勇者と魔王、選ぶならどっち?

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第二章 勇者のスローライフ??

護衛任務?

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「えっと、それマジな話?」
 ミュウが困惑しながら訊ねる。」
「えぇ、マジなんです。」
 同じく困惑した表情で答えるメルシィさん。
 口調が崩れかけている所が、彼女の困惑度合いの大きさを表している。

 二人が何を話題にしているかというとね……。
 北方への旅行の為、準備を兼ねて街へ出向いてきたのはいいんだけど、私達を見かけたらすぐにギルドに来るように伝えてって門番さんに連絡がしてあったらしく、私達の姿を見かけた門番さん達によって半ば連行される形でギルドにまで来たんだけど……正直恥ずかしかったよ。
 で、何でそんな無茶までして私達を呼び出したか、という説明をメルシィさんから聞いたところなの。

 まぁ、そんな難しい話ではなくて、昨日メルシィさんと商隊の護衛依頼の件を話していたのを聞いていた人がいたらしくてね、依頼主の商隊さん達に「私達が依頼を受けるなら一緒に行く。」っていう別の商人さんや「私達が依頼を受けるなら、俺達も受ける。」っていう冒険者さん達が殺到したみたいなのね。

 商隊としては、同行者が多いほどリスクの分散にはなるし、護衛にかかる費用も頭割りできて少なくなるので願ってもない話で、しかも、護衛にはそれなりに名の通った有名どころの冒険者たちを選び放題ときては、これほどいい話は無いって事で、ぜひ私達に依頼をお願いしたいって事なのよ。

「うーん、わけわかんないね。何で私達が?なんだろうね。」
「さぁ?」
 私が疑問をクーちゃんに訊ねても、彼女は首を竦めるだけ……まぁ、クーちゃんだってわからないよね。
 そんな私の疑問に答えてくれたのはマリアちゃんだった。

「ミカゲさんは御自分を過小評価し過ぎなんですよ。」
「そうなの?」
「Dランクと言いながらその戦闘力はCランクをはるかに凌駕し、領主の覚えもめでたい期待の新人冒険者。加えて、あのオーガロードを瞬殺しBランクに上り詰めて人気急上昇中。しかも、身持ちが硬く、それでいて身内にはとびっきり甘い。そして、美少女を中心とした、女性だけのパーティリーダーであり、そのパーティには盾役が存在しないから、仲良くなってあわよくば、などという隙があったりもする……お近づきになりたいっていう人は多いのですよ?」
「あー、ないわー。そりゃぁね、マリアちゃんやミュウ、クーちゃんは可愛いから狙っている邪な男が多いのはわかるけど、私は無いでしょ?男と見れば見境なく吹き飛ばしてるんだよ?」
「……見境ないって自覚あったんだね。」
 クーちゃんがそう呟いているけど無視する。

「そこも魅力みたいですよ?ミカゲさんが身内に対してダダ甘なのは既に知れ渡っています。男に容赦ないミカゲさんですが、パーティに入って身内になれば、その優しさが自分だけに向けられるのでは?という儚い妄想を抱いている男たちの多い事……。」
「はぁ……そんなもの?」
 私が呆れたようにそう言うとマリアちゃんは大きく頷く。
「世の中には身の程を弁えない変態さんが多いんですよ。」
「めんどくさいなぁ……。」
 マリアちゃんの言葉に、私はそっと溜息を吐く。

「まぁ、そう言うわけで、ミカゲさん達『妖精の幻夢フェアリー・メイズ』に指名依頼が来ていますが、どうなさいますか?」
 メルシィさんが困惑した表情のまま再度聞いてくる。
「パス……と言うわけにはいかないんですよね?」
「えぇ、今回北に向かう商隊はアスカとこの街を行き来する商人たちの中でもかなりの大御所で、余り揉めるのはギルドとしても街としても得策じゃないんですよ。」
 今回私達が依頼を受けないと、ヘタすれば護衛を受ける冒険者がいなくなるらしいのね。
 それで、その商隊がアスカの街につかないと、経済にかなりの影響が出るらしく、出来ればそのような状況になるのは避けたいというのが、領主及びギルドの総意なんだって。

