87 / 143
リア充、爆発しろ!
しおりを挟む
「……イテッ!……いきなり何するんだよ。」
ぼーっとしていたらなぜかリディアにいきなり抓られた。
「シンジさんのロリコン!」
「ちょ、おまっ、言うに事欠いてなんてことを!」
とんでもない事をリディアが言い出す。
「だって、今もニナ達を、デレーってした目で見てたじゃない。」
私というものがありながら、とリディアが膨れている。
「言いがかりだっ!大体俺のどこがデレーっとしていたんだよ。」
「その眼!その視線!ずっとニナ達を追っかけていた!」
「ウッ……。」
リディアの指摘に思わず口籠る。
まぁ……確かに、ニナ達の服装が可愛いなぁとは思っていたけど、決してやましい気持ちではなく……。
俺が必死に言い訳を考えていると、リディアがすり寄ってくる。
「シンジさんはぁ、もっとお嫁さんを大事にした方が、いいと思うのですよぉ。」
そう言いながら、リディアは俺の膝の上に乗り向かい合うようにして抱きついてくる。
「そう思わないですか?ダ・ン・ナ・サ・マ♪」
俺の首に両腕を回し、耳元で囁いてくるリディア。
……いかん、最近のリディアは破壊力がすざましぃ……きっと実家……と言うより母親のマルティアさんから色々教えられているのだろうが……。
俺はそっと体を離してリディアを見ると、恥ずかしいのか耳まで真っ赤に染めて、それでも健気に笑いながら見上げて……そしてそっと目を瞑る。
……いや、その顔は反則だろ?
思わず顔を近づける……どこか遠くの方で、理性と言う名の何かが訴え駆けている気がしたが気にしないことにする。
「あのぉ……そろそろお話を……。」
リディアとの距離がゼロになってからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか?
突然かけられた声に、我に返りリディアから唇を離す。
「アッと、あはは……何だったかな?」
俺は気まずそうに、声の主……リオナに声をかける。
「何だったのかは、此方のセリフですよ。お邪魔でしたら私達は下がらせていただきます。」
「おにぃちゃん、リディアおねぇちゃんと仲良しなところ見せつけるために呼んだの?」
リオナに続いてレムがそんな事を聞いてくる。
その言葉に二人の後ろに並んでいる、メイド服を着た子供たちが、深く頷いている。
「あ、いや、そう言うわけじゃなくて……。」
俺がこの土地……ノイエ・ミーアラントの領主になってから、はや二年が過ぎようとしている。
この2年の間に色々あったのだが、それは周りも同じ様で、幼いイメージでしかなかったレムも、今ではしっかりとしたお姉さん然として、他の子どもたちの先頭に立って行動している。
「ゴメンねぇ、呼んだのは私なのですよ。」
リディアが、まだ顔を赤らめたまま、ワタワタと手を振りながら皆を引き留める。
「えっとね、今度また、あの人が来るんだけどぉ……。」
リディアの言葉に、メイドの子供たちの顔が引きつる。
リディアの言う「あの人」と言うのは、言わずと知れたベルグシュタット王国、国王フィリップ24世その人の事だ。
頭の痛い事に、この二年の間、暇さえあれば顔を出すようになったフィリップ国王。
まぁ、それを可能にしたのは、俺が設置した転移門の所為だけどな。
この屋敷とベルグシュタットの屋敷は改良型の転移門で繋いであり、登録した者か許可を出した者にしか使えないとはいえ、一瞬にして行き来できるというスグレモノだ。
ただ、これは悪用すると、とんでもない事になる為、術式やレシピは完全に秘匿して、俺が俺の使いたい様に、全く私用の為だけに使う事にした。
ミカサは、それでも詳しい術式を知りたがったが、流出するヤバさを理解したフィリップ国王の説得と、アシュラムとの共同研究に加えることを確約したことにより、今ではアシュラムの研究所に籠りっきりになっている。
現在、転移門はベルグシュタット王宮内の秘密の間、ベルグシュタットの屋敷、アシュラム王宮内のアイリスの部屋、グランベルク王宮内のクリスの部屋に設置してある。
そして、国王夫妻とリディアの妹のセーラは、その転移門を使ってこの街に海産物を食べにくるようになった。
……俺が私用の為に設置したはずなのに、一番使用しているのがベルグシュタットの王族と言うのは……。
