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05. アイスが溶ける前に
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# アイスが溶ける前に
【フラグ:溶ける】
夏の商店街。ソフトクリームを持った小学生が、日向のど真ん中で固まっている。
いや溶けるって、今まさに溶けかけてるじゃん。なんで動かないの。
私には他人の心がテロップで見える。短くて、だいたい誤解させてくる。
「溶けちゃうよ! こっち日陰あるから!」
声をかけて、路地のほうへ誘導する。女の子はポカンとした顔で「え、アイス……?」と呟くけど、聞こえないふりで進む。
だって溶けるって出てるし。フラグって出てるし。
女の子の手がぷるぷる震えている。ほら、危ない。今にも落ちそう。
ちらっと見えたスマホ画面。「ごめん」と打ちかけた未送信LINE。だれかと喧嘩中なのかな。
新しいテロップが浮かぶ。
【願望:ゆいに会いたい】
ゆい? だれ? 彼氏……いや小学生だし。友達かな。
……まあいいや、とりあえずアイス優先。
路地の日陰にベンチを見つける。
あ、先客いた。同じ店のソフトクリームを持った女の子が座っている。向こうも小学生。
私が連れてきた子——仮にりこって呼ぼう——の足がぴたっと止まる。手の震えが一段と強くなって、アイスが傾く。白い雫がぽたっと地面に落ちた。
「ほら見て! やっぱ溶けてる!」
「これ緊張です!」
え。緊張。
りこがぽつりと言う。
「……溶けちゃうって、アイスじゃなくて」
喧嘩した親友に謝りたい。でも会えなくて、勇気だけがどんどん溶けて消えそうだったらしい。
比喩!? テロップそういう使い方する!?
ベンチの女の子が顔を上げる。りこを見た瞬間、その子の手もぷるぷる震え始めた。緊張、伝染してる。
頭上にテロップ。
【願望:りこに会いたい】
ああ、この子がゆいか。二人とも、同じこと思ってる。私のおせっかい、偶然当たった。
「……ごめん」
「……私も」
同時だった。二人とも泣き笑いで、アイスを差し出し合う。
私の出番、完全に終わったな。静かに退場しようとしたら、「お姉さんも食べて!」と呼び止められた。
二人からアイスを分けてもらう。甘い。冷たい。
……結果オーライってことで。
【本音:今日いちばん甘いの、このアイスじゃなくてこの空気】
【フラグ:溶ける】
夏の商店街。ソフトクリームを持った小学生が、日向のど真ん中で固まっている。
いや溶けるって、今まさに溶けかけてるじゃん。なんで動かないの。
私には他人の心がテロップで見える。短くて、だいたい誤解させてくる。
「溶けちゃうよ! こっち日陰あるから!」
声をかけて、路地のほうへ誘導する。女の子はポカンとした顔で「え、アイス……?」と呟くけど、聞こえないふりで進む。
だって溶けるって出てるし。フラグって出てるし。
女の子の手がぷるぷる震えている。ほら、危ない。今にも落ちそう。
ちらっと見えたスマホ画面。「ごめん」と打ちかけた未送信LINE。だれかと喧嘩中なのかな。
新しいテロップが浮かぶ。
【願望:ゆいに会いたい】
ゆい? だれ? 彼氏……いや小学生だし。友達かな。
……まあいいや、とりあえずアイス優先。
路地の日陰にベンチを見つける。
あ、先客いた。同じ店のソフトクリームを持った女の子が座っている。向こうも小学生。
私が連れてきた子——仮にりこって呼ぼう——の足がぴたっと止まる。手の震えが一段と強くなって、アイスが傾く。白い雫がぽたっと地面に落ちた。
「ほら見て! やっぱ溶けてる!」
「これ緊張です!」
え。緊張。
りこがぽつりと言う。
「……溶けちゃうって、アイスじゃなくて」
喧嘩した親友に謝りたい。でも会えなくて、勇気だけがどんどん溶けて消えそうだったらしい。
比喩!? テロップそういう使い方する!?
ベンチの女の子が顔を上げる。りこを見た瞬間、その子の手もぷるぷる震え始めた。緊張、伝染してる。
頭上にテロップ。
【願望:りこに会いたい】
ああ、この子がゆいか。二人とも、同じこと思ってる。私のおせっかい、偶然当たった。
「……ごめん」
「……私も」
同時だった。二人とも泣き笑いで、アイスを差し出し合う。
私の出番、完全に終わったな。静かに退場しようとしたら、「お姉さんも食べて!」と呼び止められた。
二人からアイスを分けてもらう。甘い。冷たい。
……結果オーライってことで。
【本音:今日いちばん甘いの、このアイスじゃなくてこの空気】
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