「まぁ、前向きに検討するって事で、先方と詳細を詰めたうえで決めるっていうのでどう?」
「ミュウさん、それでお願いします……出来れば引き受けてあげてくださいね。」
「それは向こうの条件次第ね。」 
ミュウが笑いながらそう言う。
「お手柔らかにね。」
 メルシィさんも苦笑を返す。

 元々先方が提示してきた条件は以下の通り。
「報酬:銀貨40枚、但し盗賊、魔獣等襲われて撃退した場合、その危険度により銀貨10枚から金貨1枚の危険手当を支払う。」
「道中の食事は商隊が用意することもできる。その場合報酬より銀貨5枚を差し引く。」
「街中での護衛は任務外、必要な場合は別途追加料金を支払う。」

 つまり、護衛は移動時のみで、街に入れば出発までは仕事がお休み、更に言えば食事も用意してもらえる……報酬から差し引かれるけどね。
 ちょっと報酬が安めのような気もするけど、危険手当ては別に付くし、特に問題の無い条件なんだと思うのよ。
 更に言えば、指名依頼となったらこっちが優位に立ってるわけだし、ちょっとはこっちの好きな条件を付けくわえても文句でないからね。
 まぁ、ミュウがどこまでの条件を付けるかは見物なのよ。

「一応不正がないように私が立ち会いますので、お昼過ぎにまた来ていただけますか?」
「んー、もうすぐお昼だしね。そこの酒場で食事しながら打ち合わせてるから、先方が来たら声かけてよ。」
 メルシィさんとミュウの間で、話がどんどんまとまっていく。
 ウン、こう言うのはやっぱりミュウに任せておくのが一番。
 なので私はちょっと早いけど、今日のランチは何を食べようかという事に頭を悩ませるのだった。

 ◇

「でね、食事は別でいいと思うのよ。」
「なんで?予定では20日間位の行程でしょ?銀貨5枚なら出してもらった方がお得じゃない?」
「ミカゲがそれでいいならね。言っておくけど、こういう護衛任務で振舞われる食事って大抵が堅い黒パンと干し肉よ……大体、総額で銀貨3枚ってところね。」
「パス。……まぁ、ターミナルで作った非常食が山ほど残っているし、以前狩りした時のオーク肉やウルフ肉も結構残っているから食事には困らないかぁ。」
「そういう事。むしろ、こっちの食料をわける場合の事も考えておいた方がいいと思うよ。」
「へっ、なんで?」
 私は何を言っているか分からないという顔でミュウに訊ねる。
「はぁ……もう少し自覚を持ちなさいよ。いーい?近くで自分達より美味しそうなものを食べている人がいたら、ミカゲはどう思う?」
「うーん、我慢する?」
「その我慢がずーっと溜まっていくと、余りいい感情持てなくなるでしょ?」
「そっかぁ……。」

 旅の間の食料は、現地調達か食材を持ち込んで現場で調理するのが一般的で、非常食はあくまでも「非常用」の保険として用意するだけ。
 だから多少高くても、美味しいのであれば購入者はいるのだけど、1日2食として20日分を非常食で用意するとなると、パーティの人数によっては食費だけで赤字が出ちゃうから、そんな非常識な冒険者や商人はまずいないのが普通なのよ。
 そう考えれば提供される食事は、私達が普段食べている物より劣るというのは確かなわけで……。

「だからね、そのターミナル製の非常食は多めに持って行って、必要なら格安で分けてあげるとかした方がいいのよ。」
「成程ねぇ、ギルドで販売し始めてるけど、1食分銅貨25枚するから普通の人達は長期分を用意することは無いもんね……、とはいってもギルドに卸す金額より安くするのはマズいよね?」
「後はその場で多めに調理して分けるとかね。」
「それはいいけど……何かそれっておかしくない?」
「だからそのあたりも含んで事前交渉するのよ。まぁ、指名してきたってことは、余程無茶を言わない限り、こちらの言い分が通ると思うけどね。」
「そうなの?じゃぁ食材は多めに持って行く感じでいいかな?ミュウが交渉している間に買い揃えておくね。」
「ん、丁度相手さんも来たみたいだから、ちょっと行って来るね。」
 ミュウが見てる方に視線を向けると、メルシィさんがこっちに向ってくるところだった。