まぁ、とにかく王族が来ると困るのはその屋敷の使用人たちという事で、特にこの屋敷で働いている者達の殆どは、戦争によって孤児となった子供達なので、王族どころか貴族とも接した事が無い。
なので、王族に対してどう接していいか分からず、混乱するのだ。
まぁフィリップ国王は気さくで、庶民に対しても懐が深く……というか、固い事を言うなら出禁にする上、ベルグシュタットへの輸出を制限すると言ったら、凄く懐が深くなったのだが……。
お陰で、ウチの子達はお粗末ながらも、貴族に対する作法と言うのを覚えつつ、それなりに上手くやってきたのだが、それでも王様が来ると言うのは緊張を強いられることになる為、来訪を知った時は皆一様に顔を引きつらせるのだ。
「でね、食事はいつもの様にお刺身を中心とした海産物でお願いしますね。それで、皆に集まってもらったのはね……。」
なんでも、ベルクシュタットの城で人手が足りないらしく、希望する者が居ればうちの子達の中から何名かを側使え見習いとして雇いたいとのことだった。
「一応、向こうでの住み込みと言う形になるけど、身の回りの物はすべて用意するから、それは心配しないでね。」
俺はリディアの言葉を引き継ぐ。
「お前達の働きは、王宮でも十分通用すると認めていただいた方、持ち上がった話だから誇っていいぞ。ただ、強制はしないのでよく考えて結論を出して欲しい。希望する者は後で俺かリディアに話に来るようにな。」
それだけを伝えて解散させると、後にはリオナとレムが残っていた。
「ん、どうした?」
「いえ、あの、リディア様が残るようにって。」
「リディア、何か話があるのか?」
俺はリディアの方を見る。
「ウンあのね……。」
リディアは少し気まずそうに顔を背けるが、ゆっくりと話し出す。
「実は、今回の事セーラが言い出したみたいなのね。本当はリオナさんかレムちゃんに側使えになってもらいたかったらしくてね。一応二人はシンジさんの側室候補だからダメって言ったんだけどね。」
……ちょっと待て、リオナとレムが側室?
聞いてないぞ。
「リディア、どういうことだ?」
「だからね、セーラが年の近くて友達のように接してくれる側使えが……。」
「そっちじゃなくて、この二人が側室ってどういうことかって聞いてるんだが?」
「シンジこそ今更何言ってるの?」
何を言っているか分からないという顔で、リディアが逆に聞いてくる。
「「ダメ、ですか?」」
リオナとレムが揃って見上げてくる。
「いや、ダメと言うかなんというか……。」
「はぁ……シンジさんも往生際が悪いですねぇ……ある意味、私達と一緒なんですよ、この二人は。」
リディアが呆れたように溜息をつく。
リディアたちと一緒?
……リディアたちの立場は、俺の婚約者だ。
しかし婚約者と側室????
俺の様子を見てリディアが心底呆れた声を出す。
「まったく……本当に、こういう事に関してはダメダメですねぇ……まぁそこがいいんですけどね……正直どうかとも思いましたが、私達と婚約した時の事を思い出してみてください。」
リディアに言われて、俺は記憶を探ってみる。
リディア達は俺に告白をしてくれて、俺はそれを受け入れた、そこまではいい。
ただ、その後領主となり、色々忙しくて放置していたら、各国の有力貴族達から婚姻の申し込みが相次いだのだ……所謂政略結婚ってやつだな。
ベルグシュタットといち早く交流を持ったことにより、ミーアラントの有益さが各国に広まるのに時間はかからず、利権を求めるものの、今まで交流の無かった者たちが手っ取り早く関係を持とうとすれば、結婚という手段を取るのは自明の理だったりする。
全く興味がない……と言うより下心丸出しで来られても困るので断り続けてはいたのだが、たまに断りづらい厄介な相手もいたりするので困り果てていた時、エルが解決策を教えてくれた。
「バカシンジが、何時までも私達を放っておくから、こうなるのよ。ちなみにアイリスにも似たような問題がおきているからね……そろそろはっきりさせてくれてもいいんじゃない?」
「はっきりって?」
「私達との……その……結婚の事……言わせないでよ、バカ……。」
そう言った時の、赤く染まった顔のエルの表情はよく覚えている。
俺はエルの助言を受け入れて、エル、リディア、アイリスとの婚約発表を大々的に行った。
