太の基本能力もこれから把握してくれ」
「はい。了解しました」
『なになに? 宝生ちゃんオイラのこと気になってるわけ?』
いつの間にか、宝生の肩の上に乗っかっている六太。顔面が大きく腫れているが一向に気にしていないようだ。
『だったらさ、むしろオイラの方から毛とり脚とり教えてやるからさ、今度一緒に茶山区の高級ドックランに二人で遊びに––』
––ゴン!!
頭に大きなコブを作った六太を肩に乗せて太地が周りに謝る。しかし、この流れがあったからこそ、お似合いの三人だということが周りの人間には伝わったようだ。流石はセカンドブレイン。
「太地、これからその首輪、ずっとつけとけよ。鎖は変えていいからよ。長さはそれくらいにしておけ」
「あ、はい。了解しました」
「それは小松部長のスキルの恩恵を受けるために必要なアイテムだと思ってください。そのエンドサーフェイスを介して、六条さんのステータスを一時的に大幅に上昇させることができるんです」
『おぉ! その戦闘補助スキルはやべえな! おっちゃん、今度適応範囲とか持続時間とか具体的に俺に教えてくれよ! 何だそういうことかぁ。俺はてっきりあのバカ犬を呼び出すためだけの無駄な石かと思ってよ。そういうことか!』
「おう。もちろんだ。今後NFNFに対抗できる力をつけねえとだからな!」
そして小松部長がもう一言加える。
「ほれっ。受け取れ」
放り投げられた小さな金色の丸い物。掴んでよく見てみる。どうやらバッジのようだ。
「これは……Seeker <探索者>って書いてありますね。格好いいですね!」
「そのバッジはお前が正式なシーカー(探索者)だっていう証拠だ。失くすなよ!
今後、一般の公共交通機関をはじめ、GSDや政府が使用する施設及び飛行機などの移動手段は全て無料で使用できる。事件の現場もこのバッジを見せたら無条件で中に入れる。政府公認だ」
「これで俺たちと同じシーカー! やったッスね!」
「おめでとう。徐々に仕事も慣れるから何も気にせず頑張って!」
「最近はやめていく新人しか見ていませんけれど」
「ハハハ……まぁ、一生懸命頑張ります」
いい流れのところで、宝生町子が話に割って入る。
「六条さんに連絡です。GSDより、区別対抗学戦祭の団体課題Bのゲームで製作した立体戦棋のことで、司令室から話があると言われていますが、どうされますか?」
「え? GSD司令室から?」
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