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第一章 勇者の旅立ち
古代文明なら何でもアリ??
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「はぁ……これはすごいわね。」
目の前に積まれたお宝尾山を見てミュウが溜息をつく。
古代の教会だろうと思われる廃墟に入り、この小部屋を発見してから1時間。
調査という名の家探しの結果が目の前に積まれた宝物の数々。
古代文明時に使われていたと思われる、大小様々な金貨が100枚ほど、銀貨と銅貨は合わせて500枚以上はある。
貨幣としては使えないだろうけど歴史的価値があるから、売ればそれなりにはなりそうだし、金貨に至っては単純に金としての価値があるから、この貨幣だけでも今の金貨50枚分ぐらいの価値にはなると思う……日本円にしたら5千万円よ?……まぁ、単純に比べられるものじゃないのは分かっているけどね。
そして武器や防具などの装備品……これは実用的なものじゃなく装飾品として使われていたみたいで煌びやかな装飾がしてあるものが多かった。
中には魔法がかかっている魔法装備もいくつかあったけど、どんな効果があるか分からないから、後で調べてみないとね。
他には宝石や美術品、わけわからないアミュレットの類に大量にある書籍……宝石はそのまま撃ったりできそうだけど、美術品等はハッキリ言って価値が分かんない、更にアミュレットなどは魔術具って言う所までは分かってもどんな効果があるか分からないから怖くて使えない……ホント、こういう時にレフィーアが反応してくれないっていうのは困りものだわ。
書籍に関しては、全く分からないのでレフィーアが復活したら徐々に調べるとして……。
「問題はこれよねぇ……。」
「これはどう見ても……。」
「だよねぇ……?」
戦利品を統べて袋にしまい込んだ後、残されたソレを目の前にして私達はため息をつく。
目の前にあるのは50cm程の大きな鍵。
ヘッド部分に大きな宝石が埋め込まれ、その周辺に装飾に見せかけた複雑な魔法陣が刻み込まれている。
そして私達は同時に棚の方へ視線を向ける。
棚の置く……本来であれば幾重にも積み上げられた書籍や資料の所為で、決して目につかなかったはずのそこには大きな鍵穴がある。
「どう見ても、あの鍵穴よね?」
「それ以外には考えられませんわね。」
「だよねぇ……。」
私は仕方が無く鍵を手に取ると、壁際の棚へと歩いていくと、二人も私の後ろをついてくる。
「行くよ……。」
ゴクリと喉が鳴る……けど、ここまで来たらやるしかないよね。
私は手にした鍵を鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。
カチリ、と音がすると同時に鍵のヘッドにある宝石が光を放ち、そして……私達の足元が消失する。
「えっ?」
足元がなくなり落ちていく感覚がしたのは一瞬だった。
気づいたら見知らぬ部屋の中にいて、周りを見るとミュウとマリアちゃんも呆然として立っている。
「ここ、どこよ?」
「分からない……けど……。」
目の前にある不思議なもの……一言でいえば漫画やアニメに出てくるようなコンユーターと言えばいいのかな?
っていうか、ファンタジーがSFになるのってありなの?
その中央部分が光っていて、そして何故か私の手にさっき差し込んだはずのカギがある。
これって、どう考えても、あの光っている所に鍵を指せって事だよね?
私は誘われるかのように、フラフラ~とその装置に近づいていく。
「ミカゲ!」
「ミカゲさん、危ないです。」
二人が背後から心配そうに声をかけて来るけど、私にはなんとなく大丈夫だって気がする……これってレフィーアがそう感じてるのかな?
