有栖川悠は女の子が好き!?

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悠と転校生

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「浅葱明日香です。よろしくお願いします。」
彼女がそう言って頭を下げる。
あの娘だ!
ボクは思わずがたッと立ち上がってしまう。

「有栖川、どうした?」
「あ、いえ……何でもないです……。」
ボクはそういって机の上に顔を突っ伏す。
恥ずかしぃ……。


……近づけない><

あれから休み時間になる度に、ボクは彼女に話かけようと努力した。うん、努力はしたんだ。
だけど、転校生が珍しいのか、彼女の周りには人が気が出来ていて、到底近づける雰囲気じゃなかった。

「はぁ……。」
ボクが机に突っ伏してため息をついていると、隣から都が声をかけてくる。
「どうしたの悠?朝から変よ?」
「うん……あの子……。」
ボクは視線をちらっと明日香さんの方に向ける。
「ん?転校生がどうしたの?」
「あの娘なんだ……。」
「そう。で、悠はあの転校生とお話がしたい、と。」
ボクが一言そう言っただけで、都はすべてを察してくれる。
「……うん。」
「……悠、今日のお弁当、余裕ある?」
「……うん、お重三段重ね。」
「今日はお祭りかっ!!……まぁいいわ。それならシュウには購買行ってもらえば十分よね。お昼、あの子を誘うから、いつものところで待ってなさい。」
「ほんとっ!」
ボクは思わず、都の手を握りしめる。
「う、うん、ほんと……だから……ち、近いっ近いってばっ!」
ボクは都に押し戻される。普段は都から近づいてくるくせに、なんか理不尽だ。
「顔を寄せないっ!……自制が効かなくなりそうで怖いのよ……。」
都が何か呟いているけど、僕の心はもうお昼の事でいっぱいだった。
明日香ちゃんにお弁当が食べてもらえるってことだよね?
あぁ、こんなことならもっとおかずに凝るべきだったよ。
……まだ1時間あるよね?

ボクは次の授業をバックレることに決めた。




「ユウ、そこに正座ッ!」
いつもの場所……屋上で、ボクは都に正座をさせられていた。
隣には、何故か明日香ちゃんも正座をしている。
「それで、あなたがユウが一目ぼれした娘で間違いない?」

わっ!いきなりなんてことを言い出すんだっ!
ボクは慌てて都の口を塞ごうとするが……遅かった。

「あらぁ、ユウちゃん振られちゃった、かわいそぅ~。」
都がそう言いながら自分の胸にボクの顔を埋める。
振られてないやいっ!お友達から始めるだけで……って言うか、都の胸また大きくなってるっ!?
……うん、コレだけは慣れないよぉ……というか、都も、もう少し乙女の恥じらいというものをもってだねぇ……

そんな事を考えながらも、思考がボーっとしていくのを感じる。うん、都の胸、柔らかくてふかふかで……。







……はッ!
ボクが我に返った時、みんなお弁当を食べていた。
いつの間にか、都と明日香ちゃんが仲良くなっていたのはいいんだけど……。

「えっと、ボクのお弁当は?」
「あ、ごめ~ん。後それだけだわ。」
目の前に置かれたお重の蓋に乗っている、小さな俵おにぎりが2つと唐揚げが一個、そしてたこさんウィンナーが一つ……全然足りないよぉ。」
「アハッ、ゴメンねぇユウちゃん。あまりにも美味しかったから、つい……。」
明日香が申し訳なさそうにそう言う。
「あ、うん、大丈夫……でも3人前以上の量はあったと思うんだけど……。」
ふと視線を巡らすと、最後の唐揚げを口に運ぶ修介と目が合う。
「おっ、気付いたのか?パンあるぞ。」

……うん、都と明日香ちゃんと修介……3人分だね。
ボクは修介が投げてよこしたアップルデニッシュをちびちびと齧る。
都の話では、ボクと都と明日香ちゃんの分で、修介は購買でパンを買ってくるって話しだったはずなのに……。
ボクが好きで、修介が嫌いな、甘い系のパンを買っているあたり、修介ははなっからボクのお弁当を食べるつもりだったのだろう。

「はぁ……もぅいいよ。それよりデザートあるけど、入る?」
ボクはパンを食べ終えると、皆にそう聞く。
「デザート?そんなの朝持ってた?」
都が不思議そうに聞いてくる。
「ううん、さっき作ってきた。」
ボクはそう言って、折り畳み式のクーラーバックから、プリンを取り出す。
「本当は、ア・ラ・モードにしたかったんだけど、時間がなかったから……。」
可愛い器の上、ぷるんと揺れるプリン。
その横に生クリームとサクランボが添えてある。
あの短時間では、コレが精一杯だった。

