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第一章 勇者の旅立ち
激闘??ゴブリン退治!?
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「ミカ姉、気を付けてね。」
クーちゃんにそう見送られたのが3時間ほど前の事……。
その時はね、まさかこんな事になるなんて、夢にも思ってなかったのよ。
私は、目の前の光景を呆然と見ながら、そんな事を考えていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いーい、もう一度確認しておくわよ。集まった目的情報から、ゴブリンがいる事は間違いないわ。」
街から目的の森までは、歩いて1時間程度。
私達は道中、作戦会議と言う名のおしゃべりをしながら目的地へ向けて歩いていた。
「……って、ミカゲ、聞いてるの?」
「ウン、聞いてるよ。ゴブリンが単独で出歩くことは無いから、どこかに巣があるんじゃないかって言うんでしょ?」
「そうよ、その巣を探し出して根絶することが、この依頼の達成条件になるってこと忘れないでね。」
大丈夫かしら?と心配そうな声を出している割にはどことなく嬉しそうな様子のミュウ。
レフィーアの話だと、ミュウの種族、アレイ族は狩猟系戦闘民族って話だから、戦えることが嬉しいのかな?
「それで、ゴブリンの巣を見つけたらどうするの?何かいい案がある?」
「そんなのは、正面から叩き潰せばいいのですわ。」
うっわぁ……マリアちゃんがどこかの脳筋みたいなこと言い出したよぉ。
マリアちゃんって、こう言う性格だったんだぁ……戦いの時は気を付けないとね……暴走する姿が目に浮かぶわ。
『……人の事言えないと思うけどね。』
ん?何のこと?っていうより、私の心読まないでよねっ。
「いたわ……そっと後を付けるわよ。」
そう言ってミュウは気配を薄くする。
うわぁ、あれがゴブリンかぁ、聞いていた以上に醜悪……それが初めて見たゴブリンの感想。
背は低く、腰が曲がった老人のような体つき、ギョロギョロと落ち着きなくあたりを見回す三白眼に歪んだ鷲鼻、剥き出しの乱杭歯……ダメだ、お近付きになりたくないわ~。
私はミュウを見失わない程度に距離をあけて後を追う……ミュウほど気配を消すのが上手じゃないからね、決してゴブリンと距離を置きたいってだけじゃないんだからね?
そのゴブリンはキョロキョロと周りを見た後、森の奥へと向かう……つけられていることに全く気づいてないようで、私達を巣まで案内してくれた。
「これからどうするか、だね。」
物陰からゴブリンの巣を見張りながらミュウが言う。
今見えているのは5匹、奥の巣だと思われる洞穴にどれくらい隠れているかわからないけど、大きさから見て精々30匹がいいところだと思う。
「オーソドクスに行きましょうか……あなた達弓は使える?」
ミュウの問いに首を振る私とマリアちゃん。
「ん、仕方が無いわね。じゃぁまずはミカゲがあのあたりに魔法を撃ちなさい。なるべく派手な奴がいいわ。」
そう言ってゴブリンが集まっているあたりを指し示すミュウ。
「派手にって、いいの、見つかるよ?」
「それが目的だからいいのよ。5匹全部とは言わないけど、出来れば3匹はその魔法で始末しておきたいわね。」
ミュウはその後続けて作戦を話す。
私の魔法に驚いたゴブリンたちが出てくるだろうからそれを狙って、もう一度魔法を放つ。
その間にミュウがゴブリンたちに近寄るから、後はミュウを援護しながら、単発の魔法で削っていく……と言う流れ。
マリアちゃんは、ミュウに治癒や回復魔法をかけるのに専念する……流石にミュウ一人で20匹前後のゴブリン相手に無傷っていう訳には行かないだろうからね。
「準備はいい?」
ミュウの言葉に私たちは頷く。
「じゃぁ……っと、運がいいわね。」
ミュウの言葉に私たちもゴブリンの方を見ると、何か連絡をしているのか、洞穴から新たなゴブリンが出てきて7匹になっている。
しかも一カ所に集まっているので、初激であの7匹を屠ることが出来そうだ。
「じゃぁミカゲお願いね。」
ミュウはそう言うと突撃しやすい位置へと移動する。
「いきますか……ディフェンション!」
私が変身するときの光が漏れていたのかゴブリンたちが一斉にこちらを見る。
「でも、もう遅いよ。エグスプロージョン!」
私の放った魔法は、ゴブリン達のいた辺りを中心にして更地を作る。
もちろん中心にいたゴブリン達は跡形もない。
巨大な地響きと爆音により、何事かと洞穴からわらわらとゴブリン達が出てくる。
「続いていきま~す……テンペスト!」
荒れ狂う暴風がゴブリン達を巻き込んでいく。
難を逃れた者もいるが、それらもいつの間にか近くにいたミュウによって、首を切られていく。
ミュウが戦場にいる為、ここからは広域魔法は使えない……なので、私は単発魔法でミュウの援護に回る。
「エアロカノン!……ファイアーランス!……アイシクルピラー!……。」
ミュウの活躍と私の魔法で次々と倒れていくゴブリン達。
「調子いいけど……数多すぎないっ?」
最初の七匹を含めて、すでに30匹以上倒しているはずなのに、ゴブリン達の数が減っている気がしない。
「意外と広いのかもしれませんわね。」
ミュウに防御魔法を掛けながらマリアちゃんがそんな事を言ってくる。
見た目そんなに大きそうに見えなかった洞穴だけど、マリアちゃんの言う様に中が広いのかもしれない。
だとすると、ちょっとヤバくない?