「大丈夫だよ、大丈夫だって語りかけてくる気がする……多分。」
いつもなら『多分かよっ!』ってツッコんでくる人が今はいない。
でも何となくわかるんだよね。
私は二人に安心してというように笑いかけてから、装置の光っている部分に鍵を差し込む。
ピカーッという祇園が聞こえそうな感じで、いきなり装置が輝きだす。
『……起動シークエンス……開始。……オートチェックサム起動……。フィールドチェック起動……パーソナライズセッティング確認……エラー。……フォーマッティング……。』
「な、何なの、これは?」
ミュウが私にしがみついてくる。
「一体、これは……神の御業?」
マリアちゃんは跪いて祈りを捧げている。
まぁ、目の前の訳の分からないものが、いきなり光ったかと思うと、訳の分からないことをしゃべり出したのだから無理もないんだろうけど……でも怯えるミュウって可愛い。
私は思わず抱きしめて「怖くないよ、大丈夫だからね。」と囁く……私の腕の中で、小刻みに震えつつ、小さく頷いているミュウちゃん最高。
思わずお持ち帰りしたくなっちゃうわ……古代文明の魔術具さんGJ!
などと、下らない事を考えているうちに装置の起動シークエンスとやらが終わったらしくこちらに語りかけてくる。
『……キャリブレーションセッティングノ為パーソナライズデータノ提供ヲ求メマス……。』
装置が同じ言葉を繰り返している……言ってることはよくわからないんだけど、明滅している所があるので、そこで何かしろという事なのかな?
取りあえず、ミュウをマリアちゃんに預けて装置に近づく。
明滅している部分はちょうど手を置くぐらいのスペースが有る……手を置けばいいのかな?
私はそっと手を追い置てみた。
すると私の手を光が包み込み、すぐに消える。
『データ登録確認……続イテマスター登録ヲオ願イシマス。』
「ますたぁ登録?」
私の声を認識したのか、装置から声が聞こえる。
『オ名前ヲドウゾ。』
「名前?ミカゲだけど?樹神御影……。」
あ、思わず向こうでの名前を言っちゃった……けど、まぁいいか、どうせ分からないでしょ。
『名前確認……ミカゲ……コダマミカゲ……Eスタイルト推測……ファーストネーム、ミカゲ……ミカゲ・コダマ……間違イナイデショウカ?』
「あ、はい……間違いございません……。」
えーと、何なんだろう?ここって勇者と魔王のいるファンタジー世界よね?
私は少し混乱していた。
だってね、装置の各所に明かりがともって、全体像がはっきりしてきて分かったんだけど、あっちこっちに見えるメーターや液晶の表示板……これって機械じゃないのよ。
それも、私のいた世界でもお目にかかった事の無いような高度な……。
一体何が起きてるのよ?
『マスター登録完了……以後、コノシステムハ、ミストレス・ミカゲノ管理下ニ置カレマス。』
「管理下って……どういう事……?あなたは一体……。」
『私ノ名称ハ”人工精霊SN2785200021875AISYSTEMVer.2.05”デス。システムハスベテミストレスノ指示にヨッテウゴキマス。』
「ちょ、ちょっと待って……えーと混乱してきた……。」
私が頭を抱え込んでいると、最初のショックから立ち直ったらしいミュウとマリアちゃんが近づいてきた。
「ミカゲ……大丈夫?」
心配そうに見てくるミュウ。
大丈夫って言うのはこの装置が安全かって事なのか、私の身体の事を心配しているのか……多分両方だね。
「ミカゲさん、これは古代文明の遺失物なのですか?」
マリアちゃんは教会関係者の所為か、古代文明とか遺失物に関しての知識を持っている分、順能力は高いみたい。
「多分、そうだと思うけどどういうモノかまでは……。」
……って、相手は喋れるんだから聞けばいいじゃないのよ。
