Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第三章 関東大一揆、洛外編

第99話 ダサい掛け声と呪文

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 12月18日 17:00— 権田支部司令室

 小松部長からの連絡だ(宝生が話していたが)。それは本日午後より、想定される七箇所の爆破テロの襲撃予定地へGSDジスドの調査課と機動課のチームによる潜入捜査が開始されたとの一報だった。

 時限爆弾を事前に設置される、あるいはもうすでに設置されているという状況を想定して、NFNFエヌフに動きが悟られないように隠密に調査する作戦のようだ。

 そして、今度こそ小松部長が話す。

不破ふわのババアの話では爆破を防ぐのは絶対、更にそこからノコノコ現れたNFNFエヌフローダーをGSDジスドがぶっ潰すという感じの雑な作戦だ。詳細は各担当の課に任せるとのことなので、高杉と俺である程度考えてからまた連絡する。以上だ」


 こうして探索課のリモート会議は終了し、司令室で30秒ほどの沈黙。
 皆、それぞれ思うところがあるのだろうか……


(小松部長から聞いたGSDジスドの作戦自体に問題はないと思う。だが、何かがひっかかって頭の片隅に残っている。この感覚はなんだ……)


月人つきとはどう思った?」

『……NFNFエヌフの次の動きがどうなるかってことか?』

「うん。これまで通りで爆破テロを起こすつもりなんだろうか?」

『どうだろうな。変化があるはずだと太地たいちが考える理由はなんだ? 【御土居おどい】のキーワードか?』


 やはり月人は太地の考えをある程度理解している。そう、どうしても【洛外らくがい】と同じ攻め方をしてくるとは思えないのだ。
 しかし、NFNFエヌフはまだ太地たちが犯行予告のカラクリを解いたことを知らない。つまりこのまま現行の爆破による襲撃でも問題はないと考えるだろう。

 ただ、この関東大一揆が最初から最後まで既に描かれているだとするなら話は別だ。太地には宍土将臣ししどしょうじんという男の考えは全く読めない。しかし、そのとして予想するなら、この御土居と表現した12月23日のテロは……何か特別な動きをするのではないか。

 もしくは23日以降ずっと、つまり【洛中】での襲撃全てが……。


「毒殺……いや、銃乱射……今はなんとも言えないけど。
 そもそも爆破テロは仕掛けたNFNFエヌフ側にとってもリスクがあるよね。なんせ犯行予告までしているわけだ。もしも解読されたらその時点で爆破によるテロを起こすのは難しい。GSDジスド相手なら尚更でしょ? 現に何回も防がれているわけだし」

 犯行予告の文面にもこう書かれている。

《政府の諸君、我々の進撃をここまで防いだことは称賛に値する。
 しかし残念ながら、そんな活躍もどうやらここまでのようだ》


『活躍はここまでって自信持って言い切っていることは確かに気になるな』


「お二人は次のテロが爆破ではなく違う手口だとおっしゃりたいのですわ?」

「御土居というワード……気になりますか?」

 権田成美ごんだなるみ天月千鶴あまつきちづるも話に加わる。


「確証は無いんです。だから小松部長にも話すべきかどうか悩んでいますが、この妙な違和感は当たる気がしています」


『千鶴、お前のスキルでその辺の未来はまだ見えねぇのか?』

 六太が千鶴へ確認するが、首を大きく振っている。

『オイラが千鶴をどこかの標的地に連れて行っても見えそうにないか?』


「……今は無理だと思う。時々見える事もあったけど、最近は……」

『そっか。じゃぁ仕方ねぇな。まぁ、ほかでもないこの太地がそう言ってんだから、小松のおっちゃんには伝えた方がいいだろ。成美から言ってやれよ。そのうち太地からなんか出てくるからって』


「……わかりましたわ。確かに太地さんから何か出てきそうな気がしますわ」

「いや、そんな簡単に何か出るとかありませんから。でも善処します。僕も妙な気持ちなので」


 * * *


 12月18日 21:00— 

 トレーニングを終えた後、部屋で左手を見つめている太地。そして月人に向かって左手の平をかざして叫ぶ。


「は! フリーハンド!」


 ……何も出てこない。というか、月人に変化が見られない。


「出でよ! レフトハンド!」


 呆れた月人が首を振る。

『多分、そういうことでは無いと思うぜ』

「いや、冷静にいうなよ。月人がどうすれば左手が出てくるかわからないから毎日夜に時間をとってやってるわけでしょ!」

『オメーは頭いいのか悪いのかほんとわからねぇ時があるよなぁ』

「むっちゃん、サラッとディスるのやめて」


「みんなも考えてよ。フリーハンドの出現条件とか方法を」


『おい、チリ太。お前もしかして何か知ってんじゃねえか?』

『おいおいチリ太ってオメェ、それはちょっとポメすぎだぜ。照れちまうぜ』

「いや、けなしてると思うよ。なんでそんなに照れるの? 意味がわからん」



『さあな~。このフリーハンドってスキルは一度出したらずっと使えるって感じだろ? 三日月人に左手が付いて、少し人間ぽくなるわけだ』


『おい、人間ぽくってなんだ。変人呼ばわりするな』


「はいはい。喧嘩は無しね! で、むっちゃんは何かわからない? 仮説とかでも構わないから意見を聞かせてよ」


 六太むったが太地の左手の方をじっくり眺める。

『もしかして、お前がロードさせるんじゃねえか?』

 サラッと言った六太の一言に月人が驚いて聞き返す。


『俺がロードって俺にエンドサーフェイスをつけろっていうのか?』

『いや、お前は既にアイドルだから必要ねぇだろ。そうじゃなくて、オイラが言いたいのはアイドルがロードして使えるようになる【スキル】ってことかもって話さ』


 黙って考え込んでしまう月人。


『……確かにそうかしれねぇ。俺が左手をロードか……太地の力も借りてロードするのかもなぁ』


「うん。確かにそうかもしれないなぁ。月人の左手だからね。月人がロードしてフリーハンドを出すっていうのは筋が通っているような気もする」


『というわけで、三日月人さん。あれやってくれよ。太地がバカみたいに唱えてた謎の呪文みたいなダサい掛け声。 はい! どうぞ! ケッケッケ』

 この六太の愉快そうに笑っている顔が……ひねくれた性格を見事に表している。


『ほら! 月人さん、言ってくださいよ。 「出でよ! レフトハンド!」って。オイラもう腹が痛くてダメだ~』


『おい、ポメ公。俺様をいじるとはいい度胸だな。覚悟はできているんだろうな?』

 思わずチビってしまいそうな圧力……ビビる六太。

『オイラは悪くねぇだろ! むしろ太地だろ! あんないつの時代かも分からないセリフを真顔で言う中二病の太地が悪い!』


「なんで必死にやっている僕が悪いんだよ!」



 こうして、三人のくだらない議論言い合いはしばらく続いた。


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