Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第四章 関東大一揆、洛中編

第113話 プレイバウの姿勢から

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 12月23日 10:25―― 前橋市上空

「むっちゃんが光の砲撃を止めるって?」

「おう、そうだ。だから太地たいちも月男も一応一緒に県庁に来てくれ」

 高杉たちが困惑している。実際に見たあの破壊的威力、六太むったが止められるとは思えない。


「むっちゃん! 絶対にダメ! 群馬県庁なんか消えても大丈夫だから変なこと言わないで!」

 天月千鶴あまつきちづるが今まで他のシーカーにも見せたことがない物凄い形相ぎょうそうと大声で反応する。こんなに取り乱した千鶴を今まで見たことがない。


「いや……まぁ、県庁消えるのは本当はまずいけどね」

「ちょっと六太愛が凄過ぎて、怖いっスね。恋人みたいっス」

「いや、それ以上ですわ……」



『おいポメ太、あれはまじでヤベェパワーだったぞ。冗談抜きでやめたほうがいい』

 月人つきとも止めるよう説得している。


『大丈夫だって、オイラにいい考えがある』


「兎に角、私たちは今から赤いゴキブリを退治して来るわ。終わったら市役所集合でいいよね?」


「うん、それでお願いするよ」

 片奈と高杉が話をまとめてそれぞれが動き出すことに。成美も避難誘導を優先して動き出した。


 千鶴は納得していないが六太むったはやる気満々だ。

「千鶴、オイラは死ぬことないから安心しろ。そもそもNFNFエヌフの攻撃にやられるほどヤワじゃねぇよ」


 暫くやりとりが続き、しぶしぶ同意した千鶴。そして太地と月人は六太のことを信じて県庁へ同行することに。

『千鶴、ちょっと頼みがあるんだ。雲取山の北側あたりをスキルで覗いてくれねぇか? マップでいうと……この辺だ』

 月人は地図上の地形を読み解いてある程度、前橋市を狙える狙撃地点を絞っていた。それが埼玉県秩父市南に位置する雲取山だ。

「わかったわ……」



「ちょっと距離がギリギリで正確に把握できているかどうかは不明だけど、今の所何もなさそうよ」

『そうか……なぁ千鶴、お前も一緒に県庁に来てくれねぇか?』

「え?」

「おい月人! 天月さんはマズイって。万が一を考えてGGスタリオンに待機してもらうべきだよ。天月さんはGSDジスドにおける攻守の要だ。絶対に失うわけにはいかない」

「……六条君」

『勿論それはわかってる。だが、砲撃を防ぐ確率が大きく変わるんだ』

 全員が黙って月人の話を聞く。

『千鶴のスキルで視えている世界を共有してもらう。そして頂上付近に必ず現れるとらえるんだ。おそらく、宍土本人が現れるはずだ。
 光の砲撃を発射するタイミングがわかればそれだけポメ太も防ぎ易いだろ』

「それはそうだけど……」

『俺が甲府市で喰らった一発目と比較すると前橋市の二発目は距離が2.5倍ほど長い。だが、ポメ太は俺ほど戦闘に対応したアイドルではないことを忘れるな。
 俺でできるからアイツもできるという考えは無理がある。あの光の束はあまりにも強大すぎるんだ』
 何も言えない太地。ずっと黙っている六太。時間も刻一刻と過ぎていく。


「わかったわ。私も一緒に行く!」


『千鶴……いいのか? オイラも防ぐつもりだが、100%とは言えねぇぜ』


「うん! むっちゃんなら大丈夫! 信じてるから」


「すげー信頼しあってるな……もはや僕と天月さん、どっちが六太の主人なのかわからないわ……」


『ハハハ! よっしゃ! 決まったな。それじゃ、行くぞ!』


 高杉たちのミニマルジェットが飛び立ったままで開きっぱなしのテイルカーゴランプから太地たちが勢いよく飛び降りた。



 * * *

 12月23日 10:34―― 群馬県庁屋上

 誰もいない県庁の屋上で太地たちは南西方向を向いて仁王立ちしている。


「ねぇ、むっちゃん。どうやって光の砲撃を防ぐつもりなの?」

 犯行予告の時間まで10分をきった段階で、千鶴がとても良い質問をする。
 不安げに耳を傾ける太地と月人。


『オイラのオリジナル奥義で返り討ちだ!』


「「……」」

『オリジナル奥義だと……?』

「月人……僕は嫌な予感しかしないんだけど……」

『おい、ポメ公。一つだけ言わせてくれ。絶対に真面目にやれよ』


『だからオイラはいつも真面目だっつってんだろ! エブリデー全力投球フルスイングの黒ポメラニアイドル六太様だ!』


「天月さん、やっぱり逃げた方が……」


 その時、千鶴が大きく反応する!

「っっ!! 誰かいる! 雲取山の山頂に誰かがいるわ!」


「「「 何! 」」」


「見透かされた世界! リンク共有!」


 太地たち三人の視界が切り替わり、前方の山頂を望遠で拡大したような景色を鮮明に映し出す。そこには風格ある中年男性と変わった風貌の黒鬼般若アイドルが立っていた。


『間違いねぇ……あの半端ないオーラ、宍土将臣ししどしょうじんだな』

「あれが……NFNFエヌフの宍土……」

『ふっ。やっぱりボス登場で最初に攻撃を跳ね返すオイラは【主役】だな』

『おい、お前マジでちゃんとやれよ! わかってんだろうな! 街にも被害が出る規模だからな!』

『わかってるって何度も言ってんだろ三日月! いい加減にしろ!』


「馬鹿! 喧嘩してる場合じゃないだろ! 早く準備しろよ!」

「あははは。 むっちゃん面白い」


「「いやいや、ちょっと」」

 

 ――砲撃発射まで残り5分


 宍土のアイドルが右手を頭上に突き上げる。円形の光の塊が徐々に大きく形成されていく。


『太地! お前はリポメタンMを5本準備しておけ! 途中でやばくなったら自分で補給しろよ! でないとオイラが消えるからな』

「あぁ、わかった。安心して全力を出して」

『月男! いざって時はオイラの後ろにまわって身体を支えてくれ。吹っ飛びそうだからな』

『あぁ? 意味分かんねぇけど、とりあえず了解だ。任せとけ』


 ニヤッと笑った六太。深呼吸して目を閉じて集中する。二足歩行モードから四本脚モードに。いろんな意味で度肝を抜かれて不安だらけの月人と太地。千鶴はキラキラと目が輝いている。


 そして前足を伸ばしてかがみながら、お尻を高く突き上げるプレイバウの姿勢でググッと力を溜め込み始める。


 宍土の光はどんどん大きくなり直径が5メートルほどにまで達する。しかし六太はプレイバウの姿勢のまま動かない。


 すると六太の口元に小さな光が生み出され、徐々に大きくなっていく。


「何だ? ボワっと光が……」



 ――砲撃発射まで残り1分、雲取山の山頂


 黒鬼般若はんにゃが巨大化した光の塊を右手でコントロールする。槍投げに近い構えで照準を県庁に合わせてピタリと動きを止める。

「先程は見事な防衛であった。まさか我が魂の一撃を初見で弾き飛ばすとはな……しかし、今回も無事に跳ね返すことができるかな? GSDジスドの諸君」

 傷によって塞がった右目に銀髪、屈強な肉体を隠すかのような羽織袴姿。まさに最強の剣豪という印象。これがNFNFエヌフの総帥、宍土将臣ししどしょうじんだ。自身の目でも遥か先の標的をしっかりと捉え、不敵な笑みを浮かべる。


 10、 9、 8、 7、 6、 5、 4……

 
 3、 2、 1……



(ゼロ)


 黒鬼般若に指示を出す。


「放て! 壊光砲かいこうほう!」
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