「えーと人工精霊さん……ってなんか呼びにくいなぁ……アイちゃんでいいか。」
人工精霊って要は向こうの世界で言う人工知能の事だよね。
だったらAIのアイちゃんでいいじゃない。
『……ミストレスノ意ノママニ……命名『アイ』受諾……』
なんか戸惑っている感じもするけど、そんな訳ないよね。
「後、その「ミストレス」っていうのも禁止ね。私はミカゲよ。」
『……YES、ミカゲ……指示ヲドウゾ。』
「うーん、その事なんだけど、今一つ状況が分かってないのよ。あなたの事や取り巻く状況何か教えてくれる?」
『それならボクが教えてあげる。ミカゲはまずシステムの復旧の指示を出して。』
「レフィーア!?」
私の変身がいきなり解けて小妖精姿のレフィーアが姿を現す。
「あなた今まで……。」
『全部後で説明するから、まずは復旧指示を……このままじゃ持たないから。』
「うん……アイちゃん、システムの復旧をお願い。」
『ミカゲカラノ指示ヲ受諾……リカバリーモードニ移行……バックアップデータフィードバック開始……フィールドタイプヲ選択シテ下サイ。』
アイちゃんが何かを選べって言ってるけど……何のことかなぁ。
私はミュウとマリアちゃんを振り返るけど、二人とも事態についていけないようで呆然としている。
『SN2785200021875、ボクの名前はレフィーア。フィールドタイプを可視化してあげて。それと復旧後は速やかに現状を確認し、ラーニング……今の時代に沿った対応を。』
『……上位コード『レフィーア』確認。要請ヲ受諾シマス……。』
レフィーアがアイちゃんに何か語りかけたかと思ったら、いきなりパネルに映像が浮かび上がったの……なんか、近代都市を思わせるようなものと、のどかな牧場風景と、鬱蒼と生い茂るジャングルみたいな物、一面の湖に中央にポツンとある古城等々、十数種類の風景が出て来たのよ。
「レフィーア、これは?」
分からないことはレフィーアに聞く……これ基本だよね。
それに、さっきからの一連の流れからするとレフィーアはこの事をよく知っているみたいだし……。
『ミカゲが更地にしたこの周りをどう言う風に直したいかを聞いてるんだよ。』
「そうなんだ……周りが森だからやっぱり……でもこれは何か鬱陶しそうね……ミュウ、マリアちゃん、何か希望ある?」
私は未だ呆然としている二人に声をかける。
気持ちはわかるけど、いい加減戻って来てよぉ……私を一人にしないでよぉ。
「えっ、あぁ……うん……。」
「ミカゲさんにお任せします。」
二人が戻ってくるのにもう少しかかりそうね。
『魔素が溜まれば後で変更も可能だから、取りあえずどれでもいいから決めなよ。』
レフィーアが先を促す……なんか焦っているような感じがするのは気のせいかな?
「うーん、じゃぁこれ。」
私は幾つかある候補の中から牧草地帯の風景を選んだ。
だってね、なんとなくのどかな感じがしたんだもん。
『フィールドタイプ受諾……リカバリーヲ開始シマス……エネルギー不足。』
『いいよ、取りあえずシステム周りを優先で。後は逐次チャージと並行で作業を進行して。』
『……命令受諾……終了マデ259198s……。』
部屋の壁や天井が光り出し、周りが明るくなる。
『復旧まで時間がかかりそうだし、一度上に戻ろうか?ボクお腹空いたよ。』
私は、まだ呆然としている二人を引っ張る様にしながら、レフィーアに言われるままに上の部屋へと戻る事にする。
システム?とやらが復旧した為か、部屋の片隅にあった光る円盤の上に乗ったら一瞬にして司祭の執務室に戻ったのはちょっとびっくりしちゃった。
◇
「それで?どういうことなの?」
私は綺麗になった執務室の机の上で、一心不乱にレチゴを食べているレフィーアに問いかける。
『モグモグ……ちょっと待ってよ……むぐっ……。』
「慌てて食べるから……。」
喉を詰まらせたレフィーアに水を渡す。
『ミカゲが慌てさせるんじゃないか。』
「いいから、それを食べたら説明してよね。」
「この建物の変化についても聞きたいですわ。」
扉が開いて、マリアちゃんとミュウが入ってくる。
彼女たちは、地下の部屋からここに戻ると「少し頭を冷やしてくる」って言って他の部屋を見に行ってたんだけど……。
「おかえりー、他の部屋の様子はどう?」
「ここと同じ……、いつ誰が来ても問題ないくらい片付いているわ。廃墟って何?って感じよ。」
「広間も見てきましたが……立派な大聖堂になっていました。」
「そうなんだぁ……とりあえずお疲れ様。果実水飲むでしょ?」
疲れたような声で報告をしてくれる二人を労わる為、良く冷えた果実水を取り出して渡す。
「それでどういう事なの?」
レチゴを食べ終えたレフィーアに私は再度問いかける。
『んー、ざっくり言うと、アレは古代文明の聖遺物で、ミカゲの魔力で再起動した、って事なんだけど。』
「ざっくりし過ぎでしょっ!」
「まぁまぁ、ミュウさん落ち着いて。」
「レフィーア?説明してくれるんだよね?」
『ミカゲ、ちょっと怖いよ……って、痛い、痛いよっ。』
「だったら、ちゃんと説明しなさいよ。」
『わ、分かったから、離し……て……。』
私がレフィーアを掴んでいた手の力を緩めると、慌てて私から距離を取る。
『まともに説明すると複雑で長くなるんだけど……聞く?』
「……詳細を事細かく簡潔にお願いします。」
『うわっ、無茶苦茶言ってるよ。』
レフィーアが呆れているけど、あんまり難しいとねぇ、私はともかくミュウが寝ちゃうからね。
『ま、いいか……えっとね、この聖遺物は超古代文明時代のものなんだよ。超古代文明時代の人間たちはね……。』
レフィーアの話は長くて、やっぱりミュウは途中で寝ちゃったんだけど、簡単にまとめると、あの装置は超古代の魔法技術と科学技術が融合したものなんだって。
超古代の人類は、各地の龍脈泉と呼ばれるマナの流れが集まるところに、ここと同じような施設を建設して、天候、地形、魔力の流れなどを自在にコントロールする事が出来たらしく、その力を使って一時は魔族をも支配していたんだって。
だけど、結局魔族の反乱、龍族の介入などが重なって古代人類は滅んで、今では遺跡としてその足跡が残るだけなんだけど、ターミナルと呼ばれたここのような拠点は強力な防護魔法と拠点結界が張ってあるから、現在でも稼働する可能性が高かったんだって。
ここのターミナルもその一つで、その機能としては、防護・阻害結界を張る事、地域のコントロール、そしてターミナル間の転移なんだって。
ターミナルはここの教会施設みたいに、何らかの施設でカモフラージュされているらしく、今までに見つかった遺跡の中でもひょっとしたらターミナルがあったかもしれなくて、ターミナルが確実に起動していれば、どれだけ離れた場所でも一瞬のうちに移動できるから、今後ターミナルを見つけたら起動させるといいってレフィーアは言うんだけどね。
ミュウはぐっすりと夢の世界に旅立っていたし、私もよく分からないので聞き流していたけど、マリアちゃんは興味があるらしく、結局レフィーアはマリアちゃんに教えていたから、分からないことが出てきたらマリアちゃんに任せればいいよね……。
『ほら、やっぱり寝ちゃったよ。』
「まぁまあ、レフィーア様、私がちゃんと聞いていましたから。」
……何か言ってるみたいだけど……私は寝てないからね……ミュウ、柔らかいよぉ……。
「それにしても幸せそうな寝顔ですね……ミカゲさんの寝顔可愛ぃ。」
『ボクは喋り疲れたから少し休むよ。二人が起きたら呼んでね。』
「はい、ごゆっくりどうぞ。……はぁ、超古代文明のターミナルですかぁ。報告なんかできませんわね、どうしましょうか……ねぇ、ミカゲさん?」
マリアちゃんがそんなこと呟いていたなんて、この時の私は知らなかったんだけどね。
目の前に積まれたお宝尾山を見てミュウが溜息をつく。
古代の教会だろうと思われる廃墟に入り、この小部屋を発見してから1時間。
調査という名の家探しの結果が目の前に積まれた宝物の数々。
古代文明時に使われていたと思われる、大小様々な金貨が100枚ほど、銀貨と銅貨は合わせて500枚以上はある。
貨幣としては使えないだろうけど歴史的価値があるから、売ればそれなりにはなりそうだし、金貨に至っては単純に金としての価値があるから、この貨幣だけでも今の金貨50枚分ぐらいの価値にはなると思う……日本円にしたら5千万円よ?……まぁ、単純に比べられるものじゃないのは分かっているけどね。
そして武器や防具などの装備品……これは実用的なものじゃなく装飾品として使われていたみたいで煌びやかな装飾がしてあるものが多かった。
中には魔法がかかっている魔法装備もいくつかあったけど、どんな効果があるか分からないから、後で調べてみないとね。
他には宝石や美術品、わけわからないアミュレットの類に大量にある書籍……宝石はそのまま撃ったりできそうだけど、美術品等はハッキリ言って価値が分かんない、更にアミュレットなどは魔術具って言う所までは分かってもどんな効果があるか分からないから怖くて使えない……ホント、こういう時にレフィーアが反応してくれないっていうのは困りものだわ。
書籍に関しては、全く分からないのでレフィーアが復活したら徐々に調べるとして……。
「問題はこれよねぇ……。」
「これはどう見ても……。」
「だよねぇ……?」
戦利品を統べて袋にしまい込んだ後、残されたソレを目の前にして私達はため息をつく。
目の前にあるのは50cm程の大きな鍵。
ヘッド部分に大きな宝石が埋め込まれ、その周辺に装飾に見せかけた複雑な魔法陣が刻み込まれている。
そして私達は同時に棚の方へ視線を向ける。
棚の置く……本来であれば幾重にも積み上げられた書籍や資料の所為で、決して目につかなかったはずのそこには大きな鍵穴がある。
「どう見ても、あの鍵穴よね?」
「それ以外には考えられませんわね。」
「だよねぇ……。」
私は仕方が無く鍵を手に取ると、壁際の棚へと歩いていくと、二人も私の後ろをついてくる。
「行くよ……。」
ゴクリと喉が鳴る……けど、ここまで来たらやるしかないよね。
私は手にした鍵を鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。
カチリ、と音がすると同時に鍵のヘッドにある宝石が光を放ち、そして……私達の足元が消失する。
「えっ?」
足元がなくなり落ちていく感覚がしたのは一瞬だった。
気づいたら見知らぬ部屋の中にいて、周りを見るとミュウとマリアちゃんも呆然として立っている。
「ここ、どこよ?」
「分からない……けど……。」
目の前にある不思議なもの……一言でいえば漫画やアニメに出てくるようなコンユーターと言えばいいのかな?
っていうか、ファンタジーがSFになるのってありなの?
その中央部分が光っていて、そして何故か私の手にさっき差し込んだはずのカギがある。
これって、どう考えても、あの光っている所に鍵を指せって事だよね?
私は誘われるかのように、フラフラ~とその装置に近づいていく。
「ミカゲ!」
「ミカゲさん、危ないです。」
二人が背後から心配そうに声をかけて来るけど、私にはなんとなく大丈夫だって気がする……これってレフィーアがそう感じてるのかな?