エルの素性は公にしていないが、ベルグシュタットとアシュラムの王女という肩書は、世間にかなりの影響を与え、流石に王女が相手にいると知ったうえで、結婚をごり押ししてくる貴族はいなくなり、俺の周りには一応平和が戻ったのだった。
その後、クリスが追加の婚約者として押しかけて来た時はまた一騒動会ったのだが……。
「思い出しましたかぁ?」
「あぁ、思い出したけど、それが?」
「ほんとぉぉぉぉぉにっ、分からないんですか?シンジさんバカなんですか、バカですよねっ!」
何故かリディアがキレている。
「いいですか、この二人はシンジさんとエルさんにとって大事な人ですよね?」
リディアが慰めるように二人の頭を撫でながら、俺に向かって聞いてくる。
「あぁ、その通りだが?」
「だったら分からないですか?シンジさん達に近づこうとしている人達が次に何を考えるか?って。」
そこまで言われて、俺はようやく理解する。
「そう言う……事か。」
「そう言う事ですよぉ。……本当に困った人ですよねぇ。」
リディアとリオナ達は、揃って困った人を見る目を俺に向けてくる。
つまり、利権を求めた下心丸出しの貴族たちは、ターゲットを俺から、俺の近しい者たちに切り替えたというわけだ。
リオナとレムなら、一応、下級とはいえ貴族籍にあるから姻戚関係を結ぶのに問題は少ない。
少なくとも平民や孤児相手よりは、建前等の理由付けも容易いだろう。
「あ、あの、エル様やリディア様達からの御許可は得ていますが、シンジ様がお嫌であるならば、私達は……。」
リオナがおずおずと、そう言ってくる。
「嫌って事はないが、リオナ達はそれでいいのか?」
俺としては、守ってやると言いながら無理強いをしたくはない。
「えぇ、私の気持ちはあの時から変わっていませんから。」
「おにぃちゃん以外の人の所に嫁ぐのはイヤです。」
……二人とも即答だった。
真っすぐな想いを直接ぶつけられて、却ってこっちが赤面してしまう。
「そ、そうか、じゃぁ、そう言う事で、これからもよろしくな。」
「はぁ……ちなみに街中では、他に色々噂が流れていますから、気を付けてくださいねぇ。」
リディアが言うには……『新しい領主様は将来の側室候補として孤児たちを囲っている』とか『領主様は小さい女の子が好き』とかと言う噂も流れているらしい。
何故そんな噂が……。
俺はがっくりと肩を落とす。
「部屋に籠って好き放題しているからですよぉ……自業自得です。現状を理解したら少しは私達を構ってくださいね。」
と言うわけでデートに行くのですよ、と落ち込む俺を引っ張って街へ繰り出す準備を始めるリディア。
はぁ、たまにはリディアとのデートもいいか。
俺は嬉しそうにしているリディアの横顔を見ながら、そう思った。
ぼーっとしていたらなぜかリディアにいきなり抓られた。
「シンジさんのロリコン!」
「ちょ、おまっ、言うに事欠いてなんてことを!」
とんでもない事をリディアが言い出す。
「だって、今もニナ達を、デレーってした目で見てたじゃない。」
私というものがありながら、とリディアが膨れている。
「言いがかりだっ!大体俺のどこがデレーっとしていたんだよ。」
「その眼!その視線!ずっとニナ達を追っかけていた!」
「ウッ……。」
リディアの指摘に思わず口籠る。
まぁ……確かに、ニナ達の服装が可愛いなぁとは思っていたけど、決してやましい気持ちではなく……。
俺が必死に言い訳を考えていると、リディアがすり寄ってくる。
「シンジさんはぁ、もっとお嫁さんを大事にした方が、いいと思うのですよぉ。」
そう言いながら、リディアは俺の膝の上に乗り向かい合うようにして抱きついてくる。
「そう思わないですか?ダ・ン・ナ・サ・マ♪」
俺の首に両腕を回し、耳元で囁いてくるリディア。
……いかん、最近のリディアは破壊力がすざましぃ……きっと実家……と言うより母親のマルティアさんから色々教えられているのだろうが……。
俺はそっと体を離してリディアを見ると、恥ずかしいのか耳まで真っ赤に染めて、それでも健気に笑いながら見上げて……そしてそっと目を瞑る。
……いや、その顔は反則だろ?
思わず顔を近づける……どこか遠くの方で、理性と言う名の何かが訴え駆けている気がしたが気にしないことにする。
「あのぉ……そろそろお話を……。」
リディアとの距離がゼロになってからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか?