「じゃぁ、私達は旅の準備でもしてこようか。」
 私達はミュウに後を任せてギルドを後にした。



「出発は明後日よ。朝、顔合わせをしてそのまま出発だからね。」
 夕食時、帰ってきたミュウがそう告げる。
「結局条件はどうなりましたの?」
 マリアちゃんが訊ねる。
「まぁ、それなりにいい条件を取り付けれたよ。護衛対象の人数も増えたからね、報酬は銀貨60枚。」

 商隊の護衛パーティは私達を含めて3パーティ。
 内訳はBランクの『暁の覇者』が大剣使い、剣士、槍使い、魔法使い、司祭の5人。
 Cランクの『白銀の翼』が盾戦士、大剣使い、短剣使いの3人。
 私達4人を含めて総勢12人になるらしいの。
 それで護衛対象の商隊は全部で7団体、馬車の数は13台、随行人数は御者さんを含めて60人程度とかなりの大所帯なんだって。

「一応ね、護衛のリーダーは『暁の覇者』のリーダーに任せてあるから、基本的には彼らの指示に従う事になるけど、納得できない事には拒否する権利を得ているわ。」
 まぁ、私達より高いパーティランクだし、経験も豊富って事だから妥当な判断だよね。
 それにイヤな事は拒否できるって話だから無茶を押し付けられることもなさそうだし。

「食事に関しては各自で用意、野営時は護衛の人数を減らさない範囲で食事の為の狩りをする許可も貰っているわ。」
「じゃぁ、今まで通りで問題ない?」
「そうね、一応周りの様子を見ながら、合わせていけばいいと思うよ。」
「ん、じゃぁ明日は野菜などを買い込んでこればいいよね。」
 一応、勇者の袋の中にはオーク肉やウルフ肉が山ほど入っているし、作り置きの料理もそれなりにあるから、2~3ヶ月位なら充分の食料があるので特に用意する必要性はないんだけど、野菜類が不足しがちだから補充はしておいた方がいいよね。
 
「後、私達……特にミカゲには、男性は用もなく近づくことを禁止してあるわ。これを破ったらその場で護衛依頼終了。後その時吹き飛ばされても文句は言わないって事で言質を取ってあるから、これで少しは安心でしょ?」
「それなら安心だね。」
 ミュウの言葉に、クーちゃんがホッとしたように答える。
「後は……私達は自分たちの馬車を出すって事にしてあるけど良かったかな?」
「ん、向こうでのアシも必要だし、問題ないと思うよ。」

「んーと、報告しておくのはそんなところかな?ソッチの準備はどう?」
「明日市場で野菜を買い込む以外は特にないかな……あ、ミュウ装備どうする?」
 私はふと思い出した。
 クーちゃんやマリアちゃんの装備は、前回の依頼前に新調したばかりで、それ程傷んでいないからいいとして、オーガと死闘を繰り広げた私とミュウの装備はかなり酷い状況になっていた。
 まぁ、私の場合は剣はあまり使わないし、杖には問題ないし、防具に至っては最悪レフィーアの力を借りれば問題ないんだけど、ミュウの場合はそうはいかないよね。

「あ、あぁ……今修理お願いしてるけど間に合わないかな?」
「んー、どうだろ……アイちゃん?」
『イエス、ミカゲ。御用は?』
「ミュウの装備の修理状況は?明後日までに間に合う?」
『防具に関しては耐久度70%で仕上げが完了します。武器に関してはあと5日かかります。』
「……だって、どうする?」
「そう……困ったなぁ。」
「武器は宝物庫を漁ってみようか?何かいい物があるかも?」
「そうだね……そうしよっか。防具に関しては思い入れもあるし、耐久が心配だけどそのままで行くしかないかなぁ。」
「ねぇ、アイちゃん、ミュウの装備何とかならない?」
『イエス、ミカゲ……現状での修理では不可能。但しマジックレストアを行えばその限りではないです。』
「マジックレストア?」

