心のテロップが見える彼女は、今日も勝手にツッコむ

由比ヶ浜入鹿

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04. 同じ名前のふたり

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# 同じ名前のふたり

【願望:同じ名前って言いたい……!】

 え、なに急に。
 コンビニのレジ列。私の前に並ぶ大学生らしき女の子の頭上に、テロップが浮かんでいる。
 だれと同じ名前? っていうか、言えばよくない?

 人の心がテロップで見える。私の目には、本音とか願望とか、そういうのが勝手に浮かぶ。

 女の子がレジへ進む。店員さんの名札をチラチラ見ている。大野みさき、と書いてある。
 あ、そういうこと。
 女の子のサークルジャンパーには、胸元に「みさき」の刺繍。同じ名前だ。

「あ、おにぎりも……」

 女の子が棚に戻る。また商品を追加してる。時間稼ぎ?

【本音:でも急に言ったらキモい人じゃん】

 言いたいけど言えない、のパターンか。もどかしいな、見てるこっちが。

「お会計、四百二十円になりま……」

 店員さんがレジを打ちながら、女の子のジャンパーをチラ見している。刺繍のあたり。

「みさき様……あ、お客様! 袋はご利用ですか」

 今、言いかけた。絶対言いかけた。

【願望:私も同じ名前って言いたい……!】

 店員さんにもテロップ。同じやつ。
 え、両方? 両方言いたいの? 言えばいいじゃん、両方とも。

【本音:もう会計終わっちゃう……】

 女の子のテロップが焦り始める。店員さんはレシートを切ろうとしている。
 二人とも言いたいのに。お互い「自分だけが気にしてる」と思ってる。

「あ」

 声が出た。私の口から。
 二人がこっちを見る。やばい、なんか言わないと。

「あ、その刺繍かわいいですね」

 とっさに女の子のジャンパーを指す。

「みさきさん……って読むんですか?」

「え、あ、はい。藤本みさきです」

「あ、私も同じ名前なんです!」

 店員さんが反射的に言った。
 二人の目が合う。

「え、本当ですか!」
「大野みさきって言います」
「同じ名前嬉しいですよね!」
「わかります! ずっと言いたかったんです」

 二人が笑い合っている。名前という、たったそれだけの共通点で。

 おせっかいだったかな。
 いや……よかった、たぶん。

【本音:勝手に関わってごめん(でも、良い結果)】
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