突然かけられた声に、我に返りリディアから唇を離す。
「アッと、あはは……何だったかな?」
俺は気まずそうに、声の主……リオナに声をかける。
「何だったのかは、此方のセリフですよ。お邪魔でしたら私達は下がらせていただきます。」
「おにぃちゃん、リディアおねぇちゃんと仲良しなところ見せつけるために呼んだの?」
リオナに続いてレムがそんな事を聞いてくる。
その言葉に二人の後ろに並んでいる、メイド服を着た子供たちが、深く頷いている。
「あ、いや、そう言うわけじゃなくて……。」
俺がこの土地……ノイエ・ミーアラントの領主になってから、はや二年が過ぎようとしている。
この2年の間に色々あったのだが、それは周りも同じ様で、幼いイメージでしかなかったレムも、今ではしっかりとしたお姉さん然として、他の子どもたちの先頭に立って行動している。
「ゴメンねぇ、呼んだのは私なのですよ。」
リディアが、まだ顔を赤らめたまま、ワタワタと手を振りながら皆を引き留める。
「えっとね、今度また、あの人が来るんだけどぉ……。」
リディアの言葉に、メイドの子供たちの顔が引きつる。
リディアの言う「あの人」と言うのは、言わずと知れたベルグシュタット王国、国王フィリップ24世その人の事だ。
頭の痛い事に、この二年の間、暇さえあれば顔を出すようになったフィリップ国王。
まぁ、それを可能にしたのは、俺が設置した転移門の所為だけどな。
この屋敷とベルグシュタットの屋敷は改良型の転移門で繋いであり、登録した者か許可を出した者にしか使えないとはいえ、一瞬にして行き来できるというスグレモノだ。
ただ、これは悪用すると、とんでもない事になる為、術式やレシピは完全に秘匿して、俺が俺の使いたい様に、全く私用の為だけに使う事にした。
ミカサは、それでも詳しい術式を知りたがったが、流出するヤバさを理解したフィリップ国王の説得と、アシュラムとの共同研究に加えることを確約したことにより、今ではアシュラムの研究所に籠りっきりになっている。
現在、転移門はベルグシュタット王宮内の秘密の間、ベルグシュタットの屋敷、アシュラム王宮内のアイリスの部屋、グランベルク王宮内のクリスの部屋に設置してある。
そして、国王夫妻とリディアの妹のセーラは、その転移門を使ってこの街に海産物を食べにくるようになった。
……俺が私用の為に設置したはずなのに、一番使用しているのがベルグシュタットの王族と言うのは……。
まぁ、とにかく王族が来ると困るのはその屋敷の使用人たちという事で、特にこの屋敷で働いている者達の殆どは、戦争によって孤児となった子供達なので、王族どころか貴族とも接した事が無い。
なので、王族に対してどう接していいか分からず、混乱するのだ。
まぁフィリップ国王は気さくで、庶民に対しても懐が深く……というか、固い事を言うなら出禁にする上、ベルグシュタットへの輸出を制限すると言ったら、凄く懐が深くなったのだが……。
お陰で、ウチの子達はお粗末ながらも、貴族に対する作法と言うのを覚えつつ、それなりに上手くやってきたのだが、それでも王様が来ると言うのは緊張を強いられることになる為、来訪を知った時は皆一様に顔を引きつらせるのだ。
「でね、食事はいつもの様にお刺身を中心とした海産物でお願いしますね。それで、皆に集まってもらったのはね……。」
なんでも、ベルクシュタットの城で人手が足りないらしく、希望する者が居ればうちの子達の中から何名かを側使え見習いとして雇いたいとのことだった。
「一応、向こうでの住み込みと言う形になるけど、身の回りの物はすべて用意するから、それは心配しないでね。」
俺はリディアの言葉を引き継ぐ。
「お前達の働きは、王宮でも十分通用すると認めていただいた方、持ち上がった話だから誇っていいぞ。ただ、強制はしないのでよく考えて結論を出して欲しい。希望する者は後で俺かリディアに話に来るようにな。」
それだけを伝えて解散させると、後にはリオナとレムが残っていた。
「ん、どうした?」
「いえ、あの、リディア様が残るようにって。」
「リディア、何か話があるのか?」
俺はリディアの方を見る。
「ウンあのね……。」
リディアは少し気まずそうに顔を背けるが、ゆっくりと話し出す。
「実は、今回の事セーラが言い出したみたいなのね。本当はリオナさんかレムちゃんに側使えになってもらいたかったらしくてね。一応二人はシンジさんの側室候補だからダメって言ったんだけどね。」
……ちょっと待て、リオナとレムが側室?
聞いてないぞ。
「リディア、どういうことだ?」
「だからね、セーラが年の近くて友達のように接してくれる側使えが……。」
「そっちじゃなくて、この二人が側室ってどういうことかって聞いてるんだが?」
「シンジこそ今更何言ってるの?」
何を言っているか分からないという顔で、リディアが逆に聞いてくる。
「「ダメ、ですか?」」
リオナとレムが揃って見上げてくる。
「いや、ダメと言うかなんというか……。」
「はぁ……シンジさんも往生際が悪いですねぇ……ある意味、私達と一緒なんですよ、この二人は。」
リディアが呆れたように溜息をつく。
リディアたちと一緒?