 アイちゃんの説明によれば、ベースになる装備に対して魔鉱石とエンチャントがかかった魔力装備を合成することによって、元になる装備の修復・アップグレードが可能になるんだって。
 合成した時点で新品同様になるから、必要素材さえあればすぐにでも修復可能なの。
「じゃぁちょっと宝物庫漁ろうか?」
 私の言葉に皆頷き、揃って宝物庫まで移動する。

 宝物庫と言っても、このターミナルを見つけた時の遺跡にあったものを雑多に詰め込んであるだけなので、使える物があるかどうかは分からないんだけどね。
 ただ、クーちゃんがエストリーファの剣を得る前まで使っていた魔剣や、マリアちゃんのローブなど、かなり高度なマジックエンチャントがかかった装備もあったから、探せば何か見つかるかもしれない。

 ……3時間後。
「はぁ……これだけ捜して見つかったのがこれだけ。何とかなると思う?」
 ミュウが疲れた声を出す。
「そうね、贅沢を言わなければ何とか。」
 見つかったのは魔力を帯びた魔剣が2本と防護力アップのエンチャントがかかった革鎧だけ。
 一応、修理前と同等程度には戻ると思うけど、折角なら少しでもパワーアップさせてあげたいよね。
「明日、街に行ったら触媒になる魔鉱石を買って来るよ。それからレストアすれば出発前には何とか間に合うかな?」
「ウン、助かるよ。それでお願いね。」
「じゃぁ、お風呂に入って、今日は早く寝ようね。」
 私達は明日何を買おうかなどと他愛ない会話をしながら、宝物庫を後にした。



「出来たよぉ!ミュウ、ほら、装備してみて!」
 宝物庫を漁った翌日、私は街で色々買い込みターミナルを駆使してミュウの為の装備をレストアするのに目一杯時間を使った。
 結局出来上がったのは出発の日の明け方だったけど、無理した分かなりの出来栄えだと思うのよ。

 外見はミュウが今まで使っていた防具がベースになっているから、それ程遜色はないけど、腰回りを少しスカートっぽく作り変えただけで、ぐんと女の子らしさが増した。
 もちろん外見だけじゃなく、素材に使った魔法の革鎧と触媒に使った魔鉱石・魔導石のエンチャントによって『防御力上昇』『魔法抵抗力上昇』『機動力上昇』『状態異常耐性』『重量軽減』『回復速度上昇』などの効果を付与する事が出来たのよ。

「ウン、コレは中々いいよ。ミカゲ、ありがとうね。」
「えへっ、でもそれだけじゃないんだよ。」
 私はそう言いながらミュウに双剣を渡す。
「これもパワーアップしているからね。」
 ミュウが今まで使っていた双剣は、切れ味を鋭くするエンチャントがかかっていただけのものだったけど、このレストアしたものは、素材の魔剣の特性を受け継いでいて、風の属性が付与されている。
 更には柄に埋め込んだ魔石の魔力を使用して、刃に風の魔力を纏わせ、解き放つ『ウィング・エッジ』が使える。
 投げナイフ以外の飛び道具の手段が増えた事で、ミュウの戦術も幅が広がると思うのよ。

 ミュウは受け取った双剣を何度か降った後、納刀してから私を見る。
「ありがと。」
 ミュウはそう言うと私を抱きしめる。
「わわっ……ミュウ、どうしたの。」
 まさかミュウから抱きついてくると輪思わず、私は不意を突かれて狼狽える。
「感謝の気持ちだよ。どうせ寝てないんだろ……まったく、無理ばかりするんだから。」

 私はそのままミュウに抱きかかえられ、馬車に乗せられて……今はミュウの膝枕で街へと向かっている。
 えっと、なんでこうなってるのかな……まいっか。
 私はミュウの柔らかい膝を堪能しているうちに、いつの間にか深い眠りへと誘われるのだった。
 
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