私がそんな事を思った時、ミュウの叫び声が上がる。
「ヤバいっ、キングがいたっ!」
ミュウの叫び声を聞いてそちらに視線を向けると、ひときわ大きいゴブリンが洞穴から出てくるところだった。
……あれがゴブリンキング?
「キングは私が引き受けるから、あとは頼んだっ!」
ミュウはそう言ってゴブリンキングに挑発を掛けながら、奥へと誘導していく。
「後は頼んだって言われても……。」
周りには、まだ30匹近いゴブリン達がいる……これだけの数のゴブリンを魔法使いだけでどうしろと……。
斬りかかってくるゴブリンを紙一重で避ける。
距離があればいいんだけどねぇ、これだけ近くに来られると、魔法使いは不利なのよ。
私は横から斬りかかってくるゴブリンの剣を杖で受け止める……けど、このままでは後ろからの攻撃に対処できないっ。
マリアちゃんも、メイスを振り回してゴブリン達を威嚇しているから、応援は無理そうね。
私は、受け止めている剣を横へと流し、後ろから襲い掛かってくるゴブリンにぶつかるように誘導する。
目測通り、ゴブリン同士でぶつかり、互いの武器で傷つけあう。
「ミカゲさん、危ないっ!」
「えっ!」
油断した……私の死角から攻撃してくるゴブリン……その刃が私の顔へと迫る。
シュンッ!
私の顔ギリギリをかすめるゴブリンの刃……はらりと落ちる私の髪の毛……少し掠ったみたい。
「こんのぉ……腐れ外道がぁ!」
……って、今の声、マリアちゃん?
「私のミカゲ様の聖なる御髪を……許さないですわっ!」
「あ、あの……マリアちゃん?」
マリアちゃんは周りにいるゴブリン達をメイスの一撃で吹き飛ばす。
「女神に代わって神罰ですっ!……神威!」
マリアちゃんが聖句を唱えると、マリアちゃんの身体の周りを光り輝くオーラみたいなもので覆われる……身体強化の魔法の一種みたいね。
いつの間にかメイスが巨大ハンマーに代わり、それを振り回しながらゴブリンの群に飛び込んでいくマリアちゃん……っていうか、私は放置ですか?
マリアちゃんのハンマーで次々と吹き飛ばされていくゴブリン……それはいいんだけど、マリアちゃんに恐れをなしたゴブリン達がこっちに集まって来てるのよ?
私の周り、ゴブリンだらけ……どうしろって言うのよっ!
飛び掛かってくるゴブリンを躱しつつ魔法で斬り裂き、吹き飛ばすけど……キリがない。
「……フフフ……ミュウは勝手にボスと戦うし、マリアちゃんも勝手に飛び出して……。」
プチっ、プチっと、私の中で泣きかが切れる音がする……。
(ミカゲ?大丈夫?落ち着いて、ネッ?)
「皆が好き勝手やった挙句が私のこの現状を招いているのよね?」
私の周りを取り囲むゴブリン達……さっき張ったエアシールドのおかげでしばらくは近寄ってこれないだろうけど……。
ぷちっ、ぷちっ、ぷちっ……音がどんどん広がっている気がする……。
(それは……そうなのかな?)
「つまりこの後の責任は私にはないって事だよね?」
(いや……それは違うんじゃないかと……。)
「襲われそうになってるんだから、私は悪くないよね?」
(えっと……。)
「悪・く・な・い・よ・ね?」
(……はい。)
私がゆっくりと確認するように言うと、レフィーアも同意してくれる。
「……アンタら皆、もっと周りの迷惑って事を考えなさいよっ!」
(それ、ミカゲだけには言われたくないと思うよ?)
「うるさいっ!……煉獄爆風陣!」
ブチっという盛大に何かが千切れるような音と共に、私は極大魔法を使う。
(わわっ、無茶し過ぎだよぉ!)
レフィーアが慌てて防護の魔法を唱える……私とマリアちゃんとミュウの周りにフィールドの魔法結界を張ってくれたらしく、私達以外のすべてが劫火に焼き尽くされ飲み込まれていく。
轟音が止むと、周りは見事なまでの更地が広がっていた……ココが森の中だなんて誰に行っても信じないと思う。
「ん?」
何が起きたか分からず呆けているマリアちゃんの傍にゴブリンがいる。
「あっれぇ……まだ生き延びてるんだぁ?」
「ヒイッ!」
私が近づくとマリアちゃんは短い悲鳴を上げる。
その傍にいるゴブリン達は逃げ出そうとするが腰が抜けて動けないようだった。
「マリアちゃん、そのゴブリン庇うのぉ?」
「そ、そんな事は……。」
マリアちゃんは腰を抜かしているゴブリン達と私を交互に見ている。
「マリアちゃんは優しいから、ゴブリンにも慈悲をかけるのね?確かに、ゴブリンにも、いいゴブリンと悪いゴブリンがいるかもしれないわ。でもね、マリアちゃん?」
「はひぃっ!」
マリアちゃんが青ざめた目で私を見る。
「いいゴブリンはねぇ……死んで動かなくなったゴブリンだけだよ?」
「ひいっ!」
マリアちゃんは私の言葉を聞いて、反射的にメイスでゴブリン達を撃ち飛ばす……。
「どうしたの?そんな怯えた顔をして……ゴブリン怖かったの?」
私が聞くと、マリアちゃんは首を振った後大きくコクコクと頷く。
「ヘンなマリアちゃんね……ところで、ミュウはどこまで行ったのかなぁ。」
私はマリアちゃんとミュウが戻ってくるまで待つことにする。
「……見晴らしがよくなったけど、ミュウの姿が見えないね?」
私がそう声をかけても、マリアちゃんは、コクコクと頷くだけ……ホントヘンなマリアちゃん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アンタねぇ、どういうつもりよっ!」
「何が?」
あれからしばらくしてからミュウが戻ってきたんだけど、なぜかおこなのよ?
「何がじゃないでしょうがっ!これを見て何も思わないのっ!」
そう言ってミュウが辺り一面を指し示す。
「うーん、開拓しやすくなった?」
「そういう問題じゃないでしょうがっ!」
うーん、カリカリしてるなぁ?カルシウム不足?
「骨食べる?」
「食べないわよっ!」
ゼェゼェと肩で息をするミュウ……。
うーん、骨を食べないなら、後は牛乳?……こっちに牛っているのかな?
「とにかくねぇ、アンタが見境なくぶっ放した魔法の所為で、私は1km以上吹き飛ばされるし散々なのよ。その上、戻ってきたら地形変えちゃってどうするのよっ!」
一気にまくし立ててくるミュウだけど……今の言い方はちょっとカチンと来たわ。
「私は悪くないわよ。」
「悪くないって、アンタねぇ……。」
「まだ敵がたくさんいるのに魔法職を放置してどこかに行っちゃう前衛職……。」
ミュウの言葉にかぶせる様に、私は言い放つ。
「まるで前衛職の様に、後先も考えず武器を振り回して敵の群の飛び込む回復職……。」
マリアちゃんが隣で小さくなる。
「その結果、無数の敵に取り囲まれることになった魔法使いはどうすればよかったのかしらねぇ?」
「そ、それは……。」
私の勢いに、たじたじとなるミュウ……私だって怒る事はあるんだからね。
「あ、あれは何でしょうか?」
その時、マリアちゃんが遠くの方を指さして言う……きっと話題を逸らそうとしたのだと思う。
「あ、そうね、何かしらね、調べに行きましょう。」
その流れにミュウも乗っかり、いそいそと移動する準備を始める。
……まぁ、今回は見逃してあげるわよ。
私達は更地のはずれにある妙な建物を目指して歩き始めた。
クーちゃんにそう見送られたのが3時間ほど前の事……。
その時はね、まさかこんな事になるなんて、夢にも思ってなかったのよ。
私は、目の前の光景を呆然と見ながら、そんな事を考えていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いーい、もう一度確認しておくわよ。集まった目的情報から、ゴブリンがいる事は間違いないわ。」
街から目的の森までは、歩いて1時間程度。
私達は道中、作戦会議と言う名のおしゃべりをしながら目的地へ向けて歩いていた。
「……って、ミカゲ、聞いてるの?」
「ウン、聞いてるよ。ゴブリンが単独で出歩くことは無いから、どこかに巣があるんじゃないかって言うんでしょ?」
「そうよ、その巣を探し出して根絶することが、この依頼の達成条件になるってこと忘れないでね。」
大丈夫かしら?と心配そうな声を出している割にはどことなく嬉しそうな様子のミュウ。
レフィーアの話だと、ミュウの種族、アレイ族は狩猟系戦闘民族って話だから、戦えることが嬉しいのかな?
「それで、ゴブリンの巣を見つけたらどうするの?何かいい案がある?」
「そんなのは、正面から叩き潰せばいいのですわ。」
うっわぁ……マリアちゃんがどこかの脳筋みたいなこと言い出したよぉ。
マリアちゃんって、こう言う性格だったんだぁ……戦いの時は気を付けないとね……暴走する姿が目に浮かぶわ。
『……人の事言えないと思うけどね。』
ん?何のこと?っていうより、私の心読まないでよねっ。
「いたわ……そっと後を付けるわよ。」
そう言ってミュウは気配を薄くする。
うわぁ、あれがゴブリンかぁ、聞いていた以上に醜悪……それが初めて見たゴブリンの感想。
背は低く、腰が曲がった老人のような体つき、ギョロギョロと落ち着きなくあたりを見回す三白眼に歪んだ鷲鼻、剥き出しの乱杭歯……ダメだ、お近付きになりたくないわ~。
私はミュウを見失わない程度に距離をあけて後を追う……ミュウほど気配を消すのが上手じゃないからね、決してゴブリンと距離を置きたいってだけじゃないんだからね?
そのゴブリンはキョロキョロと周りを見た後、森の奥へと向かう……つけられていることに全く気づいてないようで、私達を巣まで案内してくれた。
「これからどうするか、だね。」
物陰からゴブリンの巣を見張りながらミュウが言う。
今見えているのは5匹、奥の巣だと思われる洞穴にどれくらい隠れているかわからないけど、大きさから見て精々30匹がいいところだと思う。
「オーソドクスに行きましょうか……あなた達弓は使える?」
ミュウの問いに首を振る私とマリアちゃん。
「ん、仕方が無いわね。じゃぁまずはミカゲがあのあたりに魔法を撃ちなさい。なるべく派手な奴がいいわ。」
そう言ってゴブリンが集まっているあたりを指し示すミュウ。
「派手にって、いいの、見つかるよ?」
「それが目的だからいいのよ。5匹全部とは言わないけど、出来れば3匹はその魔法で始末しておきたいわね。」
ミュウはその後続けて作戦を話す。
私の魔法に驚いたゴブリンたちが出てくるだろうからそれを狙って、もう一度魔法を放つ。
その間にミュウがゴブリンたちに近寄るから、後はミュウを援護しながら、単発の魔法で削っていく……と言う流れ。
マリアちゃんは、ミュウに治癒や回復魔法をかけるのに専念する……流石にミュウ一人で20匹前後のゴブリン相手に無傷っていう訳には行かないだろうからね。
「準備はいい?」
ミュウの言葉に私たちは頷く。
「じゃぁ……っと、運がいいわね。」
ミュウの言葉に私たちもゴブリンの方を見ると、何か連絡をしているのか、洞穴から新たなゴブリンが出てきて7匹になっている。
しかも一カ所に集まっているので、初激であの7匹を屠ることが出来そうだ。
「じゃぁミカゲお願いね。」
ミュウはそう言うと突撃しやすい位置へと移動する。
「いきますか……ディフェンション!」
私が変身するときの光が漏れていたのかゴブリンたちが一斉にこちらを見る。
「でも、もう遅いよ。エグスプロージョン!」
私の放った魔法は、ゴブリン達のいた辺りを中心にして更地を作る。
もちろん中心にいたゴブリン達は跡形もない。
巨大な地響きと爆音により、何事かと洞穴からわらわらとゴブリン達が出てくる。
「続いていきま~す……テンペスト!」
荒れ狂う暴風がゴブリン達を巻き込んでいく。
難を逃れた者もいるが、それらもいつの間にか近くにいたミュウによって、首を切られていく。
ミュウが戦場にいる為、ここからは広域魔法は使えない……なので、私は単発魔法でミュウの援護に回る。
「エアロカノン!……ファイアーランス!……アイシクルピラー!……。」
ミュウの活躍と私の魔法で次々と倒れていくゴブリン達。
「調子いいけど……数多すぎないっ?」
最初の七匹を含めて、すでに30匹以上倒しているはずなのに、ゴブリン達の数が減っている気がしない。
「意外と広いのかもしれませんわね。」
ミュウに防御魔法を掛けながらマリアちゃんがそんな事を言ってくる。
見た目そんなに大きそうに見えなかった洞穴だけど、マリアちゃんの言う様に中が広いのかもしれない。
だとすると、ちょっとヤバくない?
私がそんな事を思った時、ミュウの叫び声が上がる。
「ヤバいっ、キングがいたっ!」
ミュウの叫び声を聞いてそちらに視線を向けると、ひときわ大きいゴブリンが洞穴から出てくるところだった。
……あれがゴブリンキング?
「キングは私が引き受けるから、あとは頼んだっ!」
ミュウはそう言ってゴブリンキングに挑発を掛けながら、奥へと誘導していく。
「後は頼んだって言われても……。」
周りには、まだ30匹近いゴブリン達がいる……これだけの数のゴブリンを魔法使いだけでどうしろと……。
斬りかかってくるゴブリンを紙一重で避ける。
距離があればいいんだけどねぇ、これだけ近くに来られると、魔法使いは不利なのよ。
私は横から斬りかかってくるゴブリンの剣を杖で受け止める……けど、このままでは後ろからの攻撃に対処できないっ。
マリアちゃんも、メイスを振り回してゴブリン達を威嚇しているから、応援は無理そうね。
私は、受け止めている剣を横へと流し、後ろから襲い掛かってくるゴブリンにぶつかるように誘導する。
目測通り、ゴブリン同士でぶつかり、互いの武器で傷つけあう。
「ミカゲさん、危ないっ!」
「えっ!」
油断した……私の死角から攻撃してくるゴブリン……その刃が私の顔へと迫る。
シュンッ!
私の顔ギリギリをかすめるゴブリンの刃……はらりと落ちる私の髪の毛……少し掠ったみたい。
「こんのぉ……腐れ外道がぁ!」
……って、今の声、マリアちゃん?
「私のミカゲ様の聖なる御髪を……許さないですわっ!」
「あ、あの……マリアちゃん?」
マリアちゃんは周りにいるゴブリン達をメイスの一撃で吹き飛ばす。
「女神に代わって神罰ですっ!……神威!」
マリアちゃんが聖句を唱えると、マリアちゃんの身体の周りを光り輝くオーラみたいなもので覆われる……身体強化の魔法の一種みたいね。
いつの間にかメイスが巨大ハンマーに代わり、それを振り回しながらゴブリンの群に飛び込んでいくマリアちゃん……っていうか、私は放置ですか?
マリアちゃんのハンマーで次々と吹き飛ばされていくゴブリン……それはいいんだけど、マリアちゃんに恐れをなしたゴブリン達がこっちに集まって来てるのよ?
私の周り、ゴブリンだらけ……どうしろって言うのよっ!
飛び掛かってくるゴブリンを躱しつつ魔法で斬り裂き、吹き飛ばすけど……キリがない。
「……フフフ……ミュウは勝手にボスと戦うし、マリアちゃんも勝手に飛び出して……。」
プチっ、プチっと、私の中で泣きかが切れる音がする……。
(ミカゲ?大丈夫?落ち着いて、ネッ?)
「皆が好き勝手やった挙句が私のこの現状を招いているのよね?」
私の周りを取り囲むゴブリン達……さっき張ったエアシールドのおかげでしばらくは近寄ってこれないだろうけど……。
ぷちっ、ぷちっ、ぷちっ……音がどんどん広がっている気がする……。
(それは……そうなのかな?)
「つまりこの後の責任は私にはないって事だよね?」
(いや……それは違うんじゃないかと……。)
「襲われそうになってるんだから、私は悪くないよね?」
(えっと……。)
「悪・く・な・い・よ・ね?」
(……はい。)
私がゆっくりと確認するように言うと、レフィーアも同意してくれる。
「……アンタら皆、もっと周りの迷惑って事を考えなさいよっ!」
(それ、ミカゲだけには言われたくないと思うよ?)
「うるさいっ!……煉獄爆風陣!」
ブチっという盛大に何かが千切れるような音と共に、私は極大魔法を使う。
(わわっ、無茶し過ぎだよぉ!)
レフィーアが慌てて防護の魔法を唱える……私とマリアちゃんとミュウの周りにフィールドの魔法結界を張ってくれたらしく、私達以外のすべてが劫火に焼き尽くされ飲み込まれていく。
轟音が止むと、周りは見事なまでの更地が広がっていた……ココが森の中だなんて誰に行っても信じないと思う。
「ん?」
何が起きたか分からず呆けているマリアちゃんの傍にゴブリンがいる。
「あっれぇ……まだ生き延びてるんだぁ?」
「ヒイッ!」
私が近づくとマリアちゃんは短い悲鳴を上げる。
その傍にいるゴブリン達は逃げ出そうとするが腰が抜けて動けないようだった。
「マリアちゃん、そのゴブリン庇うのぉ?」
「そ、そんな事は……。」
マリアちゃんは腰を抜かしているゴブリン達と私を交互に見ている。
「マリアちゃんは優しいから、ゴブリンにも慈悲をかけるのね?確かに、ゴブリンにも、いいゴブリンと悪いゴブリンがいるかもしれないわ。でもね、マリアちゃん?」
「はひぃっ!」
マリアちゃんが青ざめた目で私を見る。
「いいゴブリンはねぇ……死んで動かなくなったゴブリンだけだよ?」
「ひいっ!」
マリアちゃんは私の言葉を聞いて、反射的にメイスでゴブリン達を撃ち飛ばす……。
「どうしたの?そんな怯えた顔をして……ゴブリン怖かったの?」
私が聞くと、マリアちゃんは首を振った後大きくコクコクと頷く。
「ヘンなマリアちゃんね……ところで、ミュウはどこまで行ったのかなぁ。」
私はマリアちゃんとミュウが戻ってくるまで待つことにする。
「……見晴らしがよくなったけど、ミュウの姿が見えないね?」
私がそう声をかけても、マリアちゃんは、コクコクと頷くだけ……ホントヘンなマリアちゃん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アンタねぇ、どういうつもりよっ!」
「何が?」
あれからしばらくしてからミュウが戻ってきたんだけど、なぜかおこなのよ?
「何がじゃないでしょうがっ!これを見て何も思わないのっ!」
そう言ってミュウが辺り一面を指し示す。
「うーん、開拓しやすくなった?」
「そういう問題じゃないでしょうがっ!」
うーん、カリカリしてるなぁ?カルシウム不足?
「骨食べる?」
「食べないわよっ!」
ゼェゼェと肩で息をするミュウ……。
うーん、骨を食べないなら、後は牛乳?……こっちに牛っているのかな?
「とにかくねぇ、アンタが見境なくぶっ放した魔法の所為で、私は1km以上吹き飛ばされるし散々なのよ。その上、戻ってきたら地形変えちゃってどうするのよっ!」
一気にまくし立ててくるミュウだけど……今の言い方はちょっとカチンと来たわ。
「私は悪くないわよ。」
「悪くないって、アンタねぇ……。」
「まだ敵がたくさんいるのに魔法職を放置してどこかに行っちゃう前衛職……。」
ミュウの言葉にかぶせる様に、私は言い放つ。
「まるで前衛職の様に、後先も考えず武器を振り回して敵の群の飛び込む回復職……。」
マリアちゃんが隣で小さくなる。
「その結果、無数の敵に取り囲まれることになった魔法使いはどうすればよかったのかしらねぇ?」
「そ、それは……。」
私の勢いに、たじたじとなるミュウ……私だって怒る事はあるんだからね。
「あ、あれは何でしょうか?」
その時、マリアちゃんが遠くの方を指さして言う……きっと話題を逸らそうとしたのだと思う。
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王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
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