……リディアたちの立場は、俺の婚約者だ。
しかし婚約者と側室????
俺の様子を見てリディアが心底呆れた声を出す。
「まったく……本当に、こういう事に関してはダメダメですねぇ……まぁそこがいいんですけどね……正直どうかとも思いましたが、私達と婚約した時の事を思い出してみてください。」
リディアに言われて、俺は記憶を探ってみる。
リディア達は俺に告白をしてくれて、俺はそれを受け入れた、そこまではいい。
ただ、その後領主となり、色々忙しくて放置していたら、各国の有力貴族達から婚姻の申し込みが相次いだのだ……所謂政略結婚ってやつだな。
ベルグシュタットといち早く交流を持ったことにより、ミーアラントの有益さが各国に広まるのに時間はかからず、利権を求めるものの、今まで交流の無かった者たちが手っ取り早く関係を持とうとすれば、結婚という手段を取るのは自明の理だったりする。
全く興味がない……と言うより下心丸出しで来られても困るので断り続けてはいたのだが、たまに断りづらい厄介な相手もいたりするので困り果てていた時、エルが解決策を教えてくれた。
「バカシンジが、何時までも私達を放っておくから、こうなるのよ。ちなみにアイリスにも似たような問題がおきているからね……そろそろはっきりさせてくれてもいいんじゃない?」
「はっきりって?」
「私達との……その……結婚の事……言わせないでよ、バカ……。」
そう言った時の、赤く染まった顔のエルの表情はよく覚えている。
俺はエルの助言を受け入れて、エル、リディア、アイリスとの婚約発表を大々的に行った。
エルの素性は公にしていないが、ベルグシュタットとアシュラムの王女という肩書は、世間にかなりの影響を与え、流石に王女が相手にいると知ったうえで、結婚をごり押ししてくる貴族はいなくなり、俺の周りには一応平和が戻ったのだった。
その後、クリスが追加の婚約者として押しかけて来た時はまた一騒動会ったのだが……。
「思い出しましたかぁ?」
「あぁ、思い出したけど、それが?」
「ほんとぉぉぉぉぉにっ、分からないんですか?シンジさんバカなんですか、バカですよねっ!」
何故かリディアがキレている。
「いいですか、この二人はシンジさんとエルさんにとって大事な人ですよね?」
リディアが慰めるように二人の頭を撫でながら、俺に向かって聞いてくる。
「あぁ、その通りだが?」
「だったら分からないですか?シンジさん達に近づこうとしている人達が次に何を考えるか?って。」
そこまで言われて、俺はようやく理解する。
「そう言う……事か。」
「そう言う事ですよぉ。……本当に困った人ですよねぇ。」
リディアとリオナ達は、揃って困った人を見る目を俺に向けてくる。
つまり、利権を求めた下心丸出しの貴族たちは、ターゲットを俺から、俺の近しい者たちに切り替えたというわけだ。
リオナとレムなら、一応、下級とはいえ貴族籍にあるから姻戚関係を結ぶのに問題は少ない。
少なくとも平民や孤児相手よりは、建前等の理由付けも容易いだろう。
「あ、あの、エル様やリディア様達からの御許可は得ていますが、シンジ様がお嫌であるならば、私達は……。」
リオナがおずおずと、そう言ってくる。
「嫌って事はないが、リオナ達はそれでいいのか?」
俺としては、守ってやると言いながら無理強いをしたくはない。
「えぇ、私の気持ちはあの時から変わっていませんから。」
「おにぃちゃん以外の人の所に嫁ぐのはイヤです。」
……二人とも即答だった。
真っすぐな想いを直接ぶつけられて、却ってこっちが赤面してしまう。
「そ、そうか、じゃぁ、そう言う事で、これからもよろしくな。」
「はぁ……ちなみに街中では、他に色々噂が流れていますから、気を付けてくださいねぇ。」
リディアが言うには……『新しい領主様は将来の側室候補として孤児たちを囲っている』とか『領主様は小さい女の子が好き』とかと言う噂も流れているらしい。
何故そんな噂が……。
俺はがっくりと肩を落とす。
「部屋に籠って好き放題しているからですよぉ……自業自得です。現状を理解したら少しは私達を構ってくださいね。」
と言うわけでデートに行くのですよ、と落ち込む俺を引っ張って街へ繰り出す準備を始めるリディア。
はぁ、たまにはリディアとのデートもいいか。
俺は嬉しそうにしているリディアの横顔を見ながら、そう思った。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる