Bloody Code 〜特殊な血を持つ天才少年が謎のリングで仲間になった「アイドル」と現実世界を無双する〜

大森六

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第四章 関東大一揆、洛中編

第116話 満身創痍の中、光る右腕

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 12月23日 12:03―― 富士吉田市


「本当にいたわ! 宍土ししどよ!  黒鬼般若はんにゃも一緒にいる……何となくだけど、とはどこか違う気がする……崖にデッキがあって、小さな扉もあるわ! トンボ君、あそこから出て来たみたい」


 トンボに視界をリンク共有する。


「了解っス! 誰かあの辺りにいないか……お、いたいた」


 トンボが虫による内部潜入を試みる。同時に入口も探しながらNFNFエヌフのアジトへ徐々に迫っていく。


「二人とも集中してね。ここを攻撃されても天月あまつきさんとトンボは僕が絶対に守るから」


 高杉の言葉にうなずくトンボと千鶴、引き続きスキルに集中する。そして千鶴は太地たいち月人つきとに念話で伝える。



《宍土が現れたわ。月人が予想した場所に。今、黒鬼般若が右腕を上げて光を膨張させているわ》


《おぉ! 見つけたか! ……そうか。何か宍土に変わったことはないか?》 


《黒鬼般若の雰囲気が違う。さっきとは別人のアイドルなのかも……よくわからないけど同じではないわ》


《……なるほど。よし、千鶴。そのままヤツの動きを報告し続けてくれ。細かい変化でも構わねえ。頼んだぜ!》


《了解!》

 栃木県庁屋上で月人が右手を力強く握りしめる。目を閉じて隣にいる太地から常に送られ続けるBloody Codeをエネルギーに変えて意識してに集中させている。

 月人の右腕を除いて、足、胴体、顔が徐々に薄くなっていく。


「おい月人! 大丈夫? 身体が半透明になってるよ!」

『騒ぐな。後で元に戻る。お前は迎撃と同時にまず1本目の回復薬を飲めよ』


「わ、わかった」


 太地と月人はずっと身体に違和感を覚えていた。一発目の壊光砲をはね返した後から何か身体の中の歯車が噛み合っていない感覚。それはおそらく太地のが月人にも影響していると思われる。

(一つ一つの反応にワンテンポ遅くなってしまうというか、動きが鈍いというか。兎に角いつもと違う感覚だ。リポメタンMは飲んでいるからアイドルのスキル使用による回復は十分に対処している。血を吐いたとはいえ、今日僕自身は戦闘も無いから健康面、体力面では割と完全な状態のはずなのに。何故だ?)


『太地、今は何も考えるな。俺の動きにも影響しちまう。この一撃を止めることだけに集中してくれ。俺もそれが限界みたいだ』


「わ、わかった! ごめん! 集中するよ」

 月人の右腕が光をまとい始めた。甲府市での一回目とは違う。体力的にはかなり不利だが、経験としてはかなり有利。そして迎撃するのは一番頼りになる月人だ。太地も側にいる点は今回の方が良い条件だ。



《光の膨張が落ち着いたみたい。大きさは群馬県庁の時よりも大きいわ。直径にして大体、八メートルくらいあるわ》


『ここにきて威力アップかよ……』


 千鶴の念話を受けて動揺する太地。しかし月人は落ち着いている。そして千鶴が続ける。



《宍土が胸に手を当てて……少し頭を下げて……なんだか苦しそうにしてる。立っているのもやっとくらいに見えるわ》


『……やっと来たか』

 右腕以外が半透明で今にも消えそうな月人がニヤリと笑う。

『そうなるわな。あれだけの大砲を一時間刻みで打ち込んでくるなんて、正気の沙汰じゃねぇよ』



「宍土も割とテンパっていたってことかな。人間っぽいところもあって助かった」

 皮肉を言う余裕が出て来た太地。

『まぁ、十分過ぎるくらい化け物だけどな。この勝負、俺たちは絶対に負けられねぇ』

「あぁ、わかってる」


《構えたわ! そっちに砲撃が行くよ!》

《おう! 後は任せろ!》



 時刻が12:16を告げる。


「……偽りのまつりごとなど、この世から消えて無くなれ! 壊光砲かいこうほう!」


 富士山頂上付近から巨大で且つ妙に美しい光が八メートルの束となって一直線に宇都宮市へ襲いかかる。そして着弾地点に待ち構えている二人。

 太地が右腕でライフルを打ち込むのと同じ姿勢で月人が構える。左腕は無い。しかし隣にいた太地だけにはしっかりと左腕が伸ばされて襲いくる光に向けられているのが見えていた。

 解き放たれた光で何も見えないが月人が右腕を打ち込んだのはボンヤリと理解できた。


 何も無い平穏な日常に轟音ごうおんが響き渡る。光は見えずとも音は聞こえる。驚く一般人の前で気付かれることなくNFNFエヌフの砲撃に必死に対抗する月人。

(くっ……互角とは言えない……月人が若干競り負けている)

 一本目のリポメタンMを飲みきって、太地が見守る。握りこぶしからは血がにじんでいる。力が入るどころではない。目の前で相棒がおされているのだから。何もできずに見ているだけの自分に苛立ちすら覚える。


《月人、頑張って! 宍土もかなりキツそうよ!》


『この……くそ野郎が……さっきより気合入れやがって……ウォオオラァ!!』


 一気に押し返そうとする月人。二本目を飲みきって援護する太地。


 ドクン!


 突然太地の身体の内部から強い衝撃が走る。 


「ガハァ……な、なんだ? 急に身体が……」


 なんとか堪える太地。不幸中の幸いか、月人への影響はなさそうだ。いや、それどころではないと表現するべきか。



 一進一退の力のぶつかり合いは拮抗状態となった。長期戦になることも覚悟したその時……


《宍土が倒れたわ!》


 千鶴の声が聞こえた数秒後に壊光砲が消滅していく。
 押し返す力も残っていない月人もまた、その場で倒れ込む。

「……月人! 大丈夫か⁈」

 しかし、太地もかんばしくない状況だ。フラフラしながら消えかかった月人をエンドサーフェイスに戻す。

「少しの時間だけど、まずは休んでくれ……」

 太地を突然襲った謎の痛みが徐々に弱まっていく。立ち上がって、まずはシーカーと連絡を取ることに。


《みなさん、なんとかあの大砲を跳ね返しました。月人はダメージがでかいので休ませています》

《太地君、月人、二人とも大丈夫か! 激闘だったみたいだけど。
 とりあえず、こっちはトンボがNFNFエヌフのアジトに虫君たちを潜入させているところだ》

《こちら片瀬権田班ですわ。市役所北側ロータリーにてNFNFの赤鬼七番隊、八番隊と交戦中ですわ! 敵の数およそ50名、すでに片瀬さんによって副隊長2名は討伐完了し、現在残りの――》


 その時、大きな爆発音とともに市役所から煙が上がる。


《どうした! 二人とも大丈夫か!》


(やばい、成美先輩たちが……でも今は僕も動けない)


《だ、大丈夫ですわ! NFNFエヌフのローダーが自爆攻撃をしたのですわ。一般市民も私たちも誰も負傷していないのですわ!》


《す、すみません。片瀬さん、成美先輩。僕も月人もサポートに行けそうになくて県庁屋上でぶっ倒れています》


《大丈夫よ! 後10分くらいで終わらせるから。そのまま寝ていてOK》

《ですわ!》




 こうして、宇都宮市の防衛はなんとか無事に完了した。
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