「大丈夫だよ、大丈夫だって語りかけてくる気がする……多分。」
いつもなら『多分かよっ!』ってツッコんでくる人が今はいない。
でも何となくわかるんだよね。
私は二人に安心してというように笑いかけてから、装置の光っている部分に鍵を差し込む。
ピカーッという祇園が聞こえそうな感じで、いきなり装置が輝きだす。
『……起動シークエンス……開始。……オートチェックサム起動……。フィールドチェック起動……パーソナライズセッティング確認……エラー。……フォーマッティング……。』
「な、何なの、これは?」
ミュウが私にしがみついてくる。
「一体、これは……神の御業?」
マリアちゃんは跪いて祈りを捧げている。
まぁ、目の前の訳の分からないものが、いきなり光ったかと思うと、訳の分からないことをしゃべり出したのだから無理もないんだろうけど……でも怯えるミュウって可愛い。
私は思わず抱きしめて「怖くないよ、大丈夫だからね。」と囁く……私の腕の中で、小刻みに震えつつ、小さく頷いているミュウちゃん最高。
思わずお持ち帰りしたくなっちゃうわ……古代文明の魔術具さんGJ!
などと、下らない事を考えているうちに装置の起動シークエンスとやらが終わったらしくこちらに語りかけてくる。
『……キャリブレーションセッティングノ為パーソナライズデータノ提供ヲ求メマス……。』
装置が同じ言葉を繰り返している……言ってることはよくわからないんだけど、明滅している所があるので、そこで何かしろという事なのかな?
取りあえず、ミュウをマリアちゃんに預けて装置に近づく。
明滅している部分はちょうど手を置くぐらいのスペースが有る……手を置けばいいのかな?
私はそっと手を追い置てみた。
すると私の手を光が包み込み、すぐに消える。
『データ登録確認……続イテマスター登録ヲオ願イシマス。』
「ますたぁ登録?」
私の声を認識したのか、装置から声が聞こえる。
『オ名前ヲドウゾ。』
「名前?ミカゲだけど?樹神御影……。」
あ、思わず向こうでの名前を言っちゃった……けど、まぁいいか、どうせ分からないでしょ。
『名前確認……ミカゲ……コダマミカゲ……Eスタイルト推測……ファーストネーム、ミカゲ……ミカゲ・コダマ……間違イナイデショウカ?』
「あ、はい……間違いございません……。」
えーと、何なんだろう?ここって勇者と魔王のいるファンタジー世界よね?
私は少し混乱していた。
だってね、装置の各所に明かりがともって、全体像がはっきりしてきて分かったんだけど、あっちこっちに見えるメーターや液晶の表示板……これって機械じゃないのよ。
それも、私のいた世界でもお目にかかった事の無いような高度な……。
一体何が起きてるのよ?
『マスター登録完了……以後、コノシステムハ、ミストレス・ミカゲノ管理下ニ置カレマス。』
「管理下って……どういう事……?あなたは一体……。」
『私ノ名称ハ”人工精霊SN2785200021875AISYSTEMVer.2.05”デス。システムハスベテミストレスノ指示にヨッテウゴキマス。』
「ちょ、ちょっと待って……えーと混乱してきた……。」
私が頭を抱え込んでいると、最初のショックから立ち直ったらしいミュウとマリアちゃんが近づいてきた。
「ミカゲ……大丈夫?」
心配そうに見てくるミュウ。
大丈夫って言うのはこの装置が安全かって事なのか、私の身体の事を心配しているのか……多分両方だね。
「ミカゲさん、これは古代文明の遺失物なのですか?」
マリアちゃんは教会関係者の所為か、古代文明とか遺失物に関しての知識を持っている分、順能力は高いみたい。
「多分、そうだと思うけどどういうモノかまでは……。」
……って、相手は喋れるんだから聞けばいいじゃないのよ。
「えーと人工精霊さん……ってなんか呼びにくいなぁ……アイちゃんでいいか。」
人工精霊って要は向こうの世界で言う人工知能の事だよね。
だったらAIのアイちゃんでいいじゃない。
『……ミストレスノ意ノママニ……命名『アイ』受諾……』
なんか戸惑っている感じもするけど、そんな訳ないよね。