「作ってきたって……だから姿が見えなかったのかぁ。……うん、美味しぃ。」
都が呆れた声を出すが、プリンを一口含むと、ぱぁっと笑顔になる。
うん、都の笑顔はいつ見てもいいね。
「ったく……、相変わらず女子力高けぇなぁ。」
修介も、そう言いながらプリンに手を伸ばす。
甘いものは好きじゃない、と言いながら、結構ボクが作ったデザート食べてるんだよね。
「……。」
明日香ちゃんが、プリンを一口食べて黙り込む。
それを見てボクは不安になる。
「あ、その……口に合わなかった?」
ボクが恐る恐るそう訊ねると、明日香ちゃんは首をブンブンと横に振る。
「なにコレ……美味しすぎるよぉ。」
明日香ちゃんは、そう呟くと一気にプリンを食べつくす。
「はぁ、お口に合ってよかったよぉ。」
ボクは、ほっとして自分の分のプリンを……ってないよ?なんで?
確かに4個作ってきたはずなのに……。

「はい、あすかちゃん、あぁぁ~ん。」
「え、アッ……あ~ん……。」
プリンをひとさじ掬って、明日香に差し出す都と、顔を赤らめながら、それを咥え、美味しそうに頬を緩ます明日香……。実に微笑ましく百合百合しい光景だったが……。

「それボクの分っ!」
そう、都はすでに自分の分を食べ終えていて、僕の分を掻っ攫っていったのだ。
「細かい事いうなしっ!」
「l細かくないよっ!」
「もぅ……しょうがないなぁ。」
プンプンを起こる僕を見て、都が悪戯っぽい視線を明日香ちゃんとボクに向ける。
明日香ちゃんは、心得たとばかりに、都からプリンを受け取ると、スプーンでひとさじ掬ってボクの目の前に差し出す。
「ハイ、ユウちゃんも、あ~ん。」
明日香ちゃんが「あ~ん」をしてくれる。
しかも、そのスプーン、さっき明日香ちゃんが咥えた奴だよね?
それって……か、か、間接キスなのではっ!

「……あ~ん………。」

ボクの思考は完全に停止して、言われるがままに口を開けてしまう。
パクっ……。
口の中にプリンが入ってくる……けど……。
味は全く分からなかった、
だけど……都、GJ!! 

明日香ちゃんに見えないように親指を立てている都に、ボクも親指を立てて応えるのだった。





「明日香ぁ、どうしたの?美味しくない?」
「あ、ううん、美味しいよ。でも、都も料理できるんだね。ちょっち意外。」
「それ酷くね?」
笑いあいながらお弁当を食べる二人。
明日香ちゃんが転校して来てから早くも2週間が過ぎようとしている。
新しい環境に、最初こそ戸惑っていた彼女だが、生来の性格なのだろう。すぐに皆と打ち解け、今ではずっと前から学園にいたかのように馴染んでいる。

ただ、普段見せている笑顔が、彼女の本当の笑顔じゃない事をボクは知っている。普段の彼女は、何処か壁を作って皆と接している。
それが分かるのは、こうしてボクや都とお昼を食べている時に、ふと、彼女の素の表情を垣間見ることがあるからだ。
ボク達相手にはそれだけ油断していると思えば、嬉しいんだけど……でも、もう少し打ち解けたいと思うのは我儘なのかなぁ?

ある日そんな事をボソッと呟くと、修介は悪い顔をして何処かへ行ってしまった。
そして都が、「それならいい催しがあるじゃない?」とカレンダーを指さして言う。
都が指示したのは5月の2日。
今年のカレンダーでは4月の29日が金曜日で、そのまま30日、1日と土日が続く。
そして3日の火曜日から5日の木曜日、そして6日は特別休校になっているから日曜日までの6日間の休みが続くのだ。
その大型連休の中にぽっかりとある通常の登校日。
学園側も、休む生徒も多いだろうと考慮しているのか、この日は通常の授業はなく、校内あげての球技大会が開催される。

「やっぱりスポ根でしょ。みんなで力を合わせて苦難を乗り越えれば、その時は皆の絆が一層深まるに違いないわっ!」
都がそう宣言するけど……。
「そんなにうまくいく?」
確か、昼からのホームルームで、出場種目のチーム決めをすることになってるけど、参加は強制じゃないし、正直、皆のやる気はあまり感じられない。
そういうボクだって参加する気はなかった。
「大丈夫よ、シュウがその辺りの根回しをしに行ったから。」
「何の話?」
お手洗いから戻ってきた明日香ちゃんが声を掛けてくる。
「うん、球技大会の話よ。明日香ちゃんはどの種目に出たい?」
「あ~、球技大会かぁ。正直、運動って苦手なのよねぇ。……強制参加じゃないんでしょ?だったら応援に回るかなぁ?」
「よし、メンバーゲットっ!」
「えっ、えっ、?えぇっ!」
明日香ちゃんは都に渡されたチラシを見て驚く。
球技大会名物、チア合戦のメンバー募集のチラシだった。
って事は、明日香ちゃんのチア姿が見れる?
都GJだよぉぉぉ!!!

「報酬、期待してるゼ?」
突然の事で、目を回している明日香に聞こえないように、都はボクにそう言ってきた。
もちろんっ!
ボクは明日、都の好きなガトーショコラをホールで持ってきてあげようと思うのだった。






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