「後、その「ミストレス」っていうのも禁止ね。私はミカゲよ。」
『……YES、ミカゲ……指示ヲドウゾ。』
「うーん、その事なんだけど、今一つ状況が分かってないのよ。あなたの事や取り巻く状況何か教えてくれる?」
『それならボクが教えてあげる。ミカゲはまずシステムの復旧の指示を出して。』
「レフィーア!?」
私の変身がいきなり解けて小妖精姿のレフィーアが姿を現す。
「あなた今まで……。」
『全部後で説明するから、まずは復旧指示を……このままじゃ持たないから。』
「うん……アイちゃん、システムの復旧をお願い。」
『ミカゲカラノ指示ヲ受諾……リカバリーモードニ移行……バックアップデータフィードバック開始……フィールドタイプヲ選択シテ下サイ。』
アイちゃんが何かを選べって言ってるけど……何のことかなぁ。
私はミュウとマリアちゃんを振り返るけど、二人とも事態についていけないようで呆然としている。
『SN2785200021875、ボクの名前はレフィーア。フィールドタイプを可視化してあげて。それと復旧後は速やかに現状を確認し、ラーニング……今の時代に沿った対応を。』
『……上位コード『レフィーア』確認。要請ヲ受諾シマス……。』
レフィーアがアイちゃんに何か語りかけたかと思ったら、いきなりパネルに映像が浮かび上がったの……なんか、近代都市を思わせるようなものと、のどかな牧場風景と、鬱蒼と生い茂るジャングルみたいな物、一面の湖に中央にポツンとある古城等々、十数種類の風景が出て来たのよ。
「レフィーア、これは?」
分からないことはレフィーアに聞く……これ基本だよね。
それに、さっきからの一連の流れからするとレフィーアはこの事をよく知っているみたいだし……。
『ミカゲが更地にしたこの周りをどう言う風に直したいかを聞いてるんだよ。』
「そうなんだ……周りが森だからやっぱり……でもこれは何か鬱陶しそうね……ミュウ、マリアちゃん、何か希望ある?」
私は未だ呆然としている二人に声をかける。
気持ちはわかるけど、いい加減戻って来てよぉ……私を一人にしないでよぉ。
「えっ、あぁ……うん……。」
「ミカゲさんにお任せします。」
二人が戻ってくるのにもう少しかかりそうね。
『魔素が溜まれば後で変更も可能だから、取りあえずどれでもいいから決めなよ。』
レフィーアが先を促す……なんか焦っているような感じがするのは気のせいかな?
「うーん、じゃぁこれ。」
私は幾つかある候補の中から牧草地帯の風景を選んだ。
だってね、なんとなくのどかな感じがしたんだもん。
『フィールドタイプ受諾……リカバリーヲ開始シマス……エネルギー不足。』
『いいよ、取りあえずシステム周りを優先で。後は逐次チャージと並行で作業を進行して。』
『……命令受諾……終了マデ259198s……。』
部屋の壁や天井が光り出し、周りが明るくなる。
『復旧まで時間がかかりそうだし、一度上に戻ろうか?ボクお腹空いたよ。』
私は、まだ呆然としている二人を引っ張る様にしながら、レフィーアに言われるままに上の部屋へと戻る事にする。
システム?とやらが復旧した為か、部屋の片隅にあった光る円盤の上に乗ったら一瞬にして司祭の執務室に戻ったのはちょっとびっくりしちゃった。
◇
「それで?どういうことなの?」
私は綺麗になった執務室の机の上で、一心不乱にレチゴを食べているレフィーアに問いかける。
『モグモグ……ちょっと待ってよ……むぐっ……。』
「慌てて食べるから……。」
喉を詰まらせたレフィーアに水を渡す。
『ミカゲが慌てさせるんじゃないか。』
「いいから、それを食べたら説明してよね。」
「この建物の変化についても聞きたいですわ。」
扉が開いて、マリアちゃんとミュウが入ってくる。
彼女たちは、地下の部屋からここに戻ると「少し頭を冷やしてくる」って言って他の部屋を見に行ってたんだけど……。
「おかえりー、他の部屋の様子はどう?」
「ここと同じ……、いつ誰が来ても問題ないくらい片付いているわ。廃墟って何?って感じよ。」
「広間も見てきましたが……立派な大聖堂になっていました。」
「そうなんだぁ……とりあえずお疲れ様。果実水飲むでしょ?」
疲れたような声で報告をしてくれる二人を労わる為、良く冷えた果実水を取り出して渡す。
「それでどういう事なの?」
レチゴを食べ終えたレフィーアに私は再度問いかける。
『んー、ざっくり言うと、アレは古代文明の聖遺物で、ミカゲの魔力で再起動した、って事なんだけど。』
「ざっくりし過ぎでしょっ!」
「まぁまぁ、ミュウさん落ち着いて。」
「レフィーア?説明してくれるんだよね?」
『ミカゲ、ちょっと怖いよ……って、痛い、痛いよっ。』
「だったら、ちゃんと説明しなさいよ。」
『わ、分かったから、離し……て……。』
私がレフィーアを掴んでいた手の力を緩めると、慌てて私から距離を取る。
『まともに説明すると複雑で長くなるんだけど……聞く?』
「……詳細を事細かく簡潔にお願いします。」
『うわっ、無茶苦茶言ってるよ。』
レフィーアが呆れているけど、あんまり難しいとねぇ、私はともかくミュウが寝ちゃうからね。
『ま、いいか……えっとね、この聖遺物は超古代文明時代のものなんだよ。超古代文明時代の人間たちはね……。』
レフィーアの話は長くて、やっぱりミュウは途中で寝ちゃったんだけど、簡単にまとめると、あの装置は超古代の魔法技術と科学技術が融合したものなんだって。
超古代の人類は、各地の龍脈泉と呼ばれるマナの流れが集まるところに、ここと同じような施設を建設して、天候、地形、魔力の流れなどを自在にコントロールする事が出来たらしく、その力を使って一時は魔族をも支配していたんだって。
だけど、結局魔族の反乱、龍族の介入などが重なって古代人類は滅んで、今では遺跡としてその足跡が残るだけなんだけど、ターミナルと呼ばれたここのような拠点は強力な防護魔法と拠点結界が張ってあるから、現在でも稼働する可能性が高かったんだって。
ここのターミナルもその一つで、その機能としては、防護・阻害結界を張る事、地域のコントロール、そしてターミナル間の転移なんだって。
ターミナルはここの教会施設みたいに、何らかの施設でカモフラージュされているらしく、今までに見つかった遺跡の中でもひょっとしたらターミナルがあったかもしれなくて、ターミナルが確実に起動していれば、どれだけ離れた場所でも一瞬のうちに移動できるから、今後ターミナルを見つけたら起動させるといいってレフィーアは言うんだけどね。
ミュウはぐっすりと夢の世界に旅立っていたし、私もよく分からないので聞き流していたけど、マリアちゃんは興味があるらしく、結局レフィーアはマリアちゃんに教えていたから、分からないことが出てきたらマリアちゃんに任せればいいよね……。
『ほら、やっぱり寝ちゃったよ。』
「まぁまあ、レフィーア様、私がちゃんと聞いていましたから。」
……何か言ってるみたいだけど……私は寝てないからね……ミュウ、柔らかいよぉ……。
「それにしても幸せそうな寝顔ですね……ミカゲさんの寝顔可愛ぃ。」
『ボクは喋り疲れたから少し休むよ。二人が起きたら呼んでね。』
「はい、ごゆっくりどうぞ。……はぁ、超古代文明のターミナルですかぁ。報告なんかできませんわね、どうしましょうか……ねぇ、ミカゲさん?」
マリアちゃんがそんなこと呟いていたなんて、この時の私は知らなかったんだけどね。
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ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/937590458
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
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主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
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